8 / 13
7
しおりを挟む
遠くで賑やかな宴の音が鳴り響く。
アレクシスが静かに草を踏む音を立てて、こちらへと歩いてくる。
ガイがエリスティアを抱きしめていた腕をパッと放した。
ここは明かりの届かぬ物影だ。いつから見ていたのだろう。
エリスティアはアレクシスの表情を探るように盗み見る。一見冷静そうなのに、その眼孔は冷たく燃えているようだった。
察するにアレクシスはしっかりと目撃してしまったようだった。
「アレクシス……」
エリスティアは、なんとか言い訳をしようと声をかけるが続きの言葉が浮かばない。
元婚約者とキスをして、拒むでもなく好きなように撫で回されていたのだ。そんなところを見られて、何と言えばいいのかエリスティアには分からなかった。
「いいからお前は黙っていろ」
アレクシスがエリスティアと目も会わせずに告げる。
ちらとガイを見ると、ずっと下を向いたまま蒼白になっていた。
アレクシスはガイの眼前に立って言った。
「貴様、なぜ許可もなく俺の前で起立したままでいる?」
これまで聞いたこともないほど冷酷なその態度にエリスティアは凍りついた。
笑みとも取れる表情を湛えてはいるが、アレクシスから出る冷たい怒りがそれを否定していた。
「し、失礼しまし……」
急いで膝をつく姿勢をとろうとするガイの頭を、足で地面に抑え付けた。
ガイの顔が地面に張り付き苦悶の声が出る。
エリスティアは悲鳴を上げそうになる口を手で押さえた。
「俺のものと知って手を出したのか」
感情を含まない冷たい声でアレクシスは問うた。
「申し訳ありませ……」
礼儀だけでも謝罪の言葉を口に出そうとするガイに、アレクシスは更に頭へ力を加えた。
「俺のものと知っていながら手を出したのか」
エリスティアはガイへの暴力を止めなければと思いながら、アレクシスが怖くて動けずにいた。
「……エリスティアは、エリスティアは俺と結婚するはずだった! エリスティアは俺のものだ!」
突如キレたようにガイが叫び、ねじ伏せられた状態からアレクシスの方を睨みつける。
アレクシスはガイの頭に置いていた足を上げたかと思うと、その顔を蹴り飛ばした。
「ガイ!」
咄嗟に怖くて動かぬ足が前へ出ていた。エリスティアはガイへ駆け寄り、手を差し伸べた。
「大丈夫? ガイ、本当にごめんなさい、こんな……」
ガイは酷く痛そうな様子で蹲っている。
見ると 顔には押し付けられていた際の擦り傷が出来、蹴られた頬が早くも腫れてきていた。
「衛兵、さっさとこの男を摘み出せ!」
アレクシスが大きな声で叫ぶ。
「エリスティア、愛してるよ……」
寄り添うエリスティアを熱を帯び潤んだ瞳で見つめながらガイが言った。
そんなガイにエリスティアは先ほどのように『愛してる』とは返せなかった。ガイが心から自分を愛し、慈しんでくれていたことが分かったからだ。ただ見つめることしか出来なかった。
だがそれを横から見ていたアレクシスの目には愛し合う男女のようにしか見えなかった。
アレクシスが引き裂いた愛し合う二人――
アレクシスはそんなエリスティアの腕を強引に引っ張り起こしガイから引き離した。
「二度と俺のものに手を出すな!」
アレクシスはガイへ言い放ち、エリスティアを引きずるようにしてその場から離れた。
駆けつけた衛兵にガイが取り押さえられるのを、エリスティアは振り返りガイが見えなくなるまでみていた。
アレクシスが握る腕には力が入りすぎていて痛かった。
エリスティアはグングン進むアレクシスについていこうと小走りになっていたが、文句も言わずに従った。
アレクシスは自身の寝室であった、現在は夫婦の寝室となった部屋の扉を力任せに音を立てて開くと、乱暴にエリスティアをベッドへと突き飛ばした。
「きゃあ」
突然の衝撃に悲鳴をあげたが、スプリングが効いているので痛くはなかった。
「お前は俺のものだ」
言い聞かせるようにアレクシスが言うと、穿いているズボンを急かされるように脱いだ。
「アレクシス何を……」
「お前は俺のものだ。今からその体に教え込んでやる」
アレクシスの目がギラギラと光る。
アリスティアはベッドの反対側へ這うように逃げたが、アレクシスにドレスを掴まれる。
「お願いやめて、アレクシス」
泣きそうになりながら訴える。だが今のアレクシスには届きそうになかった。
「あんな男すぐに忘れさせてやる」
アレクシスは決然とした声で言うとエリスティアのスカートを捲り上げた。
昨日が初めての経験であったエリスティアは、そうすれば致すことが出来ないと思い、体を返されないように這いつくばった姿勢を崩さず手足に力を入れた。
だがそんな体位を逆手にとったアレクシスにお尻まで丸出しにされてしまった。
「まさか、そんな……あぁっ!」
後ろから一気にアレクシスの肉棒が突き立てられる。
まだ濡れてないエリスティアの中へ力任せに押し入ってくるアレクシス。
痛がるエリスティアの言葉に耳も貸さず、アレクシスは腰を振り続けた。
暫くしてアレクシスは欲望をエリスティアの中に吐き出すと、挿入したまま今度はエリスティアの一番敏感な場所に手を伸ばしてきた。
無理やりされたせいで痛かったが、花芯を刺激されてエリスティアは快感に喘いだ。
硬さを取り戻したアレクシスは、その後も夜通しエリスティアを抱き続けた。
エリスティアの頭の中からは結婚するはずだったガイの事など、すっかり忘れ去られていた。
