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「もう会えないんだ」
一緒に遊んでいた少女へと大事な話をする。
色素の薄い髪をした彼女はその髪と同じく物静かであまり表情を出さない。
だけど今日だけは綺麗な翡翠の目を何度も瞬かせた。
「どうして?」
「外出しているのがバレてな。危ないからって最近は外に出るのも一苦労だけど、これ以上はもう限界だ。だから最後にしようって……」
俺は一国の王子だ。
隙を見ては外出して平民に紛れたりしていた時に、偶然にも襲われそうになった彼女を助けた。
そして少し離れた花畑で彼女と秘密の逢瀬を楽しんだ。
「そう……」
彼女の言葉は短いが、それでも俺と同じく寂しさは感じている気がする。
「私もね。今日でお別れを言おうと思ったの」
「えっ!?」
どうやら彼女も短い期間だけここに旅行に来ているらしかった。
それもかなり遠いところに住んでいるらしい。
「じゃあ、本当に今日で最後かもしれないんだな」
「うん……」
「ならさ」
俺は胸に付けていたペンダントを彼女に渡す。
「預けておく。だからさ、絶対にいつか返してくれよ。俺はたぶんそっちへ行けないけどさ。そっちが来てくれたら会えるかもしれない」
「それは……」
彼女は一瞬躊躇うが、決意した顔で貰ってくれた。
「絶対に返すから、私のこと、忘れないで……」
俺は「忘れるわけがない!」と言葉を返して、指切りをする。
彼女もまた「絶対に返す」とお互い約束をした。
それから十年後。
国王が崩御して、俺は二十歳で国王になった。
それからは国を良くするため、様々な政策を行った。
その中にはたくさんの血を流させることもあった。
「アフマン族の娘が今回の降伏の証として、アニエス姫を献上するとのことです」
「そうか……」
俺は未だに結婚をしていない。
そろそろ世継ぎを考えなければなかったが、どうしてその気になれなかったのだ。
「絶世の美姫と噂されますが、それでも乗り気にはなりませんか?」
側近が俺に尋ねるが、俺はフッと笑うだけだ。
「どうでもいい。どうせこんなのは相手の反逆心を奪うための政略結婚に過ぎんからな。住まいは適当な離宮でも与えておけ。特別なこと以外は会うこともないだろう」
あの時の初恋が今でも忘れられない。
何人か王妃候補として相手をしたが、俺の心を満たしてくれる者はいなかった。
適当に相手して、俺は国のために尽力すればいい。
とうとうアフマン族の姫アニエスが馬車に乗って王城へやってきた。
白のベールを付けているせいで顔が見えない。
どうせ見えても関係ないと思いつつも、見えないとなると興味が出るものだ。
膝をついて玉座に座る俺に恭順を示していた。
「面をあげよ」
俺が命令するとアニエスは顔を上げる。
「なっ!?」
その顔を見て昔の記憶が思い出された。
目の前にいるアニエスは翡翠の目と色素の薄い髪、そして俺があげたペンダントを首に掛けていた。
成長しているがすぐに昔別れた名も知らぬ彼女だとすぐに気付いた。
だが少し違うのは、前よりも意志のある顔と俺に対して少なからぬ恨みを持っていることだった。
「ローラン王、いかがいたしましたか?」
側近が俺の一瞬の動揺に気付いたため、すぐに心を落ち着かせて、「気にするな」と適当に誤魔化した。
「ではローラン王の命により、アニエス様は離宮を与え──」
「いいや、待て」
側近が俺が前に告げたことを伝えようとしたのを止めてしまった。
「気が変わった。アニエスは王妃用の部屋を与える」
ざわっと他の臣下たちも騒ぎ出す。
これまで誰にも与えなかった王妃の部屋を彼女に与えたことを驚いているのだ。
だが彼女は特に喜びはせず、俺に殺意ある目を一瞬だけ見せた。
公務を終えて俺はすぐに彼女の部屋へと向かった。
どうしても彼女に会いたい。
俺のことを覚えているか、本当にあの時の娘なのかと。
部屋の中に入ると、アニエスは椅子に座って前と同じく儚げな顔で外を眺めていた。
俺に気付くと立ち上がって心がこもっていないお辞儀をする。
「ローラン様、お越しくださって光栄でございます」
「ああ……」
彼女の目を見るとすぐに俺を恨んでいるのがわかる。
アフマン族は大きな集団であり、それを力で無理矢理従わせた。
多くの犠牲を出して、やっと戦いが終わったのだ。
