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第一章 魔法祭で負けてたまるものですか
二人の指揮官
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先生方も試合内容を見直してくださり、今回だけ特別に両将を捕縛した方の勝ちというルールへと変わった。
わたしはみんなの士気を高め終わったので、セルランの水竜から降ろしてもらった。
そこでセルランがもう疲れ切った顔をしていた。
「マリアさま、もう何も言いません。ですがどうか無茶はしないでくださいね」
「何を言ってますの。わたくしは一歩も動かないのだから無茶しようがないではありませんか」
わたしは心外だと伝えたが、セルランのため息が大きくなるだけだ。
今はルキノしか護衛できる騎士がいないため、セルランはルキノに注意する。
「ルキノ、負傷したヴェルダンディがいない今では君にすべて任せるしかない。かなり負担になるだろうが、必ずマリアさまをお守りしろ」
「かしこまりました。必ずお守りします」
ルキノは敬しく礼をして了承する。
セルランもわたしの無事を祈ると言って、観客席の方へと戻っていく。
わたしは文官たちを呼び出す。
「リムミント、アスカ、下僕、今回は総力戦となります。リムミントとアスカは二部隊を持って撹乱してください。下僕があの”三人組”を使って状況を見て攻めてください」
「かしこまりました。おそらく今回の戦いですとあれを使ってなんとか互角です。それほど最近のフォアデルへの生徒たちは優秀です」
「そうでしょうね。ゴーステフラートは結局優秀な生徒たちは参加しくれませんね」
ユリナナは傍観を決めているので、他の貴族たちも参加せず。
わたしの水の女神に属している者たちが参加するだけだ。
ゴーステフラートが参加してくれればかなり助けになるが、無いものをねだってもしょうがない。
「アスカはなるべくゼヌニム領の者たちを抑えてください。ラケシスとレイナは上手くサポートしてあげてください」
「お待ちください! わたくしは姫さまのお側でお守りいたします!」
ラケシスは必死の形相でこちらの意見に反対した。
だが、彼女の魔力がなければ前線を維持はできない。
どうにか説得しなければならない。
「ラケシス、あなたは勘違いしているわ」
「勘違いですか?」
「将が動いてはいけないなんてルールはありませんのよ? わたくしの進む道に邪魔者はいりません。真っ直ぐにアクィエルさんまで行くための道を作りなさい」
「かしまりました。姫さまの進む道はわたくしが切り開きます。この日のためにシュティレンツに教育を施してきました。彼らには姫さまの覇道のために犠牲になっていただきましょう」
……こわっ! 教育しろなんて特に命令したことありませんわよ!
ラケシスは楽しげな笑いをするので、あとは放っておこう。
こちらの精神的にもそれが安全だ。
下僕は少し不安げにこちらを見ていた。
「下僕、大丈夫? あまり顔色が良くないですわよ?」
「いえ、ぼくたちの部隊があの二人の護衛騎士を相手にすると考えると足が竦みそうで」
そう、下僕たちに相手してもらうのはアクィエルの身を守護する騎士。
どちらも上級騎士であるため、ルキノやヴェルダンディと大きく実力が変わるわけではない。
だが彼らを突破しなければアクィエルを捕まえることができない。
この戦いの勝利は下僕が握っているといっても過言ではない。
わたしは下僕の背中を叩いた。
「しっかりしなさい! あなたの主人はあの女より上なのよ、それならばわたくしの側近があっちの騎士より弱いなんてあるはずがないでしょ!」
わたしは下僕を勇気付けるためにかなり無茶苦茶な論理を言ったが、下僕の顔から怯えも消えていた。
「そうですね。誰もが憧れるマリアさまの側近は自分からなったんです。それに恥じない動きくらいしてみせます」
これで全員の役割も確認し終わったので、あとは開始の合図を待つだけだ。
主審を務める先生が大きな二対の旗を振り上げて声を張り上げながら落とした。
「マンネルハイム始めぇええ!」
その言葉に全員が動き始めた。
最初に先頭へ出て行ったのはーー。
「我ら、パラストカーティが先陣する! パラストカーティの勇者たちよ、我らの姫のために敵を薙ぎ払え!」
「っは!」
パラストカーティの領主候補生であるメルオープがトライードを普通の剣ではなく、三又の槍へと変化させていた。
魔力の高い領主候補生であれば、自在にトライードを変化させられる。
射程の大きな武器を器用に振り回して、相手をなぎ倒していった。
さすがは騎士を数多く排出していた領土。
魔力不足でも技量の方だけは研鑽を積んでいたようだ。
メルオープたちが倒した相手を次々と捕縛していく。
「いいわよ、メルオープ! じゃんじゃん行きましょう!」
次に目を向けたのはシュティレンツ。
あちらはカオディが指揮官として攻めてくれているはずだ。
