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第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!
アビへの詰問
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セルランが眠りについたようなので、クロートがマントをセルランの頭の位置に敷いた。
地上も危険なため、もうしばらくすればレイナたちが来てくれるはずだ。
そうなれば応急処置ができるので、セルランも大丈夫だろう。
一応クロートが見る限りでは、レイナたちがやってくる頃に手当をすれば命に別状はないだろうとのこと。
「まさかセルランをあそこまで追い詰める魔物がいるとは……。他の騎士たちも高名な方達であったのにこのような事態になるとは」
ステラの言う通りだ。
セルランは十五になったばかりだが、もうこの年で称号を授与されている。
すべての領土にその名前は知られており、数多くの勧誘を蹴ってわたしを選んでくれたのだ。
その最強の騎士がここまでボロボロになって、ギリギリの戦いをしていたのだ。
本来はセルランだけでも勝てる未来だったが、完全に体力を使い切ってしまうため、ネツキになす術もなく殺されてしまう。
もし仮に生き残っていたとしても、命を維持する体力すらなかっただろう。
「ステラはあの魔物は知っていますか?」
「わたくしの知らない魔物です。おそらくセルランも知らないでしょう。なぜこのような洞窟にこんな魔物がいるのか……。クロートは何か心当たりがありますでしょうか?」
ステラはクロートに尋ねた。
クロートは博識なため、もしかしたら何か気付くことがあるかもしれない。
クロートはメガネを上げて何やら考え込む。
「魔物には心当たりはありませんが。気になることを言っていましたね。その髪は始末すると」
わたしも聞いた言葉だ。
魔物が喋ったことには驚いたが、すぐにでもセルランを助けないといけないと考えたおかげで容赦なく魔法を発動できた。
だがあの物言いではまるでこの髪の色に敵意を持っている感じだった。
「普通あの戦いの場で髪色について気にかけるとは思えません。どうやらこの伝承の場所を守っているのは何か理由があったのかもしれませんね」
クロートの言う通りなのだろうが気にかかることが多い。
どうして魔物がこの場所にいる必要があり、更に蒼の髪について警戒するのか。
話しているうちにレイナとラケシスがアビ・シュティレンツを呼んできたようで、水竜に乗ってやってきた。
「セルラン!? 急いで治療を!」
レイナは顔を青くしてセルランに治癒の魔法をかけた。
傷を塞いだので、これで出血で死ぬことはなくなるだろう。
セルランの顔も少しばかり良くなっている気がする。
レイナもホッとした表情であり、わたしも声をかけた。
「ご苦労様。来てもらったばかりでごめんなさいね。貴女がいて助かった」
「マリアさまもご無事でよかったーー」
「姫さまは怪我はありませんか!」
レイナの言葉を遮って、ラケシスがわたしの体を触って怪我がないかを確認する。
一通り見てどこも怪我していないことを確認してホッと息を吐いた。
「心配をお掛けしましたね。わたくしとクロートの魔法で一撃でしたので全く無事よ」
少しばかり置いてけぼりだったアビもやっとこちらも余裕ができて話しかけてきた。
「ここが祭壇なのですね、はい。まだネツキ殿は来てないので、マリアさまの勝ちのようです、はい」
アビは少しばかり残念そうだが、こちらとしては怒りが再度上がってきた。
「アビ・シュティレンツ!」
「は、はい!」
わたしの腹の底から出た声を聞いてアビ・シュティレンツは姿勢を正した。
いつものおどおどした様子だったが、さらに怯えた顔になっている。
わたしの普段聞かない声に誰もが驚愕に目を見開いている。
全員が居住まいを正して、わたしにアビへの道を開ける。
「ネツキの名を正式に述べよ!」
「ネツキ・レヴォントゥレットであります」
「ネツキ・レヴォントゥレットがこの度、わたくしどもを嵌めて重宝している側近の一人セルランをこのような重体へとさせた。わたくしの言葉に対して少しでも嘘を申してみよ。シュティレンツの城へジョセフィーヌの騎士を総動員して制圧してみせる。血族全て神への生贄と捧げたくなければ事実だけを述べよ!」
「水の神オーツェガットに誓って!」
わたしの剣幕にアビは汗をだらだらと流しながら答えた。
五大貴族を怒らせるということはたとえ領主といえども死罪になる。
それがわかっているアビは目の前に闇の神がいるような死の気配を感じているだろう。
「ネツキ・レヴォントゥレットはアビ・シュティレンツと共に共謀して、隠し部屋にあったここの地図を用いて、セルランをこの穴に落としましたか?」
「滅相もございません。わたしめはそのようなことはしておりません、はい」
アビの顔は必死に自分は関係ないと言っている。
あの鏡で見た情報でもアビに関しては特に何かしたようには見えなかった。
一応は信用していく。
「ならなぜネツキ・レヴォントゥレットはこのような暴挙に出ましたか? 普段の彼の行いについて思い当たることを述べなさい」
「わたしの知る限りの情報ではありますが、ヨハネさまが数日前に来られたと聞いております。誰と会ったかは定かではありませんが、セルランさまをここへ落としたのなら、ヨハネさまの派閥へ入ったのではないかと思います、はい」
ヨハネの名前を聞いてわたしは忌々しく思った。
つまりはネツキはヨハネのためにセルランを殺そうとしたのだ。
ただ騎獣があるので穴に落ちても死なないことは予想される。
それならば考えられることは一つ。
「ネツキはあの魔物がいることを知っていた……? でもどうやって? アビ・シュティレンツ、あそこで死んでいる魔物に見覚えはありますか?」
「いいえ、全く知らない魔物です、はい」