「女性に興味が無いと聞いていましたので、まさか私にこのような部屋を与えてくださるとは思いませんでした」
心のこもっていない感謝の言葉だ。
そして彼女はすぐに薄い布で隠していた綺麗な肌を俺へ見せた。
側近たちが初めて女性に興味を示した俺のために準備するように言っていたのだろう。
美しさとは何かを初めて理解した。
彼女を押し倒して、ベッドの上で彼女の頬を触る。
「美しいな、お前は」
「ありがとうございます。できれば早めでお願いします」
不敬だと分かっていても、彼女は俺に心を許す気はないようだ。
俺は彼女の冷たい肌に手を当て、ゆっくりと綺麗な二つの果実の片方に手を当てる。
するとビクッと彼女が震えた。
「初めてか?」
俺が尋ねるが彼女は答えずに顔を背けるだけだ。
彼女の首元にキスをすると、彼女の匂いを感じた。
もっと触れていたい。
指で果実の先端にある赤い実を触る。
彼女の反応を見ながら少しずつ強弱を付けると、強情な彼女の顔も少しずつ紅潮してきた。
だがそれでも必死に抵抗する彼女が可愛らしい。
「気持ちいいなら声を出していい」
「全然気持ち──ッ!」
次は口で彼女の身を堪能した。
舌で優しく、そっと舐めると彼女は快楽に耐えようとする。
「どうだ?」
「特に……んッ……何も感じ──ぁ!」
心はまだ抵抗するが、それでも体の快楽には抗うのは難しい。
俺の手がゆっくりと彼女の腰より下へ伸びた。
すると彼女は快楽に耐えながら、何かを言おうとして目を瞑った。
彼女の割れ目を指で感じとり、濡れている感触があった。
「こんなに濡らして」
「濡れていま──ぁッ!」
彼女の言葉を遮るように指を入れた。
温かな膣内に侵入して、指をゆっくりと上へと向ける。
すると彼女の腰が少し浮いた。
「だめぇ……」
一瞬だが彼女の声が漏れた。
それが俺の劣情を煽った。
彼女の上の果実を舐めながら、手で彼女の淫らな膣を悦ばせた。
彼女の顔を見ると手で息を殺すが、それでも漏れ出る乱れた息遣いが俺の手で感じていることを証明してくれた。
「可愛い顔だ」
我慢出来なくなってきた俺は彼女の顔に近付く。
お互いの息が届くほどの距離で、さっきまで俺へと殺意を込めていた目もとろけて判断ができなくなっていたようだった。
「好きだ、アニエス」
彼女の唇にそっとキスをする。
すると相手もハッとなり、顔を背けた。
だがもう遅い。
空いている手で彼女の顎を触って無理矢理正面を向かせた。
「んぐ……ッ!」
彼女の唇を強制的に奪う。
舌を絡ませていく。
もっと彼女が欲しかった。
「はぁはぁ」
彼女の荒れた息遣いと紅い頬が俺のモノを刺激した。
「もうやめてください……」
彼女から一筋の涙が溢れた。
まだ俺に心を許してくれない。
「そうだな……この先は次の機会にしよう」
俺と彼女の初夜は一旦終わった。
次の日の夜にまた俺は彼女の部屋に向かった。
ベッドの上でまた彼女の体を愉しませ、彼女は必死に快楽に抵抗する。
「だめ……そこは舐め……ッ!」
彼女のクリトリスをじっくりと舐める。
指は彼女の膣を責め、さらにクリトリスも弄られてしまって、必死の声を我慢する彼女の可愛い声がたまらなく良かった。
「今日は挿れるぞ」
俺は彼女の返事を聞かずにすぐさま挿入する。
「あぁ……ッ!」
彼女と一つになった。
温かく全てを包み込んでくれる。
「だめぇ……今は感じて……ッ!」
ゆっくりと腰を動かして、彼女が痛くないように細心の注意を払った。
彼女の膣が俺のために形を変えてくれるのが分かる。
「アニエス、俺の名前を呼べ」
だが彼女は呼んでくれない。
まだ心を許す気がないようで、それなら呼ぶまでこれを続けるだけだ。
「いやぁ……ぁん……ぁん、らめぇ……ッ!」
ビクンと彼女の体が震えた。
イッたことを隠したいようだが、もっと感じさせてやるだけだ。
「動かさ……んッ……ぁあ!」
彼女の感じる顔がたまらない。
もっと気持ち良くなってほしい。
「俺の名前を呼ぶまで終わらんからな」
俺の性欲の全てを彼女にぶつけ、朝を迎えるまであらゆる手を尽くしたが彼女は俺の名前を呼んでくれない。
アニエスの侍従からしばらくは彼女の療養が必要なため、夜の生活は控えるように通達が来た。
「やり過ぎた……」
彼女が強情だからと長時間やり過ぎた。
「まさかローラン王がこれほどまでに執着されるとは思いませんでした」
