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1話 神の国

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 古今東西右左ここんとうざいみぎひだり

 見渡す限り神・神・神



―――ここは神の国




 天は高く澄み渡り、望む景色に見惚れれば、ココはあの世かこの世か
人の世か?人の世ならぬ神の国


 ごうごう茂る樹木のカゴの内側の
 まん真ん中にそびえ立ち 我が物顔で居座る御山のその先に
 ぐんぐんぐぐんと伸びていく ひと筋道を下って回って
 72歩目のふもとに広がる歓楽街。


 賑やか華やかきらびやか
 赤提灯と祭り装いの歓楽街。


 祭囃子の笛太鼓、鼻をさする酒の臭いに幸せの匂い
 誰かに問えば答えるだろう「ココはなんだ?」「天国だ」―――




 行き交う影は人影ならぬ神の影、ノミより小さき影から名状しがたき異形の影。
 見上げればだいだらぼっちの股の下。広がる風呂敷包みは目に毒か…眼福か?


 八百余万の神々行き交う、大店おおだな通りをさらに下って、ゆらゆらと、祭囃子が遠くに響いたその先に【ヒトツガワ】という名の大河を渡す一本橋。


 だくだくと流るる川を昇るはいつかは龍に世襲するのか鯉登り、鮭も登れば上流酒?
 欲望渦巻くヒトツガワ―――その上に掛かる朱色に染まる橋の上からボソボソ話し音が聞こえてる。


「クサイクサイ」
「ああ臭い臭い」


 感情の伴わぬ抑揚の無い声の主は、二つのお面。手も足も胴体も、ましてや頭もないまま宙にゆらゆら浮かぶ二つの四角い木面。自在に宙を舞いながら、対面にモノに言葉を続けた。


「クサイクサイ、ヒトクサイ」
「嗚呼…、人だ人の臭いだくさいくさい」

「そこをどけ醜き神よ。俺は貴様等になど用は無い」


 節操なく飛び交う二つのお面に言い放つひとつ。


「ブレイ、ブレイダ」
「ああ人間如きが無礼だ、ノコノコだ」

「何度いえばわかる愚かな神よ。俺はノコノコじゃない人間だ!」


 神が産まれ、神が暮らし、神が朽ちる人の世のことわりの外、神の国。
 その国のことわりの外、生きる人間ひとり。





―――【神隠しノコノコ】―――
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