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第二章
第四話②※
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「ん……別にいーだろ。ちょっとくらい楽しんでも」
飴を歯と頬の間に押しこんでから抗議の声を上げた。するとディートリヒはまぶたを閉じて眉根を寄せる。おまけに額や鼻の頭に汗が滲んでいた。痛みをこらえているように見えるし、悲しそうでもあった。
クルトを弄ぶうちに昂ぶりでもしたのか。節度ある騎士らしくも、己をも謀る貴族らしくもない。平民のクルトに心を乱されたことを恥じてでもいるのだろう。
(青薔薇の公子さまが……いいザマだな。俺を下に見てナメてるから、こうなんだよ!)
「すねんなよ~。俺だけ気持ちよくて悪かったって! 好きだから楽しんでんだぜ……俺は」
ディートリヒの心を侵して揺さぶったという事実に心が踊る。小馬鹿にしたセリフを突きつけてディートリヒの頬を手の甲で叩いた。ディートリヒは驚いたらしく、クルトの屹立を手放した。
ディートリヒをあしらえたことで気持ちはいつになく爽やかだ。これが持てるものの余裕というものなのか。今ならディートリヒと親しんでやってもいい。クルトはディートリヒの頬を手の甲で撫でた。
「クルト。やめてくれ……私を煽ってくれるな」
ディートリヒの声は震え、こめかみは血管が浮いており、眉やまぶたに強い力が加わっている。青薔薇の公子さまはクルトの言動がお気に召さないらしい。
「煽ってねえよ。親しみを込めてんだよ」
言葉が途切れきなないうちにディートリヒがクルトの頬をつかんだ。飴が押されて口の中に戻る。ディートリヒはやや強引に唇を奪いにきた。唇に歯を立て、強く吸ってくる。クルトの頬の内側の粘膜は尖らせた舌の先でなめ回され、柔らかくした先端で口腔は犯された。
口の中の粘液は飴のせいで甘いのか快感のせいで甘いのかわからない。ディートリヒの舌はぐにぐにと絡んできてクルトの舌へ飴玉を押し付ける。飴を挟んで2つの舌が密になる。
「ふ、んっ……んむ、っは、ぁ」
「君は悪い男だ」
ディートリヒは呼吸をする技を身に着けていた。クルトはそうではない。濃密な快楽を飴玉ごと舌へなすられ、頭が緩む。飴は凹レンズの形になってきた。
ディートリヒは飴を下側からさらおうとする。クルトは飴ごと快感を取り上げられるような気がした。防ぐためには舌を内へ丸めなければならない。柔らかく柔らかく、舌を蠢かせてディートリヒから逃げる。
ディートリヒの舌はクルトの舌の裏にピタリと寄り添った。なめらかな粘膜を舌の表の突起でくすぐられると性器周辺は甘く痺れる。ディートリヒのたくましい筋肉に圧迫される会陰もそうだし、胸のあたりも痺れていた。
クルトの乳頭はジンジンと疼いて触れてほしがっている。乳首は蕾の前、花芽のように硬い。
「っあ、ふッ……ん、ぅんっ、あ、ああ……」
「少し君を恐れる気持ちもあるよ」
クルトは指先を胸に当てて下側から撫でた。気持ちよくない。つまんで指で転がし、揉んでみたり弾いてみたりしてもダメだ。焦れったさが増すだけだった。
会陰をどうにかしたくて腰を少しだけ揺する。誘いだと思ったのか、ディートリヒの指が頬から胸の頂へ飛んでつついてきた。それだけの刺激でクルトは力が抜けて、舌から気がそれる。
「んっ……は、ふあっ」
ディートリヒは隙を逃さず舌の表面に絡んできた。飴は薄く小さくなっていたのでディートリヒの舌先によって簡単に割られる。ディートリヒは残った甘みや欠片を舌の先端で拾い、クルトの上あごや歯茎、それに舌へ味わわせていく。
左手は乳頭をつまんでは離し、右手は陰茎に添えられた。浅い段差を人さし指と中指で攻め、残る指で軸を締めながら扱かれる。ディートリヒの体はクルトの思考をどこまでも溶かすのだ。
クルトがいじっているほうの乳首はもどかしさで尖り、足の付根や会陰より熱い。
「クルト。こんなに胸が弱いと心配になるよ。私でなくとも君の骨は抜けるだろうな」
ディートリヒはクルトの唇や口のまわりを舐めてつぶやく。
「ん、っはあ……お前のせいで、っく、ぅ、こうなってんだ……」
「ぐ、ううっ……クルト……君は」