側近が俺を意外そうに見る。俺は答えない。
ずっと想い続けていた大事な子が目の前にいるのに執着できないわけがない。
数日経ってから元気になったアニエスの元へ駆け込んだ。
「大変ご迷惑をおかけしました」
アニエスは俺と会うとすぐに謝罪をする。
前と同じくまだ俺に心を許していないのは明白だった。
「俺の方こそ悪かった。そういえばまだこの国を案内していなかったな。一緒に国を回らないか?」
「ローラン様の命令に逆らえる者なんておりません」
「そう嫌味を言うな。もちろん無理強いはしない。まだ体も本調子ではないのだろ?」
アニエスは俺を睨んで「誰のせいですか」と訴えている。
心配していたがこれだけ元気なら大丈夫そうだ。
早速と俺たちは馬車に乗って市井を見て回った。
「栄えてますね」
窓から見える光景を見てアニエスはつぶやいた。
ここ数年で経済状況が一変したため、十年前より華やかな街になった。
「そうだな。色々な領地を統合して流通の利便性が増したからな」
「人民の命よりお金ですか?」
アニエスは俺を睨むがすぐにその視線を外して一滴の涙が頬をつたっているのが見えた。
俺は侵略者であるため、彼女の同胞を何人も殺した。
その恨みは一生消えることはないだろう。
彼女は何かを探すように熱心に外を眺めていた。
「何か気になるものでもあるのか?」
彼女はチラッと俺を見て、外を見るのをやめた。
ただボソッとした声が聞こえてくる。
「昔出会った人のことを思い出しただけです。返さないといけない物がありますので」
アニエスに俺の正体をいつ告げればいいのだろう。
三日が経ちアニエスを歓迎するためのパーティが開かれた。
多くの貴族が集まり、懇親を深めていった。
「あれがアニエス様か……」
「想像以上にお美しい。この国の至宝かもしれん」
アニエスの美貌はこの国随一と言っても過言ではないだろう。
そのため若い男たちが鼻の下を延ばしてアニエスを見るので、俺の女ということを分からせるために睨んでやるとそそくさと逃げていく。
「アニエス、そろそろ踊りの時間だ。俺と踊ってくれるか?」
俺が彼女に手を差し出すと、少しの間の後に手を取った。
「もちろんでございます」
アニエスとダンスをする。
彼女もやはり教養は申し分なく、俺がリードをせずとも上手く踊れるだろう。
「ほう、上手いな」
「ありがとう存じます」
「だが、それではつまらんな」
「え──?」
アニエスがついて来れるかギリギリの速度で踊りをする。
「早い──ッ! もう少しゆっくりしてください!」
彼女も転けないように必死に付いてくるが、それでも足元がどんどん怪しくなってきた。
そしてとうとうついて来れなくなって転けそうになったが、俺が彼女の腰を抱いて最後を締め括った。
彼女が俺を睨んでいた。
「どうだ、俺のダンスは?」
だが今回だけは彼女の反応は違った。
「ふふ……最低です」
やっと彼女の小さな笑顔が見えた。
彼女のエスコートをしながら席まで歩く。
「少し疲れたか?」
「このくらいでしたら特に──」
彼女の目が今通り過ぎた男を追った。
「待って!」
俺の手を振り解き、その男を呼び止めて相手は振り返った。
「あ、アニエス様!? いかがいたしましたか?」
後ろ姿が昔の俺の頼りなかった頃に似ている気がした。
ただ振り返った男は全くと言っていいほど似ていない。
アニエスも人違いだと気付いて「何でもないです、ごめんなさい」と呼び止めたことを謝罪した。
「もしよろしければこの機会に私めと一曲いかがですか?」
相手の男がこれ幸いにと誘ってきた。
アニエスも自分が呼び止めた手前、断るのが難しく手を取ろうとした。
「残念だが、アニエスはもう疲れたと先ほど言っていた!」
俺は彼女の腰を引き寄せて男と距離を空けさせる。
そしてそのまま彼女の体を横に抱えた。
「ちょっと、ローラン王!」
彼女が慌てて下ろすように言うが俺はアニエスが誰かと踊るなんて耐えられない。
そのままパーティ会場を出て俺の部屋へ彼女を連れて行く。
「急にどうか──んぐっ!」
彼女をベッドに押し倒して無理矢理唇を奪った。
長い間、お互いの舌が絡み合う。
十分に堪能した後に口を離すと、唾液が糸を引いて垂れた。
「お前は俺だけの女だ。他の男に渡さん」
彼女の服を脱がせ、首や耳元を舐めた。
「やめてください。入浴もまだです」
