上 下
12 / 12
デレ度2

満天の星空と君

しおりを挟む
 高校生になってから一人暮らしを始めた俺こと綾瀬春《あやせはる》の住むアパートには恵まれたことにキッチンやトイレそして風呂まで付いていて家賃は激安なのだが……

「えっ!、お風呂が壊れた!?」
「うん、なんか温かいお湯が出なくて。明日は業者さんが来てくれて明後日には多分なおると思うんだけど……」

 築10年のアパートなのでお風呂が壊れてしまってもおかしくはないのだ。
 それにここ激安だし。

「えぇー。じゃぁ、お風呂どーするのぉっ!?」
「入らなくてもいんじゃない?」
「綾瀬くん。不潔な男子はモテないよ……」
「いや、冗談だからっ!」

 実川《みかわ》さんは俺の方を見てドン引きしている。
 まぁ、あんなこと言ったんだから無理もないか。

「じゃぁ今日は銭湯《せんとう》でも行く?」
「えっーー!?」
「いや、銭湯だから。夜から戦場に行こうなんて誘う奴いないでしょ」

 軍隊か!ってツッコミそうになったわっ!

「綾瀬くんの滑舌《かつぜつ》が悪いんだよぉー。それで、銭湯ってなに?」
「へぇ!?」

 まさかの発言に俺は魂が抜けたように力が抜けぶっ倒れそうになる。

「実川さんって銭湯行ったことないの?」
「だから銭湯って何よぉーもう……」

 流石お金持ちのお嬢様。
 庶民御用達《しょみんごようたし》のでっかいお風呂には行ったことがないらしい。

「銭湯って言うのは簡単に言うと大っきなお風呂屋さんかな」
「へぇー。私行ってみたい!」
「うん。俺も今日は銭湯に行こうって誘おうと思ってたから」
「じゃぁ今から行こっか!」

 実川さんはいつも以上にウキウキした様子で、相当銭湯に行ってみたいのだろう。
 それから僕らは銭湯に行ける準備をし出発しようとしていたんだけど……

「実川さん……なんで浮き輪なんか持ってんの?」
「そりゃあ大きなお風呂で泳ぐからでしょ」
「いや、銭湯って貸し切りのプールじゃないからね!?」
「えっ!そーなの?」

 もう少しちゃんと説明しとけば良かったーーまさかここまでだったとは。
 そしてなんで俺の部屋にカラフルな浮き輪なんてあるんだろう……
 仕切り直して俺は銭湯という場所を細かく教えてアパートを出た。
 銭湯のことをこんなにも説明したのは初めてだし、これからももうないだろう。多分。



           ◆




「綾瀬くん! 今日星がすごい綺麗だよ!」
「ほんとだね」

 隣ではS級美少女な実川さんが顔を上げ星を見ながら歩いている。
 実川さんの目はキラキラとしていて夜の暗い場所でも美しく見える。
 恋愛アンチだった俺がまさかクラスのNO1美少女を連れて星が綺麗な夜道を二人で歩いてるなんて……前の俺だったら考えられないな。
 
 ――銭湯に着いた僕らは男女それぞれわかれ風呂に入った。

 実川さん、一人で大丈夫かなぁー。まぁ俺がなんとかできるわけないんだけど。
 俺は風呂に入っている間ずっと実川さんのことを考えてしまっていた。
 なんかほっとけない気持ちがあって……
 風呂から上がった俺は時計を見て40分も入っていた事に気づく。
 実川さんが待ってくれていると思い急いで着替えてロビーに出た。
 すると女湯の方から実川さんが出てきて俺に気づいて小走りで近づいてくる。

「綾瀬くん! 銭湯ってすごいね!色んな種類のお風呂があって一人でも楽しかった」
「でしょ! また機会があったら来ようね」
「うん!」

 実川さんは火照った様子で出口に走って行った。
 今、実川さん少し照れてたような……
 そんなことを考えながら俺は実川さんの後を追いかけた。
 銭湯からの帰り道。空にはまだ綺麗な星が輝いていた。
 俺が実川さんの横に並んで歩くスピードをあわせていると実川さんがこっちを見てきた。

「綾瀬くん。ありがとう」
「えっ……なにが?」
「沢山あるからなぁー。例えばーもし私と綾瀬くんが出会ってなかったら今見てるこの綺麗な星は見られなかっただろうし、銭湯にも入れなかったと思う」

 そう言った後、実川さんは少し前に出て俺の方を振り向いて言った。

「だから、綾瀬くんが私と出会ってくれたことにありがとうってこと」

 その瞬間俺の心拍数はこれまで以上に上がり彼女の顔を見るとなぜかドキドキしてしまう。
 なんでそんな平気で恥ずかしいセリフ……

「ありがとう。俺も実川さんと出会えてよかった」

 頭で考える前に無意識で口から返事が溺《こぼ》れていた。











__________
あとがき

読んで頂きまして、ありがとうございます!
なんかラストのクライマックスみたいになってしまいましたが、物語はまだまだ続きます!
話が面白い、キャラがかわいいと思って頂けましたら、
お気に入り登録を頂けますと幸いです。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

幼馴染みのアイツとようやく○○○をした、僕と私の夏の話

こうしき
恋愛
クールなツンツン女子のあかねと真面目な眼鏡男子の亮汰は幼馴染み。 両思いにも関わらず、お互い片想いだと思い込んでいた二人が初めて互いの気持ちを知った、ある夏の日。 戸惑いながらも初めてその身を重ねた二人は夢中で何度も愛し合う。何度も、何度も、何度も── ※ムーンライトにも掲載しています

ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。

イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。 きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。 そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……? ※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。 ※他サイトにも掲載しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

Inevitable Romance?

天乃 彗
恋愛
平凡な日常を送っていた大学生・晃太の元に現れたのは、『未来が見える』という美少女・未来(みく)だった。 彼女の能力や『見えた』という未来を信じられない晃太だったが……?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...