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9. 約束の時
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ついにやってきてしまった王宮パーティーの日。
今日は家族みんなで参加するから、家の中はいつもよりも慌ただしくなっている。
「よし、終わりましたよ」
「ありがとう。行ってくるわね」
「お気をつけて。怪我しないでくださいね!」
「気をつけるわ」
準備を手伝ってくれたサラさんにそう言って私は部屋を後にした。
今日は動きやすいようにいつもよりも短い膝丈のドレスを着ている。
お母様からアーシャ様に何かされたら大怪我させないように組み伏せてもいいと言われているから、そうするつもりでこのチョイスになっている。
上手くアーシャ様と戦えるかは分からないけど、出来ることは全力でやるつもりだ。
「お待たせ! ……あれ、お姉様とお母様は?」
玄関に出ると、お父様とお兄様が既に待っていた。
今日は簡素な格好だからそれほど時間はかかっていないけど、男性の早さには勝てなかったみたい。……絶対に勝てないと思うけど。
「まだ準備してる。そろそろ来るんじゃないかな」
「女性は準備に時間がかかって大変だよなー」
そう口を尖らせるお兄様。私達がご不満みたい。
「お兄様、待てない男は嫌われるよ?」
「誰が待てない男だって?」
「今不満そうにしてたよね!?」
「バレてた?」
「バレバレよ!」
妹だからって、女の目を甘く見ないで欲しいわ!
わざとなのだと思うけど……。
そんな他愛ない会話をしているうちにお姉様とお母様も準備を終えて玄関に来たので、私達は馬車に乗り込んだ。
☆ ☆ ☆
「今日わたくしの前でエル様に粗相をしなかったらどうなるかーーお分かりですわよね?」
アーシャ様の手の先、私の胸元で銀色のモノーーナイフが光を浴びて光った。
人目の無い廊下に呼び出されてた私は、まさかナイフを突き付けられて脅されるなんて思っていなかった。
「分かっています」
「ならいいわ」
そう言って、ナイフを仕舞うアーシャ様。私はすぐに会場に戻った。
それから数分。
「知ってまして? このパーティー中にレシア様が粗相をするそうよ」
「まあ、それは見ものですわね!」
「楽しみですわぁ!」
会場の中央でわざとらしく大きな声でそんな会話をするアーシャ様と取り巻きのご令嬢方。
そのお陰で私は注目の的になっていた。
ものすごく恥ずかしいわ……。
そんな時だった。
「レシア嬢ーーアーシャ嬢から君が呼んでるとーー」
「ひあっ⁉︎」
後ろから音も気配もなく近付いてきたエルワード様に話しかけられて驚いた私は、間抜けな声を上げて勢い良く振り向いてしまった。驚きのあまり、持っていた紅茶の入ったカップを離すというおまけ付きで……。
やってしまったわ……
そう思った時にはもう遅く、コップが傾きながらエルワード様に飛んでいっていた。
今日は家族みんなで参加するから、家の中はいつもよりも慌ただしくなっている。
「よし、終わりましたよ」
「ありがとう。行ってくるわね」
「お気をつけて。怪我しないでくださいね!」
「気をつけるわ」
準備を手伝ってくれたサラさんにそう言って私は部屋を後にした。
今日は動きやすいようにいつもよりも短い膝丈のドレスを着ている。
お母様からアーシャ様に何かされたら大怪我させないように組み伏せてもいいと言われているから、そうするつもりでこのチョイスになっている。
上手くアーシャ様と戦えるかは分からないけど、出来ることは全力でやるつもりだ。
「お待たせ! ……あれ、お姉様とお母様は?」
玄関に出ると、お父様とお兄様が既に待っていた。
今日は簡素な格好だからそれほど時間はかかっていないけど、男性の早さには勝てなかったみたい。……絶対に勝てないと思うけど。
「まだ準備してる。そろそろ来るんじゃないかな」
「女性は準備に時間がかかって大変だよなー」
そう口を尖らせるお兄様。私達がご不満みたい。
「お兄様、待てない男は嫌われるよ?」
「誰が待てない男だって?」
「今不満そうにしてたよね!?」
「バレてた?」
「バレバレよ!」
妹だからって、女の目を甘く見ないで欲しいわ!
わざとなのだと思うけど……。
そんな他愛ない会話をしているうちにお姉様とお母様も準備を終えて玄関に来たので、私達は馬車に乗り込んだ。
☆ ☆ ☆
「今日わたくしの前でエル様に粗相をしなかったらどうなるかーーお分かりですわよね?」
アーシャ様の手の先、私の胸元で銀色のモノーーナイフが光を浴びて光った。
人目の無い廊下に呼び出されてた私は、まさかナイフを突き付けられて脅されるなんて思っていなかった。
「分かっています」
「ならいいわ」
そう言って、ナイフを仕舞うアーシャ様。私はすぐに会場に戻った。
それから数分。
「知ってまして? このパーティー中にレシア様が粗相をするそうよ」
「まあ、それは見ものですわね!」
「楽しみですわぁ!」
会場の中央でわざとらしく大きな声でそんな会話をするアーシャ様と取り巻きのご令嬢方。
そのお陰で私は注目の的になっていた。
ものすごく恥ずかしいわ……。
そんな時だった。
「レシア嬢ーーアーシャ嬢から君が呼んでるとーー」
「ひあっ⁉︎」
後ろから音も気配もなく近付いてきたエルワード様に話しかけられて驚いた私は、間抜けな声を上げて勢い良く振り向いてしまった。驚きのあまり、持っていた紅茶の入ったカップを離すというおまけ付きで……。
やってしまったわ……
そう思った時にはもう遅く、コップが傾きながらエルワード様に飛んでいっていた。
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