「綺麗だ、アニエス」
言い訳を作る彼女を逃しはしない。彼女は特に耳元が性感帯のようだ。
彼女の目から一滴の涙が溢れた。
「どうして泣く?」
「約束した彼に顔向けができないからです。借りた物を返すこともできない」
彼女はずっと俺との約束を覚えてくれたのか。
ずっと嫌われるのが嫌で俺は言わなかった。
だがそれはもうどうでもいい。
「アニエス、俺はずっとお前を覚えていたぞ」
「えっ……」
彼女の涙が止まるが、俺へ驚愕の目を向け、時が止まったままだった。
彼女の頭が事実を受け止めるのを拒否しているようにも思えた。
「俺はお前だけのモノだ」
アニエスの膣に指を入れて感じさせる。
「あぁん……待って」
「待たん。何年待ったと思っているんだ」
彼女の胸も口に含んで、舌で彼女の赤い果実を転がした。
「いやぁ……ぁん……ッ!」
ビクンと彼女の体が震える。
まだまだ彼女を気持ちよくしたい俺は彼女のクリトリスを舌で刺激した。
「ぁん……イッたばかりだから、そこは敏感に──ッ!」
彼女が顔を上に向けてイった顔をみせないようにする。
気持ちよくなってくれているのがたまらなく嬉しかった。
俺は膝立ちして彼女の綺麗な割れ目にソッと自分のモノを添えた。
「本当に君なの?」
彼女が上目遣いで確認してくる。
もう我慢できなくて俺は彼女の膣内へ勢いよく挿入した。
「ぁん、ぁん……らぁ……んッ!」
彼女の腰へ何度も打ちつける。
とろけた目をする彼女の近くに顔を寄せて、お互いの目が合った。
「そうだ、あの花畑のことは俺の宝だ」
彼女に長いキスをする。
腰の動きを止めずに彼女の身体を悦ばせ、もっと彼女の一体感を強めたい。
「ずっと嫌いだったのに、ずるいよ」
彼女は泣きながら俺の首元に腕を回して抱きつく。
そしてまた彼女と唇を重ね、彼女の中へ俺の全てを注ぎ込んだ。
一緒のベッドに眠り、二人でこれまでのことを話し合った。
俺とア二エスは共にアニエスの故郷へ向かう。
途中で俺とアニエスは昔懐かしい花畑へ向かった。
「ここも変わりましたね」
「そうだな」
もうそこは無惨な戦いの跡が残るだけだった。
花は踏まれ、枯れ果て、あるのは黒い土のみ。
少しだけ滞在したがすぐにまた馬車を目的地へ進める。
そして陽が落ちる前にアニエスが育った町へと着いた。
「ここも前と同じに……いいえ、前よりも良くなったのですね」
アニエスの親が族長として治めていた時よりも、俺の国の技術が入り込み、どんどん便利な物が普及した。
あれほどの犠牲を出したのが無駄ではなかったという証明だった。
それから俺たちは族長の歓迎を受け、アニエスもしばらくは故郷の皆と再会を喜び合った。
最後の日になり、俺は彼女を部屋に呼んで秘密の話をする。
「お前が望むのならここに残っていい」
「それはどういうことですか?」
「お前だとわかる前は元々こうするつもりだったんだ」
「ならどうして分かったのに離すのですか!」
彼女の声が若干だが震えていた。
俺は気にせずに話を続ける。
「俺がお前の一族の仲間を殺したのは事実だ。お前も俺と共にいるのは辛いだろ?」
彼女が近付いてきた。
これは叩かれるだろうと覚悟をしていたが思いがけない方法を取られる。
「おい……?」
彼女にベッドに押し倒された。
そして彼女の口が近付いてきて、今までで一番優しいキスをする。
俺の服を脱がして、彼女は俺の上に跨った。
「ん……ぁ」
彼女の可愛い声が目の前で聞こえてきた。
懸命に腰を自分から振ってくる。
「私は最初に君に襲われた時、悔しかったんです」
彼女の唇がまた俺と合わさった。
「昔の君じゃない人に身体が悦んでるって……ずっと自分が卑しいと思いました」
彼女は言葉と裏腹に一生懸命な顔で腰を動かしている。
「でもよかった……私はずっと貴方を裏切ってはいなかった」
俺は彼女を抱き寄せて体位を変えた。
俺が彼女の上になり、彼女の頬を触った。
すると彼女はペンダントを俺に掛けた。
「俺の名前を呼んでくれ」
「……ローラン」
「アニエス」
「ローラン、ぁん……ローラン、きてッ!」
彼女と何度も名前を呼び合い、長い時間掛けてもっとお互いを知っていく。
「ぁ……ん……好き」
「俺も、だ……!」
彼女の中へまた大量に出ていく。
だがそれでも止まらない。
会えなかった時間分を埋めるように。
俺と彼女は家族になっていく。
