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第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!
アリア視点2
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わたしはすぐに護衛騎士を連れて魔術棟へ向かう。
マリアはまだ体調が優れないと侍従を通して連絡が来たので、今日は研究所ではなく実験場へと向かった。
合成魔法の実験を行うにはこういった結界があるところでないと危険である。
わたしはブレスレットを身に付けた。
二つの風の魔法を発動させ威力を相殺することによって絶妙なコントロールをする実験だ。
これが上手くいけば、わざわざ騎獣に乗らなくても空を飛ぶことができる。
二つの魔法を組み合わせて発動させると、目の前に小さな竜巻ができている。
わたしの意思でその風は方向を決められるのでわたしのお尻の下に潜り込ませると、フワッと浮いた。
成功したと思ったその時ビュッと空高く舞い上げられた。
「アリアさま!」
護衛騎士が叫んでいるのはわかるが、わたしは今の状況を理解できてない。
地面が遠く、放物線を描きながら最高点に達してすぐに重力に従ってわたしは落ちていく。
護衛騎士が急いでも間に合わない。
「ひいいい」
わたしの目は落ち行く地面を映している。
この高さから落ちれば命を落とすやもしれないし、運が良くて体はズタボロになるだろう。
……マリア姉さま助けて!
わたしは心の中で助けを呼ぶと同時に誰かがわたしを抱き抱えてくれた感触に気付いた。
大きな腕の中に体が支えられており、それは男性の腕であるとすぐには分からなかった。
黄黒竜にまたがってわたしを助けたのは見たことのある顔だ。
「せっかく側近たちから逃げて昼寝をしていたのに何をしているんだお前?」
「ウィリアノスさま!」
わたしはやっと焦点の結んだ目でしっかり視認した。
マリアさまの婚約者であり、王族であるウィリアノスがわたしを助けてくれたのだ。
あまりにも急な展開に畏れ多くなってしまい、すぐにその腕から抜け出そうとしたがウィリアノスの力が強く抜け出せない。
「おい、暴れるな! 死にたくないなら大人しくしていろ!」
ウィリアノスの一喝にビクッと肩が震えた。
王族だからこうべを垂れないといけないと思い体が無意識に反応したが、今は空の上のため勝手な行動は迷惑をかけてしまう。
大人しくウィリアノスが地面に着くまで大人しくしていることにした。
黄黒竜が降りて、ウィリアノスはわたしを抱えたまま飛び降りた。
「きゃっ!」
軽い衝撃に声が漏れてしまった。
ウィリアノスがわたしをゆっくり降ろす。
外傷もなく無事だったためわたしはお礼を告げる。
「ウィリアノスさま、危ないところを助けてくださりありがとうございます」
「全くだ。一体何をしていたんだ?」
「実はーー」
わたしは魔法の実験で空飛ぶ魔法の開発をしていたことを話した。
呆れるかと思ったら、ウィリアノスは子供のように笑い始めた。
「空を飛ぼうとして吹き飛ばされた? くくく、はははは」
「そ、そんなに笑わないでください! 」
「いや、だってお前、普通自分で実験するか? ははは」
まだ笑いが止まらないようでお腹を抱えている。
最初はお礼の気持ちで一杯だったがここまで笑われるとたとえ王族でも苛立ってくる。
やっと満足したのかウィリアノスもやっと笑いが止まった。
「お前、魔法が好きなのか? 他にも面白いものはないのか?」
「ええ、ありますけど。たとえば水の性質を変えて甘くするものや土の硬さを変えるものとかでしたら」
「変わった物を作るんだな。お前、名前はなんというんだ?」
ウィリアノスと挨拶をしたことはあったが、ほとんど話す機会もなかったので忘れてもしょうがない。
わたしは再度名乗り直す。
