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18. 夕食会をするそうです
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「うぅ……」
木剣が直撃した痛みにうずくまってしまう私。
それなのに……
「敵は待ってくれませんよ! 次の攻撃を防いでください!」
……先生役の侍女さんにそう言われました。
「酷くない!? 本当に痛いのよ!」
そう言いつつ、何とか騎士さんの攻撃を防ぐ私。
「攻撃されても耐えてください! 隙を見せたら終わりですよ!」
「なんで私がこんなことしなきゃいけないのよ!」
「旦那様の指示でございますから」
軽口を叩けるのはここまでだった。
急に騎士さんの動きが速くなったから。
「……うぅ」
痛みに声を漏らす私。
「ここまでにいたしましょう」
手の痛みと疲れでもう限界と思ったところで、騎士さんの攻撃がやんだ。
「なんでここまでするのよ……」
「実戦形式の方がもしもの時のためになりますからね」
床に倒れ息を上げながら訊いてみると、そんな答えが返ってきた。
ちなみに、今の私は涙目になっている。加減を知らない侍女さんと騎士さんのお陰で。
「手加減はしてありますから、お嬢様の治癒魔法でも痛みは引くと思いますよ。跡も残らないはずです」
私の考えてることを分かっているのか、いいタイミングで騎士さんがそう口にした。
「あれで手加減したっていうの?」
「当然ですよ。お嬢様に怪我をさせるわけにはいきませんので。
普通にやったら、お嬢様の腕は1回で折れてしまうと思いますよ」
「そうなのね……」
騎士さんの言葉に微妙な反応しかできない私だった。
この後、自分で治癒魔法をかけたら剣で打たれた痛みは完全に消えた。
手の痛みも消えたらよかったのに……。
☆ ☆ ☆
あれからも地獄の剣術の練習は続き、今日で4日目。
剣を振るうのにも慣れてきて、手を痛めることは少なくなってきた。
でも、今日は昼過ぎにお父様に呼ばれて執務室にいる。
理由は何となく分かっている。
昨日は私からも攻撃していいと言われて、風の魔法を本気で使って騎士さんを吹き飛ばしたのだけど……それで大怪我をさせてしまった。
お医者様があっという間に治したとはいえ、怒られるのは当然だと思う。
私が覚悟を決めていると、お父様が口を開いた。
「今晩、グランシア家と夕食会をすることになったから準備しておきなさい。
それと……こっちが本題なんだが、何者かがレシアを誘拐しようと企んでいるらしい」
お説教ではなかったけど、私は全く安心出来なかった。
それどころか、不安が強くなった気がする。
「誘拐……? もしかして、アーシャ様が?」
「まだはっきりとした証拠が出てないから分からないが、その可能性が高い」
そう答えるお父様は真剣な表情で言葉を続けた。
「いつどこで襲われるか分からないから、グランシア家に行く時も剣を持って行くように。
アベルから屋敷の中でも持ち歩くように言われたから、そうしなさい」
アベルというのは、お父様の親友でグランシア公爵家当主だ。
私たちの家とグランシア公爵家は仲が良くて、互いの家で食事会を毎月開いている。
今回の夕食会は多分、アーシャ様を釣るためのものだと思う。
もしかして、お父様はこの時のために私に剣を……?
「私が誘拐されるかもしれないって、いつから分かってたの?」
「先週ごろからだな」
「ありがとう。もう戻っていい?」
「ああ、いいぞ」
お父様の許可を得た私は自室に戻ろうとして、廊下で侍女さんにつかまってしまった。
そして、また剣の練習をやらされる羽目になってしまった。
木剣が直撃した痛みにうずくまってしまう私。
それなのに……
「敵は待ってくれませんよ! 次の攻撃を防いでください!」
……先生役の侍女さんにそう言われました。
「酷くない!? 本当に痛いのよ!」
そう言いつつ、何とか騎士さんの攻撃を防ぐ私。
「攻撃されても耐えてください! 隙を見せたら終わりですよ!」
「なんで私がこんなことしなきゃいけないのよ!」
「旦那様の指示でございますから」
軽口を叩けるのはここまでだった。
急に騎士さんの動きが速くなったから。
「……うぅ」
痛みに声を漏らす私。
「ここまでにいたしましょう」
手の痛みと疲れでもう限界と思ったところで、騎士さんの攻撃がやんだ。
「なんでここまでするのよ……」
「実戦形式の方がもしもの時のためになりますからね」
床に倒れ息を上げながら訊いてみると、そんな答えが返ってきた。
ちなみに、今の私は涙目になっている。加減を知らない侍女さんと騎士さんのお陰で。
「手加減はしてありますから、お嬢様の治癒魔法でも痛みは引くと思いますよ。跡も残らないはずです」
私の考えてることを分かっているのか、いいタイミングで騎士さんがそう口にした。
「あれで手加減したっていうの?」
「当然ですよ。お嬢様に怪我をさせるわけにはいきませんので。
普通にやったら、お嬢様の腕は1回で折れてしまうと思いますよ」
「そうなのね……」
騎士さんの言葉に微妙な反応しかできない私だった。
この後、自分で治癒魔法をかけたら剣で打たれた痛みは完全に消えた。
手の痛みも消えたらよかったのに……。
☆ ☆ ☆
あれからも地獄の剣術の練習は続き、今日で4日目。
剣を振るうのにも慣れてきて、手を痛めることは少なくなってきた。
でも、今日は昼過ぎにお父様に呼ばれて執務室にいる。
理由は何となく分かっている。
昨日は私からも攻撃していいと言われて、風の魔法を本気で使って騎士さんを吹き飛ばしたのだけど……それで大怪我をさせてしまった。
お医者様があっという間に治したとはいえ、怒られるのは当然だと思う。
私が覚悟を決めていると、お父様が口を開いた。
「今晩、グランシア家と夕食会をすることになったから準備しておきなさい。
それと……こっちが本題なんだが、何者かがレシアを誘拐しようと企んでいるらしい」
お説教ではなかったけど、私は全く安心出来なかった。
それどころか、不安が強くなった気がする。
「誘拐……? もしかして、アーシャ様が?」
「まだはっきりとした証拠が出てないから分からないが、その可能性が高い」
そう答えるお父様は真剣な表情で言葉を続けた。
「いつどこで襲われるか分からないから、グランシア家に行く時も剣を持って行くように。
アベルから屋敷の中でも持ち歩くように言われたから、そうしなさい」
アベルというのは、お父様の親友でグランシア公爵家当主だ。
私たちの家とグランシア公爵家は仲が良くて、互いの家で食事会を毎月開いている。
今回の夕食会は多分、アーシャ様を釣るためのものだと思う。
もしかして、お父様はこの時のために私に剣を……?
「私が誘拐されるかもしれないって、いつから分かってたの?」
「先週ごろからだな」
「ありがとう。もう戻っていい?」
「ああ、いいぞ」
お父様の許可を得た私は自室に戻ろうとして、廊下で侍女さんにつかまってしまった。
そして、また剣の練習をやらされる羽目になってしまった。
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