一緒に遊んでいた少女へと大事な話をする。
色素の薄い髪をした彼女はその髪と同じく物静かであまり表情を出さない。
だけど今日だけは綺麗な翡翠の目を何度も瞬かせた。
「どうして?」
「外出しているのがバレてな。危ないからって最近は外に出るのも一苦労だけど、これ以上はもう限界だ。だから最後にしようって……」
俺は一国の王子だ。
隙を見ては外出して平民に紛れたりしていた時に、偶然にも襲われそうになった彼女を助けた。
そして少し離れた花畑で彼女と秘密の逢瀬を楽しんだ。
「そう……」
彼女の言葉は短いが、それでも俺と同じく寂しさは感じている気がする。
「私もね。今日でお別れを言おうと思ったの」
「えっ!?」
どうやら彼女も短い期間だけここに旅行に来ているらしかった。
それもかなり遠いところに住んでいるらしい。
「じゃあ、本当に今日で最後かもしれないんだな」
「うん……」
「ならさ」
俺は胸に付けていたペンダントを彼女に渡す。
「預けておく。だからさ、絶対にいつか返してくれよ。俺はたぶんそっちへ行けないけどさ。そっちが来てくれたら会えるかもしれない」
「それは……」
彼女は一瞬躊躇うが、決意した顔で貰ってくれた。
「絶対に返すから、私のこと、忘れないで……」
俺は「忘れるわけがない!」と言葉を返して、指切りをする。
彼女もまた「絶対に返す」とお互い約束をした。
それから十年後。
国王が崩御して、俺は二十歳で国王になった。
それからは国を良くするため、様々な政策を行った。
その中にはたくさんの血を流させることもあった。
「アフマン族の娘が今回の降伏の証として、アニエス姫を献上するとのことです」
「そうか……」
俺は未だに結婚をしていない。
そろそろ世継ぎを考えなければなかったが、どうしてその気になれなかったのだ。
「絶世の美姫と噂されますが、それでも乗り気にはなりませんか?」
側近が俺に尋ねるが、俺はフッと笑うだけだ。
「どうでもいい。どうせこんなのは相手の反逆心を奪うための政略結婚に過ぎんからな。住まいは適当な離宮でも与えておけ。特別なこと以外は会うこともないだろう」
あの時の初恋が今でも忘れられない。
何人か王妃候補として相手をしたが、俺の心を満たしてくれる者はいなかった。
適当に相手して、俺は国のために尽力すればいい。
とうとうアフマン族の姫アニエスが馬車に乗って王城へやってきた。
白のベールを付けているせいで顔が見えない。
どうせ見えても関係ないと思いつつも、見えないとなると興味が出るものだ。
膝をついて玉座に座る俺に恭順を示していた。
「面をあげよ」
俺が命令するとアニエスは顔を上げる。
「なっ!?」
その顔を見て昔の記憶が思い出された。
目の前にいるアニエスは翡翠の目と色素の薄い髪、そして俺があげたペンダントを首に掛けていた。
成長しているがすぐに昔別れた名も知らぬ彼女だとすぐに気付いた。
だが少し違うのは、前よりも意志のある顔と俺に対して少なからぬ恨みを持っていることだった。
「ローラン王、いかがいたしましたか?」
側近が俺の一瞬の動揺に気付いたため、すぐに心を落ち着かせて、「気にするな」と適当に誤魔化した。
「ではローラン王の命により、アニエス様は離宮を与え──」
「いいや、待て」
側近が俺が前に告げたことを伝えようとしたのを止めてしまった。
「気が変わった。アニエスは王妃用の部屋を与える」
ざわっと他の臣下たちも騒ぎ出す。
これまで誰にも与えなかった王妃の部屋を彼女に与えたことを驚いているのだ。
だが彼女は特に喜びはせず、俺に殺意ある目を一瞬だけ見せた。
公務を終えて俺はすぐに彼女の部屋へと向かった。
どうしても彼女に会いたい。
俺のことを覚えているか、本当にあの時の娘なのかと。
部屋の中に入ると、アニエスは椅子に座って前と同じく儚げな顔で外を眺めていた。
俺に気付くと立ち上がって心がこもっていないお辞儀をする。
「ローラン様、お越しくださって光栄でございます」
「ああ……」
彼女の目を見るとすぐに俺を恨んでいるのがわかる。
アフマン族は大きな集団であり、それを力で無理矢理従わせた。
多くの犠牲を出して、やっと戦いが終わったのだ。
「女性に興味が無いと聞いていましたので、まさか私にこのような部屋を与えてくださるとは思いませんでした」
