ストック

山﨑 あん寿

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プロローグ

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 次のページをめくる指がもどかしい。というより、つらい。

 3度目のループをしようとする僕は、絵本くらいの厚さの本を片手にスカし顔のポーカーフェイスで悩んでいた。

 平和な現代に生きる僕が異世界でなければ魔王が支配する世界でもないのに、いわゆるループ・やり直し・転生?ができることに多少の申し訳なさを抱きつつも、私利私欲の為にその力を使用しているのである。

 分かっていることがある。この表紙も中身もすべて白紙の本を、戻りたい、やり直したい、と念じながらページをめくると現在までの記憶を引き継いだまま過去に戻ることができる。ただし、戻れる過去に融通は利かず、14からやり直すことになる。その他に重要なこととして、恐らくこのループできる回数(ストック)が決まっているということ。

 今年で31になる僕が私利私欲の為とはいえ、3度目の14歳夏を迎えるのには、流石に億劫というものだ。そもそも今年で31と言っていいのだろうか。2度目の31は62なのではなかろうか………。

 しかし、2度目も失敗した時点でいくらの方が多くとも、たったひとつのの為に、僕は片手に持つ本を念じながらめくるのであった。
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