「アリア・シュトラレーセと申します」
「シュトラレーセ? ああマリアと一緒に表彰を受けていた子か」
「ええ、マリア姉さまのおかげであの場に立てられましたので感謝してもしきれません」
わたしは素直な気持ちを話すとウィリアノスが怪訝な顔をした。
どうしてそのような顔をするのかわからない。
わたしはどうしたのかと聞いてみた。
「姉と呼ぶってことはシスターズか?また古い制度だな。一世代前に流行ったものらしいぞ?」
「そうなのですか? なぜ今では廃れたのですか?」
「元々は縁談を紹介してもらうための制度だったからだ。最初は姉が妹の結婚相手を紹介する代わりに紹介料をもらうものだったが、一部の姉と呼ばれる者が年を召した上級貴族に斡旋し始めて問題が起きたんだ。それからはシスターズ自体を敬遠するようになって今では名前だけ知っている者しかいないんだよ」
わたしはそのような背景があるとは知らず勉強になった。
マリアの場合はお金の心配はほとんどないためそのような心配はいらないだろう。
そう思っているとわたしの頭に大きな手が乗せられた。
「あまり無茶なことをしないようにな。それとこれは預かっておく」
ウィリアノスはいつのまにかわたしの腕からブレスレットを外していた。
わたしは返してもらおうと手を伸ばそうとしたが、護衛騎士によって止められる。
……そうだ、王族の言葉に逆らってはいけないんだった。
わたしは気持ちを落ち着かせて我慢する。
またマリアさまの件の二の舞になってはいけないのだ。
上位者に逆らうことはこの国では許されていない。
少しばかり残念な気持ちになったため、目線が下に下がる。
「明日またここに俺も来るからその時返す。危険なことなら俺がいた方が対処もできるだろう。ただしお前一人で行うことは許さん。マリアの研究所ならそれを許してもいいが、そこの護衛騎士では守りきれないだろう。だからマリアがいない時は俺といる時に実験しろ。これは王族からの命令だ。その代わりに俺もいろいろ知識を貸してやる。これでも魔道具の製作は得意なんだ」
どうして王族であるウィリアノスが協力してくれるのかわからないが、少しでも危険を減らせて魔力源が手に入るのは助かる。
……もしかしたらマリア姉さまがわたしのことを気にかけてウィリアノスさまにお願いしてくれたのかもしれない。
マリアの先読みの力に驚きつつ、何度も配慮してくれるその姿に感激する。
いろいろと自己完結したので笑顔でウィリアノスにお礼をいう。
「分かりました。では明日はよろしくお願いします」
「ああ、まどっ子」
ふえ、と声が漏れてしまった。
おそらく魔道具好きの子という意味で略したのだろうが、それはひどすぎではなかろうか。
だが流石に王族にそのようなことは言えない。
少しばかりわたしはウィリアノスの評価を下げるのだった。
マリアはまだ体調が優れないと侍従を通して連絡が来たので、今日は研究所ではなく実験場へと向かった。
合成魔法の実験を行うにはこういった結界があるところでないと危険である。
わたしはブレスレットを身に付けた。
二つの風の魔法を発動させ威力を相殺することによって絶妙なコントロールをする実験だ。
これが上手くいけば、わざわざ騎獣に乗らなくても空を飛ぶことができる。
二つの魔法を組み合わせて発動させると、目の前に小さな竜巻ができている。
わたしの意思でその風は方向を決められるのでわたしのお尻の下に潜り込ませると、フワッと浮いた。
成功したと思ったその時ビュッと空高く舞い上げられた。
「アリアさま!」
護衛騎士が叫んでいるのはわかるが、わたしは今の状況を理解できてない。
地面が遠く、放物線を描きながら最高点に達してすぐに重力に従ってわたしは落ちていく。
護衛騎士が急いでも間に合わない。
「ひいいい」
わたしの目は落ち行く地面を映している。
この高さから落ちれば命を落とすやもしれないし、運が良くて体はズタボロになるだろう。
……マリア姉さま助けて!