心のこもっていない感謝の言葉だ。
そして彼女はすぐに薄い布で隠していた綺麗な肌を俺へ見せた。
側近たちが初めて女性に興味を示した俺のために準備するように言っていたのだろう。
美しさとは何かを初めて理解した。
彼女を押し倒して、ベッドの上で彼女の頬を触る。
「美しいな、お前は」
「ありがとうございます。できれば早めでお願いします」
不敬だと分かっていても、彼女は俺に心を許す気はないようだ。
俺は彼女の冷たい肌に手を当て、ゆっくりと綺麗な二つの果実の片方に手を当てる。
するとビクッと彼女が震えた。
「初めてか?」
俺が尋ねるが彼女は答えずに顔を背けるだけだ。
彼女の首元にキスをすると、彼女の匂いを感じた。
もっと触れていたい。
指で果実の先端にある赤い実を触る。
彼女の反応を見ながら少しずつ強弱を付けると、強情な彼女の顔も少しずつ紅潮してきた。
だがそれでも必死に抵抗する彼女が可愛らしい。
「気持ちいいなら声を出していい」
「全然気持ち──ッ!」
次は口で彼女の身を堪能した。
舌で優しく、そっと舐めると彼女は快楽に耐えようとする。
「どうだ?」
「特に……んッ……何も感じ──ぁ!」
心はまだ抵抗するが、それでも体の快楽には抗うのは難しい。
俺の手がゆっくりと彼女の腰より下へ伸びた。
すると彼女は快楽に耐えながら、何かを言おうとして目を瞑った。
彼女の割れ目を指で感じとり、濡れている感触があった。
「こんなに濡らして」
「濡れていま──ぁッ!」
彼女の言葉を遮るように指を入れた。
温かな膣内に侵入して、指をゆっくりと上へと向ける。
すると彼女の腰が少し浮いた。
「だめぇ……」
一瞬だが彼女の声が漏れた。
それが俺の劣情を煽った。
彼女の上の果実を舐めながら、手で彼女の淫らな膣を悦ばせた。
彼女の顔を見ると手で息を殺すが、それでも漏れ出る乱れた息遣いが俺の手で感じていることを証明してくれた。
「可愛い顔だ」
我慢出来なくなってきた俺は彼女の顔に近付く。
お互いの息が届くほどの距離で、さっきまで俺へと殺意を込めていた目もとろけて判断ができなくなっていたようだった。
「好きだ、アニエス」
彼女の唇にそっとキスをする。
すると相手もハッとなり、顔を背けた。
だがもう遅い。
空いている手で彼女の顎を触って無理矢理正面を向かせた。
「んぐ……ッ!」
彼女の唇を強制的に奪う。
舌を絡ませていく。
もっと彼女が欲しかった。
「はぁはぁ」
彼女の荒れた息遣いと紅い頬が俺のモノを刺激した。
「もうやめてください……」
彼女から一筋の涙が溢れた。
まだ俺に心を許してくれない。
「そうだな……この先は次の機会にしよう」
俺と彼女の初夜は一旦終わった。
次の日の夜にまた俺は彼女の部屋に向かった。
ベッドの上でまた彼女の体を愉しませ、彼女は必死に快楽に抵抗する。
「だめ……そこは舐め……ッ!」
彼女のクリトリスをじっくりと舐める。
指は彼女の膣を責め、さらにクリトリスも弄られてしまって、必死の声を我慢する彼女の可愛い声がたまらなく良かった。
「今日は挿れるぞ」
俺は彼女の返事を聞かずにすぐさま挿入する。
「あぁ……ッ!」
彼女と一つになった。
温かく全てを包み込んでくれる。
「だめぇ……今は感じて……ッ!」
ゆっくりと腰を動かして、彼女が痛くないように細心の注意を払った。
彼女の膣が俺のために形を変えてくれるのが分かる。
「アニエス、俺の名前を呼べ」
だが彼女は呼んでくれない。
まだ心を許す気がないようで、それなら呼ぶまでこれを続けるだけだ。
「いやぁ……ぁん……ぁん、らめぇ……ッ!」
ビクンと彼女の体が震えた。
イッたことを隠したいようだが、もっと感じさせてやるだけだ。
「動かさ……んッ……ぁあ!」
彼女の感じる顔がたまらない。
もっと気持ち良くなってほしい。
「俺の名前を呼ぶまで終わらんからな」
俺の性欲の全てを彼女にぶつけ、朝を迎えるまであらゆる手を尽くしたが彼女は俺の名前を呼んでくれない。
アニエスの侍従からしばらくは彼女の療養が必要なため、夜の生活は控えるように通達が来た。
「やり過ぎた……」
彼女が強情だからと長時間やり過ぎた。
「まさかローラン王がこれほどまでに執着されるとは思いませんでした」
側近が俺を意外そうに見る。俺は答えない。
ずっと想い続けていた大事な子が目の前にいるのに執着できないわけがない。
