227 / 259
最終章 希望を託されし女神
下僕視点1
しおりを挟む
下僕視点1
これからパラストカーティに向かうが、その前にシュトラレーセから連れて来られるレティアを歓迎するため、城の外で待つ。
馬車がやってきて、ラナがレティアと共に降りてくる。
「皆さま御機嫌よう」
レティアはいつもと同じように、辛い表情を見せずにぼくたちに挨拶をしてくれる。
だが彼女は辛いはずだ。
両親を亡くしただけではなく、家族であるマリアさまも連れて行かれたのだ。
クロートが代表してレティアに挨拶をする。
「よくお越しくださいました。ラナさまもここまで同行頂きありがとうございます。ここからはわたしが引き継ぎます」
「分かりました。そのぉ、アリアは本当に怪我とかしてないですか?」
ラナは恐る恐る尋ねた。
そういえばアリアは謎の仮面たちから無理矢理連れてこられたので、あちらでは大変な騒ぎになったと聞いた。
「ご安心ください。特に外傷もなかったと聞いています」
クロートの言葉を聞いてラナも安心する。
ラナとは一度別れて、レティアと共に今日から住まう部屋へと向かう。
名目はレティアの部屋の準備だが、本来来る前に終わっていることだ。
普通なら怪しいぼくたちの行動だが、シルヴィは分かってて見逃してくれているのだろう。
「皆さん、ありがとうございます。お姉さまが居ないので貴方たちの今後についてはわたくしが責任を持ってシルヴィに交渉します」
「いいえ、レティアさま。今回それは不要です。これからお伝えする真実のため、我々はしばらくこの領土を離れます」
「何かあったのですね」
レティアに自分たちが発見したことを全て話した。
まだ王国院に入ったばかりのレティアには厳しい内容だろう。
どんどん顔が青くなっていく。
「そのようなことが……」
信じられないような話にレティアもなかなか飲み込めない。
だが五大貴族として厳しく躾けられているので、何とか表情を上手く隠している。
怒りの顔が見え隠れしていた。
「パラストカーティは本当の被害者だったかもしれないということね」
「おそらくは」
「そういえば蒼の髪とは一体何でしょう。どうしてそんなに蒼の髪を消し去りたいのでしょう」
思えばそこについては考えてなかった。
マリアさまを狙う魔物も多かった。
蒼の髪というのは一体何なんだ。
「それは聖典を見るしかありません。あれを調べるしか方法はありません」
「そうするとパラストカーティにある最後の聖典を読むしか方法がないのですね」
過去の聖典は全て焼き払われた。
フォアデルヘが見つけ出した偽物の聖典を全領土に配られたからだ。
唯一パラストカーティだけは内乱の責任もあり、聖典を配るのは禁止された。
それが逆に今回の逆転の鍵となる。
「わたくしもここで出来る限りのことはしてみます」
「一体何を為さるおつもりで?」
レティアは自信満々に答える。
「シルヴィ・スヴァルトアルフを味方へ引き入れます」
思いがけないことを言うのは五大貴族の血筋だからだろうか。
だがマリアさまは一度は呆気なく味方にした。
レティアならそれを実現するかもしれない、そんな気にさせる。
「皆さんはこちらを気にせず行ってください。そしてお姉さまを取り戻してください」
「畏まりました。どうか無理をせずお過ごしください」
クロートの挨拶で終わり、ぼくたちは中庭へ移動した。
時間になると仮面の者たちが現れると言っていた。
「それにしてもあの仮面の奴らって何者なんだ?」
「伝承を解けるってことは、他の髪を持っているのかもね。翆、朱、黒の髪はまだ居ないからそのどれかかな」
アリアさまは光の髪を持っている。
そうすると残りの髪を持った人間が居てもおかしくはない。
そんな時視界に映る人物が居た。
仮面の者たちだと思ったが、アリアが鎧を身につけて、ラナと一緒にやってきた。
「皆さんに折り入ってお願いがあります」
ラナの顔はいつになく疲れている。
だいたい予想が付く。
アリアが何か無理を言ったのだろう。
「アリアを連れて行ってください。アリアから考察の件は聞きました。もし伝承について何かあれば彼女は役に立つはずです」
「わたしはマリア姉さまの代わりに頑張ります」
真剣な顔でお願いされるとこちらも断ることができない。
クロートが連れていくかの裁量を持つ。
「わたしは構いません。おそらくこれから伝承について何かしらあるとは思っていましたからね。来てくださるのならこちらこそ有難い」
アリアは喜び大はしゃぎをした。
そしてようやく仮面の者たちもこちらに来る。
「全員揃ったようね」
「はい、ではパラストカーティまで送ってもらえますか?」
「わたしは送らないわ。送るのはその子よ」
仮面の女がアリアを指差した。
