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第一章 魔法祭で負けてたまるものですか
錬金術の鎧
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シュティレンツは二つの研究所しかない。
魔法と錬金術の研究所だ。
魔力が弱い貴族でも使える錬金術について日夜研究しているため、今回の研究は魔法祭で直接的には役に立たないが、マンネルハイムなら間接的に役に立つはずだ。
シュティレンツの研究所へ向かうと、扉の前で領主候補生のカオディが待っていた。
「よくおいでくださりました。マリアさまから指名していただき大変ありがたいです。是非とも我々の研究成果を見ていただければと思います」
「ええ、あなたたちのこれまでの研究が陽に当たることとなるでしょう。ぜひ錬金術のすべてを見せてもらいたいです」
カオディが先導して、研究所へ入っていく。
シュティレンツに許されている研究所の三部屋を壁をぶち抜いて一つの部屋にしているため、かなり広く感じた。
そこにはさまざまな道具が置かれており、魔道具と思われる物だと見受けられる。
「たくさん物がありますね」
「はい。我々の研究の賜物です。特にあれをご覧ください」
カオディが指す方向を見ると大きな筒の形が前方に出ている大型な鉄があった。
一部屋を丸ごと埋めているほどの大きさだ。
わたしには見覚えがなく、側近たちの顔を見るが誰も知らないようだ。
「これは“大砲”と呼ばれるものです」
「強そうな名前ですね。どういった用途で使われるのですか?」
大砲、大人数の魔力を注ぐことで強大な力を放出できるので大型の魔物を退治するときに役に立ち、やろうと思えば局所的に荒れた土地に向けて放つことで魔力を大地の奥深くまで送ることができるとのこと。
神へ魔力を送るためのロスが減るのならかなり有能なものだ。
「これはどうしてあまり広まってませんの? かなり役に立ちそうですが?」
「見ての通りかなりの大きさです。もう少し軽量化しないことには外へ運ぶのが難しいので、試行錯誤している最中でございます」
さすがにこんな大きな物を訓練場まで持っていけないな、と考えていると、次は人の三倍くらいある頭部のない人形らしき物が目に入った。
「あれは何ですの?」
「ああ、あれは魔導アーマー二号です。あの胴体の上から入って、操縦席で魔法を注入すると誰でも常人の五倍以上の力を出せる物でございます。魔法を込めれば自分の手足のように使えます」
……おお、これはすごい!
これならか弱いわたしでも強くなるかもしれない。
「では乗ってみますわね」
「お、お待ちください! 」
わたしはウキウキわくわくしながら、魔導アーマーくんの元へと向かおうとするが、カオディによって止められた。
わたしは不機嫌になりながら、どうして乗ったらダメなのかを聞く。
「これは素材があまり良くないので魔法の許容量が高くないのです。マリアさまの魔力に耐えられる物ではございません!」
「それでしたら、今回かなりの予算を与えますので魔法祭までには使えますね!」
「大変申し訳ございませんが、そう簡単にはいかないのです」
カオディの話を聞くと、素材が手に入っても実際に作ってから実験しないことにはかなり危険とのこと。
弱くてもいいから使ってみたいとお願いしたが、少しでも許容量を超えると爆発するとのこと。
……乗ってみたかったな。
「分かりました。錬金術に関してはわたくしでは分かりませんので、ぜひ完成させてください。もし出来なかったらわかっておりますわよね?」
「は、はい。もちろんでございます」
カオディに優しくお願い?をしたので魔法祭を楽しみにしておこう。
わたしはリムミントに二つの研究所に対して正式に予算を出すように命令を出した。
わたしたちが一度領へと戻ると、ちょうど護衛騎士のヴェルダンディとルキノも戻るところだったようだ。
ヴェルダンディとルキノには騎士の特訓をお願いしていたのでそれの帰りだろう。
ヴェルダンディは朗らかな笑顔を向けて、こちらに駆け足で来る。
「おっ、マリアさま! しっかりシゴいてきましたよ。まだまだ基礎が足りないから、全然強くないけど、十日後の魔法祭の練習では前みたいにはならないはずですよ」
「ありがとう、ヴェルダンディ。あなたならやってくれると思っています。でも言葉遣いはもう少し頑張りなさい」
わたしは軽くヴェルダンディの鼻を弾いて注意する。
ヴェルダンディは不意打ちを食らって涙目になった。
あまり甘やかし過ぎても良くないのでたまには鞭を与えとかないとね。
ルキノもヴェルダンディに小言を言ったあと、こちらを慮った顔を見せながら挨拶をする。
「おはようございます、マリアさま。研究所のほうはどうでしたか? ホーキンス先生の説得をするとお伺いしていましたが」
「なんとか協力をもらえました。もう少しこちらを敬ってくれるとありがたいのですがね」
「おめでとうございます! 流石はマリアさまです。わたくしたちも負けてはいられません。今日の授業の後も鍛えてきます」