クルトは喜悦で途切れる呼吸の中から、なんとかなじってみせた。ディートリヒは苛立ちを発散させたいのだろう。クルトの乳首を3本の指で激しくこねて、唇を強く吸った。括れも竿も攻め立てられる。
「んぅ、あっ! ん、ふ……気持ちいい……っは、あ、あ……好き、好きだ、んぁ! く、くうぅッ」
クルトが好きというたびに攻めは少しずつ容赦がなくなる。頭が快楽の閃光で満たされたとき、クルトは限界を迎えた。ディートリヒの太ももがゆっくり水平になる。2度目の精液は床にも落ちた。
ほうけていたいがクルトは攻勢を保たなければならない。
「おい、ディートリヒ」
ディートリヒは呼吸を荒く乱すだけで答えはしない。クルトの下腹部を、クルトの白濁が汚した手で押してくる。胸をこねあげた手まで重ねて強く、強く押してくる。クルトは痛いだけで気持ちよくない。ただ欲情がたぎって指先まで痺れていく。
「もっと、もっと体の奥……挿入する前の、準備のほうも教えろよ」
ディートリヒの体がぴくりと跳ねた。クルトの体も軽く跳ねる。
「するわけには、いかない」
そのささやきは低く地を這うようで注意を払っていなければ聞こえなかっただろう。クルトは皮肉げな笑い声を立ててディートリヒの手を強く打った。
「離せよ」
「なぜだ!」
ディートリヒらしくもない耳触りの悪い声である。クルトは腹を押さえる指をつかんで引き剥がしにかかった。ディートリヒの力が強くても指の関節を極めたら抵抗はできる。
「娼館の子なら教えてくれんだろ。童貞捨てる機会をふいにしたくねえしな~。風呂まだ冷めてはねえよな?」
クルトが機嫌のよい笑顔と声を出すとディートリヒの手はじっとりとなめるように動きはじめた。向かう先は予想がつく。
「出せなくなれば……行く意味もなくなるだろう?」
「あ? 止めてんじゃねーぞ」
クルトは胸と股間に進む手つきを遮らない。邪魔などしない。
「クルト。君はやはり悪い男だ……」
その呻くような声が心地よくてたまらなかった。レイピアをはじめて振るえたその日よりやりきった思いがある。クルトは抗う言葉に甘い響きを足していく。「好き」を混ぜればディートリヒの手指はより妖しく蠢くのだ。
(これコイツの体使ったことになんのか? 約束……人の話を、聞く。お袋の頼みもたまには聞いてやるか……)
白く粘る体液が薄くなったとき、クルトはそんなことを考えて無意識の領域へ落ちた。
飴を歯と頬の間に押しこんでから抗議の声を上げた。するとディートリヒはまぶたを閉じて眉根を寄せる。おまけに額や鼻の頭に汗が滲んでいた。痛みをこらえているように見えるし、悲しそうでもあった。
クルトを弄ぶうちに昂ぶりでもしたのか。節度ある騎士らしくも、己をも謀る貴族らしくもない。平民のクルトに心を乱されたことを恥じてでもいるのだろう。
(青薔薇の公子さまが……いいザマだな。俺を下に見てナメてるから、こうなんだよ!)
「すねんなよ~。俺だけ気持ちよくて悪かったって! 好きだから楽しんでんだぜ……俺は」
ディートリヒの心を侵して揺さぶったという事実に心が踊る。小馬鹿にしたセリフを突きつけてディートリヒの頬を手の甲で叩いた。ディートリヒは驚いたらしく、クルトの屹立を手放した。
ディートリヒをあしらえたことで気持ちはいつになく爽やかだ。これが持てるものの余裕というものなのか。今ならディートリヒと親しんでやってもいい。クルトはディートリヒの頬を手の甲で撫でた。
「クルト。やめてくれ……私を煽ってくれるな」
ディートリヒの声は震え、こめかみは血管が浮いており、眉やまぶたに強い力が加わっている。青薔薇の公子さまはクルトの言動がお気に召さないらしい。
「煽ってねえよ。親しみを込めてんだよ」
言葉が途切れきなないうちにディートリヒがクルトの頬をつかんだ。飴が押されて口の中に戻る。ディートリヒはやや強引に唇を奪いにきた。唇に歯を立て、強く吸ってくる。クルトの頬の内側の粘膜は尖らせた舌の先でなめ回され、柔らかくした先端で口腔は犯された。
口の中の粘液は飴のせいで甘いのか快感のせいで甘いのかわからない。ディートリヒの舌はぐにぐにと絡んできてクルトの舌へ飴玉を押し付ける。飴を挟んで2つの舌が密になる。
「ふ、んっ……んむ、っは、ぁ」
「君は悪い男だ」
ディートリヒは呼吸をする技を身に着けていた。クルトはそうではない。濃密な快楽を飴玉ごと舌へなすられ、頭が緩む。飴は凹レンズの形になってきた。
