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第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!
圧倒的才能
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騎獣の能力はその使い手に依存する。
魔力で作られる騎獣は術者が望む力を再現するのだ。
サイズを大きく、力を強く、そして滑空を速く。
セルランの水竜は風竜ですら追いつけない。
魔力の差は特性の差を覆すのだ。
特にセルランは五大貴族の血を引いている。
生まれながらの天才が努力をした結果を再現しているのが、セルランという騎士であった。
「おい、仲間を置いていくのは団体行動を乱すことじゃないのか!」
ヴェルダンディはセルランの行動を予想していた。
すぐに迎撃のため前に出て、少しでも動揺を誘えないかと言葉で攻めた。
しかしセルランは一笑に付した。
「それが許されるのが私の実績だ」
トライードを手に持ちヴェルダンディに一撃を加えた。
ヴェルダンディはしっかりその攻撃を読んでしっかりトライードで受け止めた。
お互いの水竜が交差してそのまま流れていった。
「わたくしも忘れては困ります!」
ルキノも連携すべく、セルランが逃げる先を読んで追撃を行った。
「いけえ! 」
ヴェルダンディが叫んだ。
強敵用に練習した連携だ。
騎士祭では使うほどの手練れがいなかったが、セルランでこの練習の成果を試す。
「やるな、だがまだ動きが遅い!」
お互いの水竜が並行で走り、トライードを何度もぶつけ合った。
亜魔導アーマーの力で強化されているので、セルランに力負けはしない。
「この程度か!」
セルランは挑発する。
しかしルキノは少しばかり楽しげに否定した。
「いいえ、あと一人います」
「覚悟!」
セルランはハッと気付いた。
頭上から降りてくるもう一人の敵。
メルオープが三人目の連携を行ったのだ。
「いい連携だ。だがまだ甘く見ているようだな」
セルランはルキノの剣を振り払い、手から弾き飛ばした。
無力化したルキノには目をくれず頭上に迫るメルオープを受け止めた。
加速度と体重の乗った一撃でもセルランは鍛え抜かれた筋力で受け止める。
彼こそが最強の騎士だ。
たとえ、王国院でトップの騎士であろうとも彼を超えることはできない。
剣で受け流してまた体勢を整えた。
そこでタイミング良くエルトがやってきた。
「速いよ、セルラン」
「いいところできた。久々あれをやろう」
「おっ、いいね。最強の騎士の連携技」
エルトはセルランの申し出に承諾してトライードを構えた。
「お前たちの動きは良くなっているが、まだまだ個として不足している。だが成長しているのも事実。一人で相手してやろうかと思ったが、想像以上に成長したお前らにこちらも敬意を示そう」
セルランとエルトは剣を交差して決意を述べた。
「我はスヴァルトアルフを守護する騎士。闇の神は全てを闇で覆いつくし、光を待つ者なり。最高神の片割れが賜った土地を守るため我は汝の敵を倒してみせよう」
「我はマリア・ジョセフィーヌを守護する騎士。水の神から賜った蒼の髪を継承する姫を守る者なり。我が主君を守るため御方の敵を討ち滅ぼさん」
お互いの宣誓が終わると同時に飛翔して、ヴェルダンディのもとへと向かった。
高速で動きながら、お互いが場所を交代して動きを惑わせる。
息が合った動きは全く騎獣がぶつかることなく進んでいく。
ヴェルダンディは迎え撃とうとしたが、二人の攻撃が同時にきた。
刃のない剣だが、それでもハンマーで叩かれたような衝撃が全身を襲った。
「かはっ!」
最強の二人の攻撃をどちらも防ぐことができず、ヴェルダンディは意識を失って水竜から落ちていった。
「ヴェルダンディ!」
ルキノは必死に叫んだが、ヴェルダンディは意識が覚めることなく今回は脱落となった。
「仲間を心配している場合か?」
セルランはもうすでにルキノに迫っていた。
「しまった!?」
ヴェルダンディと同じように落とすつもりだ。
しかしそれを阻止しようとする戦士がいた。
「させるか!」
メルオープがルキノを守るため間に割って入る。
「こっちだよ、セルラン」
メルオープの頭上にすでにエルトがいた。
セルランは水竜を加速させたままメルオープへ突進させ、自身は空へと舞い上がってエルトの腕に捕まった。
水竜とメルオープはぶつかり衝撃によって下へと落ちていった。
だがルキノはそちらを心配している暇はない。
エルトはセルランを掴むとそれを上にあげて、腕力でルキノの方へ投げたのだ。
セルランとルキノのトライードがぶつかった。
しかし二人の力量はヴェルダンディ以上に離れている。
一瞬でトライードを吹き飛ばして、拘束の魔法をかけて地面へと落とした。
風の魔法で落ちる速度はゆっくりにしているので怪我はない。
「すごいですわね、セルランとエルトの連携。ヴェルダンディたちが一瞬でやられるなんて」
わたしはセルランと他の騎士とのレベル差を初めて実感した。
ヴェルダンディは今の王国院では騎士の力量ではトップといっても過言ではない。
それなのに全く歯牙にかけないのだ。
レティアも興奮気味に呟いた
「わたくしもセルランの試合を初めてみました。あれほどお強いのに、毎年マンネルハイムは負けていたのですか?」
そういえばレティアは去年より前の王国院を知らないんでしたわね。
「セルランとエルトは入学してからずっとこの土地の代表で大人のマンネルハイムに参加していたの。二人とも学生のレベルを超えているから、少しでも実戦の機会を増やすためにね。だからあのように息があっているのよ」
「そうなのですね。レイナ! またセルランが倒しましたよ!」
「レティアさま、どうかご容赦ください」
良かれと思っての言葉だろうが、レイナをあまりいじめないように。
わたしはレティアに注意する。
「レティア。人の恋路に口を出すものではありません。これはレイナの問題です。お節介は身を滅ぼしますわよ」
「わかりました。ごめんなさい、レイナ」
「い、いえ。お気になさらず。マリアさま、ありがとうございます」
レイナもホッとしてくれたので、わたしは良かったと思う。
せっかくなのでレイナにも集中して観てもらいたい。
わたしはふと黒い鎧が目に入った。
……あれ? あの色の亜魔導アーマーって?
