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第一章 魔法祭で負けてたまるものですか
蒼の髪の伝承
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すぐさま事の顛末を伝えて、何か良い方法があるかを尋ねた。
ホーキンスは一度頭を悩ませて、本棚の方へ向かっていく。
そこから一冊の本を取り出した。
「そうですね。今の状況ですと、どんな良薬でもきつそうですし、それならこのパラストカーティの伝承についてはどうですか?」
「伝承?」
わたしはホーキンス先生が研究結果をまとめた本を受け取り、該当のページを見る。
現在の地図があり、パラストカーティの領土にバツの印が入っている。
そのページには手書きの挿絵が入っており、湖の近くで人が手を挙げている。
そして、文字が大きく書かれていた。
「水の神の涙?」
「ええ、なんでもどんな病気でも一瞬で治すという湖がありましてね。そのバッテンが伝承の場所でしてね、僕も一度行ってみたのでーー」
「さっそく行ってきます!」
わたしはさっそくその伝承の場所へ向かおうと、部屋から出ようとするがホーキンス先生に肩を掴まれる。
普段の適当そうな人間とは思えない俊敏さだ。
「ちょっと待ってください! 行ったって無駄ですよ!」
ホーキンス先生から止められて不機嫌になりながらも理由を聞く。
ホーキンス先生はこちらの動きが止まったのを見て安心して話し始める。
「僕も行ったはいいがそこには湖なんてなかったんですよ。湖があった痕跡はありましたがね」
「そ、そんな! ならなんでこんな喜ばせるようなことを言うのですか! こっちは急いでいるのに!」
わたしはあまりにも余裕が無くなってきているため、半ば八つ当たりのように言ってしまう。
ホーキンスは肩を竦めた。
「まあまあ、少しは話を聞いてください。その湖では蒼の髪の伝承があるのですよ」
「蒼の髪の伝承?」
「ええ、どうやら大昔に蒼の髪を持った女性が魔法を奉納したそうです。すると、一夜にして湖が出来たのです。この奇跡の現象から水の神が涙を流して恵を下さったという伝承が残ったのです。今はマリアさまがいるので行く価値はあると思いますよ」
わたしはその話を聞いて自分の髪を触る。
昔からこの髪には伝説があると言われてきた。
もし本当にこの伝承通りならヴェルダンディを治せるかもしれない。
「ホーキンス先生、先程は失礼しました。教えてくださりありがとうございます」
「いいえ、でももし行かれるのなら僕も付いて行きますよ。少しでも試せることは試したいですからね」
わたしは冷静さを取り戻し、ホーキンス先生にお礼を言う。
ホーキンス先生の同行を許可してリムミントにパラストカーティへの出発の準備をお願いする。
だがリムミントは少しばかり顔を暗くする。
「今から出発となると、授業の方は魔法祭のための準備のため問題ないですが……その、往復に掛かる時間を考えると魔法祭が終わってしまいます」
王国院からパラストカーティへはちょうど正反対の方角にあり、馬車で行くとなるとかなりの時間が掛かる。
わたしがここで魔法祭をサボるのは、確実にチームの士気を下げてしまう。
それに手紙の件もある。
だが、わたしはヴェルダンディの命のほうが大事だ。
「魔法祭は……諦めます。わたくしの側近の命と天秤にかけるものではありませんからね」
「マリアさま、ひとつだけ妙案があります。あまりやりたくない方法ですが、騎獣で空を進めば、どんなに遅くとも十日以内には帰ることもできます」
セルランが意見を言ってくれる。
かなりの良案だが、なぜやりたくないのか?
全員が理由に気付いたのか黙ってしまっている。
だが下僕だけは特に気負わず説明する。
「乗馬の練習をあまりやらなかったマリアさまですと、お尻を痛めるかもしれないからでーーーーぶふぇっ!」
全くデリカシーのない下僕の顔に研究本を投げつける。
ホーキンス先生は大切な本を投げられ、悲鳴をあげながら本の無事を確認する。
下僕は……。
……あんたは少し眠っておきなさい!