数日経ってから元気になったアニエスの元へ駆け込んだ。
「大変ご迷惑をおかけしました」
アニエスは俺と会うとすぐに謝罪をする。
前と同じくまだ俺に心を許していないのは明白だった。
「俺の方こそ悪かった。そういえばまだこの国を案内していなかったな。一緒に国を回らないか?」
「ローラン様の命令に逆らえる者なんておりません」
「そう嫌味を言うな。もちろん無理強いはしない。まだ体も本調子ではないのだろ?」
アニエスは俺を睨んで「誰のせいですか」と訴えている。
心配していたがこれだけ元気なら大丈夫そうだ。
早速と俺たちは馬車に乗って市井を見て回った。
「栄えてますね」
窓から見える光景を見てアニエスはつぶやいた。
ここ数年で経済状況が一変したため、十年前より華やかな街になった。
「そうだな。色々な領地を統合して流通の利便性が増したからな」
「人民の命よりお金ですか?」
アニエスは俺を睨むがすぐにその視線を外して一滴の涙が頬をつたっているのが見えた。
俺は侵略者であるため、彼女の同胞を何人も殺した。
その恨みは一生消えることはないだろう。
彼女は何かを探すように熱心に外を眺めていた。
「何か気になるものでもあるのか?」
彼女はチラッと俺を見て、外を見るのをやめた。
ただボソッとした声が聞こえてくる。
「昔出会った人のことを思い出しただけです。返さないといけない物がありますので」
アニエスに俺の正体をいつ告げればいいのだろう。
三日が経ちアニエスを歓迎するためのパーティが開かれた。
多くの貴族が集まり、懇親を深めていった。
「あれがアニエス様か……」
「想像以上にお美しい。この国の至宝かもしれん」
アニエスの美貌はこの国随一と言っても過言ではないだろう。
そのため若い男たちが鼻の下を延ばしてアニエスを見るので、俺の女ということを分からせるために睨んでやるとそそくさと逃げていく。
「アニエス、そろそろ踊りの時間だ。俺と踊ってくれるか?」
俺が彼女に手を差し出すと、少しの間の後に手を取った。
「もちろんでございます」
アニエスとダンスをする。
彼女もやはり教養は申し分なく、俺がリードをせずとも上手く踊れるだろう。
「ほう、上手いな」
「ありがとう存じます」
「だが、それではつまらんな」
「え──?」
アニエスがついて来れるかギリギリの速度で踊りをする。
「早い──ッ! もう少しゆっくりしてください!」
彼女も転けないように必死に付いてくるが、それでも足元がどんどん怪しくなってきた。
そしてとうとうついて来れなくなって転けそうになったが、俺が彼女の腰を抱いて最後を締め括った。
彼女が俺を睨んでいた。
「どうだ、俺のダンスは?」
だが今回だけは彼女の反応は違った。
「ふふ……最低です」
やっと彼女の小さな笑顔が見えた。
彼女のエスコートをしながら席まで歩く。
「少し疲れたか?」
「このくらいでしたら特に──」
彼女の目が今通り過ぎた男を追った。
「待って!」
俺の手を振り解き、その男を呼び止めて相手は振り返った。
「あ、アニエス様!? いかがいたしましたか?」
後ろ姿が昔の俺の頼りなかった頃に似ている気がした。
ただ振り返った男は全くと言っていいほど似ていない。
アニエスも人違いだと気付いて「何でもないです、ごめんなさい」と呼び止めたことを謝罪した。
「もしよろしければこの機会に私めと一曲いかがですか?」
相手の男がこれ幸いにと誘ってきた。
アニエスも自分が呼び止めた手前、断るのが難しく手を取ろうとした。
「残念だが、アニエスはもう疲れたと先ほど言っていた!」
俺は彼女の腰を引き寄せて男と距離を空けさせる。
そしてそのまま彼女の体を横に抱えた。
「ちょっと、ローラン王!」
彼女が慌てて下ろすように言うが俺はアニエスが誰かと踊るなんて耐えられない。
そのままパーティ会場を出て俺の部屋へ彼女を連れて行く。
「急にどうか──んぐっ!」
彼女をベッドに押し倒して無理矢理唇を奪った。
長い間、お互いの舌が絡み合う。
十分に堪能した後に口を離すと、唾液が糸を引いて垂れた。
「お前は俺だけの女だ。他の男に渡さん」
彼女の服を脱がせ、首や耳元を舐めた。
「やめてください。入浴もまだです」
「綺麗だ、アニエス」
言い訳を作る彼女を逃しはしない。彼女は特に耳元が性感帯のようだ。
彼女の目から一滴の涙が溢れた。
