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第一章 魔法祭で負けてたまるものですか

亜魔導アーマー

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 アクィエルの安全を守護する騎士はアクィエルに変わって戦況を分析している。
 もともと優秀な敵に対してはこちらも相手のミスを期待してはいない。
 こちらの予想通り側近の騎士はすぐにこちらが攻めてくることに気が付いた。

「アクィエルさま、変な鎧組が向かってきております。一人は別の方向へ向かっていきますね」
「まあ、本当ですわね。あの黒い鎧以外は全く見ない顔ですわね」
「あれはパラストカーティの下級貴族です」

 ルブノタネの手下は過去にいじめていた者たちだと気付き、アクィエルの疑問を解消させた。
 アクィエルはさらに笑いだした。
 こちらを舐めた態度にいいものを見せるときだ。
 相手も撃退のために側近一人を動かしてきた。
 おそらくは中級や下級貴族程度なら一人で十分ということだろう。
 目にも止まらぬ速さで先ほどのように撃墜させるつもりのようだ。


「残念だがアクィエルさまの元へは行かせない!」

 騎士のトライードが下僕へと振りとされた。
 だが下僕はその一撃を同じくトライードで受け止めるのだった。


「なにぃ!?」
「僕たちを甘く見過ぎだ!」

 魔力の劣る下僕が受け止めるとは思ってもみなかった敵は驚愕の表情を浮かべる。
 魔力強化で筋力の差が大きくなるはずなので下僕では一瞬も保たないと思ったのだろう。
 その油断が逃げるという選択肢をなくしてしまった。
 ジョンとヴェートがトライードで敵を風竜から叩き落とした。
 高所から落下して気を失ったのを確認したが念のために拘束をした。


「おいおい、あれは中級と下級貴族らしいじゃないか」
「それは本当かね。アクィエルさまの側近は上級の中でもトップの成績のはずだぞ。最低でも上級以上じゃないと相手にならないはずだ」
「あのへんてこな鎧のおかげか? もしや魔道具か?」


 観客たちもわたしの配下の者たちがアクィエルの側近を倒したことでかなり関心を集めている。
 これなら試合が終わった後に研究所に人がたくさん見に来るに違いない。
 計画通りではないが、思惑通りにことが進んでいるので結果オーライだ。
 これで残る主力は一人のみ。
 あとは援護が来る前に倒すだけ。


「全員、アクィエルさまが危ない! 一度下がるぞ」


 敵側も前線から後方へ引き下がろうと命令を下す。
 指揮官が捕らえられてしまったら負けるのでいい状況判断だ。


「姫さまの王道に邪魔はさせません! シュティレンツは姫さまのために捨て身で止めなさい! 」
「はい、ラケシスさま、我らが女神のために!」

 ラケシスの命令にシュティレンツは迷いなく従った。
 ゴーステフラートにはレイナを、シュティレンツにはラケシスを派遣したりしたのでいつのまにか騎士たちの心を掴んでいるようだ。
 しかし少しばかり目に熱がこもりすぎではないだろうか。

「ラケシスは一体何を吹き込んだのかしら?」
「マリアさまに対して悪いことはしてないと思いますので、お見逃しするのがいいと思います」

 わたしもそう願う。
 ラケシスならうまく手綱を引いてくれるだろう。
 そこで悲鳴が聞こえてきた。
 アクィエルを捕まえに行っていた三人のうちの一人、ジョンが気絶した状態で拘束されていた。


「不意打ちで倒したようだが所詮は下級貴族。アクィエルさまをお守りする最強の騎士である、このレイモンドに勝てると思うな!」


 下僕とヴェートは魔力をさらに込めて亜魔導アーマーに力を与える。
 だが鎧の性能を最大限使っても、上級騎士の中でもトップの魔力を持つレイモンドには遠く及ばない。

 ……早くしなさい、ルートくん!


 メルオープとルブノタネはお互いに何度も得物をぶつけ合った。
 鬼気迫るルブノタネの攻撃には殺意が乗っており、メルオープもなかなか反撃にいけてない。

「この前の仕返しだああ!」


 ルブノタネはまるで長年の宿敵かのように憎悪をぶつけていた。
 前にやられたと言っていたのでそれのことだろう。
 腐っても上級騎士なため、魔力の消費の多いメルオープと互角に渡り合っている。


「仕返しならこちらは百年分だぁあ!」


 メルオープも負けじと怒気で槍を振るった。
 鬼気迫るその熱気がこちらにも届くほどだ。
 お互いに攻撃を加えては守るの繰り返しを行いまるでの互角のようにみえたが、長旅の疲労が抜けていないメルオープに一瞬の隙が出来てしまった。


「しまった」
「ははは、これで終わりダァ!」


 殺傷を最小限に抑えたトライードではなく、相手を殺すための刃を出したトライードがメルオープの腹を捉えた。
 一直線に吸い込まれ、懐に入られた槍ではもう間に合わない。


「メルオープさま!」


 ルージュが声を張り上げて、自身の持つトライードでルブノタネの一撃をギリギリのところで止めた。
 亜魔導アーマーの力で底上げされた力にルブノタネは忌々しげだ。
 わたしが考案した鎧のデザインで顔の認識が遅れたようだが、ルージュの顔だと分かると分かりやすいほど相手を馬鹿にした表情となった。

「お前はルージュ!  貴様ぁ、おれに刃向かうのならわかっているだろうな! 」
「ぼくはマリアさまの剣です! 刃があってこそぼくたちはマリアさまをお守りできる!」


 ルージュは自身の気合をトライードに乗せて、ルブノタネの攻撃を跳ね飛ばした。
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