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最終章 希望を託されし女神
ヨハネの望み
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騎士団長がわたしを狙ってきた。
一瞬の隙を突かれたので反応できない。
「甘いな」
わたしがそれを見る前に別の誰かがトライードで防いでくれた。
「無事ですか?」
仮面の女に付き従う仮面の戦士がわたしを守ってくれた。
頷いてお礼を言う。
騎士団長は仕留められなかったことに苛立って、舌打ちをして離れた。
「誰かは分かりませんけど助かりました。その男は任せていいですか?」
「わたしはクロートを手伝いますので、彼に任せましょう」
仮面の戦士が見る方向にはヴェルダンディが迫ってきていた。
「マリアさまに手を出すんじゃねえ!」
ヴェルダンディがわたしを守るため騎士団長にトライードを向けた。
「ヴェルダンディ、こいつはお前で倒せ。マリアさまの騎士を名乗るなら三下に劣ってはならない」
「……わたしを三下呼ばわりとは、セルラン・ジョセフィーヌ亡き後はわたしが名実共に一番の騎士だと思いますがね」
わたしはそれを聞いて吹き出した。
思い上がりも腹立たしい。
「無能な王に仕える騎士が有能だった試しはありませんよ。ヴェルダンディ、こんな男すぐ片付けなさい」
「もちろんです!」
ヴェルダンディはトライードを騎士団長とぶつけ合う。
口ではあのように言ったが騎士団長を冠するので、近接戦闘に関してはトップに位置するだろう。
しかし彼は努力を続けている。
わたしは彼に背中を託す。
「ではわたしもデアハウザーを足止めします。そろそろクロートでもキツくなるでしょうから」
「ええ、お願いします!」
「それと伝言です。髪が変色した四人の魔力があれば、偽物の神は地に堕ち、本物の神が加護をもたらす。この状況を打破するために、必ず四人で集まってください」
仮面の戦士はそれだけ言ってクロートの援護に向かった。
……四人の魔力があれば一気に形勢逆転できる!?
各々が持ち場を離れることができないので、どこかしら手が空かないといけない。
それならわたしのやるべきことは一つ。
わたしはヨハネとの戦いに集中する。
彼女が動けなくなればこちらに動くチャンスが必ずやってくる。
マリアーマーに魔力を込める。
ヨハネの元へ飛び、マリアーマの腕の部分をヨハネに向けた。
魔力を込めた瞬間、水の魔法が発動して水の刃がヨハネを襲う。
「凄いわね。魔法陣を描いて短縮しているのね」
ヨハネは簡単に避けていく。
しかしわたしの魔力はまだまだ残っている。
少しずつ追い詰めてやる。
コロシアム内が戦場となり、各貴族たちは一か所に固まるか、もしくは戦いに出ている。
そんな中沈黙を守っていたシルヴィ・ゼヌニムが動き出す。
「風の神シェイソーナガットは奏者なり。大空を支配するため駆け回りて、大神に想いをーー」
わたしに向けて魔法を放とうしたが横から闇の炎がシルヴィ・ゼヌニムの攻撃を邪魔する。
しかしシルヴィの魔道具は妨害を防ぐ。
「無粋なことをするでない」
だが無視できる相手でないことに気付いたシルヴィ・ゼヌニムは忌々しげに相手を見た。
その魔法を放ったのは、シルヴィ・スヴァルトアルフだ。
「おいおい、若い奴らの喧嘩を邪魔するのはいけないな。お前の相手はわたしがしてやろう」
お互いに睨み合って、魔力を込め始める。
風の刃と黒い炎がぶつかり合った。
「いいわね。どんどん場が混沌としてくる」
「何がいいのか分かりませんね。一体貴女は何を楽しんでいるの?」
わたしは攻撃の手を緩めることなく攻め続ける。
しかし彼女は避け続けて、時には魔物を盾にして逃げていく。
「ここなら邪魔をされないわね」
突如としてヨハネは攻めへと転ずる。
ヨハネから禍々しいオーラを感じると共に、魔法がわたしへ向けられる。
「闇の神アンラマンユは全てを支配する者なり。我に従え、我に平伏しろ。全てを飲み込む闇が新しき秩序を作り出す。選定を与えよう。我は神なり。全てを導こう。己が運命を進むために」
闇が迫ってきて、わたしを完全に包み込んだ。
その時一人の影が飛び込んでくるのが見えた。
目の前に光が宿り始め、周りを見渡す。
そこは別の場所に運ばれたようで、見覚えのある場所だった。
「ジョセフィーヌの城?」
ジョセフィーヌの城の玄関の前にいる。
しかしここは空が薄暗く、先程の快晴が嘘のようだ。
「違うわ。闇の神アンラマンユさまによって作り出された架空の場所よ。イメージしやすかったからここにしたのよ」
ヨハネは開放された扉の先で待っていた。
一体どうしてこんなところへ呼んだのか。
「それにしてもまさかガーネフちゃんも来るなんてね」
わたしはその言葉を聞いて、もう一度辺りを見渡すと角から走ってくるガーネフを見つけた。
「ま、マリアさま!?」
「ガーネフ? どうしてここにきましたの?」
彼はヨハネ側に付いているかもしれない。
少しばかり警戒の籠もった声で確認すると、彼は慌てて答えた。
「義姉上がマリアさまを狙っていると思ったので、混乱に乗じて間に割り込みました。でも僕はマリアさまの味方ですよ!」
フォアデルヘは百年前の内乱を引き起こした元凶でもある。
