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第一章 魔法祭で負けてたまるものですか
伝承が読み解かれるのは吉か凶か
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目の前にもステージがあり、昼間のことが思い出される。
ちょうどこちらの近くを歩いていたルージュに話しかけた。
「ルートくん、ここにもステージがあるのですね」
「はい、過去の蒼の髪の女神はさまざまな踊りの伝説を残しております。それで我々パラストカーティでは全員が蒼の髪の女神の踊りを継承してきました」
「そうだ、そうだった! いいことを言ったパラストの生徒よ! すっかり忘れていた」
そこでホーキンス先生は嬉しそうに声をあげた。
わたしはよくわからず尋ねた。
「何を忘れていたのですか?」
「パラストカーティだけは百年前の内乱を起こしたことで、聖典をもらえてないのですよ」
聖典とは神について書かれている本だ。
基本は王族が管理しており、各領土に渡されたものなのだ。
その内容には神の恵みを得るための方法が載っている。
しかしパラストカーティだけは内乱を起こした責任で渡すことを禁じられた過去を持つ。
「ええ、そうですわね。でもそれと何が関係あるのですか?」
「大ありですよ。パラストカーティは過去の聖典を頼りに生きていたから、このようなステージが至る所にあります。過去はどの領土もステージがあったのですよ!」
「他ではないのですか!?」
ルージュは驚きの声をあげる。
わたしもびっくりだ。
このステージは過去の聖典では、なくてはならないものだと知らなかった。
「もう一度、パラストカーティは調べないといけませんね。マリアさまの髪の伝承は伝説ではなく、実在したものという信憑性が増してきてます。湖が戻ればだれも疑うものはいません」
「まあ、そうですわね。あとはどうすればあの湖が戻るのか」
考え事をしながら、顔をルートくんのパパへと向けると、ちょうど侍従の者から耳打ちされており、すぐにこちらへ伝えてくる。
「ではマリアさま、領民たちが遥か昔から引き継いできた伝統の踊りをお見せします。王国院で習う神々の祈りとは少し趣が違いますが、良い余興くらいにはなると思います」
「ええ、楽しみにしております」
わたしがそう言うと、ルージュのパパが声をかける。
すると大勢の民たちがステージへと上がり、踊りを披露する。
竪琴を持った奏者たちも緊張した面持ちで奏で始める。
さすがは伝統の踊り。
最初からかなり激しい動きで、優雅さはないが力のある踊りだ。
しかし、少しばかり自己主張し過ぎて目が疲れてくる。
「さすがは庶民の踊りですね。貴族とは違う味があります」
「ラケシス、それは褒めてますの? ですが、何かもうひと押しあれば光る気がしますね」
レイナの言うことにわたしも同意する。
普段から音楽については嗜んできたので、こういった粗には気づいてしまう。
だが特別教育を受けていない庶民であるならばこれも仕方がない。
「わたしはこういう音楽をわざと作ったと思いますけどね」
アスカの言葉がわたしにはよくわからない。
なぜ物足りない曲を作るのか。
「どういうことです、アスカ?」
「言葉で説明するのが難しいのですが、わざと自分たちを下に下げて、何かをあげようとしてるような。おそらく神より自分たちが下だと表しているのではないでしょうか」
そう言われるとそういう気がしてきた。
神はわたしたちの生活と密接している。
神のおかげで生きていけるので、それが音楽でも表されたのだと納得した。
そこで下僕がつぶやく。
「これってもしかして」
下僕が何かを閃きそうな顔をして、考え込んでいる。
「どうかしましたの、下僕?」
この子はたまに驚くことを言うことがあるので、念のために確認する。
ゆっくり考えをまとめて考えを言葉へと変える。
「これって神々への祈りを補助する踊りなのではないですか?」
そこでホーキンス先生は立ち上がった。
わたしも先ほどの石板の言葉を思い出す。
蒼き髪を持つ命を司る者よ。
魔を討つのがあなたの役目に有らず。
命を次へと送り出す者なり。
あなたは送る者なり。
生命を束ねなさい。
始まりを奏でなさい。
あなたは神への舞を捧げ、続く者たちのしるべとなれ。
神の眷属はいつでも我々とともに在る。
「ラケシス、レイナ! 踊りの服を用意しなさい! すぐに確かめますわよ!」
わたしがいきなり立ち上がったことで、ルージュのパパが慌ててやってくる。
