NTRの乙女と傲慢な王子

さわみりん

文字の大きさ
上 下
13 / 13

12

しおりを挟む
 アレクシスの初めて見せた愛の言葉は、エリスティアの冷たく凍っていた心臓を溶かした。
 つらくて聞きたくなかった言い訳も、アレクシスの心からの真摯な謝罪に胸が暖かくなるのを感じた。
「アレクシス、私も愛してる」
 ガイの腕からスルリと抜け出したエリスティアは、アレクシスの腕に飛び込んでいった。
 そんなエリスティアを、もう離しはしないとでも言うようにぎゅっと抱き止めるアレクシス。
「私が何を望んでると思ってるの、アレクシス?」
「それは……」
「ガイを呼んだのは貴方なの? 私が望んでるのはアレクシス貴方だけなのに」
 エリスティアは初めて自分からアレクシスに口づけをした。
「愛してるよ。お前が嫌ならもう他の女になんて触れはしない」

 所在無げなガイを振り向いたエリスティアは、アレクシスとの抱擁を解き駆け寄っていった。
「ガイ、いままでありがとう。でも私が愛してるのはアレクシスだけなの。さようならガイ」
 そう言って口元へキスを送る。 友達として軽く唇を合わせるだけのものだったが、エリスティアにとってそれはガイへの最上級の感謝の印だった。
「さっさと出て行け!」
 顔を真っ赤にして怒鳴るアレクシス。
 それを笑い飛ばしながらアレクシスの腕の中へエリスティアは戻っていく。
 別れの言葉もそこそこに、すっかり振られたガイは大人しく退散していった。
「私が愛してるのはアレクシスだけよ」
 アレクシスを見つめながら言った。
 エリスティアのその言葉にひとまず機嫌を直したアレクシスは、エリスティアへ顔を近づけ息もつけないほど深く口づけした。


 夜も持たずに優しく二人はお互いの愛を確かめ合うように体を繋げた。
 不器用ながらエリスティアへの愛を伝えるアレクシス。
 初めて二人はお互いの気持ちが通じ合えた気がした。




 その後、仲睦まじい夫婦として十二人の子供に恵まれる。
 小国であるヴィーガンドは隣国の起こした戦争に巻きこれ、大国に攻め込まれる。
 のちにその国の王と娘が政略結婚することになるのだが、それはまた違うお話。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...