ディートリヒは飴を下側からさらおうとする。クルトは飴ごと快感を取り上げられるような気がした。防ぐためには舌を内へ丸めなければならない。柔らかく柔らかく、舌を蠢かせてディートリヒから逃げる。
ディートリヒの舌はクルトの舌の裏にピタリと寄り添った。なめらかな粘膜を舌の表の突起でくすぐられると性器周辺は甘く痺れる。ディートリヒのたくましい筋肉に圧迫される会陰もそうだし、胸のあたりも痺れていた。
クルトの乳頭はジンジンと疼いて触れてほしがっている。乳首は蕾の前、花芽のように硬い。
「っあ、ふッ……ん、ぅんっ、あ、ああ……」
「少し君を恐れる気持ちもあるよ」
クルトは指先を胸に当てて下側から撫でた。気持ちよくない。つまんで指で転がし、揉んでみたり弾いてみたりしてもダメだ。焦れったさが増すだけだった。
会陰をどうにかしたくて腰を少しだけ揺する。誘いだと思ったのか、ディートリヒの指が頬から胸の頂へ飛んでつついてきた。それだけの刺激でクルトは力が抜けて、舌から気がそれる。
「んっ……は、ふあっ」
ディートリヒは隙を逃さず舌の表面に絡んできた。飴は薄く小さくなっていたのでディートリヒの舌先によって簡単に割られる。ディートリヒは残った甘みや欠片を舌の先端で拾い、クルトの上あごや歯茎、それに舌へ味わわせていく。
左手は乳頭をつまんでは離し、右手は陰茎に添えられた。浅い段差を人さし指と中指で攻め、残る指で軸を締めながら扱かれる。ディートリヒの体はクルトの思考をどこまでも溶かすのだ。
クルトがいじっているほうの乳首はもどかしさで尖り、足の付根や会陰より熱い。
「クルト。こんなに胸が弱いと心配になるよ。私でなくとも君の骨は抜けるだろうな」
ディートリヒはクルトの唇や口のまわりを舐めてつぶやく。
「ん、っはあ……お前のせいで、っく、ぅ、こうなってんだ……」
「ぐ、ううっ……クルト……君は」
クルトは喜悦で途切れる呼吸の中から、なんとかなじってみせた。ディートリヒは苛立ちを発散させたいのだろう。クルトの乳首を3本の指で激しくこねて、唇を強く吸った。括れも竿も攻め立てられる。
「んぅ、あっ! ん、ふ……気持ちいい……っは、あ、あ……好き、好きだ、んぁ! く、くうぅッ」
クルトが好きというたびに攻めは少しずつ容赦がなくなる。頭が快楽の閃光で満たされたとき、クルトは限界を迎えた。ディートリヒの太ももがゆっくり水平になる。2度目の精液は床にも落ちた。
ほうけていたいがクルトは攻勢を保たなければならない。
「おい、ディートリヒ」
ディートリヒは呼吸を荒く乱すだけで答えはしない。クルトの下腹部を、クルトの白濁が汚した手で押してくる。胸をこねあげた手まで重ねて強く、強く押してくる。クルトは痛いだけで気持ちよくない。ただ欲情がたぎって指先まで痺れていく。
「もっと、もっと体の奥……挿入する前の、準備のほうも教えろよ」
ディートリヒの体がぴくりと跳ねた。クルトの体も軽く跳ねる。
「するわけには、いかない」
そのささやきは低く地を這うようで注意を払っていなければ聞こえなかっただろう。クルトは皮肉げな笑い声を立ててディートリヒの手を強く打った。
「離せよ」
「なぜだ!」
ディートリヒらしくもない耳触りの悪い声である。クルトは腹を押さえる指をつかんで引き剥がしにかかった。ディートリヒの力が強くても指の関節を極めたら抵抗はできる。
「娼館の子なら教えてくれんだろ。童貞捨てる機会をふいにしたくねえしな~。風呂まだ冷めてはねえよな?」
クルトが機嫌のよい笑顔と声を出すとディートリヒの手はじっとりとなめるように動きはじめた。向かう先は予想がつく。
「出せなくなれば……行く意味もなくなるだろう?」
「あ? 止めてんじゃねーぞ」
クルトは胸と股間に進む手つきを遮らない。邪魔などしない。
「クルト。君はやはり悪い男だ……」
その呻くような声が心地よくてたまらなかった。レイピアをはじめて振るえたその日よりやりきった思いがある。クルトは抗う言葉に甘い響きを足していく。「好き」を混ぜればディートリヒの手指はより妖しく蠢くのだ。
(これコイツの体使ったことになんのか? 約束……人の話を、聞く。お袋の頼みもたまには聞いてやるか……)
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