睡眠スキルは最強です！ 〜現代日本にモンスター!? 眠らせて一方的に倒し生き延びます！〜

27. side 自由自在

「三下すげーな」

「こんな自由自在に操れるのか」

　夕刻、一人の少年──三下が二人の仲間から称賛されていた。

「みたいだな。よし、脱げ」

　そんな命令を飛ばす三下。
　すると、彼の目の前にいる少年は自身のズボンに手をかけて……。

「待て待て、男の下半身は見たくねえ。上着を脱げって言ったんだよ」

　直前の行動を止めてから、言われた通りに上着を脱いだ。

「的確に指示しないとダメなんだな」

「面倒くせぇ」

　三下はそう愚痴っているが、彼の新たなスキルは非常に強力だった。

　スキル名は洗脳。直接触れた相手を命令によって自由自在に動かせるというものだ。
　敵対する人物やモンスターを全て味方にすることが出来れば、自身が弱くても戦力を増やすことが可能になる。

　本人はその強さに気付いていないようだが……。

「三下、それモンスターに使えないのか？」

「出来るわけないだろ。触る前に殺される」

「ヤバそうだったら、すぐ逃げればいいだろ。戦力を増やすなら今のうちだぞ」

「そこまで言うなら行ってやるよ」

　そんなわけで、重い腰を上げる三下。

「んの前にコイツを元に戻してやれよ」

「ああ。元に戻れ」

　解除の仕方が分からずに適当に言い放つ三下。
　すると、洗脳されていた彼の仲間が挙動不審になった。

「やっと自由に動ける！」

「嬉しそうだな？」

「洗脳ってすごいな！　意識あるのに体が勝手に動くんだぜ？　抵抗できないのにはビビったぜ」

「お、おう……」

　なんて話しながら、実験していた多目的トイレを後にする男四人。
　いかにも怪しい彼らだが、夕食の炊き出しに殆どの人が向かっていたから、彼らの姿を見る者はいなかった。



　そうして無事に市役所の外側へと辿り着いたが、遭遇したモンスターはたったの一体だけ。
　しかも好戦的ではなく、物陰に隠れて怯えているゴブリンだった。

「仕方ない、コイツでやるか」

　気怠そうに三下が手を伸ばせば、ゴブリンは必死に睨みつけて威嚇する。
　しかし三下は手を止めようとはしない。

　ゴブリンは仕方なく、攻撃に転じた。
　……が、その動きはすぐに止まった。

「止まれ！」

　洗脳が先に効いてしまったのだ。

　攻撃しようとしても何も出来ない。逃げようとしても体が動かない。
　ゴブリンは得体の知れない何かの気配を感じた時よりも怯えていた。

「モンスターにも効くみたいだな」

「危なかったぜ。よし、大人しくついてこい」

「ゴブッ」

　三下はゴブリンを引き連れて市役所に戻ろうとしたが、当然のようにゴブリンは結界に阻まれた。

「仕方ない、経験値にしよう」

「おう」

　グサッ！

「グギィッ!?」

　断末魔の声を上げて倒れるゴブリン。
　それから三下たちは素知らぬ顔で市役所へと戻っていった。