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9. 後衛とは
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「包丁を扱ってる店を探してたから知らないな」
疑いをかけられるのは当然想定済みだ。
だから、さっき作っておいた包丁を見せながら説明した。
「だよな。レベルが低いお前に便利なスキルがあるとも思えないしな。
となると外部の人間の仕業か」
余裕だった。騙しといて言うことではないが、コイツ馬鹿なのか?
しばらくアイテムボックスに商品を詰めなければ勘付かれることはないだろう。
「見張りは3班に任せて、俺達1班と2班と伊藤達の5班はレベル上げだ。
全員準備はいいか?」
「「はい」」
どうやら俺とレナさんは5班らしい。この班っていうのは学校の課外活動でよく使われる行動班みたいなものだろうか?
まあ、三下達は相当自信があるらしいから、俺達は暇になりそうだな。
レベルを上げられないのは残念だが、これも安全な寝床のためだ。
「伊藤、ちゃんと援護しろよな!」
「分かった」
まあ、何もしないんだけどね?
睡眠スキルは接近戦にならないと使えないからね。
「よし、行くぞ!」
そんな掛け声と共に三下がゴブリンに突っ込んでいく。
そして剣を振りかざして……盛大に外した。
そりゃそうだよな。いきなり剣を振り回して当てられる訳がない。
とはいえ前衛は8人もいるから俺達の出る幕はないだろう。
「暇だな……」
「暇ですね……」
お互いにため息が漏れる。
ゲームをやったことがある人なら分かるだろうが、他人のプレイをただ見ているだけというのは退屈だ。
面白い実況があれば話は別だが、今はそんなもの無い。
「伊藤! そっちに行ったぞ!」
「は?」
いや待て待て。前衛8人もいるよな?
なんで取り逃してるの?
三体も。おまけに二体は武器を持っている。
「止めるから直ぐにトドメ」
「うん」
ゲームの時と同じようにVCのノリでレナさんに伝えてみたら、通じたらしく頷いてくれた。
先頭のゴブリンまでは残り三メートル。
俺は右側、レナさんは左側から一気に間合いを詰める。
そして俺がスキルで眠らせた瞬間、無防備になったゴブリンにレナさんが包丁を突き立てた。
だが、抜いている間に二体目が迫ってきている。
次は俺が眠らせながら包丁を突き立て、さらに迫ってくる三体目を眠らせた。
そしてゴブリンが倒れる前にレナさんがトドメを刺した。
一応、俺のスキルは隠せただろう。
眠らせるだけのスキルだなんてバレたら、何を言われるか分からないからな。
ちゃんと使えば強いんだけど、三下なら単語の印象だけで決めつけかねない。
「レベル3でも戦えるじゃん」
「なんで後衛の俺達が戦ってるんだよ」
「討ち漏らしを狩るのも後衛の仕事だろ」
なんという暴論。
俺はため息を堪えるのに必死だった。
この後も一時間ほどレベリングをしたのだが、三下達は連携はロクに取れておらず攻撃も大して効かず……というよりも当たらず。
結局、俺とレナさんが一番倒していた。
お陰でレベルが1上がったよ、ちくしょう。
「ハルさん、ここ抜けよう?」
「そうしたいんだが、寝る時に監視がいないのは怖い」
「安全地帯系のスキルがあれば抜けれるのに……」
「とりあえず、明日の朝までは三下達といよう」
俺達は無事に、三下達は軽傷を負って、一時間のレベリングを終えてスーパーに戻ったのだが……。
「後衛はいいよな。怪我しなくていいんだからよ」
三下達はこんなことを言っているから、レナさんも俺も頭を抱えていた。
真面目に三下達と行動するのは辞めたほうが良さそうだ。
そう思っていた時だった。
「伊藤、なんで支援しなかったんだ? バレてるぞ?」
三下にそう問い詰められてしまった。
ものすごく不機嫌だ。傷が痛むのかな?
いや、それよりもだ。これは正直に話して作戦を変えてもらうべきだろう。
「仕方ないだろ。剣術系のスキルとデバフしか使えないんだから」
「デバフ? デバフってなんだ?」
「いや、なんでもない。俺のスキルだけど、確率でモンスターを眠らせる効果があるみたいなんだ」
俺が説明すると、三下は納得したのかこう返してきた。
期待の篭った視線と共に。
「ああ、そういうことか。遠くからでも眠らせられるんだよな?」
「近付かないと無理みたいなんだよね」
「は? 後衛の意味ないじゃん。使えね」
訂正。ものすごく不機嫌そうです。
なんで後衛にこだわるの? ボク、理解できないよ。
「俺に言わないでくれ……」
「で、彼女は何のスキルが使えるんだ?」
「武器製作。一日に二本が上限だ」
武器を作ってるのは俺だが、アイテムボックスに入れているから誤魔化せるだろう。
あと、レナさんも武器作成スキルを持っている。使い方はまだ分からないが。
「ガチの後衛じゃねえか。
彼女さん、剣ありがとうな! お陰で倒すのが楽だったよ」
ん? なんか三下の鼻の下が伸びてたように見えたんだが、気のせいか?
嫌な笑顔もセットだ。
「でも、私のことは守ってくれなかったですよね?」
「すまん! 剣に中々慣れなくてさ。明日にはちゃんと守れるようになる」
いやお前は守られる側だろ。
……という突っ込みは胸の内に留めておく。
「あ、伊藤は使えないから出てっていいよ。前に出ないと戦えない後衛なんて守り切れないからな」
「は?」
「じゃあ、私も出て行きますね」
レナさんが怖い顔してる。
怒らせてしまったらしい。
「伊藤、やっぱり居てくれ」
「分かった……」
三下のやつ、手がクルクル回ってるよ。何回手のひら返せば気が済むんだ?
