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第三章 芸術祭といえば秋、なら実りと収穫でしょ!

お転婆姫

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 仮病でベッドに潜り、今日は早めに寝ることにした。
 そして朝の時間になり、わたしは側近たちが集まる前に起き上がった。
 音を立てないようにベッドから出て、昨日の夜に準備した小さな筒を机の引き出しからだした。

「出来てるかしら。……ん?」

 一瞬引き出しの中が光ったような気がした。
 しかし、光るものはないため気のせいか、と筒を開いた。
 すると黒い靄が出て、自分の目の前で形作っていく。
 しばらく待つと、わたしそっくりの人形が現れた。

「うんうん。出来てる、出来てる」


 下僕が昔作ってくれた。自分の髪があれば、それをもとにそっくりさんを作ることができる。
 ただ喋ったりなど人間的活動はできないため、ただの人形としてしか使えない。

「ラケシスに渡したら大変なことになりそうね。さてと」


 わたしは自分の代わりにベッドに入ってもらって、掛け布団で上手く寝ている風を装ってもらう。
 これで大丈夫だろう。
 あとは下僕たちが来るのを待つだけだ。
 わたしは窓を開けて、準備が出来ている合図をした。
 少しだけ待つと、ヴェルダンディと下僕が騎獣で空を飛んできた。

「あんまり我儘過ぎますとステラから怒られますよ」

 ヴェルダンディがわたしの手を引きながら苦笑いをしていた。

「しょうがないです。今日は何よりも重要視しないといけないことですから」
「どうかバレないことを祈ります。近くに馬車を用意しましたので行きましょうか」

 下僕は神に一度祈った。

「ええ、それにしても懐かしいわね。この三人で抜け出すのも」

 わたしの言葉を聞いて、二人は同時に仕方ないな、という顔をした。
 騎獣で下まで降りてそこから歩いて馬車まで向かった。
 まだ早朝のため誰もいなかった。
 問題なく馬車に乗り、コロシアムがある王都へ向かった。

「今日は活気が凄いわね」

 窓から外を眺めると平民たちが大勢歩いていた。
 子供達も楽しそうに外を走り回り、至る所に映像の魔道具がコロシアムの中を映し出していた。

「平民からしたらやっぱり貴族の魔法は奇跡の力に見えるからでしょうね。それに王族の方も出るとなれば、誰もが見ようとするのは当たり前かもしれません」
「ふーん、俺たちは生まれた時からあったからなんか変な感じだな。ところでマリアさま?」
「どうかしましたか?」


 ヴェルダンディが何かを思い出したようで、わたしに話を振った。

「マンネルハイムを見るための招待状かチケットはお持ちですか? 流石に昨日の今日で入手できるものではありませんが」
「え……?」


 よく意味が分からず固まった。

「いつも顔を見せたら、五大貴族の席へ案内してくれましたよ」
「でも今回お忍びだからそれもできないでしょ?」


 しまったーー!
 考えてみれば今日はお忍びで来たのだ。
 もし五大貴族として入れば、誰かの耳に入ることは間違いない。
 わたしは叱られるだけで済むが、この二人にどのような罰がいくかが分からない。
 しかし下僕が懐から三枚のチケットを取り出した。


「偶然にも少し前に三枚分のチケットを手に入れました。中級貴族の席なので、五大貴族や上級貴族の席よりは快適ではないので我慢してくださいね」
「うんうん、するする! もぉ今日の下僕はカッコいい!」

 下僕がここまで先を読んで実行してくれるなんて。
  これで何も障害なく試合を観られる。
 わたしは下僕が用意してくれた金髪のウィッグを付けた。
 蒼の髪だと一発でバレてしまうためだ。

「では受付でチケットを提示してきますね」

 下僕がチケットを受付まで持っていき、しばらくすると帰ってきた。

「今日は上級貴族の席が三席だけ偶然空いたのでそこで観てもいいそうです」
「おお、ラッキーだな。なら結構いい席だな」

 まさかここでも幸運が発動するなんて。
 わたしはウキウキしながらコロシアムの中へ入っていった。
 席は一番前であり、かなり観やすい場所であった。
 椅子に座って、開始まで待つことにした。

「おいおい、流石に席が空いたからって中級貴族をこんな席に案内するか? ……もしや」

 ヴェルダンディは少し怪訝な顔で下僕を見た。
 一体何を疑っているのか

「わたくしがいるから運が移ったのでしょう。いつウィリアノスさまが出てくるかしら」

 わたしは特に気にせず、試合が始まるまで待つことにした。

「皆さま、大変お待たせしました。これより、領土対抗マンネルハイムを始めます。本日は王族が率いる王領とスヴァルトアルフ領の戦いとなります。王領には、マリア・ジョセフィーヌさまの婚約者であらせられるウィリアノスさまが参戦だ!」

 会場から大きな拍手が送られる。
 ウィリアノスさまは魔力量も多く、騎士の課程も履修しているので、卒業前にも関わらず参加が出来るのだ。
 わたしは心の中で想い人を応援するのだった。
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