しかし、彼だけはどちら側の人間か分からない。
「二人になってもいいわ。わたしは先で待っているわね」
ヨハネは階段を上り領主の間の方へ歩いていく。
一瞬の隙を突かれたので反応できない。
「甘いな」
わたしがそれを見る前に別の誰かがトライードで防いでくれた。
「無事ですか?」
仮面の女に付き従う仮面の戦士がわたしを守ってくれた。
頷いてお礼を言う。
騎士団長は仕留められなかったことに苛立って、舌打ちをして離れた。
「誰かは分かりませんけど助かりました。その男は任せていいですか?」
「わたしはクロートを手伝いますので、彼に任せましょう」
仮面の戦士が見る方向にはヴェルダンディが迫ってきていた。
「マリアさまに手を出すんじゃねえ!」
ヴェルダンディがわたしを守るため騎士団長にトライードを向けた。
「ヴェルダンディ、こいつはお前で倒せ。マリアさまの騎士を名乗るなら三下に劣ってはならない」
「……わたしを三下呼ばわりとは、セルラン・ジョセフィーヌ亡き後はわたしが名実共に一番の騎士だと思いますがね」
わたしはそれを聞いて吹き出した。
思い上がりも腹立たしい。
「無能な王に仕える騎士が有能だった試しはありませんよ。ヴェルダンディ、こんな男すぐ片付けなさい」
「もちろんです!」
ヴェルダンディはトライードを騎士団長とぶつけ合う。
口ではあのように言ったが騎士団長を冠するので、近接戦闘に関してはトップに位置するだろう。
しかし彼は努力を続けている。
わたしは彼に背中を託す。
「ではわたしもデアハウザーを足止めします。そろそろクロートでもキツくなるでしょうから」
「ええ、お願いします!」
「それと伝言です。髪が変色した四人の魔力があれば、偽物の神は地に堕ち、本物の神が加護をもたらす。この状況を打破するために、必ず四人で集まってください」
仮面の戦士はそれだけ言ってクロートの援護に向かった。
……四人の魔力があれば一気に形勢逆転できる!?
各々が持ち場を離れることができないので、どこかしら手が空かないといけない。
それならわたしのやるべきことは一つ。
わたしはヨハネとの戦いに集中する。
彼女が動けなくなればこちらに動くチャンスが必ずやってくる。
マリアーマーに魔力を込める。
ヨハネの元へ飛び、マリアーマの腕の部分をヨハネに向けた。
魔力を込めた瞬間、水の魔法が発動して水の刃がヨハネを襲う。
「凄いわね。魔法陣を描いて短縮しているのね」
ヨハネは簡単に避けていく。
しかしわたしの魔力はまだまだ残っている。
少しずつ追い詰めてやる。
コロシアム内が戦場となり、各貴族たちは一か所に固まるか、もしくは戦いに出ている。
そんな中沈黙を守っていたシルヴィ・ゼヌニムが動き出す。
「風の神シェイソーナガットは奏者なり。大空を支配するため駆け回りて、大神に想いをーー」
わたしに向けて魔法を放とうしたが横から闇の炎がシルヴィ・ゼヌニムの攻撃を邪魔する。
しかしシルヴィの魔道具は妨害を防ぐ。
「無粋なことをするでない」
だが無視できる相手でないことに気付いたシルヴィ・ゼヌニムは忌々しげに相手を見た。
その魔法を放ったのは、シルヴィ・スヴァルトアルフだ。
「おいおい、若い奴らの喧嘩を邪魔するのはいけないな。お前の相手はわたしがしてやろう」
お互いに睨み合って、魔力を込め始める。
風の刃と黒い炎がぶつかり合った。
「いいわね。どんどん場が混沌としてくる」
「何がいいのか分かりませんね。一体貴女は何を楽しんでいるの?」
わたしは攻撃の手を緩めることなく攻め続ける。
しかし彼女は避け続けて、時には魔物を盾にして逃げていく。
「ここなら邪魔をされないわね」
突如としてヨハネは攻めへと転ずる。
ヨハネから禍々しいオーラを感じると共に、魔法がわたしへ向けられる。
「闇の神アンラマンユは全てを支配する者なり。我に従え、我に平伏しろ。全てを飲み込む闇が新しき秩序を作り出す。選定を与えよう。我は神なり。全てを導こう。己が運命を進むために」
闇が迫ってきて、わたしを完全に包み込んだ。
その時一人の影が飛び込んでくるのが見えた。
目の前に光が宿り始め、周りを見渡す。
そこは別の場所に運ばれたようで、見覚えのある場所だった。
「ジョセフィーヌの城?」
ジョセフィーヌの城の玄関の前にいる。
しかしここは空が薄暗く、先程の快晴が嘘のようだ。
「違うわ。闇の神アンラマンユさまによって作り出された架空の場所よ。イメージしやすかったからここにしたのよ」
ヨハネは開放された扉の先で待っていた。
一体どうしてこんなところへ呼んだのか。
「それにしてもまさかガーネフちゃんも来るなんてね」
わたしはその言葉を聞いて、もう一度辺りを見渡すと角から走ってくるガーネフを見つけた。
「ま、マリアさま!?」
「ガーネフ? どうしてここにきましたの?」
彼はヨハネ側に付いているかもしれない。
少しばかり警戒の籠もった声で確認すると、彼は慌てて答えた。
「義姉上がマリアさまを狙っていると思ったので、混乱に乗じて間に割り込みました。でも僕はマリアさまの味方ですよ!」
フォアデルヘは百年前の内乱を引き起こした元凶でもある。
しかし、彼だけはどちら側の人間か分からない。
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