だが、劣勢に見舞われていた。
「我々もパラストカーティ共に遅れをとるな! 」
「しかし、フォアデルへは流石に厳しいです!」
カオディは頑張って士気を保とうとしていくが、次から次へと捕縛されていく。
第三位のフォアデルへの騎士たちの猛攻に完全に振り回されていた。
そこへアスカとラケシス、レイナが上級騎士たちを連れて援護に向かっていった。
「みんな、助太刀してあげて!」
アスカの指示にすぐに騎士たちも従う。
さすがに三位の領土といえど、ジョセフィーヌ領の貴族たちも負けてはいない。
ルキノ、ヴェルダンディより一段劣るがそれでもしっかり訓練を積んでいる騎士たちだ。
文官と侍従見習いたちは戦闘を得意としない代わりに後方から魔法や援護をする。
どうにか戦線を立て直したが、それでも少しばかり負けている。
ルキノは曇った顔で戦況を見つめている。
「厄介ですね。あちらもこちらと同じように守るべき主人がいるせいで士気がものすごく高いです」
「ええ、まさか指揮官の存在でこれほど変わるなんて」
わたしが最初にやったこととはいえ、相手から見るとこうも違うのだろう。
守るべき者の存在の大きさを初めて認識した。
あちらもそう思ってか、アクィエルの苦々しい顔を見た。
すぐにこちらに気付いてか急いでその表情を隠して、まるで余裕があるような顔を作った。
今のところはほとんど互角。
どちらも中央の戦いで次々に自分の兵たちを失っていく。
だが均衡も崩れた。
「アクィエル・ゼヌニムさま! 主人の命によりあなたを捕まえます!」
メルオープと数人の騎士が中央を突破してアクィエルの方へと向かっていく。
だがそれを守る二人の側近が目にも留まらぬ速さでメルオープ以外の騎士たちを水竜から叩き落として捕縛した。
「っな、いつのまに!」
二人の上級騎士が風竜に乗って回り込んでいたのだ。
風を支配する彼らの速さは全領一位だ。
「「我々は風の神の加護を持つ者なり! アクィエルさまに手出しは許さない!」」
メルオープはすぐに状況判断をして水竜を上空へと上げさせる。
アクィエルから一旦距離を空けたことで、二人の騎士も主人の近くへと戻っていった。
さすがは側近に登用されただけはある。
魔力をかなり使ったメルオープでは分が悪い。
「くたばれえええ!」
いじめのリーダー格だったルブノタネがメルオープへと追撃をしてくる。
他の手下は未だにアクィエルの椅子を持ち上げているので、単身で攻めているようだ。
メルオープも見覚えのある顔だったようで、槍を構えてぶつかった。
わたしはみんなの士気を高め終わったので、セルランの水竜から降ろしてもらった。
そこでセルランがもう疲れ切った顔をしていた。
「マリアさま、もう何も言いません。ですがどうか無茶はしないでくださいね」
「何を言ってますの。わたくしは一歩も動かないのだから無茶しようがないではありませんか」
わたしは心外だと伝えたが、セルランのため息が大きくなるだけだ。
今はルキノしか護衛できる騎士がいないため、セルランはルキノに注意する。
「ルキノ、負傷したヴェルダンディがいない今では君にすべて任せるしかない。かなり負担になるだろうが、必ずマリアさまをお守りしろ」
「かしこまりました。必ずお守りします」
ルキノは敬しく礼をして了承する。
セルランもわたしの無事を祈ると言って、観客席の方へと戻っていく。
わたしは文官たちを呼び出す。
「リムミント、アスカ、下僕、今回は総力戦となります。リムミントとアスカは二部隊を持って撹乱してください。下僕があの”三人組”を使って状況を見て攻めてください」
「かしこまりました。おそらく今回の戦いですとあれを使ってなんとか互角です。それほど最近のフォアデルへの生徒たちは優秀です」
「そうでしょうね。ゴーステフラートは結局優秀な生徒たちは参加しくれませんね」
ユリナナは傍観を決めているので、他の貴族たちも参加せず。
わたしの水の女神に属している者たちが参加するだけだ。
ゴーステフラートが参加してくれればかなり助けになるが、無いものをねだってもしょうがない。
「アスカはなるべくゼヌニム領の者たちを抑えてください。ラケシスとレイナは上手くサポートしてあげてください」
「お待ちください! わたくしは姫さまのお側でお守りいたします!」
ラケシスは必死の形相でこちらの意見に反対した。
だが、彼女の魔力がなければ前線を維持はできない。
どうにか説得しなければならない。
「ラケシス、あなたは勘違いしているわ」
「勘違いですか?」
「将が動いてはいけないなんてルールはありませんのよ? わたくしの進む道に邪魔者はいりません。真っ直ぐにアクィエルさんまで行くための道を作りなさい」
「かしまりました。姫さまの進む道はわたくしが切り開きます。この日のためにシュティレンツに教育を施してきました。彼らには姫さまの覇道のために犠牲になっていただきましょう」
……こわっ! 教育しろなんて特に命令したことありませんわよ!
