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4章 友達はいかがでしょうか
22 原因究明
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「ごめんなさい、カナリア様。わたしめが大変──」
朝食の時間に私にヴィヴィアンヌは謝罪をする。
昨日は彼女に連れ去られ、懇意にしている村で祭りを楽しんだ。
しかしやり方があまりにも強引過ぎたため、ご両親からきつく叱られたようだった。
「いいのよ。別に悪気もなかったのでしょ? それにわたくしも楽しめましたし──」
「本当ですの! なら、また行きましょう!」
さっきまでの反省が一気に消え去り、私の手を取って上目遣いで見てくる。
まるで子猫のようで可愛らしいが、後ろから「ヴィヴィィイ!」と奥様が負のオーラをまとったことで、ビクッと体を震わせた。
「ゆ、許してくださったカナリア様の温情に感謝致しますわ」
この子はおそらく反省しても明日には忘れ去っているに違いない。
朝食を終えて、これからのことを話し合う。
「エーデルハウプトシュタット子爵、実際に呪いが降りかかっている村はどれくらいあるのですか?」
尋ねると、この屋敷のメイドが地図を持ってきて広げてくれる。
バツを付けている場所が、これ以上呪いを広めないために隔離した村にしているようだった。
「三つの村が謎の奇病に罹った村です。最初は発疹から始まり、酷いモノだと皮膚が変形したりして見た目があまりにも酷くなります」
見た目にまで影響を与えるのなら呪いだと思われても仕方がないかもしれない。
しかし発生しているのが一部の村だけというのが気掛かりだ。
おそらくは他の村と比べて何かしらの要因があると思って間違いないだろう。
「その情報だけだとどうしても特定できませんね……これは昔から起きていたのですか?」
「いいえ……三、四年前に起き始めました」
「急に出てきたのですか?」
「はい」
思ったよりも最近でびっくりした。
ヴィヴィアンヌが学生時代からと聞いていて、幼少期の頃かと勝手に思い違いしていた。
そういえばこの国では学校は十三歳から十五歳までの三年間しか通っていないことを思い出す。
「これは似てるわね……」
ボソッと呟くとシリウスが言葉を拾った。
「何がだい、カナリア?」
「ヒルダ様が他の方々に裏で手を回していた時期にです」
他の領地も様々な問題が起き始めたのは三、四年前だ。
わざとヒルダが手引きした者が作物が育ちづらい環境を商人を使って作り出して、ヒルダの手を借りないと生活が困難になるように仕向けられていた。
「もしかしてこちらも最近は食料が行き届かなくなっているのではないですか?」
「ええ……確かに……ですが、腹持ちの良く、長期保存が出来る物を送ってはいますので、食料に関しては問題がないかと……」
私は念のために送っている食材のリストを見せもらった。
「どれもそこまで栄養価が高くないものばかりね……もしかすると免疫が落ちたことで発症している可能性があるわ」
前々から感じていたがやはり食料問題がどこも貧弱だ。
おそらくは帝国と早い段階で和平を結んだが、戦いの間に食料不足が続いているのだろう。
これは一部の領地だけではなく、大きく改革していかないとどんどん綻びが大きくなる気がする。
「流石だな、カナリア……」
「いいえ、これではまだ確証が持てません。一度その村に行ってみて診断をしないと──」
「それは駄目だ」
シリウスが強く否定された。
しかし私が実際に行かねば根本の原因が分からない。
「どうしてですか?」
「カナリアに呪いが降りかかるリスクがある以上は許可できない」
「これは呪いではありません。おそらくは免疫系の──」
「それは憶測だろ? カナリアにもしもの時があるのなら許可は出来ない」
それならばどうしろと言うのだ。
私はむっとなって反論しようとすると、シリウスから先に言われた。
「だから俺が代わりに行く」
「はい?」
思わず目を瞬いてしまった。
私は立ち上がって反対した。
「出来ません! シリウス様が危ないではないですか!」
「それは其方も同じであろう! これだけは譲らん!」
「シリウス様では病人を診られないではありませんか!」
「今から勉強する!」
お互いの意見がぶつかり合ってお互いに譲らない。
その時、後ろからエマが声をあげる。
「それでしたら私も付いていくのはいかがでしょうか?」
エマは確かに私の側で手伝いをしているのである程度は診察できる。
しかしそれが大事なメイドを送り出していい理由にはならない。
「エマであろうとも絶対に駄目です。貴女にまで何かあったら──」
「その時はカナリア様が私を治してください」
エマから笑顔で制され、思わず言葉を出せなくなった。
シリウスを見ても同じように頷くだけだ。
「分かったわよ……でも絶対に二人とも無理だけはしないでください」