次の日になり、昨日召集したメンバーが王国院の門の前で待っている。
護衛騎士全員とあちらでの身の回りの世話はレイナとラケシス、文官は下僕とアスカが付いてくる。
本当はディアーナを連れて行く予定だったが、ラケシスがどうしても行きたいと言うので、ラケシスを連れて行くことになった。
パラストカーティにも道案内のお願いをしたところ、わざわざメルオープが来てくれることとなった。
あと地元だというルートくんも来てくれるそうだ。
そして伝承の検証をしたいホーキンス先生も付いてくる。
今回は疲れを考慮して二人一組で騎獣に乗る。
全員が水竜を召喚したのを見て、セルランの元へ向かう。
わたしは乗馬用の服に着替えており、オシャレは控えめとなっている。
セルランの騎獣に相乗りして、全員に出発の声を上げる。
「では、パラストカーティへ行きましょう! セルランお願いします」
「かしこまりました。全員、マリアさまをまたここに無事連れ帰るのを忘れるな! では出立!」
全員の水竜が飛び立ち、パラストカーティへと向かうのだった。
ホーキンスは一度頭を悩ませて、本棚の方へ向かっていく。
そこから一冊の本を取り出した。
「そうですね。今の状況ですと、どんな良薬でもきつそうですし、それならこのパラストカーティの伝承についてはどうですか?」
「伝承?」
わたしはホーキンス先生が研究結果をまとめた本を受け取り、該当のページを見る。
現在の地図があり、パラストカーティの領土にバツの印が入っている。
そのページには手書きの挿絵が入っており、湖の近くで人が手を挙げている。
そして、文字が大きく書かれていた。
「水の神の涙?」
「ええ、なんでもどんな病気でも一瞬で治すという湖がありましてね。そのバッテンが伝承の場所でしてね、僕も一度行ってみたのでーー」
「さっそく行ってきます!」
わたしはさっそくその伝承の場所へ向かおうと、部屋から出ようとするがホーキンス先生に肩を掴まれる。
普段の適当そうな人間とは思えない俊敏さだ。
「ちょっと待ってください! 行ったって無駄ですよ!」
ホーキンス先生から止められて不機嫌になりながらも理由を聞く。
ホーキンス先生はこちらの動きが止まったのを見て安心して話し始める。
「僕も行ったはいいがそこには湖なんてなかったんですよ。湖があった痕跡はありましたがね」
「そ、そんな! ならなんでこんな喜ばせるようなことを言うのですか! こっちは急いでいるのに!」
わたしはあまりにも余裕が無くなってきているため、半ば八つ当たりのように言ってしまう。
ホーキンスは肩を竦めた。
「まあまあ、少しは話を聞いてください。その湖では蒼の髪の伝承があるのですよ」
「蒼の髪の伝承?」
「ええ、どうやら大昔に蒼の髪を持った女性が魔法を奉納したそうです。すると、一夜にして湖が出来たのです。この奇跡の現象から水の神が涙を流して恵を下さったという伝承が残ったのです。今はマリアさまがいるので行く価値はあると思いますよ」
わたしはその話を聞いて自分の髪を触る。
昔からこの髪には伝説があると言われてきた。
もし本当にこの伝承通りならヴェルダンディを治せるかもしれない。
「ホーキンス先生、先程は失礼しました。教えてくださりありがとうございます」
「いいえ、でももし行かれるのなら僕も付いて行きますよ。少しでも試せることは試したいですからね」
わたしは冷静さを取り戻し、ホーキンス先生にお礼を言う。
ホーキンス先生の同行を許可してリムミントにパラストカーティへの出発の準備をお願いする。
だがリムミントは少しばかり顔を暗くする。
「今から出発となると、授業の方は魔法祭のための準備のため問題ないですが……その、往復に掛かる時間を考えると魔法祭が終わってしまいます」
王国院からパラストカーティへはちょうど正反対の方角にあり、馬車で行くとなるとかなりの時間が掛かる。
わたしがここで魔法祭をサボるのは、確実にチームの士気を下げてしまう。
それに手紙の件もある。
だが、わたしはヴェルダンディの命のほうが大事だ。
「魔法祭は……諦めます。わたくしの側近の命と天秤にかけるものではありませんからね」
「マリアさま、ひとつだけ妙案があります。あまりやりたくない方法ですが、騎獣で空を進めば、どんなに遅くとも十日以内には帰ることもできます」
セルランが意見を言ってくれる。
かなりの良案だが、なぜやりたくないのか?
全員が理由に気付いたのか黙ってしまっている。
だが下僕だけは特に気負わず説明する。
「乗馬の練習をあまりやらなかったマリアさまですと、お尻を痛めるかもしれないからでーーーーぶふぇっ!」
全くデリカシーのない下僕の顔に研究本を投げつける。
ホーキンス先生は大切な本を投げられ、悲鳴をあげながら本の無事を確認する。
下僕は……。
……あんたは少し眠っておきなさい!
次の日になり、昨日召集したメンバーが王国院の門の前で待っている。
護衛騎士全員とあちらでの身の回りの世話はレイナとラケシス、文官は下僕とアスカが付いてくる。
本当はディアーナを連れて行く予定だったが、ラケシスがどうしても行きたいと言うので、ラケシスを連れて行くことになった。
パラストカーティにも道案内のお願いをしたところ、わざわざメルオープが来てくれることとなった。
あと地元だというルートくんも来てくれるそうだ。
そして伝承の検証をしたいホーキンス先生も付いてくる。
今回は疲れを考慮して二人一組で騎獣に乗る。
全員が水竜を召喚したのを見て、セルランの元へ向かう。
わたしは乗馬用の服に着替えており、オシャレは控えめとなっている。
セルランの騎獣に相乗りして、全員に出発の声を上げる。
「では、パラストカーティへ行きましょう! セルランお願いします」
「かしこまりました。全員、マリアさまをまたここに無事連れ帰るのを忘れるな! では出立!」
全員の水竜が飛び立ち、パラストカーティへと向かうのだった。
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