NTRの乙女と傲慢な王子

さわみりん

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 ――水の音がする。
 エリスティアはまどろみの中、ぼんやりと響く水音を聴いていた。
 音がふと止んで、それと共にゆっくりと目蓋を上げる。
「……あれ、私……?」
 寝心地のいいフカフカのベッドに埋もれるようにして、エリスティアは服もそのままに寝かされていた。
(さっきまでアレクシス様と食事をしていたはずなのに、いつの間に寝てしまったのだろう)
 普段エリスティアが寝ているベッドからすれば大きすぎるくらいのベッドだった。
 どれくらい寝ていたのだろうか。ワインを飲みずぎてしまったせいかさっぱり記憶がない。
 頭も重くてまだ寝ていたいくらいだったが、なんとか身を起こしつつ自分が今広く豪華な寝室ににいることがわかった。
(普段は嗜む程度で記憶を失うほど飲むことなんてないのに……誰が部屋まで運んでくれたのだろう)
 エリスティアがそんなことを考えている間に水音は止んでいた。
 突如部屋の扉が開く。
「起きたのか」
 入ってきたのはアレクシスだった。
 お風呂上りなのだろう、湿り気を帯びた肌は艶めき、髪はまだ水滴を滴らせていた。
 しかし気がかりなのは腰にタオルを巻いただけの、ほぼ裸同然という恰好でやってきたことだ。
「アレクシス様!」
 エリスティアは瞬時に顔を背けた。
「ふ、服を着てください! それに部屋を間違えてます!」
 顔が熱くなってくるのが分かる。
 一見細身のアレクシスだが実際は細いながらに筋肉質で均等のとれた男性的な体をしていた。エリスティアとは違う男の身体。
 一瞬みたその光景がまざまざと頭に浮かび、ぼんやりとした頭が一気に覚醒した。
「何を言う、ここは俺の部屋だ」
 悪びれもせずアレクシスが言った。
 どうりでやけに豪華な部屋のはずだ。寝てしまった私をここまで連れてきてくれたのはアレクシスだったのか。
 しかし結婚前の未婚の女性が裸の男性と一緒で、しかも二人きり、というのは非常にまずい状況だ。
「で、では私は自分の部屋へ移らせていただきます! お手間おかけてしまって、すみませんでした!!」
 急いで立ち上がろうとしたエリスティアは足元がぐらつき、バランスを崩し仰向けにベッドへ倒れこんでしまった。
「大丈夫か?」
 慌ててアレクシスが駆け寄ってくる。
「は、はい、大丈夫です。心配かけてすみません」
 アレクシスの裸の腕がエリスティアを支えてくる。
 お風呂上りの清潔感漂ういい香りがする。そしてアレクシス自身の男性的な香りが。
「まだそこに寝ていろ」
 もう一度ベッドへ寝かせようとしてくるので、アレクシスの腕から逃れようとエリスティアはその腕を押し返す。
「いえ、あの、本当、もう大丈夫なので、失礼します」
 だが見かけによらずアレクシスの力強いの腕から逃れることが出来ず、エリスティアが押し返そうとするのを、さらに抑えようとアレクシスの上半身はエリスティアと一緒にベッドへと沈み込んでいった。
「えっと、私のお部屋ってどこにあるんでしょう? 教えてもらえれば自分で行けますから……」
「部屋……?」
 支えていた腕がゆっくりと降りてきて手首を握る。
「はい。あの、今晩、私が泊まる部屋です」
「ここがそうだ」
 アレクシスはまるで枷のようにがっしりとエリスティアの手首を掴んでいる。
「えっでも、ここはアレクシス様のお部屋だと……」
 エリスティアは話が分からずにきょとんとして問うた。
「ああ」
「それって……」
「お前は今晩ここに泊まるんだ」
 アレクシスがきっぱりと言う。
「できません! わ、私やっぱり帰ります!」
 慌ててアレクシスから離れようと腕を引っ張るエリスティアだが、すっかり動きを封じられていて身動きが出来ない。
「もう夜中だぞ。それは無理だな」
 アレクシスは動じることなく、暴れるエリスティアをさらにしっかりと抑え込み、ベッドの上の方へと持ち上げ片手で動きを封じる。それと同時に体の重みを利用してエリスティアに分からせようとしてた。