これからパラストカーティに向かうが、その前にシュトラレーセから連れて来られるレティアを歓迎するため、城の外で待つ。
馬車がやってきて、ラナがレティアと共に降りてくる。
「皆さま御機嫌よう」
レティアはいつもと同じように、辛い表情を見せずにぼくたちに挨拶をしてくれる。
だが彼女は辛いはずだ。
両親を亡くしただけではなく、家族であるマリアさまも連れて行かれたのだ。
クロートが代表してレティアに挨拶をする。
「よくお越しくださいました。ラナさまもここまで同行頂きありがとうございます。ここからはわたしが引き継ぎます」
「分かりました。そのぉ、アリアは本当に怪我とかしてないですか?」
ラナは恐る恐る尋ねた。
そういえばアリアは謎の仮面たちから無理矢理連れてこられたので、あちらでは大変な騒ぎになったと聞いた。
「ご安心ください。特に外傷もなかったと聞いています」
クロートの言葉を聞いてラナも安心する。
ラナとは一度別れて、レティアと共に今日から住まう部屋へと向かう。
名目はレティアの部屋の準備だが、本来来る前に終わっていることだ。
普通なら怪しいぼくたちの行動だが、シルヴィは分かってて見逃してくれているのだろう。
「皆さん、ありがとうございます。お姉さまが居ないので貴方たちの今後についてはわたくしが責任を持ってシルヴィに交渉します」
「いいえ、レティアさま。今回それは不要です。これからお伝えする真実のため、我々はしばらくこの領土を離れます」
「何かあったのですね」
レティアに自分たちが発見したことを全て話した。
まだ王国院に入ったばかりのレティアには厳しい内容だろう。
どんどん顔が青くなっていく。
「そのようなことが……」
信じられないような話にレティアもなかなか飲み込めない。
だが五大貴族として厳しく躾けられているので、何とか表情を上手く隠している。
怒りの顔が見え隠れしていた。
「パラストカーティは本当の被害者だったかもしれないということね」
「おそらくは」
「そういえば蒼の髪とは一体何でしょう。どうしてそんなに蒼の髪を消し去りたいのでしょう」
思えばそこについては考えてなかった。
マリアさまを狙う魔物も多かった。
蒼の髪というのは一体何なんだ。
「それは聖典を見るしかありません。あれを調べるしか方法はありません」
「そうするとパラストカーティにある最後の聖典を読むしか方法がないのですね」
過去の聖典は全て焼き払われた。
フォアデルヘが見つけ出した偽物の聖典を全領土に配られたからだ。
唯一パラストカーティだけは内乱の責任もあり、聖典を配るのは禁止された。
それが逆に今回の逆転の鍵となる。
「わたくしもここで出来る限りのことはしてみます」
「一体何を為さるおつもりで?」
レティアは自信満々に答える。
「シルヴィ・スヴァルトアルフを味方へ引き入れます」
思いがけないことを言うのは五大貴族の血筋だからだろうか。
だがマリアさまは一度は呆気なく味方にした。
レティアならそれを実現するかもしれない、そんな気にさせる。
「皆さんはこちらを気にせず行ってください。そしてお姉さまを取り戻してください」
「畏まりました。どうか無理をせずお過ごしください」
クロートの挨拶で終わり、ぼくたちは中庭へ移動した。
時間になると仮面の者たちが現れると言っていた。
「それにしてもあの仮面の奴らって何者なんだ?」
「伝承を解けるってことは、他の髪を持っているのかもね。翆、朱、黒の髪はまだ居ないからそのどれかかな」
アリアさまは光の髪を持っている。
そうすると残りの髪を持った人間が居てもおかしくはない。
そんな時視界に映る人物が居た。
仮面の者たちだと思ったが、アリアが鎧を身につけて、ラナと一緒にやってきた。
「皆さんに折り入ってお願いがあります」
ラナの顔はいつになく疲れている。
だいたい予想が付く。
アリアが何か無理を言ったのだろう。
「アリアを連れて行ってください。アリアから考察の件は聞きました。もし伝承について何かあれば彼女は役に立つはずです」
「わたしはマリア姉さまの代わりに頑張ります」
真剣な顔でお願いされるとこちらも断ることができない。
クロートが連れていくかの裁量を持つ。
「わたしは構いません。おそらくこれから伝承について何かしらあるとは思っていましたからね。来てくださるのならこちらこそ有難い」
アリアは喜び大はしゃぎをした。
そしてようやく仮面の者たちもこちらに来る。
「全員揃ったようね」
「はい、ではパラストカーティまで送ってもらえますか?」
「わたしは送らないわ。送るのはその子よ」
仮面の女がアリアを指差した。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる