3 / 3
こんな時に気づく幸せ。後(長男目線)
しおりを挟む
お粥を作りながら、ふとソファに目を向けると、一希がとろんとした目でお湯を飲んでいる姿が目に入った。
零さないか、という心配は一瞬頭をよぎったが、まあ零してしまったら、拭けば良いか。と今は一希をそっとしておくことにした。
俺がトイレから泣き声が聞こえてきて、様子を見に行った時の一希の表情は、それはそれは酷い絶望に打ちのめされた子供のような目をしていた。
一希の服もろもろはもちろん、床も吐瀉物が飛んでしまっていたが、それよりも先に一希を安心させることが一番だと思ってざっと体を洗うところまでしてしまったが年頃の男の子にこの行動は、少し気まずかっただろうか、などと考えていたから安心しきったような、眠そうな目を見て、少しほっとした。
グツグツと音がして、鍋の蓋を開ければ、我ながら綺麗なお粥が出来上がっていた。スプーンで少し掬って味を見た。
「うん。問題なし。」
普段使いしているであろう茶碗に少量ずつ入れて、冷ましている間に晴人を起こしに行くことにした。
一希は俺のことをずっと見ている。だから、リビングのドアに向かう途中でやはり目が合った。
不安の色を残す目を、しっかりと見つめて少し微笑んだ。
階段をあがって、寝室に入る。遮光カーテンをひいている部屋は今が昼でも十分暗い。
「晴人。」
肩を揺らしながら声をかける。寝起きはそんなに悪くない子だから、多分あと数回で起きてくれると思う。
「晴人。」
「んぅ………にぃさん」
「おはよ。どう?」
「ちょっと視界が揺れるくらい。だいぶ良い。」
「そうか。なら良かった。……まだ白いね。でも朝よりだいぶ血行良くなってる。お昼にしよっか。」
「あんまりお腹減ってない。」
「食べれる分だけでいいよ。」
目の下をめくると朝よりはマシになっているが、それでもまだ立派に貧血と言えるほどの白さが顔を出した。
布団から出ることで気分転換にもなるだろ。と説得にかかれば、割と直ぐに折れてくれた。
手を引いてゆっくり歩く。階段も目眩で視界がぼやけて落ちないように、一段一段確かめるように。
やっと着いたリビングではソファの上で三角座りをして、膝に頭を埋めて一希が待っていた。
「晴人、座ってな。」
「うん。」
お粥を取りに行くために一旦、二人の元を離れた。
「にぃちゃん大丈夫?」から始まって、朝はちょっと強引にしちゃってごめん、などと兄弟らしい会話が聞こえてきた。
熱さが抜けて、ぬるくなったお粥をもってソファに戻る。二人の前に器を置いて「どうぞ。」と声をかければ、晴人は一応スプーンで軽くすくって口に運んだ。
俺は一希の横に座って、一希の肩を揺らした。
「一希。食べないのか?」
「…うん。おなかいたいから。」
「うそ。お腹痛いのより、また吐き戻してしまうかもしれないからじゃないの?気にしなくていいよ。ほら。一口でもいいから食べて。吐きそうな時吐くもの無かったら逆にしんどいよ。」
しばらくつらつらと食べた方がいい理由を並べていると、ゆったりと顔をあげた。足を下ろして、スプーンをもって少量すくって口に運んだ。
「ん。いい子だな。」
一希の頭を軽く撫でて、褒める。
晴人に視線を写すと、手が止まっていた。少し視線を上げると晴人とバッチリ目が合って、まっすぐに俺を見ていたことがわかった。
「どうした?無理しなくていいぞ。残したかったら残して…」
「兄さん…俺もそっちのソファがいい。」
「ん?いいよ。」
なぜそんなことを言い出したのかは分からないが、別に俺は絶対にここがいいと言うのもないし、2人がけのソファなのだから、当然席を立とうとした。それを拒んだのは晴人だった。
「兄さんは座ってて!兄さんとにぃちゃんと…一緒がいい。。だから。にいさんは、、動かないで。」
「…!?ふふ、いいよ。おいで。」
少し一希によって座って晴人のスペースを確保した。空いたスペースをぽんぽんと叩く。
晴人はゆったりとした動作で立ち上がり、のこのことこちらへとやってきて、座った。机の端にあった器をひきずって自分のところに持ってくると、先程と同じように軽くすくって口に運んだ。
反対側では一希が米を二、三粒のせる程度にすくっては口に運んでいた。
二人の食べている姿は、小さい頃のそれと変わっていなくて、自然と頬が緩む。すごく幸せだなって、幸せそうだなと思った。
二人が体調崩して大変だけど、大変な時だから気づく幸せもあるのかなぁって、思う。ちょっとオッサン地味ているかな…