アレクシスが静かに草を踏む音を立てて、こちらへと歩いてくる。
ガイがエリスティアを抱きしめていた腕をパッと放した。
ここは明かりの届かぬ物影だ。いつから見ていたのだろう。
エリスティアはアレクシスの表情を探るように盗み見る。一見冷静そうなのに、その眼孔は冷たく燃えているようだった。
察するにアレクシスはしっかりと目撃してしまったようだった。
「アレクシス……」
エリスティアは、なんとか言い訳をしようと声をかけるが続きの言葉が浮かばない。
元婚約者とキスをして、拒むでもなく好きなように撫で回されていたのだ。そんなところを見られて、何と言えばいいのかエリスティアには分からなかった。
「いいからお前は黙っていろ」
アレクシスがエリスティアと目も会わせずに告げる。
ちらとガイを見ると、ずっと下を向いたまま蒼白になっていた。
アレクシスはガイの眼前に立って言った。
「貴様、なぜ許可もなく俺の前で起立したままでいる?」
これまで聞いたこともないほど冷酷なその態度にエリスティアは凍りついた。
笑みとも取れる表情を湛えてはいるが、アレクシスから出る冷たい怒りがそれを否定していた。
「し、失礼しまし……」
急いで膝をつく姿勢をとろうとするガイの頭を、足で地面に抑え付けた。
ガイの顔が地面に張り付き苦悶の声が出る。
エリスティアは悲鳴を上げそうになる口を手で押さえた。
「俺のものと知って手を出したのか」
感情を含まない冷たい声でアレクシスは問うた。
「申し訳ありませ……」
礼儀だけでも謝罪の言葉を口に出そうとするガイに、アレクシスは更に頭へ力を加えた。
「俺のものと知っていながら手を出したのか」
エリスティアはガイへの暴力を止めなければと思いながら、アレクシスが怖くて動けずにいた。
「……エリスティアは、エリスティアは俺と結婚するはずだった! エリスティアは俺のものだ!」
突如キレたようにガイが叫び、ねじ伏せられた状態からアレクシスの方を睨みつける。
アレクシスはガイの頭に置いていた足を上げたかと思うと、その顔を蹴り飛ばした。
「ガイ!」
咄嗟に怖くて動かぬ足が前へ出ていた。エリスティアはガイへ駆け寄り、手を差し伸べた。
「大丈夫? ガイ、本当にごめんなさい、こんな……」
ガイは酷く痛そうな様子で蹲っている。
見ると 顔には押し付けられていた際の擦り傷が出来、蹴られた頬が早くも腫れてきていた。
「衛兵、さっさとこの男を摘み出せ!」
アレクシスが大きな声で叫ぶ。
「エリスティア、愛してるよ……」
寄り添うエリスティアを熱を帯び潤んだ瞳で見つめながらガイが言った。
そんなガイにエリスティアは先ほどのように『愛してる』とは返せなかった。ガイが心から自分を愛し、慈しんでくれていたことが分かったからだ。ただ見つめることしか出来なかった。
だがそれを横から見ていたアレクシスの目には愛し合う男女のようにしか見えなかった。
アレクシスが引き裂いた愛し合う二人――
アレクシスはそんなエリスティアの腕を強引に引っ張り起こしガイから引き離した。
「二度と俺のものに手を出すな!」
アレクシスはガイへ言い放ち、エリスティアを引きずるようにしてその場から離れた。
駆けつけた衛兵にガイが取り押さえられるのを、エリスティアは振り返りガイが見えなくなるまでみていた。
アレクシスが握る腕には力が入りすぎていて痛かった。
エリスティアはグングン進むアレクシスについていこうと小走りになっていたが、文句も言わずに従った。
アレクシスは自身の寝室であった、現在は夫婦の寝室となった部屋の扉を力任せに音を立てて開くと、乱暴にエリスティアをベッドへと突き飛ばした。
「きゃあ」
突然の衝撃に悲鳴をあげたが、スプリングが効いているので痛くはなかった。
「お前は俺のものだ」
言い聞かせるようにアレクシスが言うと、穿いているズボンを急かされるように脱いだ。
「アレクシス何を……」
「お前は俺のものだ。今からその体に教え込んでやる」
アレクシスの目がギラギラと光る。
アリスティアはベッドの反対側へ這うように逃げたが、アレクシスにドレスを掴まれる。
「お願いやめて、アレクシス」
泣きそうになりながら訴える。だが今のアレクシスには届きそうになかった。
「あんな男すぐに忘れさせてやる」
アレクシスは決然とした声で言うとエリスティアのスカートを捲り上げた。
昨日が初めての経験であったエリスティアは、そうすれば致すことが出来ないと思い、体を返されないように這いつくばった姿勢を崩さず手足に力を入れた。
だがそんな体位を逆手にとったアレクシスにお尻まで丸出しにされてしまった。
「まさか、そんな……あぁっ!」
後ろから一気にアレクシスの肉棒が突き立てられる。
まだ濡れてないエリスティアの中へ力任せに押し入ってくるアレクシス。
痛がるエリスティアの言葉に耳も貸さず、アレクシスは腰を振り続けた。
暫くしてアレクシスは欲望をエリスティアの中に吐き出すと、挿入したまま今度はエリスティアの一番敏感な場所に手を伸ばしてきた。
無理やりされたせいで痛かったが、花芯を刺激されてエリスティアは快感に喘いだ。
硬さを取り戻したアレクシスは、その後も夜通しエリスティアを抱き続けた。
エリスティアの頭の中からは結婚するはずだったガイの事など、すっかり忘れ去られていた。
1
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる