71 / 259
第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!
お金がざっくざく
しおりを挟む
やっとのことズクミゴも立ち上がった。
先ほどとは違って怯えた顔でこちらに媚びへつらうように揉み手を始めた。
「こ、これは大変失礼しました。今までの無礼は本当に失礼しました。先ほど手に入れた金貨の二倍出させていただきます。どうか今回の件は……ひいい」
ヴェルダンディはトライードの切っ先をズクミゴの首元へ添える。
少しでも動かせば彼の胴体と首は別れることになるだろう。
「わかっておりませんね。たかだかそれくらいのお金で五大貴族であらせられるマリアさまにお許しいただけるとお思いですか? ですが、マリアさまも三つだけ条件を出された。もし生き残りたいのならわかってますね?」
「わ、わかりました!」
ズクミゴは泣きべそをかきながら声を出している。
クロートは言葉を続けた。
「まず一つ目は、再度ゲームを続けさせていただいてその結果で生じるお金を頂くこと。マリアさま、番号を言ってください」
ここでまた続けさせて金貨約一万枚を取ろうとするとは、クロートが敵でなくてよかったとしみじみ思う。
しかし、どうやって彼らに払わせるつもりなのか。
わたしは言われるままに番号を考える。
「それでは一番でお願いします」
お店の人もビクビクしながら回転盤を回して、ボールを投げる。
そして、見事一番にボールが入った。
「ふむ、では金貨約一万枚の準備をお願いしますね」
「む、無茶な! そんな大金なんて用意できませんよ! 」
「なら稼げばいいのですよ。もう少し期限を設けますので、ここを本来のホテルとしての顔を強めてもらいます。経営にはわたしが入りますので契約書をもってきなさい。カジノについてはジョセフィーヌ領の管轄に入ってもらいますのでもう少し健全化します」
クロートはテキパキと命令して、事実上わたしがこのカジノの責任者となった。
だがこんな汚らしい場所をわたしの物にするのは少しばかり評判を貶めるものではないだろうか。
「ご心配なく。ここはこれから上級貴族以上しか泊まれない高級ホテルとして、貴族しかカジノにも参加できないようにします。そうすればすぐに収入も安定しますので、いい財源となるでしょう」
もともとそういう計画だったのだろうが、うまくわたしを使われているような気がします。
わたしの考えに気付いたのかクロートは苦笑して弁明した。
「姫さまには息抜きをしてもらいたかったのですよ。後ろめたい気持ちではなく、楽しい気分で。まあそれはあまり上手くいきませんでしたがね」
「ええ、もう二度と来たくないですね。変な男の相手なんてしたくありませんもの」
「次は姫さまも楽しめるよう嗜好を凝らしますので、ぜひお楽しみにしてください」
なぜそこまでわたしにカジノで遊ばせたいのだろう?
しかし頭の良いクロートなら面白い余興を作ってくれるかもしれない。
「なら楽しみにしております」
「かしこまりました。……では次に二つ目ですが、犯罪組織についての情報を出しなさい。ここにいる者たち全員がその癒着がある貴族だというのは調べがついています。もし言わないようでしたらそれでも構いません。国に敵意があると考えて、三親等まで神へ魔力奉納していただくだけでございますから」
クロートの言葉にこの場に遊びに来ている貴族たちが観念している。
どうやらこのカジノを選んだ理由は、犯罪組織についての情報も得るためだったのだろう。
そこでわたしもいろいろなことが結びつく。
「もしかして薬物や武具の過度な流通ってこの犯罪組織が?」
「噂をご存知でしたか。そうです、ここで根絶やしにしておかないと領土にとって癌にしかなりません。情報が集まり次第駆逐します。 その時は姫さまにもご協力いただきますのでそのつもりでいてください」
「お父さま主導で捕まえるのではないのですか?」
「はい、姫さまの実績作りにも利用しましょう。姫さまの場合は魔物を倒して自身の武勲で民に存在を知らしめることができませんので、地道ではありますが、当主になるための土台作りです」
どうやらわたしの実績があまりないことを心配して、手柄をくれるということだろう。
わたしではそういった政治的なことはまだ勉強不足なのでクロートに任せよう。
しかし自分もいつかこのように自分で政治的判断を下せるようになるのか心配になる。
「姫さまなら大丈夫ですよ。少しずつ覚えていってください」
クロートはこちらの考えを見通して励ましてくれる。
そのために教師としてクロートやピエール、そしてサラスも来てくれたのだ。
より一層頑張らないといけない。
「最後の条件ですが、下級貴族ならば平民の大商人たちと関わりも大きいでしょう。今後マリアさまが何かしら良い行いをするごとに噂をばらまくようにトップに依頼しなさい。もし今言ったことが他にバレたりしたら、商人はもちろん、あなたたちもわかっておりますよね?」
クロートの黒い笑顔にみんなが泣きながら頷いた。
貴族全員と名前を控えて、今後にやるべきことを命令していく。
わたしは金策しか頭になかったが、それ以外にも収穫を得るなんてさすがはお父さまの文官だ。
ヴェルダンディもその手際に感心していた。
「俺も今回上手く立ち回ればマリアさまの体にあの汚い手が触れさせることもなかった。俺ももっと上に行かないと」
独白をして何かしら決意を改めたようだ。