結局は私が折れてしまったが、絶対に誰も犠牲を出すつもりはない。
急ぎ支度を整えていくのだった。
朝食の時間に私にヴィヴィアンヌは謝罪をする。
昨日は彼女に連れ去られ、懇意にしている村で祭りを楽しんだ。
しかしやり方があまりにも強引過ぎたため、ご両親からきつく叱られたようだった。
「いいのよ。別に悪気もなかったのでしょ? それにわたくしも楽しめましたし──」
「本当ですの! なら、また行きましょう!」
さっきまでの反省が一気に消え去り、私の手を取って上目遣いで見てくる。
まるで子猫のようで可愛らしいが、後ろから「ヴィヴィィイ!」と奥様が負のオーラをまとったことで、ビクッと体を震わせた。
「ゆ、許してくださったカナリア様の温情に感謝致しますわ」
この子はおそらく反省しても明日には忘れ去っているに違いない。
朝食を終えて、これからのことを話し合う。
「エーデルハウプトシュタット子爵、実際に呪いが降りかかっている村はどれくらいあるのですか?」
尋ねると、この屋敷のメイドが地図を持ってきて広げてくれる。
バツを付けている場所が、これ以上呪いを広めないために隔離した村にしているようだった。
「三つの村が謎の奇病に罹った村です。最初は発疹から始まり、酷いモノだと皮膚が変形したりして見た目があまりにも酷くなります」
見た目にまで影響を与えるのなら呪いだと思われても仕方がないかもしれない。
しかし発生しているのが一部の村だけというのが気掛かりだ。
おそらくは他の村と比べて何かしらの要因があると思って間違いないだろう。
「その情報だけだとどうしても特定できませんね……これは昔から起きていたのですか?」
「いいえ……三、四年前に起き始めました」
「急に出てきたのですか?」
「はい」
思ったよりも最近でびっくりした。
ヴィヴィアンヌが学生時代からと聞いていて、幼少期の頃かと勝手に思い違いしていた。
そういえばこの国では学校は十三歳から十五歳までの三年間しか通っていないことを思い出す。
「これは似てるわね……」
ボソッと呟くとシリウスが言葉を拾った。
「何がだい、カナリア?」
「ヒルダ様が他の方々に裏で手を回していた時期にです」
他の領地も様々な問題が起き始めたのは三、四年前だ。
わざとヒルダが手引きした者が作物が育ちづらい環境を商人を使って作り出して、ヒルダの手を借りないと生活が困難になるように仕向けられていた。
「もしかしてこちらも最近は食料が行き届かなくなっているのではないですか?」
「ええ……確かに……ですが、腹持ちの良く、長期保存が出来る物を送ってはいますので、食料に関しては問題がないかと……」
私は念のために送っている食材のリストを見せもらった。
「どれもそこまで栄養価が高くないものばかりね……もしかすると免疫が落ちたことで発症している可能性があるわ」
前々から感じていたがやはり食料問題がどこも貧弱だ。
おそらくは帝国と早い段階で和平を結んだが、戦いの間に食料不足が続いているのだろう。
これは一部の領地だけではなく、大きく改革していかないとどんどん綻びが大きくなる気がする。
「流石だな、カナリア……」
「いいえ、これではまだ確証が持てません。一度その村に行ってみて診断をしないと──」
「それは駄目だ」
シリウスが強く否定された。
しかし私が実際に行かねば根本の原因が分からない。
「どうしてですか?」
「カナリアに呪いが降りかかるリスクがある以上は許可できない」
「これは呪いではありません。おそらくは免疫系の──」
「それは憶測だろ? カナリアにもしもの時があるのなら許可は出来ない」
それならばどうしろと言うのだ。
私はむっとなって反論しようとすると、シリウスから先に言われた。
「だから俺が代わりに行く」
「はい?」
思わず目を瞬いてしまった。
私は立ち上がって反対した。
「出来ません! シリウス様が危ないではないですか!」
「それは其方も同じであろう! これだけは譲らん!」
「シリウス様では病人を診られないではありませんか!」
「今から勉強する!」
お互いの意見がぶつかり合ってお互いに譲らない。
その時、後ろからエマが声をあげる。
「それでしたら私も付いていくのはいかがでしょうか?」
エマは確かに私の側で手伝いをしているのである程度は診察できる。
しかしそれが大事なメイドを送り出していい理由にはならない。
「エマであろうとも絶対に駄目です。貴女にまで何かあったら──」
「その時はカナリア様が私を治してください」
エマから笑顔で制され、思わず言葉を出せなくなった。
シリウスを見ても同じように頷くだけだ。
「分かったわよ……でも絶対に二人とも無理だけはしないでください」
結局は私が折れてしまったが、絶対に誰も犠牲を出すつもりはない。
急ぎ支度を整えていくのだった。
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