でも少なくても、今、俺は、弟たちといれて、幸せだ。
零さないか、という心配は一瞬頭をよぎったが、まあ零してしまったら、拭けば良いか。と今は一希をそっとしておくことにした。
俺がトイレから泣き声が聞こえてきて、様子を見に行った時の一希の表情は、それはそれは酷い絶望に打ちのめされた子供のような目をしていた。
一希の服もろもろはもちろん、床も吐瀉物が飛んでしまっていたが、それよりも先に一希を安心させることが一番だと思ってざっと体を洗うところまでしてしまったが年頃の男の子にこの行動は、少し気まずかっただろうか、などと考えていたから安心しきったような、眠そうな目を見て、少しほっとした。
グツグツと音がして、鍋の蓋を開ければ、我ながら綺麗なお粥が出来上がっていた。スプーンで少し掬って味を見た。
「うん。問題なし。」
普段使いしているであろう茶碗に少量ずつ入れて、冷ましている間に晴人を起こしに行くことにした。
一希は俺のことをずっと見ている。だから、リビングのドアに向かう途中でやはり目が合った。
不安の色を残す目を、しっかりと見つめて少し微笑んだ。
階段をあがって、寝室に入る。遮光カーテンをひいている部屋は今が昼でも十分暗い。
「晴人。」
肩を揺らしながら声をかける。寝起きはそんなに悪くない子だから、多分あと数回で起きてくれると思う。
「晴人。」
「んぅ………にぃさん」
「おはよ。どう?」
「ちょっと視界が揺れるくらい。だいぶ良い。」
「そうか。なら良かった。……まだ白いね。でも朝よりだいぶ血行良くなってる。お昼にしよっか。」
「あんまりお腹減ってない。」
「食べれる分だけでいいよ。」
目の下をめくると朝よりはマシになっているが、それでもまだ立派に貧血と言えるほどの白さが顔を出した。
布団から出ることで気分転換にもなるだろ。と説得にかかれば、割と直ぐに折れてくれた。
手を引いてゆっくり歩く。階段も目眩で視界がぼやけて落ちないように、一段一段確かめるように。
やっと着いたリビングではソファの上で三角座りをして、膝に頭を埋めて一希が待っていた。
「晴人、座ってな。」
「うん。」
お粥を取りに行くために一旦、二人の元を離れた。
「にぃちゃん大丈夫?」から始まって、朝はちょっと強引にしちゃってごめん、などと兄弟らしい会話が聞こえてきた。
熱さが抜けて、ぬるくなったお粥をもってソファに戻る。二人の前に器を置いて「どうぞ。」と声をかければ、晴人は一応スプーンで軽くすくって口に運んだ。
俺は一希の横に座って、一希の肩を揺らした。
「一希。食べないのか?」
「…うん。おなかいたいから。」
「うそ。お腹痛いのより、また吐き戻してしまうかもしれないからじゃないの?気にしなくていいよ。ほら。一口でもいいから食べて。吐きそうな時吐くもの無かったら逆にしんどいよ。」
しばらくつらつらと食べた方がいい理由を並べていると、ゆったりと顔をあげた。足を下ろして、スプーンをもって少量すくって口に運んだ。
「ん。いい子だな。」
一希の頭を軽く撫でて、褒める。
晴人に視線を写すと、手が止まっていた。少し視線を上げると晴人とバッチリ目が合って、まっすぐに俺を見ていたことがわかった。
「どうした?無理しなくていいぞ。残したかったら残して…」
「兄さん…俺もそっちのソファがいい。」
「ん?いいよ。」
なぜそんなことを言い出したのかは分からないが、別に俺は絶対にここがいいと言うのもないし、2人がけのソファなのだから、当然席を立とうとした。それを拒んだのは晴人だった。
「兄さんは座ってて!兄さんとにぃちゃんと…一緒がいい。。だから。にいさんは、、動かないで。」
「…!?ふふ、いいよ。おいで。」
少し一希によって座って晴人のスペースを確保した。空いたスペースをぽんぽんと叩く。
晴人はゆったりとした動作で立ち上がり、のこのことこちらへとやってきて、座った。机の端にあった器をひきずって自分のところに持ってくると、先程と同じように軽くすくって口に運んだ。
反対側では一希が米を二、三粒のせる程度にすくっては口に運んでいた。
二人の食べている姿は、小さい頃のそれと変わっていなくて、自然と頬が緩む。すごく幸せだなって、幸せそうだなと思った。
二人が体調崩して大変だけど、大変な時だから気づく幸せもあるのかなぁって、思う。ちょっとオッサン地味ているかな…
でも少なくても、今、俺は、弟たちといれて、幸せだ。
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる