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第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!
百人力の戦士たち
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ガイアノスの次期国王宣言も終わり、王国院の学生は全員で踊りを踊った。
問題なく終わり、次はマンネルハイムの準備となった。
ウィリアノスさまは帰ってこないため、わたしはレティアと仲良く雑談していた。
だが唐突に嫌な声が聞こえてきて、自然とそちらに耳が傾いた。
「おーほほほ、今日はマリアさんのいない戦いですから、みなさん手加減してあげるのですよ!」
「「はい!」」
気絶から立ち直ったアクィエルは無事参加できたようだ。
これ見よがしにわたしの方を向いてアピールをしてくるので、ここから魔法を放ってもいいだろうか。
しかし、アクィエルの言う通り今回はわたしが出場しないので一抹の不安があった。
アクィエルが参加するためか、相手の選手たちはやる気十分だ。
わたしが焦っているとレイナがわたしに飲み物を持ってきた。
「マリアさま、レティアさま、喉が乾くと思いましたので冷たい水をお持ちしました」
「ありがとう。ねえ、レイナの騎獣で少しだけでもあの場に連れて行ってくれませんか?」
このままわたしがやる気を出させずに負けるのだけはいやだ。
しかしレイナは首を振った。
「いけません。マリアさまは病み上がりなのですから。サラスももし一歩でもここを離れたら、部屋へ戻すと言っておりましたよ」
わたしはシクシクとみんなに激励することを諦めた。
このままアクィエルにぼろ負けするなんていやだ。
相手は亜魔導アーマーを用意するほどこちらを倒す気概できている。
よく見ると参加選手たちも上級貴族がかなり増えている。
「お願いします。みなさん、頑張ってください!」
わたしは天に祈って今日の勝利を願うとレイナがクスクスと笑っていた。
「ちょっとレイナ! こっちはこんなに真剣なのに!」
「いえ、もういいですかね」
レイナはわたしではなくサラスの方を向いて許可を求めていた。
一体何の許可が必要なのか思っていると観客たちが大きな歓声をあげた。
わたしも釣られて見てみると、わたし自身驚くことになった。
「マリアさまを驚かせようとヴェルダンディたちには秘密にしてもらってたんです。驚かれましたか?」
レイナに言われるまでもなく驚くしかない。
今日出場している大多数の騎士たちが、フルプレートを身に付けているのだ。
そう、亜魔導アーマーを数人どころか百人は身に付けでいるのではないだろうか。
「いつもの騎士祭なら騎士を志望する者しか出場できないから、邪魔になる下級貴族や中級貴族はほとんど出場しないのですが、マリアさまがたくさんの鎧を準備してくれたから出場したいという者たちが多かったそうです」
おそらくアクィエルたちも知らなかったのだろう。
口をあんぐりと開けて想定外に対応できない。
「ちょっと貴方達! どうして三着しか用意できませんの! こっちも百着くらい用意しなさいよ!」
「無理ですよ。あれ一着にどれほどお金が掛かると思っているのですか。たとえ五大貴族の潤沢な資金といえどもこれが限界です。ん? おい、なんで上級貴族であるヴェルダンディがあの鎧を身に付けているんだ?」
わたしはその声を聞いてヴェルダンディを探した。
するとこちらに大きく手を振っている先頭にいる魔導アーマーを身に付けている騎士が見えた。
それを後ろから叩いている兜を外した女性の姿も。
「あれは、ルキノ? そうするともしかして……」
わたしはじーっと見ていると、兜を外して再度こちらに手を振ってくれたのは間違いなくヴェルダンディだった。
先頭にいるのでヴェルダンディではないかと思っていたが、間違いないようだ。
わたしはそこで疑問が湧いてきた。
あれは下級、中級貴族用の鎧ではなかっただろうか。