その後馬車に乗って、王国院に戻ってきた。
先ほどとは違って怯えた顔でこちらに媚びへつらうように揉み手を始めた。
「こ、これは大変失礼しました。今までの無礼は本当に失礼しました。先ほど手に入れた金貨の二倍出させていただきます。どうか今回の件は……ひいい」
ヴェルダンディはトライードの切っ先をズクミゴの首元へ添える。
少しでも動かせば彼の胴体と首は別れることになるだろう。
「わかっておりませんね。たかだかそれくらいのお金で五大貴族であらせられるマリアさまにお許しいただけるとお思いですか? ですが、マリアさまも三つだけ条件を出された。もし生き残りたいのならわかってますね?」
「わ、わかりました!」
ズクミゴは泣きべそをかきながら声を出している。
クロートは言葉を続けた。
「まず一つ目は、再度ゲームを続けさせていただいてその結果で生じるお金を頂くこと。マリアさま、番号を言ってください」
ここでまた続けさせて金貨約一万枚を取ろうとするとは、クロートが敵でなくてよかったとしみじみ思う。
しかし、どうやって彼らに払わせるつもりなのか。
わたしは言われるままに番号を考える。
「それでは一番でお願いします」
お店の人もビクビクしながら回転盤を回して、ボールを投げる。
そして、見事一番にボールが入った。
「ふむ、では金貨約一万枚の準備をお願いしますね」
「む、無茶な! そんな大金なんて用意できませんよ! 」
「なら稼げばいいのですよ。もう少し期限を設けますので、ここを本来のホテルとしての顔を強めてもらいます。経営にはわたしが入りますので契約書をもってきなさい。カジノについてはジョセフィーヌ領の管轄に入ってもらいますのでもう少し健全化します」
クロートはテキパキと命令して、事実上わたしがこのカジノの責任者となった。
だがこんな汚らしい場所をわたしの物にするのは少しばかり評判を貶めるものではないだろうか。
「ご心配なく。ここはこれから上級貴族以上しか泊まれない高級ホテルとして、貴族しかカジノにも参加できないようにします。そうすればすぐに収入も安定しますので、いい財源となるでしょう」
もともとそういう計画だったのだろうが、うまくわたしを使われているような気がします。
わたしの考えに気付いたのかクロートは苦笑して弁明した。
「姫さまには息抜きをしてもらいたかったのですよ。後ろめたい気持ちではなく、楽しい気分で。まあそれはあまり上手くいきませんでしたがね」
「ええ、もう二度と来たくないですね。変な男の相手なんてしたくありませんもの」
「次は姫さまも楽しめるよう嗜好を凝らしますので、ぜひお楽しみにしてください」
なぜそこまでわたしにカジノで遊ばせたいのだろう?
しかし頭の良いクロートなら面白い余興を作ってくれるかもしれない。
「なら楽しみにしております」
「かしこまりました。……では次に二つ目ですが、犯罪組織についての情報を出しなさい。ここにいる者たち全員がその癒着がある貴族だというのは調べがついています。もし言わないようでしたらそれでも構いません。国に敵意があると考えて、三親等まで神へ魔力奉納していただくだけでございますから」
クロートの言葉にこの場に遊びに来ている貴族たちが観念している。
どうやらこのカジノを選んだ理由は、犯罪組織についての情報も得るためだったのだろう。
そこでわたしもいろいろなことが結びつく。
「もしかして薬物や武具の過度な流通ってこの犯罪組織が?」
「噂をご存知でしたか。そうです、ここで根絶やしにしておかないと領土にとって癌にしかなりません。情報が集まり次第駆逐します。 その時は姫さまにもご協力いただきますのでそのつもりでいてください」
「お父さま主導で捕まえるのではないのですか?」
「はい、姫さまの実績作りにも利用しましょう。姫さまの場合は魔物を倒して自身の武勲で民に存在を知らしめることができませんので、地道ではありますが、当主になるための土台作りです」
どうやらわたしの実績があまりないことを心配して、手柄をくれるということだろう。
わたしではそういった政治的なことはまだ勉強不足なのでクロートに任せよう。
しかし自分もいつかこのように自分で政治的判断を下せるようになるのか心配になる。
「姫さまなら大丈夫ですよ。少しずつ覚えていってください」
クロートはこちらの考えを見通して励ましてくれる。
そのために教師としてクロートやピエール、そしてサラスも来てくれたのだ。
より一層頑張らないといけない。
「最後の条件ですが、下級貴族ならば平民の大商人たちと関わりも大きいでしょう。今後マリアさまが何かしら良い行いをするごとに噂をばらまくようにトップに依頼しなさい。もし今言ったことが他にバレたりしたら、商人はもちろん、あなたたちもわかっておりますよね?」
クロートの黒い笑顔にみんなが泣きながら頷いた。
貴族全員と名前を控えて、今後にやるべきことを命令していく。
わたしは金策しか頭になかったが、それ以外にも収穫を得るなんてさすがはお父さまの文官だ。
ヴェルダンディもその手際に感心していた。
「俺も今回上手く立ち回ればマリアさまの体にあの汚い手が触れさせることもなかった。俺ももっと上に行かないと」
独白をして何かしら決意を改めたようだ。
その後馬車に乗って、王国院に戻ってきた。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる