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一章 クビになりました。

ギルドにて単身冒険者登録

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「受付さん、登録の修正をしたくて来ました」

僕は早速、ギルドの受付に行った。
受付のお姉さんは、ボンキュッボンを絵に描いたようなグラマラスなお姉さんだ。

「こんにちは、ボルサリーノ。修正項目はなにかしら。住所?」

「いえ、パーティをクビになってしまって。なので、単身冒険者として登録しなおしたいんです」

「あら、BBに期待の新星がやってくるって噂だったけど、ボルサリーノが弾かれちゃったのね」
可哀想に、といいながら頭を撫でられる。

「残念ですけどね。でも、心機一転前向きに頑張りますわ」

次の瞬間、後ろから尻を蹴り上げられる。

「だーれが前向きに頑張るって?このポンコツ魔術師。お前のせいで居心地悪いぜBBはよぉ」

※ブラインド

目の前が真っ暗になる。

「お前がBBのボルサリーノだな。俺は後任のブラストだ。お前、魔術師の癖に、随分腰が低かったみたいだな。お前のせいで魔術師の格が落ちたぞ」

胸ぐらを掴まれる。
何も見えない。

「パーティに行って、最初に何させられたか教えてやろうか。会議室の掃除とお茶だよ。魔術師の俺が、だぞ?」
ドスっと、足で腹を抉られる。

「お前がヘコヘコやってたせいで、雑務が俺の仕事になってやがる。屈辱だったよ。メイドの仕事を、貴族の、、、まあいい。いや、よくないか」

「オエッ」
口の中に丸めた雑巾が押し込まれる。
ドブと発酵臭が混じった臭いに、さらに吐き気が押し寄せる。
「ゴモモ」

「ボルサリーノ、なぜ俺が魔術大学校を好成績で卒業できたか教えてやろうか?魔術師の弱点を知っていて、喧嘩が強いからだ」

ドスっ、ドスっ、ドスっ

何度もつま先で顔を抉られる。
吐瀉物が詰まり呼吸もできない。

呪文も唱えられない。

なるほど、魔術師の弱点ね。
蹴られ、呼吸ができず苦しい中、なぜか冷静な自分がいた。

※サンダーストライク

全身に稲妻が走る。激痛。
焼けるような痛みが、体中を駆け巡る。

このまま、ここで殺されるのだろうか。
周りの人達は我関せずで、誰も助けてくれない。

このまま、死ぬのだろうか。
死ぬというのに、身体に力が入らない。


「呪文を唱えられなくなった魔術師ほど無力な存在はないよなァ」

雑巾が口から取り出され、その場に吐瀉物が溢れる。

「さようなら、クソ雑魚魔道士」

ブラストは僕の舌を引っ張り、ナイフをあてがう。

「ああ、ブローザとかいう女。あいつの身体は素晴らしい。俺の玩具として相応しい。俺があいつを抱くところを、喋れないお前に見せてやるよ」

頭がカッと熱くなった。
次の瞬間、自分の舌ごとブラストの指を噛みちぎっていた。

激痛が口内を走る。刺激を受けたせいか、目の前のモヤが晴れた。
ブラストの顔を初めて正面から見る。

腑抜けたガキの面だ。
こんなやつに、仲間を任せられるか。

喋れない口で、言い慣れた呪文を吐く。

※スリープ

ブラストが膝から崩れ落ちたのを見て、僕も気を失った。


目を覚ますと、見慣れぬ天井があった。
油と鉄の臭い。汗と埃の臭い。
「良かった。目が覚めた。」
随分と疲れた顔をしたブローザがいた。

「二週間も寝てたのよ。大丈夫?私ができる限りの回復魔法をかけたの。喋れる?」

「ああ、ありがとう。喋れるよ。舌も無事みたいだ。それよりブローザ、君が心配だ」

ブローザは、静かに涙を流し始めた。
「あなただけでも無事で良かったわ」

だけ?

「リーダーが死んだ。BBはブラストの私設兵団に取り込まれたわ。そもそも、最初からこれが狙いだったのね」

ブローザは泣きながら、自分の手首を握る。
彼女の手首は、縛られたような痕があった。

「なあ、ブローザ。まずは君だ。君が心配なんだよ」

「ううっううっボルサリーノォ、アイツが憎いよぉ。。。バリンもビリアーナも、幼いベルンまで皆犯されたわ。私も、手足を縛られて、、、うぅ、、、抵抗できなかった。」

ブローザは喉が裂けるような声で、唸るように言った。

「アイツを、、、殺したぃぃぃ」

僕はブローザの手を握ることしかできない。


僕から見たブローザは、ザ•素敵なお姉さんだった。
BBにも、僕より先に居たので、いろいろ教えてくれた。
僕が馴染めたのも、ブローザのお陰だ。

回復魔法に精通し、クエストで負傷してもそよ風が吹くように傷を治してくれた。
彼女が居たから、みんな思い切って進めたし、挑戦できた。

リーダーも、時に厳しい場面もあったが、いつもは人情味のあるお兄さんという感じだった。
腕も立ち、コスト15という誰が見ても優秀な逸材だった。

「ブローザ、リーダーはどんな最後だったの?」

「ううっ、クエスト中に、オークの群れに襲われたの。彼は私たちを逃がすために殿をしてくれたわ。もう少しで逃げ切れる場面で、突然転んで、足から血が。そこにオークが突っ込んで、彼は食べられたわ」

ブローザは、また激しく泣き咽ぶ。

くそ、僕が居れば足止めくらいなれたのに。



どれくらい時間が経っただろうか。
夕焼けが窓を色つけたころ、ブローザはスヤスヤと寝ており、僕は彼女の持っていた冒険記録を読み終えた。

クエストは洞窟内の鉱石採取。
クエストランクはCで、階層も深くない。モンスターもゴブリンか、精々ゴブリンキングが関の山のクエストだ。

オークのような怪物が出てくるような場所じゃない。

そして、オークは徒党を組まないと言われている。オークの大群が出たということは、オークを率いる大物が産まれたという可能性がある。

リーダーはコスト15だ。
オーク二、三匹なら、優勢を守れるだろう。一体どれほどのオークが居たのか。
単騎でリーダーに勝る冒険者は、このギルドにはあまり居ない。

このクエストの洞窟は、スタンピートの恐れありとして、徹底的に調査されるはずだ。そこに行けば、なにかわかるかもしれない。

僕はスタンピート、と口で呟き、背筋が寒くなるのを感じた。




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