「魔鉱石の加工に成功して、魔導アーマーに取り入れてみたのです。魔力の許容量も増えて、上級貴族でも使えるようになりました。まだ数は少ないですが、ヴェルダンディやルキノの動きもさらに速くなっているのですよ」
アスカがわたしに説明してくれる。
まさかこの短い期間で魔鉱石を活用してくれるなんて。
だいぶ無理をしたのだろう。
「マリアさまを喜ばせるために頑張ったと言っておりました。そうですよね、カオディさま」
アスカがそう言うと、シュティレンツの領主候補生であり、魔導アーマーの総責任者でもあるカオディがやってきた。
何故だか今日は自信満々にローブを身に付けて格好をつけている。
「いかにも。シュティレンツの魔鉱石はこちらの重鎮がマリアさまに大変失礼なことをしたため献上することになったと聞いております。わたしどもにはもうこないものだと思っていましたが、マリアさまが研究のために送ってくださったおかげで今日の騎士祭に間に合いました。おそらくセルランさまにも劣らない力を見せてくださるでしょう」
「ほう、面白い。ヴェルダンディと今度手合わせをしてみようじゃないか」
セルランは興味深くヴェルダンディを見ている。
下僕でさえ、レイモンド相手に倒れない性能を発揮した魔導アーマーだ。
もしヴェルダンディが使えば信じられない力を発揮するはずだ。
ヴェルダンディが指揮官として、騎士たちを鼓舞した。
「騎士たちよ! この鎧をお与えになったマリアさまが病み上がりの中、無理をして来てくださったぞ! 少しでも感謝と忠誠の気持ちがあるのなら今ここで示せ! 我らが姫に勝利を届けよ!」
「我らが姫に勝利を!」
全員で足を踏んで、ゼヌニム領の者たちに威圧を見せた。
さすがに戦力の差に気付いた敵は全員が戦意を失ってしまっている。
だがアクィエルだけはまだ諦めていない。
「何を怯えていますか! たとえ相手がどんな力を持とうと気持ちで負けてはいけません! こうなったらわたくしが前に!」
「アクィエルさま、お許しを」
「ついてきなーー。むにゃむにゃ」
アクィエルの護衛騎士であるレイモンドは流石にこの戦力差に勝ちはなしと見極めて魔法で眠らせた。
そして試合の開始が告げられるとすぐに雄叫びのような熱い声が響き渡った。
「我らパラストカーティはマリアさまの剣である。我が領土の勇者たちよ。臆することなく攻め込め! 今日までの特訓の成果を示すときがきた。メルオープ・パラストカーティに遅れるな!」
「「我らはマリアさまの剣なり!」」
パラストカーティの領主候補生であるメルオープも同じく亜魔導アーマーを身につけている。
それに続く騎士たちも魔導アーマーを身に付けており、特に目立つ色の鎧に気が付いた。
ルージュたちも参加して、メルオープの後に続いていた。
鬼神のような力を発揮して瞬く間に制圧してしまった。
これほどまで強いとわたしが考えた小細工なんて全く必要がなさそうだ。
「よし、次の試合も気を抜くな! 優勝を取りに行くぞ!」
ヴェルダンディが指揮官として全員を鼓舞していく。
決勝は今回はスヴァルトアルフ領だったが、やはり亜魔導アーマーを身に付けたわたしたちの圧勝だ。
これで魔法祭に続いて、騎士祭でもマンネルハイムは優勝を飾った。
そして勝利を終えた騎士たちを労うため、一度こちら側の席側まで来てもらった。
「みなさん、魔法祭だけでなく騎士祭でもマンネルハイム優勝ありがとうございます。わたくしが居ない間でも全員が優勝に向けて準備したおかげでこの結果となったのでしょう」
「へへ、マリアさまがあちらで頑張っているって聞いてましたから、俺たちも自分たちの出来ることをやりました。いくらでも頼ってください」
「ヴェルダンディ……」
そうだ。
わたしだけ頑張る必要はない。
こうやってわたしのために、いっぱい頭を悩ましたり、力を合わせたりしてくれる者たちがいる。
上に立つ者は付いてくる者を信じて、ドッシリと玉座でふんぞり返っていればいいのだ。
だってわたしがいなくともこれほどの成果を出してくれるのだから。
「ええ、貴方たちがわたしの領土の民でよかったです。これからもわたくしを支えてくださいね」
「もちろんです。我らの女神よ」
ヴェルダンディたち全員が頭を下げてこちらに忠誠を誓う。