「で、でも……」そんな、まさか。
「お前は今晩、ここで俺に抱かれるんだ」
 ニヤリと笑うアレクシス。
 それはエリスティアにとってまさに悪魔のような微笑みだった。
 美しく、色気のある、不適な、下心を隠した、いやらしい笑み。
「嫌です! お願いします帰してください! 私には婚約者がいます、来月結婚するんです! どうか……」
 信じていたのに裏切られた思いだった。
「……あぁ、お前は結婚する」
 吐息のような甘い声でそう言ったアレクシスは熱っぽい目でエリスティアへ顔を近づけてきた。
「嫌ぁ……っ!」
 アレクシスの唇がエリスティアの唇へと落ちてくる。
 それは婚約者のガイからされたような、優しいキスの触れ合いではなかった。
 逃れようとするエリスティアに抵抗を許さない強さで重ねられた唇は熱く吸い付き、閉じられた唇を湿った舌が割って入ってくる。 
「んんっ!?」
 初めての深い口づけに驚くエリスティア。
 その隙をついて喉奥まで探られそうなほどアレクシスの舌が侵入しエリスティアの舌と絡まる。
 好きでもない相手からキスされているというのに、抵抗できずに蕩けてしまいそうだった。
(こんなキス知らない……)
 拒もうと思うのにアレクシスの舌が我がもの顔でエリスティアの口腔を犯してくる。 
 ふと舌が引き抜かれ、糸を引き唇が離れていくのを、惚けたようにエリスティアは見ていた。 
 いつの間にかアレクシスはエリスティアに馬乗りになっていた。
 こちらを見下ろして言った。
「相手の男とはキスしたことなかったのか?」
 ちょっと得意な顔をしている。
 放心状態だったエリスティアは徐々にその余韻から覚めてきた。
「え……いえ、あの、一度……」
 重ね合わせるだけの優しいキスならしたことはあるけど、こんな互いの舌を絡めるようなのは無かった。
「ふん……まぁ、どちらにしても同じことだ」
 エリスティアが着ている服を胸元鷲掴みにしたかと思うと、一気に引き裂いた。
「きゃあああ!」
 突然のことに悲鳴を上げるエリスティア。
 それには耳を貸さず、アレクシスはエリスティアの服をはだけさせる。包まれていた白くしなやかな肌がアレクシスの眼前へと露出する。
 エリスティアが誰にも見せたことがない胸が露わになる。もがくエリスティアだがアレクシスが重く逃れようもない。
 アレクシスが息を飲んだ。
 アレクシスの手から零れるほどにエリスティアの胸は育っていた。
「たわわに実ったものだな……」
 マシュマロのようなエリスティアの胸の感触を確かめるように強く揉みしだく。
「やめて、お願いですから、やめてください……」訴えるエリスティアの声は聞こえてはいないようだった。
 エリスティアの瞳から涙がこぼれる。
「ピンク色で、先端が赤く濃くなっている……凄く、綺麗だ……」
 エリスティアの胸は揉まれたことで反応し、しっかりと起立した乳首をアレクシスがきゅっと摘み上げた。
「あぁっ!」
 突然の刺激に思わず声が出てしまう。
「なんだ、気持ちよかったのか?」
 ニヤニヤと笑うアレクシスは、摘まんだ乳首をなぶるように指で弄ぶ。
「違います!」
 エリスティアが濡れる目を吊り上げアレクシスを睨んだ。
「あぁ……お前のその顔が……」
 ため息を吐くように言うと、吸い込まれるようにもう片方のエリスティアの胸へ顔を下げてきた。
「お願い、止めて……ぁあああっ……はぁぁ……っんん!ああ……嫌ぁんっ」
 咥えられたエリスティアの乳首は強く吸われ、舌で捏ねられ、歯で軽く噛まれた。左右同時に指でも刺激される。初めての快感に抗えず、抵抗の声と一緒に喘ぎ声が漏れ出てしまう。
 その快感に抗う術を知らないエリスティアは、アレクシスの思うがままだった。
 エリスティアの腕は随分前に拘束が解かれていた。だがアレクシスの与える快感に体はもっともっとと欲しがり、自らをベッドへと縛り付けていた。
 よく鳴き反応するエリスティアに、アレクシスは満足そうに顔を上げた。
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