何かやらかしたのかと顔を青くしてしまっている。
「ま、マリアさま! 何か気に触るようなことがありましたか! どうかわたしの命で家族の命だけでもお救いくださいませ!」
「落ち着いてください! 特に罰するつもりはないですからご安心してください。それよりもあそこで踊っている者たちを残しておいてください」
「は、はあ、それはよろしいですが、一体どうなされたのですか?」
「わたしもあそこで踊ります」
わたしはそう告げると目をひん剥かせてルージュのパパは倒れた。
状況についていけてないようだが、今は気にしている暇はない。
わたしはすぐに着替えのために、馬車へと入り、すぐに着替えを済ませた。
わたしの踊り子の姿を見て、平民たちから声があがる。
不安げに見ていた平民が次第に落ち着き始め、次第に熱を帯びた目へと変わっていく。
「領民のみなさん! わたしも一緒に踊らせてもらいます。ぜひ、みなさんの踊りでサポートしてください!」
平民たちは手をあげてこちらに了承をする。
わたしは先頭に立ち、竪琴が流れ始めるのを待った。
今回は二つの音楽を流して、お互いが自身の音楽通りに踊る。
まずはラケシスとレイナが竪琴を奏で始めて、わたしが踊り始めた。
最初はゆったりとした動きと曲調から始め、伝統の踊りも続くように始まる。
動きと曲調の激しさにつられそうになるが、なんとか自分のパートを踊る。
次第にわたしの体から魔力が溢れてくる。
だが前と違うのは後ろからも魔力の光が溢れている。
平民に魔力はない。
なのに平民たちからも出ているようにも見える。
わたしは不思議とこの光全てを操れる気がした。
何故だかわからないが、体が知っている。
これをどうすればいいかを。
「え……」
しかし、それなのに光は勝手に霧散されていった。
わけもわからずそのまま最後まで踊りきった。
「すげえ!」
「さすがは五大貴族様だ!」
「あんなの初めてだ」
平民たちは浮かれ、お互いに肩を叩いて興奮している。
ホーキンス先生とセルランがこちらへきた。
「あと少しだったのに、どうしておやめになったのですか?」
「わたしは何もしておりません。この光を神へと捧げようとしたのですが、何かに阻まれました」
ホーキンス先生はさらに考え込む。
前に進んでいるのにわからないこともどんどん増えている。
しかし肝心なのは、ヴェルダンディへ水の神の涙を届けること。
ちょうどこちらの近くを歩いていたルージュに話しかけた。
「ルートくん、ここにもステージがあるのですね」
「はい、過去の蒼の髪の女神はさまざまな踊りの伝説を残しております。それで我々パラストカーティでは全員が蒼の髪の女神の踊りを継承してきました」
「そうだ、そうだった! いいことを言ったパラストの生徒よ! すっかり忘れていた」
そこでホーキンス先生は嬉しそうに声をあげた。
わたしはよくわからず尋ねた。
「何を忘れていたのですか?」
「パラストカーティだけは百年前の内乱を起こしたことで、聖典をもらえてないのですよ」
聖典とは神について書かれている本だ。
基本は王族が管理しており、各領土に渡されたものなのだ。
その内容には神の恵みを得るための方法が載っている。
しかしパラストカーティだけは内乱を起こした責任で渡すことを禁じられた過去を持つ。
「ええ、そうですわね。でもそれと何が関係あるのですか?」
「大ありですよ。パラストカーティは過去の聖典を頼りに生きていたから、このようなステージが至る所にあります。過去はどの領土もステージがあったのですよ!」
「他ではないのですか!?」
ルージュは驚きの声をあげる。
わたしもびっくりだ。
このステージは過去の聖典では、なくてはならないものだと知らなかった。
「もう一度、パラストカーティは調べないといけませんね。マリアさまの髪の伝承は伝説ではなく、実在したものという信憑性が増してきてます。湖が戻ればだれも疑うものはいません」
「まあ、そうですわね。あとはどうすればあの湖が戻るのか」
考え事をしながら、顔をルートくんのパパへと向けると、ちょうど侍従の者から耳打ちされており、すぐにこちらへ伝えてくる。
「ではマリアさま、領民たちが遥か昔から引き継いできた伝統の踊りをお見せします。王国院で習う神々の祈りとは少し趣が違いますが、良い余興くらいにはなると思います」
「ええ、楽しみにしております」
わたしがそう言うと、ルージュのパパが声をかける。
すると大勢の民たちがステージへと上がり、踊りを披露する。
竪琴を持った奏者たちも緊張した面持ちで奏で始める。