ラケシスは楽しげな笑いをするので、あとは放っておこう。
こちらの精神的にもそれが安全だ。
下僕は少し不安げにこちらを見ていた。
「下僕、大丈夫? あまり顔色が良くないですわよ?」
「いえ、ぼくたちの部隊があの二人の護衛騎士を相手にすると考えると足が竦みそうで」
そう、下僕たちに相手してもらうのはアクィエルの身を守護する騎士。
どちらも上級騎士であるため、ルキノやヴェルダンディと大きく実力が変わるわけではない。
だが彼らを突破しなければアクィエルを捕まえることができない。
この戦いの勝利は下僕が握っているといっても過言ではない。
わたしは下僕の背中を叩いた。
「しっかりしなさい! あなたの主人はあの女より上なのよ、それならばわたくしの側近があっちの騎士より弱いなんてあるはずがないでしょ!」
わたしは下僕を勇気付けるためにかなり無茶苦茶な論理を言ったが、下僕の顔から怯えも消えていた。
「そうですね。誰もが憧れるマリアさまの側近は自分からなったんです。それに恥じない動きくらいしてみせます」
これで全員の役割も確認し終わったので、あとは開始の合図を待つだけだ。
主審を務める先生が大きな二対の旗を振り上げて声を張り上げながら落とした。
「マンネルハイム始めぇええ!」
その言葉に全員が動き始めた。
最初に先頭へ出て行ったのはーー。
「我ら、パラストカーティが先陣する! パラストカーティの勇者たちよ、我らの姫のために敵を薙ぎ払え!」
「っは!」
パラストカーティの領主候補生であるメルオープがトライードを普通の剣ではなく、三又の槍へと変化させていた。
魔力の高い領主候補生であれば、自在にトライードを変化させられる。
射程の大きな武器を器用に振り回して、相手をなぎ倒していった。
さすがは騎士を数多く排出していた領土。
魔力不足でも技量の方だけは研鑽を積んでいたようだ。
メルオープたちが倒した相手を次々と捕縛していく。
「いいわよ、メルオープ! じゃんじゃん行きましょう!」
次に目を向けたのはシュティレンツ。
あちらはカオディが指揮官として攻めてくれているはずだ。
だが、劣勢に見舞われていた。
「我々もパラストカーティ共に遅れをとるな! 」
「しかし、フォアデルへは流石に厳しいです!」
カオディは頑張って士気を保とうとしていくが、次から次へと捕縛されていく。
第三位のフォアデルへの騎士たちの猛攻に完全に振り回されていた。
そこへアスカとラケシス、レイナが上級騎士たちを連れて援護に向かっていった。
「みんな、助太刀してあげて!」
アスカの指示にすぐに騎士たちも従う。
さすがに三位の領土といえど、ジョセフィーヌ領の貴族たちも負けてはいない。
ルキノ、ヴェルダンディより一段劣るがそれでもしっかり訓練を積んでいる騎士たちだ。
文官と侍従見習いたちは戦闘を得意としない代わりに後方から魔法や援護をする。
どうにか戦線を立て直したが、それでも少しばかり負けている。
ルキノは曇った顔で戦況を見つめている。
「厄介ですね。あちらもこちらと同じように守るべき主人がいるせいで士気がものすごく高いです」
「ええ、まさか指揮官の存在でこれほど変わるなんて」
わたしが最初にやったこととはいえ、相手から見るとこうも違うのだろう。
守るべき者の存在の大きさを初めて認識した。
あちらもそう思ってか、アクィエルの苦々しい顔を見た。
すぐにこちらに気付いてか急いでその表情を隠して、まるで余裕があるような顔を作った。
今のところはほとんど互角。
どちらも中央の戦いで次々に自分の兵たちを失っていく。
だが均衡も崩れた。
「アクィエル・ゼヌニムさま! 主人の命によりあなたを捕まえます!」
メルオープと数人の騎士が中央を突破してアクィエルの方へと向かっていく。
だがそれを守る二人の側近が目にも留まらぬ速さでメルオープ以外の騎士たちを水竜から叩き落として捕縛した。
「っな、いつのまに!」
二人の上級騎士が風竜に乗って回り込んでいたのだ。
風を支配する彼らの速さは全領一位だ。
「「我々は風の神の加護を持つ者なり! アクィエルさまに手出しは許さない!」」
メルオープはすぐに状況判断をして水竜を上空へと上げさせる。
アクィエルから一旦距離を空けたことで、二人の騎士も主人の近くへと戻っていった。
さすがは側近に登用されただけはある。
魔力をかなり使ったメルオープでは分が悪い。
「くたばれえええ!」
いじめのリーダー格だったルブノタネがメルオープへと追撃をしてくる。
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