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最終章 希望を託されし女神
下僕視点4
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一番まずいのは、ここで反抗するとパラストカーティまでヨハネに狙われてしまう。
メルオープがぼくたちを守るように前に立った。
「これは一体どういうことですか? 貴方にこの城を自由に動く許可を与えていないはずですが?」
メルオープは殺気立った目でネツキを睨む。
だがその目を簡単に逸らして知らぬ顔をした。
「アビ・パラストカーティ、これでは困りますよ。この領土を治めるのはヨハネさまです。それなのにこのような害虫どもを神聖な領土に入れるなんて……おや、アリア・シュトラレーセさまも居ますね」
その目はどす黒く汚れており、アリアを見て舌舐めずりをしていた。
アリアをぼくの後ろに隠した。
ネツキはボソッと呟いた。
「なるほど、それでお分かりになったのか……」
どうにかこの場から逃げ出さないといけない。
しかし部屋にある唯一の出口を塞がれているので、強行突破で抜けるしかない。
「無駄なことはおやめなさい。魔道具も十分にあります。我々には死ぬ覚悟だってあるのですから」
ネツキはこちらを脅してくる。
ヨハネの信者は狂信的であり、その兵士は主人のためなら死すら厭わない。
だがそこでネツキの手下が報告でやってきた。
「ネツキさま、緊急の報告があります!」
「一体何です? この後にしなさい」
「アクィエルさまが来ているのです!」
マリアさまのライバルであるアクィエルさまが来たことで大きく流れが変わったことがわかった。
ネツキは舌打ちをして、指示を飛ばしていた。
「少々予想外なことが起こりましたが、貴方達を捕まえることには変わりはない。一度来てもらいますよ」
クロートからぼくたちに指示が来た。
今は黙って従うようにと。
アビの部屋でぼくたちを拘束して、ネツキはアビとメルオープを連れて出て行った。
「一体どうしてアクィエルさまが来たんだ?」
「分からないけど、何も用事が無ければ来ないと思う。しばらく様子を見よう」
ぼくたちは黙って待っていると、ネツキが連れてきた兵士がやってきて報告する。
「ここから客間へ行く。アクィエルさまがお前たちの顔を見たいそうだ」
ぼくたちか黙って付いていくと、忌々しそうな顔をしたネツキと楽しげなアクィエルと護衛騎士のレイモンドがいた。
どうやら上手く事を運べなかったようだ。
「皆さんお久しぶりね。マリアさんのことを聞きたかったのよ」
「それなら先程申し上げましたがーー」
ネツキは焦った様子でアクィエルに詰めかけようとした。
それにレイモンドが反応するよりも早く、アクィエル自身の扇子で顔を叩いた。
「誰がわたしの言葉を遮っていいと言ったかしら?」
「……大変申し訳ございません」
ネツキはアクィエルに押されてしまい、すぐに謝罪して口を閉ざした。
流石は上位者であり、自分より小物を相手にする気はないようだ。
「あら、貴女はシュトラレーセの子じゃない?」
「は、はい! アリア・シュトラレーセです!」
急に名前を呼ばれたアリアは恐縮した様子で答えた。
「どうして貴女がここにいますの?」
「そ、それは……」
アリアはぼくたちを見てどう答えればいいのか迷っていた。
しかしアクィエルは優しい声色でこちらに提案した。
「別に答えたくないのなら、無理に答えなくてもいいのよ?」
思いがけない言葉に場の雰囲気が和む。
アリアもホッとしたが、次の言葉でそれは甘い考えだったと分かった。
「わたしの質問に答えないのなら、その娘はその男の好きにしなさい」
空気が張り詰めた。
流石は五大貴族だ。
自分の意にそぐわない者には全く容赦がない。