さすがは伝統の踊り。
最初からかなり激しい動きで、優雅さはないが力のある踊りだ。
しかし、少しばかり自己主張し過ぎて目が疲れてくる。
「さすがは庶民の踊りですね。貴族とは違う味があります」
「ラケシス、それは褒めてますの? ですが、何かもうひと押しあれば光る気がしますね」
レイナの言うことにわたしも同意する。
普段から音楽については嗜んできたので、こういった粗には気づいてしまう。
だが特別教育を受けていない庶民であるならばこれも仕方がない。
「わたしはこういう音楽をわざと作ったと思いますけどね」
アスカの言葉がわたしにはよくわからない。
なぜ物足りない曲を作るのか。
「どういうことです、アスカ?」
「言葉で説明するのが難しいのですが、わざと自分たちを下に下げて、何かをあげようとしてるような。おそらく神より自分たちが下だと表しているのではないでしょうか」
そう言われるとそういう気がしてきた。
神はわたしたちの生活と密接している。
神のおかげで生きていけるので、それが音楽でも表されたのだと納得した。
そこで下僕がつぶやく。
「これってもしかして」
下僕が何かを閃きそうな顔をして、考え込んでいる。
「どうかしましたの、下僕?」
この子はたまに驚くことを言うことがあるので、念のために確認する。
ゆっくり考えをまとめて考えを言葉へと変える。
「これって神々への祈りを補助する踊りなのではないですか?」
そこでホーキンス先生は立ち上がった。
わたしも先ほどの石板の言葉を思い出す。
蒼き髪を持つ命を司る者よ。
魔を討つのがあなたの役目に有らず。
命を次へと送り出す者なり。
あなたは送る者なり。
生命を束ねなさい。
始まりを奏でなさい。
あなたは神への舞を捧げ、続く者たちのしるべとなれ。
神の眷属はいつでも我々とともに在る。
「ラケシス、レイナ! 踊りの服を用意しなさい! すぐに確かめますわよ!」
わたしがいきなり立ち上がったことで、ルージュのパパが慌ててやってくる。
何かやらかしたのかと顔を青くしてしまっている。
「ま、マリアさま! 何か気に触るようなことがありましたか! どうかわたしの命で家族の命だけでもお救いくださいませ!」
「落ち着いてください! 特に罰するつもりはないですからご安心してください。それよりもあそこで踊っている者たちを残しておいてください」
「は、はあ、それはよろしいですが、一体どうなされたのですか?」
「わたしもあそこで踊ります」
わたしはそう告げると目をひん剥かせてルージュのパパは倒れた。
状況についていけてないようだが、今は気にしている暇はない。
わたしはすぐに着替えのために、馬車へと入り、すぐに着替えを済ませた。
わたしの踊り子の姿を見て、平民たちから声があがる。
不安げに見ていた平民が次第に落ち着き始め、次第に熱を帯びた目へと変わっていく。
「領民のみなさん! わたしも一緒に踊らせてもらいます。ぜひ、みなさんの踊りでサポートしてください!」
平民たちは手をあげてこちらに了承をする。
わたしは先頭に立ち、竪琴が流れ始めるのを待った。
今回は二つの音楽を流して、お互いが自身の音楽通りに踊る。
まずはラケシスとレイナが竪琴を奏で始めて、わたしが踊り始めた。
最初はゆったりとした動きと曲調から始め、伝統の踊りも続くように始まる。
動きと曲調の激しさにつられそうになるが、なんとか自分のパートを踊る。
次第にわたしの体から魔力が溢れてくる。
だが前と違うのは後ろからも魔力の光が溢れている。
平民に魔力はない。
なのに平民たちからも出ているようにも見える。
わたしは不思議とこの光全てを操れる気がした。
何故だかわからないが、体が知っている。
これをどうすればいいかを。
「え……」
しかし、それなのに光は勝手に霧散されていった。
わけもわからずそのまま最後まで踊りきった。
「すげえ!」
「さすがは五大貴族様だ!」
「あんなの初めてだ」
平民たちは浮かれ、お互いに肩を叩いて興奮している。
ホーキンス先生とセルランがこちらへきた。
「あと少しだったのに、どうしておやめになったのですか?」
「わたしは何もしておりません。この光を神へと捧げようとしたのですが、何かに阻まれました」
ホーキンス先生はさらに考え込む。
前に進んでいるのにわからないこともどんどん増えている。
しかし肝心なのは、ヴェルダンディへ水の神の涙を届けること。
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