ほぼ全ての亜魔導アーマーは薄い青色なのに、その鎧は黒色だった。
そしてその色違いは覚えがあった。
「げ、下僕!?」
そう、黒色の亜魔導アーマーは下僕に授けたものだ。
しかし、それはありえない。
騎士課程を履修していない下僕は参加できないはずだ。
特別に参加できるのは指揮官一人だけ。
しかし今回の指揮官は別の騎士が行なっている。
ではなぜ下僕がいるのか。
「レイナ、ラケシス。どうして文官である下僕が参加しているの?」
「っえ!? ……本当ですね。騎士じゃないはずなのにどうやって」
「簡単ですよ。下僕は騎士課程を履修していましたから」
ラケシスが当然のように答えた。
わたしはえっ、と声をもらした。
一体いつのまにそんなことをしていたのだ。
それよりもわたしが与える仕事もあるのに、どうやって時間を捻出したのだ?
確かに他の課程を受けることはできるがほとんどの者はしない。
なぜなら一つの課程すら大変なのにそれも全く別種の課程を取ろうとするなど普通の人ならしない。
それも魔力量が大きく関係する騎士を、中級貴族であり文官の家系である下僕が目指すのはあまり良い考えとは思えない。
セルランも下僕に気付いたようで、下僕の前に立ちはだかった。
「貴様か。そういえばヴェルダンディから学んでいるだったな」
セルランはトライードを下僕に向けて水竜を加速させた。
魔力で作られる騎獣は術者が望む力を再現するのだ。
サイズを大きく、力を強く、そして滑空を速く。
セルランの水竜は風竜ですら追いつけない。
魔力の差は特性の差を覆すのだ。
特にセルランは五大貴族の血を引いている。
生まれながらの天才が努力をした結果を再現しているのが、セルランという騎士であった。
「おい、仲間を置いていくのは団体行動を乱すことじゃないのか!」
ヴェルダンディはセルランの行動を予想していた。
すぐに迎撃のため前に出て、少しでも動揺を誘えないかと言葉で攻めた。
しかしセルランは一笑に付した。
「それが許されるのが私の実績だ」
トライードを手に持ちヴェルダンディに一撃を加えた。
ヴェルダンディはしっかりその攻撃を読んでしっかりトライードで受け止めた。
お互いの水竜が交差してそのまま流れていった。
「わたくしも忘れては困ります!」
ルキノも連携すべく、セルランが逃げる先を読んで追撃を行った。
「いけえ! 」
ヴェルダンディが叫んだ。
強敵用に練習した連携だ。
騎士祭では使うほどの手練れがいなかったが、セルランでこの練習の成果を試す。
「やるな、だがまだ動きが遅い!」
お互いの水竜が並行で走り、トライードを何度もぶつけ合った。
亜魔導アーマーの力で強化されているので、セルランに力負けはしない。
「この程度か!」
セルランは挑発する。
しかしルキノは少しばかり楽しげに否定した。
「いいえ、あと一人います」
「覚悟!」
セルランはハッと気付いた。
頭上から降りてくるもう一人の敵。
メルオープが三人目の連携を行ったのだ。
「いい連携だ。だがまだ甘く見ているようだな」
セルランはルキノの剣を振り払い、手から弾き飛ばした。
無力化したルキノには目をくれず頭上に迫るメルオープを受け止めた。
加速度と体重の乗った一撃でもセルランは鍛え抜かれた筋力で受け止める。
彼こそが最強の騎士だ。
たとえ、王国院でトップの騎士であろうとも彼を超えることはできない。
剣で受け流してまた体勢を整えた。
そこでタイミング良くエルトがやってきた。
「速いよ、セルラン」
「いいところできた。久々あれをやろう」
「おっ、いいね。最強の騎士の連携技」
エルトはセルランの申し出に承諾してトライードを構えた。
「お前たちの動きは良くなっているが、まだまだ個として不足している。だが成長しているのも事実。一人で相手してやろうかと思ったが、想像以上に成長したお前らにこちらも敬意を示そう」
セルランとエルトは剣を交差して決意を述べた。
「我はスヴァルトアルフを守護する騎士。闇の神は全てを闇で覆いつくし、光を待つ者なり。最高神の片割れが賜った土地を守るため我は汝の敵を倒してみせよう」
「我はマリア・ジョセフィーヌを守護する騎士。水の神から賜った蒼の髪を継承する姫を守る者なり。我が主君を守るため御方の敵を討ち滅ぼさん」
お互いの宣誓が終わると同時に飛翔して、ヴェルダンディのもとへと向かった。
高速で動きながら、お互いが場所を交代して動きを惑わせる。