アビは知らないというのでそれを信じるとなると、どうやって魔物の存在について知ったのか。
「マリアさま、今いいでしょうか?」
下僕が少し怯えながらこちらに話しかけてきた。
地上も危険なため、もうしばらくすればレイナたちが来てくれるはずだ。
そうなれば応急処置ができるので、セルランも大丈夫だろう。
一応クロートが見る限りでは、レイナたちがやってくる頃に手当をすれば命に別状はないだろうとのこと。
「まさかセルランをあそこまで追い詰める魔物がいるとは……。他の騎士たちも高名な方達であったのにこのような事態になるとは」
ステラの言う通りだ。
セルランは十五になったばかりだが、もうこの年で称号を授与されている。
すべての領土にその名前は知られており、数多くの勧誘を蹴ってわたしを選んでくれたのだ。
その最強の騎士がここまでボロボロになって、ギリギリの戦いをしていたのだ。
本来はセルランだけでも勝てる未来だったが、完全に体力を使い切ってしまうため、ネツキになす術もなく殺されてしまう。
もし仮に生き残っていたとしても、命を維持する体力すらなかっただろう。
「ステラはあの魔物は知っていますか?」
「わたくしの知らない魔物です。おそらくセルランも知らないでしょう。なぜこのような洞窟にこんな魔物がいるのか……。クロートは何か心当たりがありますでしょうか?」
ステラはクロートに尋ねた。
クロートは博識なため、もしかしたら何か気付くことがあるかもしれない。
クロートはメガネを上げて何やら考え込む。
「魔物には心当たりはありませんが。気になることを言っていましたね。その髪は始末すると」
わたしも聞いた言葉だ。
魔物が喋ったことには驚いたが、すぐにでもセルランを助けないといけないと考えたおかげで容赦なく魔法を発動できた。
だがあの物言いではまるでこの髪の色に敵意を持っている感じだった。
「普通あの戦いの場で髪色について気にかけるとは思えません。どうやらこの伝承の場所を守っているのは何か理由があったのかもしれませんね」
クロートの言う通りなのだろうが気にかかることが多い。
どうして魔物がこの場所にいる必要があり、更に蒼の髪について警戒するのか。
話しているうちにレイナとラケシスがアビ・シュティレンツを呼んできたようで、水竜に乗ってやってきた。
「セルラン!? 急いで治療を!」
レイナは顔を青くしてセルランに治癒の魔法をかけた。
傷を塞いだので、これで出血で死ぬことはなくなるだろう。
セルランの顔も少しばかり良くなっている気がする。
レイナもホッとした表情であり、わたしも声をかけた。
「ご苦労様。来てもらったばかりでごめんなさいね。貴女がいて助かった」
「マリアさまもご無事でよかったーー」
「姫さまは怪我はありませんか!」
レイナの言葉を遮って、ラケシスがわたしの体を触って怪我がないかを確認する。
一通り見てどこも怪我していないことを確認してホッと息を吐いた。
「心配をお掛けしましたね。わたくしとクロートの魔法で一撃でしたので全く無事よ」
少しばかり置いてけぼりだったアビもやっとこちらも余裕ができて話しかけてきた。
「ここが祭壇なのですね、はい。まだネツキ殿は来てないので、マリアさまの勝ちのようです、はい」
アビは少しばかり残念そうだが、こちらとしては怒りが再度上がってきた。
「アビ・シュティレンツ!」
「は、はい!」
わたしの腹の底から出た声を聞いてアビ・シュティレンツは姿勢を正した。
いつものおどおどした様子だったが、さらに怯えた顔になっている。
わたしの普段聞かない声に誰もが驚愕に目を見開いている。
全員が居住まいを正して、わたしにアビへの道を開ける。
「ネツキの名を正式に述べよ!」
「ネツキ・レヴォントゥレットであります」
「ネツキ・レヴォントゥレットがこの度、わたくしどもを嵌めて重宝している側近の一人セルランをこのような重体へとさせた。わたくしの言葉に対して少しでも嘘を申してみよ。シュティレンツの城へジョセフィーヌの騎士を総動員して制圧してみせる。血族全て神への生贄と捧げたくなければ事実だけを述べよ!」
「水の神オーツェガットに誓って!」
わたしの剣幕にアビは汗をだらだらと流しながら答えた。
五大貴族を怒らせるということはたとえ領主といえども死罪になる。
それがわかっているアビは目の前に闇の神がいるような死の気配を感じているだろう。
「ネツキ・レヴォントゥレットはアビ・シュティレンツと共に共謀して、隠し部屋にあったここの地図を用いて、セルランをこの穴に落としましたか?」
「滅相もございません。わたしめはそのようなことはしておりません、はい」
アビの顔は必死に自分は関係ないと言っている。
あの鏡で見た情報でもアビに関しては特に何かしたようには見えなかった。
一応は信用していく。
「ならなぜネツキ・レヴォントゥレットはこのような暴挙に出ましたか? 普段の彼の行いについて思い当たることを述べなさい」
「わたしの知る限りの情報ではありますが、ヨハネさまが数日前に来られたと聞いております。誰と会ったかは定かではありませんが、セルランさまをここへ落としたのなら、ヨハネさまの派閥へ入ったのではないかと思います、はい」
ヨハネの名前を聞いてわたしは忌々しく思った。
つまりはネツキはヨハネのためにセルランを殺そうとしたのだ。
ただ騎獣があるので穴に落ちても死なないことは予想される。
それならば考えられることは一つ。
「ネツキはあの魔物がいることを知っていた……? でもどうやって? アビ・シュティレンツ、あそこで死んでいる魔物に見覚えはありますか?」
「いいえ、全く知らない魔物です、はい」
アビは知らないというのでそれを信じるとなると、どうやって魔物の存在について知ったのか。
「マリアさま、今いいでしょうか?」
下僕が少し怯えながらこちらに話しかけてきた。
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