ルキノはさらにやる気を出してくれた。
いい流れが来たと感じながら、十日後の魔法祭の練習日となった。
魔法と錬金術の研究所だ。
魔力が弱い貴族でも使える錬金術について日夜研究しているため、今回の研究は魔法祭で直接的には役に立たないが、マンネルハイムなら間接的に役に立つはずだ。
シュティレンツの研究所へ向かうと、扉の前で領主候補生のカオディが待っていた。
「よくおいでくださりました。マリアさまから指名していただき大変ありがたいです。是非とも我々の研究成果を見ていただければと思います」
「ええ、あなたたちのこれまでの研究が陽に当たることとなるでしょう。ぜひ錬金術のすべてを見せてもらいたいです」
カオディが先導して、研究所へ入っていく。
シュティレンツに許されている研究所の三部屋を壁をぶち抜いて一つの部屋にしているため、かなり広く感じた。
そこにはさまざまな道具が置かれており、魔道具と思われる物だと見受けられる。
「たくさん物がありますね」
「はい。我々の研究の賜物です。特にあれをご覧ください」
カオディが指す方向を見ると大きな筒の形が前方に出ている大型な鉄があった。
一部屋を丸ごと埋めているほどの大きさだ。
わたしには見覚えがなく、側近たちの顔を見るが誰も知らないようだ。
「これは“大砲”と呼ばれるものです」
「強そうな名前ですね。どういった用途で使われるのですか?」
大砲、大人数の魔力を注ぐことで強大な力を放出できるので大型の魔物を退治するときに役に立ち、やろうと思えば局所的に荒れた土地に向けて放つことで魔力を大地の奥深くまで送ることができるとのこと。
神へ魔力を送るためのロスが減るのならかなり有能なものだ。
「これはどうしてあまり広まってませんの? かなり役に立ちそうですが?」
「見ての通りかなりの大きさです。もう少し軽量化しないことには外へ運ぶのが難しいので、試行錯誤している最中でございます」
さすがにこんな大きな物を訓練場まで持っていけないな、と考えていると、次は人の三倍くらいある頭部のない人形らしき物が目に入った。
「あれは何ですの?」
「ああ、あれは魔導アーマー二号です。あの胴体の上から入って、操縦席で魔法を注入すると誰でも常人の五倍以上の力を出せる物でございます。魔法を込めれば自分の手足のように使えます」
……おお、これはすごい!
これならか弱いわたしでも強くなるかもしれない。
「では乗ってみますわね」
「お、お待ちください! 」
わたしはウキウキわくわくしながら、魔導アーマーくんの元へと向かおうとするが、カオディによって止められた。
わたしは不機嫌になりながら、どうして乗ったらダメなのかを聞く。
「これは素材があまり良くないので魔法の許容量が高くないのです。マリアさまの魔力に耐えられる物ではございません!」
「それでしたら、今回かなりの予算を与えますので魔法祭までには使えますね!」
「大変申し訳ございませんが、そう簡単にはいかないのです」
カオディの話を聞くと、素材が手に入っても実際に作ってから実験しないことにはかなり危険とのこと。
弱くてもいいから使ってみたいとお願いしたが、少しでも許容量を超えると爆発するとのこと。
……乗ってみたかったな。
「分かりました。錬金術に関してはわたくしでは分かりませんので、ぜひ完成させてください。もし出来なかったらわかっておりますわよね?」
「は、はい。もちろんでございます」
カオディに優しくお願い?をしたので魔法祭を楽しみにしておこう。
わたしはリムミントに二つの研究所に対して正式に予算を出すように命令を出した。
わたしたちが一度領へと戻ると、ちょうど護衛騎士のヴェルダンディとルキノも戻るところだったようだ。
ヴェルダンディとルキノには騎士の特訓をお願いしていたのでそれの帰りだろう。
ヴェルダンディは朗らかな笑顔を向けて、こちらに駆け足で来る。
「おっ、マリアさま! しっかりシゴいてきましたよ。まだまだ基礎が足りないから、全然強くないけど、十日後の魔法祭の練習では前みたいにはならないはずですよ」
「ありがとう、ヴェルダンディ。あなたならやってくれると思っています。でも言葉遣いはもう少し頑張りなさい」
わたしは軽くヴェルダンディの鼻を弾いて注意する。
ヴェルダンディは不意打ちを食らって涙目になった。
あまり甘やかし過ぎても良くないのでたまには鞭を与えとかないとね。
ルキノもヴェルダンディに小言を言ったあと、こちらを慮った顔を見せながら挨拶をする。
「おはようございます、マリアさま。研究所のほうはどうでしたか? ホーキンス先生の説得をするとお伺いしていましたが」
「なんとか協力をもらえました。もう少しこちらを敬ってくれるとありがたいのですがね」
「おめでとうございます! 流石はマリアさまです。わたくしたちも負けてはいられません。今日の授業の後も鍛えてきます」
ルキノはさらにやる気を出してくれた。
いい流れが来たと感じながら、十日後の魔法祭の練習日となった。
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