息が合った動きは全く騎獣がぶつかることなく進んでいく。
ヴェルダンディは迎え撃とうとしたが、二人の攻撃が同時にきた。
刃のない剣だが、それでもハンマーで叩かれたような衝撃が全身を襲った。
「かはっ!」
最強の二人の攻撃をどちらも防ぐことができず、ヴェルダンディは意識を失って水竜から落ちていった。
「ヴェルダンディ!」
ルキノは必死に叫んだが、ヴェルダンディは意識が覚めることなく今回は脱落となった。
「仲間を心配している場合か?」
セルランはもうすでにルキノに迫っていた。
「しまった!?」
ヴェルダンディと同じように落とすつもりだ。
しかしそれを阻止しようとする戦士がいた。
「させるか!」
メルオープがルキノを守るため間に割って入る。
「こっちだよ、セルラン」
メルオープの頭上にすでにエルトがいた。
セルランは水竜を加速させたままメルオープへ突進させ、自身は空へと舞い上がってエルトの腕に捕まった。
水竜とメルオープはぶつかり衝撃によって下へと落ちていった。
だがルキノはそちらを心配している暇はない。
エルトはセルランを掴むとそれを上にあげて、腕力でルキノの方へ投げたのだ。
セルランとルキノのトライードがぶつかった。
しかし二人の力量はヴェルダンディ以上に離れている。
一瞬でトライードを吹き飛ばして、拘束の魔法をかけて地面へと落とした。
風の魔法で落ちる速度はゆっくりにしているので怪我はない。
「すごいですわね、セルランとエルトの連携。ヴェルダンディたちが一瞬でやられるなんて」
わたしはセルランと他の騎士とのレベル差を初めて実感した。
ヴェルダンディは今の王国院では騎士の力量ではトップといっても過言ではない。
それなのに全く歯牙にかけないのだ。
レティアも興奮気味に呟いた
「わたくしもセルランの試合を初めてみました。あれほどお強いのに、毎年マンネルハイムは負けていたのですか?」
そういえばレティアは去年より前の王国院を知らないんでしたわね。
「セルランとエルトは入学してからずっとこの土地の代表で大人のマンネルハイムに参加していたの。二人とも学生のレベルを超えているから、少しでも実戦の機会を増やすためにね。だからあのように息があっているのよ」
「そうなのですね。レイナ! またセルランが倒しましたよ!」
「レティアさま、どうかご容赦ください」
良かれと思っての言葉だろうが、レイナをあまりいじめないように。
わたしはレティアに注意する。
「レティア。人の恋路に口を出すものではありません。これはレイナの問題です。お節介は身を滅ぼしますわよ」
「わかりました。ごめんなさい、レイナ」
「い、いえ。お気になさらず。マリアさま、ありがとうございます」
レイナもホッとしてくれたので、わたしは良かったと思う。
せっかくなのでレイナにも集中して観てもらいたい。
わたしはふと黒い鎧が目に入った。
……あれ? あの色の亜魔導アーマーって?
ほぼ全ての亜魔導アーマーは薄い青色なのに、その鎧は黒色だった。
そしてその色違いは覚えがあった。
「げ、下僕!?」
そう、黒色の亜魔導アーマーは下僕に授けたものだ。
しかし、それはありえない。
騎士課程を履修していない下僕は参加できないはずだ。
特別に参加できるのは指揮官一人だけ。
しかし今回の指揮官は別の騎士が行なっている。
ではなぜ下僕がいるのか。
「レイナ、ラケシス。どうして文官である下僕が参加しているの?」
「っえ!? ……本当ですね。騎士じゃないはずなのにどうやって」
「簡単ですよ。下僕は騎士課程を履修していましたから」
ラケシスが当然のように答えた。
わたしはえっ、と声をもらした。
一体いつのまにそんなことをしていたのだ。
それよりもわたしが与える仕事もあるのに、どうやって時間を捻出したのだ?
確かに他の課程を受けることはできるがほとんどの者はしない。
なぜなら一つの課程すら大変なのにそれも全く別種の課程を取ろうとするなど普通の人ならしない。
それも魔力量が大きく関係する騎士を、中級貴族であり文官の家系である下僕が目指すのはあまり良い考えとは思えない。
セルランも下僕に気付いたようで、下僕の前に立ちはだかった。
「貴様か。そういえばヴェルダンディから学んでいるだったな」
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