わたしは心の中で助けを呼ぶと同時に誰かがわたしを抱き抱えてくれた感触に気付いた。
大きな腕の中に体が支えられており、それは男性の腕であるとすぐには分からなかった。
黄黒竜にまたがってわたしを助けたのは見たことのある顔だ。
「せっかく側近たちから逃げて昼寝をしていたのに何をしているんだお前?」
「ウィリアノスさま!」
わたしはやっと焦点の結んだ目でしっかり視認した。
マリアさまの婚約者であり、王族であるウィリアノスがわたしを助けてくれたのだ。
あまりにも急な展開に畏れ多くなってしまい、すぐにその腕から抜け出そうとしたがウィリアノスの力が強く抜け出せない。
「おい、暴れるな! 死にたくないなら大人しくしていろ!」
ウィリアノスの一喝にビクッと肩が震えた。
王族だからこうべを垂れないといけないと思い体が無意識に反応したが、今は空の上のため勝手な行動は迷惑をかけてしまう。
大人しくウィリアノスが地面に着くまで大人しくしていることにした。
黄黒竜が降りて、ウィリアノスはわたしを抱えたまま飛び降りた。
「きゃっ!」
軽い衝撃に声が漏れてしまった。
ウィリアノスがわたしをゆっくり降ろす。
外傷もなく無事だったためわたしはお礼を告げる。
「ウィリアノスさま、危ないところを助けてくださりありがとうございます」
「全くだ。一体何をしていたんだ?」
「実はーー」
わたしは魔法の実験で空飛ぶ魔法の開発をしていたことを話した。
呆れるかと思ったら、ウィリアノスは子供のように笑い始めた。
「空を飛ぼうとして吹き飛ばされた? くくく、はははは」
「そ、そんなに笑わないでください! 」
「いや、だってお前、普通自分で実験するか? ははは」
まだ笑いが止まらないようでお腹を抱えている。
最初はお礼の気持ちで一杯だったがここまで笑われるとたとえ王族でも苛立ってくる。
やっと満足したのかウィリアノスもやっと笑いが止まった。
「お前、魔法が好きなのか? 他にも面白いものはないのか?」
「ええ、ありますけど。たとえば水の性質を変えて甘くするものや土の硬さを変えるものとかでしたら」
「変わった物を作るんだな。お前、名前はなんというんだ?」
ウィリアノスと挨拶をしたことはあったが、ほとんど話す機会もなかったので忘れてもしょうがない。
わたしは再度名乗り直す。
「アリア・シュトラレーセと申します」
「シュトラレーセ? ああマリアと一緒に表彰を受けていた子か」
「ええ、マリア姉さまのおかげであの場に立てられましたので感謝してもしきれません」
わたしは素直な気持ちを話すとウィリアノスが怪訝な顔をした。
どうしてそのような顔をするのかわからない。
わたしはどうしたのかと聞いてみた。
「姉と呼ぶってことはシスターズか?また古い制度だな。一世代前に流行ったものらしいぞ?」
「そうなのですか? なぜ今では廃れたのですか?」
「元々は縁談を紹介してもらうための制度だったからだ。最初は姉が妹の結婚相手を紹介する代わりに紹介料をもらうものだったが、一部の姉と呼ばれる者が年を召した上級貴族に斡旋し始めて問題が起きたんだ。それからはシスターズ自体を敬遠するようになって今では名前だけ知っている者しかいないんだよ」
わたしはそのような背景があるとは知らず勉強になった。
マリアの場合はお金の心配はほとんどないためそのような心配はいらないだろう。
そう思っているとわたしの頭に大きな手が乗せられた。
「あまり無茶なことをしないようにな。それとこれは預かっておく」
ウィリアノスはいつのまにかわたしの腕からブレスレットを外していた。
わたしは返してもらおうと手を伸ばそうとしたが、護衛騎士によって止められる。
……そうだ、王族の言葉に逆らってはいけないんだった。
わたしは気持ちを落ち着かせて我慢する。
またマリアさまの件の二の舞になってはいけないのだ。
上位者に逆らうことはこの国では許されていない。
少しばかり残念な気持ちになったため、目線が下に下がる。
「明日またここに俺も来るからその時返す。危険なことなら俺がいた方が対処もできるだろう。ただしお前一人で行うことは許さん。マリアの研究所ならそれを許してもいいが、そこの護衛騎士では守りきれないだろう。だからマリアがいない時は俺といる時に実験しろ。これは王族からの命令だ。その代わりに俺もいろいろ知識を貸してやる。これでも魔道具の製作は得意なんだ」
どうして王族であるウィリアノスが協力してくれるのかわからないが、少しでも危険を減らせて魔力源が手に入るのは助かる。
……もしかしたらマリア姉さまがわたしのことを気にかけてウィリアノスさまにお願いしてくれたのかもしれない。
マリアの先読みの力に驚きつつ、何度も配慮してくれるその姿に感激する。
いろいろと自己完結したので笑顔でウィリアノスにお礼をいう。
「分かりました。では明日はよろしくお願いします」
「ああ、まどっ子」
ふえ、と声が漏れてしまった。
おそらく魔道具好きの子という意味で略したのだろうが、それはひどすぎではなかろうか。
だが流石に王族にそのようなことは言えない。
少しばかりわたしはウィリアノスの評価を下げるのだった。
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