特にアクィエルはそれが顕著だ。
クロートは仕方がないとアリアへ指示を飛ばす。
「アリアさま、全てお話くださいませ」
クロートの提案にアリアは頷く。
顔を引き締めて、端的に理由を話す。
「わたしは光の髪を持つ者としての使命を全うするためにここにいます」
アリアの言葉にアクィエルは眉をピクリと動かした。
伝説の髪はマリアとクロートしか持っていなかった。
それがもう一人現れたことは歴史的瞬間でもある。
アクィエルはアリアを上から下までじっくり見た。
そして口を開いた。
「貴女の髪はわたしたちと同じ色なのだからどうやって証明しますの?」
「この櫛を使えばすぐにでも戻せます」
アリアはそう言って櫛を取り出し髪を通した。
するとみるみるうちに髪に光沢が現れて、まるで金そのものがそこにあるようだった。
ぼくは思わず見惚れた。
五大貴族以上の上位者に見えたからだ。
まるでマリアさまを初めて見た時と同じ感覚に襲われた。
「ふーん、そうなのですね。まあいいですわ。どうにも話が長くなりそうですし、貴方達はわたしと一緒に来なさい」
アクィエルはぼくたちの意向はお構いなしにすぐさま部屋を出ていこうとする。
だがネツキは慌ててそれを止めようと大声をあげる。
「お待ちください! この者たちは反逆の臣です。ヨハネさまにすぐさま報告して然るべき刑に処さなければなりません!」
どの口が言うかと思ったがぼくたちは成り行きに任せるしかない。
どうにもアクィエルはこちらの事情をある程度分かってくれている気がする。
「反逆? この子たちが何かしましたの?」
「もちろんです! 新しき時代のシルヴィとなられたヨハネさまの手から逃げようとしたのです。ドルヴィもシルヴィ・ゼヌニムもこちらと同盟を組んでいる以上は貴女もこちらに協力するべきでしょう」
熱く語るネツキの言葉を黙って聞くアクィエル。
シルヴィ・ゼヌニムがマリアさまと敵対するというのなら、その娘たるアクィエルも従わないといけない。
しかしアクィエルはただ首を傾げるだけだった。
メルオープがぼくたちを守るように前に立った。
「これは一体どういうことですか? 貴方にこの城を自由に動く許可を与えていないはずですが?」
メルオープは殺気立った目でネツキを睨む。
だがその目を簡単に逸らして知らぬ顔をした。
「アビ・パラストカーティ、これでは困りますよ。この領土を治めるのはヨハネさまです。それなのにこのような害虫どもを神聖な領土に入れるなんて……おや、アリア・シュトラレーセさまも居ますね」
その目はどす黒く汚れており、アリアを見て舌舐めずりをしていた。
アリアをぼくの後ろに隠した。
ネツキはボソッと呟いた。
「なるほど、それでお分かりになったのか……」
どうにかこの場から逃げ出さないといけない。
しかし部屋にある唯一の出口を塞がれているので、強行突破で抜けるしかない。
「無駄なことはおやめなさい。魔道具も十分にあります。我々には死ぬ覚悟だってあるのですから」
ネツキはこちらを脅してくる。
ヨハネの信者は狂信的であり、その兵士は主人のためなら死すら厭わない。
だがそこでネツキの手下が報告でやってきた。
「ネツキさま、緊急の報告があります!」
「一体何です? この後にしなさい」
「アクィエルさまが来ているのです!」
マリアさまのライバルであるアクィエルさまが来たことで大きく流れが変わったことがわかった。
ネツキは舌打ちをして、指示を飛ばしていた。
「少々予想外なことが起こりましたが、貴方達を捕まえることには変わりはない。一度来てもらいますよ」
クロートからぼくたちに指示が来た。
今は黙って従うようにと。
アビの部屋でぼくたちを拘束して、ネツキはアビとメルオープを連れて出て行った。
「一体どうしてアクィエルさまが来たんだ?」
「分からないけど、何も用事が無ければ来ないと思う。しばらく様子を見よう」
ぼくたちは黙って待っていると、ネツキが連れてきた兵士がやってきて報告する。
「ここから客間へ行く。アクィエルさまがお前たちの顔を見たいそうだ」
ぼくたちか黙って付いていくと、忌々しそうな顔をしたネツキと楽しげなアクィエルと護衛騎士のレイモンドがいた。
どうやら上手く事を運べなかったようだ。
「皆さんお久しぶりね。マリアさんのことを聞きたかったのよ」
「それなら先程申し上げましたがーー」
ネツキは焦った様子でアクィエルに詰めかけようとした。
それにレイモンドが反応するよりも早く、アクィエル自身の扇子で顔を叩いた。
「誰がわたしの言葉を遮っていいと言ったかしら?」
「……大変申し訳ございません」
ネツキはアクィエルに押されてしまい、すぐに謝罪して口を閉ざした。
流石は上位者であり、自分より小物を相手にする気はないようだ。
「あら、貴女はシュトラレーセの子じゃない?」
「は、はい! アリア・シュトラレーセです!」
急に名前を呼ばれたアリアは恐縮した様子で答えた。
「どうして貴女がここにいますの?」
「そ、それは……」
アリアはぼくたちを見てどう答えればいいのか迷っていた。
しかしアクィエルは優しい声色でこちらに提案した。
「別に答えたくないのなら、無理に答えなくてもいいのよ?」
思いがけない言葉に場の雰囲気が和む。
アリアもホッとしたが、次の言葉でそれは甘い考えだったと分かった。
「わたしの質問に答えないのなら、その娘はその男の好きにしなさい」
空気が張り詰めた。
流石は五大貴族だ。
自分の意にそぐわない者には全く容赦がない。
特にアクィエルはそれが顕著だ。
クロートは仕方がないとアリアへ指示を飛ばす。
「アリアさま、全てお話くださいませ」
クロートの提案にアリアは頷く。
顔を引き締めて、端的に理由を話す。
「わたしは光の髪を持つ者としての使命を全うするためにここにいます」
アリアの言葉にアクィエルは眉をピクリと動かした。
伝説の髪はマリアとクロートしか持っていなかった。
それがもう一人現れたことは歴史的瞬間でもある。
アクィエルはアリアを上から下までじっくり見た。
そして口を開いた。
「貴女の髪はわたしたちと同じ色なのだからどうやって証明しますの?」
「この櫛を使えばすぐにでも戻せます」
アリアはそう言って櫛を取り出し髪を通した。
するとみるみるうちに髪に光沢が現れて、まるで金そのものがそこにあるようだった。
ぼくは思わず見惚れた。
五大貴族以上の上位者に見えたからだ。
まるでマリアさまを初めて見た時と同じ感覚に襲われた。
「ふーん、そうなのですね。まあいいですわ。どうにも話が長くなりそうですし、貴方達はわたしと一緒に来なさい」
アクィエルはぼくたちの意向はお構いなしにすぐさま部屋を出ていこうとする。
だがネツキは慌ててそれを止めようと大声をあげる。
「お待ちください! この者たちは反逆の臣です。ヨハネさまにすぐさま報告して然るべき刑に処さなければなりません!」
どの口が言うかと思ったがぼくたちは成り行きに任せるしかない。
どうにもアクィエルはこちらの事情をある程度分かってくれている気がする。
「反逆? この子たちが何かしましたの?」
「もちろんです! 新しき時代のシルヴィとなられたヨハネさまの手から逃げようとしたのです。ドルヴィもシルヴィ・ゼヌニムもこちらと同盟を組んでいる以上は貴女もこちらに協力するべきでしょう」
熱く語るネツキの言葉を黙って聞くアクィエル。
シルヴィ・ゼヌニムがマリアさまと敵対するというのなら、その娘たるアクィエルも従わないといけない。
しかしアクィエルはただ首を傾げるだけだった。
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