睡眠スキルは最強です！ 〜現代日本にモンスター!? 眠らせて一方的に倒し生き延びます！〜

30. side 救出作戦

　迫り来る大量のモンスター。
　失われてしまった結界。

　周囲の住宅の屋根の上から覗く凶悪な造形は、市役所にいる者達にかなりの恐怖をもたらした。

　だが、諦めればその先にあるのは死のみ。
　市役所の職員はこんな作戦を思いつき、賛成多数で実行に移されることになった。



　市役所防衛作戦。

　その内容は、市役所の関係者によって結成された、市長の長女救出作戦。
　そして総力を挙げての対モンスター殲滅作戦である。

　幸いにも、ここには頼れる戦力となるパーティーが複数ある。
　死者を出さずに成功させることは難しいと思われているが、反対意見を口にする者はいなかった。

　そうして、手袋に長袖長ズボン。そしてフルフェイスヘルメットで武装した市の職員達は、女子トイレへと突入しようとしていた。

（準備はいいか？）

（（はい））

　予め決めておいたハンドサインを頼りに、女子トイレの入口に構える職員たち。
　その時だった。

「やべえぞ、気付かれた！」

　そんな声がトイレ内から響き、直後に足音。そして三人の少年達が飛び出してきた。
　そこを市の職員たちが一斉に襲い掛かる。

　レベル、そして人数。そのどちらでも不利だった三下達はいとも容易く取り押さえられた。
　だが、三下は諦めていなかった。
　取り押さえている人物の足首をつかみ、スキルを発動させる。

「離せ！」

「黙れ、大人しくしろ」

「くそっ！」

「言われた通り話しています」

「じゃあ俺を助けろ！」

　焦りながらも、三下はスキルが効いたと確信していた。



　一方、女子トイレの中に取り残されていた市長の長女――梨沙はどうにか逃げようと必死に頭を動かしていた。
　しかし「動くな」という命令のせいで若干乱れている衣服を整えることすら出来ていない。

　ちなみに被害は身体中を触られたのみだった。お陰で三下達に強い嫌悪感を覚えたくらいで、心に深い傷を負うには至っていない。

（早くしないと、お父さんが……）

　落ち着いたおかげで、スキルが発動できなくなっていることに気付き慌てる梨沙。
　彼女は逃げようとしながらも、ひたすらスキルを発動させようとしていた。

　だが、スキルは中々発動できなかった。

　そして……

「ふぎゅっ……!?」

　……可憐な容姿には似つかわしくない声を漏らしながら、彼女は自ら壁に突っ込んだ。
　ようやく動くことが出来たのだが、悲しいことに顔面……特に鼻をぶつけてしまっていた。
　お陰で激しい痛みが襲っていた。

　それでも逃げるために女子トイレの外に飛び出し、無事に市の職員達によって保護された。

「梨沙さん、何も言わなくていいから今は休んでいなさい」

　ポロポロと涙を流す梨沙を見て、職員達――特に女性職員達は梨沙が強姦されたと信じ込み、強い怒りを覚えた。
　同時に「間に合わなかった」と悔し涙を流した。