わたしはこれからも頑張ろうと思う。
まだまだこの領土を盛り立てなくちゃ。
さんさんと輝く太陽もわたしたちを祝ってくれている気がした。
今の彼らには水の神以外にも火の神の加護があるのだろう。
問題なく終わり、次はマンネルハイムの準備となった。
ウィリアノスさまは帰ってこないため、わたしはレティアと仲良く雑談していた。
だが唐突に嫌な声が聞こえてきて、自然とそちらに耳が傾いた。
「おーほほほ、今日はマリアさんのいない戦いですから、みなさん手加減してあげるのですよ!」
「「はい!」」
気絶から立ち直ったアクィエルは無事参加できたようだ。
これ見よがしにわたしの方を向いてアピールをしてくるので、ここから魔法を放ってもいいだろうか。
しかし、アクィエルの言う通り今回はわたしが出場しないので一抹の不安があった。
アクィエルが参加するためか、相手の選手たちはやる気十分だ。
わたしが焦っているとレイナがわたしに飲み物を持ってきた。
「マリアさま、レティアさま、喉が乾くと思いましたので冷たい水をお持ちしました」
「ありがとう。ねえ、レイナの騎獣で少しだけでもあの場に連れて行ってくれませんか?」
このままわたしがやる気を出させずに負けるのだけはいやだ。
しかしレイナは首を振った。
「いけません。マリアさまは病み上がりなのですから。サラスももし一歩でもここを離れたら、部屋へ戻すと言っておりましたよ」
わたしはシクシクとみんなに激励することを諦めた。
このままアクィエルにぼろ負けするなんていやだ。
相手は亜魔導アーマーを用意するほどこちらを倒す気概できている。
よく見ると参加選手たちも上級貴族がかなり増えている。
「お願いします。みなさん、頑張ってください!」
わたしは天に祈って今日の勝利を願うとレイナがクスクスと笑っていた。
「ちょっとレイナ! こっちはこんなに真剣なのに!」
「いえ、もういいですかね」
レイナはわたしではなくサラスの方を向いて許可を求めていた。
一体何の許可が必要なのか思っていると観客たちが大きな歓声をあげた。
わたしも釣られて見てみると、わたし自身驚くことになった。
「マリアさまを驚かせようとヴェルダンディたちには秘密にしてもらってたんです。驚かれましたか?」
レイナに言われるまでもなく驚くしかない。
今日出場している大多数の騎士たちが、フルプレートを身に付けているのだ。
そう、亜魔導アーマーを数人どころか百人は身に付けでいるのではないだろうか。
「いつもの騎士祭なら騎士を志望する者しか出場できないから、邪魔になる下級貴族や中級貴族はほとんど出場しないのですが、マリアさまがたくさんの鎧を準備してくれたから出場したいという者たちが多かったそうです」
おそらくアクィエルたちも知らなかったのだろう。
口をあんぐりと開けて想定外に対応できない。
「ちょっと貴方達! どうして三着しか用意できませんの! こっちも百着くらい用意しなさいよ!」
「無理ですよ。あれ一着にどれほどお金が掛かると思っているのですか。たとえ五大貴族の潤沢な資金といえどもこれが限界です。ん? おい、なんで上級貴族であるヴェルダンディがあの鎧を身に付けているんだ?」
わたしはその声を聞いてヴェルダンディを探した。
するとこちらに大きく手を振っている先頭にいる魔導アーマーを身に付けている騎士が見えた。
それを後ろから叩いている兜を外した女性の姿も。
「あれは、ルキノ? そうするともしかして……」
わたしはじーっと見ていると、兜を外して再度こちらに手を振ってくれたのは間違いなくヴェルダンディだった。
先頭にいるのでヴェルダンディではないかと思っていたが、間違いないようだ。
わたしはそこで疑問が湧いてきた。
あれは下級、中級貴族用の鎧ではなかっただろうか。
「魔鉱石の加工に成功して、魔導アーマーに取り入れてみたのです。魔力の許容量も増えて、上級貴族でも使えるようになりました。まだ数は少ないですが、ヴェルダンディやルキノの動きもさらに速くなっているのですよ」
アスカがわたしに説明してくれる。
まさかこの短い期間で魔鉱石を活用してくれるなんて。