疑いをかけられるのは当然想定済みだ。
だから、さっき作っておいた包丁を見せながら説明した。
「だよな。レベルが低いお前に便利なスキルがあるとも思えないしな。
となると外部の人間の仕業か」
余裕だった。騙しといて言うことではないが、コイツ馬鹿なのか?
しばらくアイテムボックスに商品を詰めなければ勘付かれることはないだろう。
「見張りは3班に任せて、俺達1班と2班と伊藤達の5班はレベル上げだ。
全員準備はいいか?」
「「はい」」
どうやら俺とレナさんは5班らしい。この班っていうのは学校の課外活動でよく使われる行動班みたいなものだろうか?
まあ、三下達は相当自信があるらしいから、俺達は暇になりそうだな。
レベルを上げられないのは残念だが、これも安全な寝床のためだ。
「伊藤、ちゃんと援護しろよな!」
「分かった」
まあ、何もしないんだけどね?
睡眠スキルは接近戦にならないと使えないからね。
「よし、行くぞ!」
そんな掛け声と共に三下がゴブリンに突っ込んでいく。
そして剣を振りかざして……盛大に外した。
そりゃそうだよな。いきなり剣を振り回して当てられる訳がない。
とはいえ前衛は8人もいるから俺達の出る幕はないだろう。
「暇だな……」
「暇ですね……」
お互いにため息が漏れる。
ゲームをやったことがある人なら分かるだろうが、他人のプレイをただ見ているだけというのは退屈だ。
面白い実況があれば話は別だが、今はそんなもの無い。
「伊藤! そっちに行ったぞ!」
「は?」
いや待て待て。前衛8人もいるよな?
なんで取り逃してるの?
三体も。おまけに二体は武器を持っている。
「止めるから直ぐにトドメ」
「うん」
ゲームの時と同じようにVCのノリでレナさんに伝えてみたら、通じたらしく頷いてくれた。
先頭のゴブリンまでは残り三メートル。
俺は右側、レナさんは左側から一気に間合いを詰める。
そして俺がスキルで眠らせた瞬間、無防備になったゴブリンにレナさんが包丁を突き立てた。
だが、抜いている間に二体目が迫ってきている。
次は俺が眠らせながら包丁を突き立て、さらに迫ってくる三体目を眠らせた。
そしてゴブリンが倒れる前にレナさんがトドメを刺した。
一応、俺のスキルは隠せただろう。
眠らせるだけのスキルだなんてバレたら、何を言われるか分からないからな。
ちゃんと使えば強いんだけど、三下なら単語の印象だけで決めつけかねない。
「レベル3でも戦えるじゃん」
「なんで後衛の俺達が戦ってるんだよ」
「討ち漏らしを狩るのも後衛の仕事だろ」
なんという暴論。
俺はため息を堪えるのに必死だった。
この後も一時間ほどレベリングをしたのだが、三下達は連携はロクに取れておらず攻撃も大して効かず……というよりも当たらず。
結局、俺とレナさんが一番倒していた。
お陰でレベルが1上がったよ、ちくしょう。
「ハルさん、ここ抜けよう?」
「そうしたいんだが、寝る時に監視がいないのは怖い」
「安全地帯系のスキルがあれば抜けれるのに……」
「とりあえず、明日の朝までは三下達といよう」
俺達は無事に、三下達は軽傷を負って、一時間のレベリングを終えてスーパーに戻ったのだが……。
「後衛はいいよな。怪我しなくていいんだからよ」
三下達はこんなことを言っているから、レナさんも俺も頭を抱えていた。
真面目に三下達と行動するのは辞めたほうが良さそうだ。
そう思っていた時だった。
「伊藤、なんで支援しなかったんだ? バレてるぞ?」
三下にそう問い詰められてしまった。
ものすごく不機嫌だ。傷が痛むのかな?
いや、それよりもだ。これは正直に話して作戦を変えてもらうべきだろう。
「仕方ないだろ。剣術系のスキルとデバフしか使えないんだから」
「デバフ? デバフってなんだ?」
「いや、なんでもない。俺のスキルだけど、確率でモンスターを眠らせる効果があるみたいなんだ」
俺が説明すると、三下は納得したのかこう返してきた。
期待の篭った視線と共に。
「ああ、そういうことか。遠くからでも眠らせられるんだよな?」
「近付かないと無理みたいなんだよね」
「は? 後衛の意味ないじゃん。使えね」
訂正。ものすごく不機嫌そうです。
なんで後衛にこだわるの? ボク、理解できないよ。
「俺に言わないでくれ……」
「で、彼女は何のスキルが使えるんだ?」
「武器製作。一日に二本が上限だ」
武器を作ってるのは俺だが、アイテムボックスに入れているから誤魔化せるだろう。
あと、レナさんも武器作成スキルを持っている。使い方はまだ分からないが。
「ガチの後衛じゃねえか。
彼女さん、剣ありがとうな! お陰で倒すのが楽だったよ」
ん? なんか三下の鼻の下が伸びてたように見えたんだが、気のせいか?
嫌な笑顔もセットだ。
「でも、私のことは守ってくれなかったですよね?」
「すまん! 剣に中々慣れなくてさ。明日にはちゃんと守れるようになる」
いやお前は守られる側だろ。
……という突っ込みは胸の内に留めておく。
「あ、伊藤は使えないから出てっていいよ。前に出ないと戦えない後衛なんて守り切れないからな」
「は?」
「じゃあ、私も出て行きますね」
レナさんが怖い顔してる。
怒らせてしまったらしい。
「伊藤、やっぱり居てくれ」
「分かった……」
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