「どうして泣く?」
「約束した彼に顔向けができないからです。借りた物を返すこともできない」
彼女はずっと俺との約束を覚えてくれたのか。
ずっと嫌われるのが嫌で俺は言わなかった。
だがそれはもうどうでもいい。
「アニエス、俺はずっとお前を覚えていたぞ」
「えっ……」
彼女の涙が止まるが、俺へ驚愕の目を向け、時が止まったままだった。
彼女の頭が事実を受け止めるのを拒否しているようにも思えた。
「俺はお前だけのモノだ」
アニエスの膣に指を入れて感じさせる。
「あぁん……待って」
「待たん。何年待ったと思っているんだ」
彼女の胸も口に含んで、舌で彼女の赤い果実を転がした。
「いやぁ……ぁん……ッ!」
ビクンと彼女の体が震える。
まだまだ彼女を気持ちよくしたい俺は彼女のクリトリスを舌で刺激した。
「ぁん……イッたばかりだから、そこは敏感に──ッ!」
彼女が顔を上に向けてイった顔をみせないようにする。
気持ちよくなってくれているのがたまらなく嬉しかった。
俺は膝立ちして彼女の綺麗な割れ目にソッと自分のモノを添えた。
「本当に君なの?」
彼女が上目遣いで確認してくる。
もう我慢できなくて俺は彼女の膣内へ勢いよく挿入した。
「ぁん、ぁん……らぁ……んッ!」
彼女の腰へ何度も打ちつける。
とろけた目をする彼女の近くに顔を寄せて、お互いの目が合った。
「そうだ、あの花畑のことは俺の宝だ」
彼女に長いキスをする。
腰の動きを止めずに彼女の身体を悦ばせ、もっと彼女の一体感を強めたい。
「ずっと嫌いだったのに、ずるいよ」
彼女は泣きながら俺の首元に腕を回して抱きつく。
そしてまた彼女と唇を重ね、彼女の中へ俺の全てを注ぎ込んだ。
一緒のベッドに眠り、二人でこれまでのことを話し合った。
俺とア二エスは共にアニエスの故郷へ向かう。
途中で俺とアニエスは昔懐かしい花畑へ向かった。
「ここも変わりましたね」
「そうだな」
もうそこは無惨な戦いの跡が残るだけだった。
花は踏まれ、枯れ果て、あるのは黒い土のみ。
少しだけ滞在したがすぐにまた馬車を目的地へ進める。
そして陽が落ちる前にアニエスが育った町へと着いた。
「ここも前と同じに……いいえ、前よりも良くなったのですね」
アニエスの親が族長として治めていた時よりも、俺の国の技術が入り込み、どんどん便利な物が普及した。
あれほどの犠牲を出したのが無駄ではなかったという証明だった。
それから俺たちは族長の歓迎を受け、アニエスもしばらくは故郷の皆と再会を喜び合った。
最後の日になり、俺は彼女を部屋に呼んで秘密の話をする。
「お前が望むのならここに残っていい」
「それはどういうことですか?」
「お前だとわかる前は元々こうするつもりだったんだ」
「ならどうして分かったのに離すのですか!」
彼女の声が若干だが震えていた。
俺は気にせずに話を続ける。
「俺がお前の一族の仲間を殺したのは事実だ。お前も俺と共にいるのは辛いだろ?」
彼女が近付いてきた。
これは叩かれるだろうと覚悟をしていたが思いがけない方法を取られる。
「おい……?」
彼女にベッドに押し倒された。
そして彼女の口が近付いてきて、今までで一番優しいキスをする。
俺の服を脱がして、彼女は俺の上に跨った。
「ん……ぁ」
彼女の可愛い声が目の前で聞こえてきた。
懸命に腰を自分から振ってくる。
「私は最初に君に襲われた時、悔しかったんです」
彼女の唇がまた俺と合わさった。
「昔の君じゃない人に身体が悦んでるって……ずっと自分が卑しいと思いました」
彼女は言葉と裏腹に一生懸命な顔で腰を動かしている。
「でもよかった……私はずっと貴方を裏切ってはいなかった」
俺は彼女を抱き寄せて体位を変えた。
俺が彼女の上になり、彼女の頬を触った。
すると彼女はペンダントを俺に掛けた。
「俺の名前を呼んでくれ」
「……ローラン」
「アニエス」
「ローラン、ぁん……ローラン、きてッ!」
彼女と何度も名前を呼び合い、長い時間掛けてもっとお互いを知っていく。
「ぁ……ん……好き」
「俺も、だ……!」
彼女の中へまた大量に出ていく。
だがそれでも止まらない。
会えなかった時間分を埋めるように。
俺と彼女は家族になっていく。
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