だいぶ無理をしたのだろう。
「マリアさまを喜ばせるために頑張ったと言っておりました。そうですよね、カオディさま」
アスカがそう言うと、シュティレンツの領主候補生であり、魔導アーマーの総責任者でもあるカオディがやってきた。
何故だか今日は自信満々にローブを身に付けて格好をつけている。
「いかにも。シュティレンツの魔鉱石はこちらの重鎮がマリアさまに大変失礼なことをしたため献上することになったと聞いております。わたしどもにはもうこないものだと思っていましたが、マリアさまが研究のために送ってくださったおかげで今日の騎士祭に間に合いました。おそらくセルランさまにも劣らない力を見せてくださるでしょう」
「ほう、面白い。ヴェルダンディと今度手合わせをしてみようじゃないか」
セルランは興味深くヴェルダンディを見ている。
下僕でさえ、レイモンド相手に倒れない性能を発揮した魔導アーマーだ。
もしヴェルダンディが使えば信じられない力を発揮するはずだ。
ヴェルダンディが指揮官として、騎士たちを鼓舞した。
「騎士たちよ! この鎧をお与えになったマリアさまが病み上がりの中、無理をして来てくださったぞ! 少しでも感謝と忠誠の気持ちがあるのなら今ここで示せ! 我らが姫に勝利を届けよ!」
「我らが姫に勝利を!」
全員で足を踏んで、ゼヌニム領の者たちに威圧を見せた。
さすがに戦力の差に気付いた敵は全員が戦意を失ってしまっている。
だがアクィエルだけはまだ諦めていない。
「何を怯えていますか! たとえ相手がどんな力を持とうと気持ちで負けてはいけません! こうなったらわたくしが前に!」
「アクィエルさま、お許しを」
「ついてきなーー。むにゃむにゃ」
アクィエルの護衛騎士であるレイモンドは流石にこの戦力差に勝ちはなしと見極めて魔法で眠らせた。
そして試合の開始が告げられるとすぐに雄叫びのような熱い声が響き渡った。
「我らパラストカーティはマリアさまの剣である。我が領土の勇者たちよ。臆することなく攻め込め! 今日までの特訓の成果を示すときがきた。メルオープ・パラストカーティに遅れるな!」
「「我らはマリアさまの剣なり!」」
パラストカーティの領主候補生であるメルオープも同じく亜魔導アーマーを身につけている。
それに続く騎士たちも魔導アーマーを身に付けており、特に目立つ色の鎧に気が付いた。
ルージュたちも参加して、メルオープの後に続いていた。
鬼神のような力を発揮して瞬く間に制圧してしまった。
これほどまで強いとわたしが考えた小細工なんて全く必要がなさそうだ。
「よし、次の試合も気を抜くな! 優勝を取りに行くぞ!」
ヴェルダンディが指揮官として全員を鼓舞していく。
決勝は今回はスヴァルトアルフ領だったが、やはり亜魔導アーマーを身に付けたわたしたちの圧勝だ。
これで魔法祭に続いて、騎士祭でもマンネルハイムは優勝を飾った。
そして勝利を終えた騎士たちを労うため、一度こちら側の席側まで来てもらった。
「みなさん、魔法祭だけでなく騎士祭でもマンネルハイム優勝ありがとうございます。わたくしが居ない間でも全員が優勝に向けて準備したおかげでこの結果となったのでしょう」
「へへ、マリアさまがあちらで頑張っているって聞いてましたから、俺たちも自分たちの出来ることをやりました。いくらでも頼ってください」
「ヴェルダンディ……」
そうだ。
わたしだけ頑張る必要はない。
こうやってわたしのために、いっぱい頭を悩ましたり、力を合わせたりしてくれる者たちがいる。
上に立つ者は付いてくる者を信じて、ドッシリと玉座でふんぞり返っていればいいのだ。
だってわたしがいなくともこれほどの成果を出してくれるのだから。
「ええ、貴方たちがわたしの領土の民でよかったです。これからもわたくしを支えてくださいね」
「もちろんです。我らの女神よ」
ヴェルダンディたち全員が頭を下げてこちらに忠誠を誓う。
わたしはこれからも頑張ろうと思う。
まだまだこの領土を盛り立てなくちゃ。
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