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1. 別長内神社の謎
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「よいしょ、と。やっと着いた」
2024年10月13日。
息を切らせて階段を登る石原規広(いしはら のりひろ)は、歴史学者を目指す大学生。この4月に、地元の名門私立大学である通葉学院大学(つばがくいんだいがく、通常「ツバガク」)に入学した。
高校時代に日本史を教えてくれた先生がきっかけで日本の古い建造物が大好きになり、猛勉強が実ってツバガクの歴史学部に首席で合格したのだ。
規広は、通葉学院大学がある通葉市(つばし)の北東部の山奥に建つ「別長内神社」に来た。この神社は、規広がツバガクを目指すきっかけになった場所だ。
「これだけ立派なのに誰が何の為に建てたのか分からないなんて」
別長内神社は、かなり大きな建物でありながら碑文や建立に関する資料がほとんど残っておらず、いつ建てられたのか、なぜそこに存在するのか、何が祀られているのか、誰も知らない。
山奥にあるためかこの神社の存在自体も全くと言っていいほど認知されておらず、この神社について知ろうとする者も研究しようとするものもいなかった。
「これだけ謎が多いと、これすらも本当かどうか分からないよなぁ」
規広は神妙な面持ちで下を向いた。
この神社に関して唯一分かっているのは「別長内神社」という名称のみである。それも文献等は全く情報がなく、鳥居の柱に看板が立てかけられているだけだ。
本当にこの神社が「別長内神社」という名前なのかも、正確には判明していないのである。
「誰も触れたがらないこの神社の全てを明らかにするために俺はツバガクに来たんだ」
規広は左腕に握り拳をつくり、秋晴れの空を見上げた。
10月15日、12時10分。2限目が終わり教室を出ると、規広は同じ歴史学部で学籍番号が隣の飛松美咲(とびまつ・みさき)に会った。受講している授業もほとんど同じで、1日の大半を美咲と過ごしている。
「規広、一昨日『別長内神社』に行ったんでしょう?何か新しい情報は手に入ったの?」
「美咲、それがね、全く何も分からなかったよ。むしろ謎が一つ増えた。よく考えると『別長内神社』というのも正式名称なのか疑問に思えてきたんだ」
規広は鳥居の下の簡易的な看板の話をした。
「そうなの。名前も後からつけられた可能性が浮上したわけね」
2人は腕を組み、口を真一文字に結んで途方に暮れた。
「美咲、『別長内』って何なんだろう。地名なのかな?」
「それすらも分からないよね。調べてみようよ。私たち、3限空いてるし」
2人は昼休みと空きコマを利用し、大学の図書館へ向かった。
通葉学院大学は国文学や歴史学の研究が盛んであり、全国から学生が集まる。
歴史や古い文化に関する資料はたくさんあるはずだ。
2人は、「通葉の歴史」と書かれたコーナーに足を運んだ。
「えーと、は、ひ、ふ、ここだ」
規宏はハ行の棚を見たが、「別長内」というタイトルの本は一冊もない。検索用端末で調べても、画面には「該当書籍 0件」と表示されているだけだ。
「えー、地元の名門大学の図書館にも資料がないの?」
美咲は、図書館のスタッフに注意されそうな大声を出した。
「美咲、声がでかいよ。そういえば高校生の時に市立図書館で調べたけど、そこにも何も資料がなかったんだよ。後ろに並んでたお爺さんが『あーぁ、そんなの調べて…』って言ってたような」
そうこうしている間に、2人の空きコマは終わってしまった。
「触れてはいけない何かがあるのかな…」
規広と美咲は小さな声で呟きながら、4限目の授業「歴史学概論」の行われる教室へ向かった。
2024年10月13日。
息を切らせて階段を登る石原規広(いしはら のりひろ)は、歴史学者を目指す大学生。この4月に、地元の名門私立大学である通葉学院大学(つばがくいんだいがく、通常「ツバガク」)に入学した。
高校時代に日本史を教えてくれた先生がきっかけで日本の古い建造物が大好きになり、猛勉強が実ってツバガクの歴史学部に首席で合格したのだ。
規広は、通葉学院大学がある通葉市(つばし)の北東部の山奥に建つ「別長内神社」に来た。この神社は、規広がツバガクを目指すきっかけになった場所だ。
「これだけ立派なのに誰が何の為に建てたのか分からないなんて」
別長内神社は、かなり大きな建物でありながら碑文や建立に関する資料がほとんど残っておらず、いつ建てられたのか、なぜそこに存在するのか、何が祀られているのか、誰も知らない。
山奥にあるためかこの神社の存在自体も全くと言っていいほど認知されておらず、この神社について知ろうとする者も研究しようとするものもいなかった。
「これだけ謎が多いと、これすらも本当かどうか分からないよなぁ」
規広は神妙な面持ちで下を向いた。
この神社に関して唯一分かっているのは「別長内神社」という名称のみである。それも文献等は全く情報がなく、鳥居の柱に看板が立てかけられているだけだ。
本当にこの神社が「別長内神社」という名前なのかも、正確には判明していないのである。
「誰も触れたがらないこの神社の全てを明らかにするために俺はツバガクに来たんだ」
規広は左腕に握り拳をつくり、秋晴れの空を見上げた。
10月15日、12時10分。2限目が終わり教室を出ると、規広は同じ歴史学部で学籍番号が隣の飛松美咲(とびまつ・みさき)に会った。受講している授業もほとんど同じで、1日の大半を美咲と過ごしている。
「規広、一昨日『別長内神社』に行ったんでしょう?何か新しい情報は手に入ったの?」
「美咲、それがね、全く何も分からなかったよ。むしろ謎が一つ増えた。よく考えると『別長内神社』というのも正式名称なのか疑問に思えてきたんだ」
規広は鳥居の下の簡易的な看板の話をした。
「そうなの。名前も後からつけられた可能性が浮上したわけね」
2人は腕を組み、口を真一文字に結んで途方に暮れた。
「美咲、『別長内』って何なんだろう。地名なのかな?」
「それすらも分からないよね。調べてみようよ。私たち、3限空いてるし」
2人は昼休みと空きコマを利用し、大学の図書館へ向かった。
通葉学院大学は国文学や歴史学の研究が盛んであり、全国から学生が集まる。
歴史や古い文化に関する資料はたくさんあるはずだ。
2人は、「通葉の歴史」と書かれたコーナーに足を運んだ。
「えーと、は、ひ、ふ、ここだ」
規宏はハ行の棚を見たが、「別長内」というタイトルの本は一冊もない。検索用端末で調べても、画面には「該当書籍 0件」と表示されているだけだ。
「えー、地元の名門大学の図書館にも資料がないの?」
美咲は、図書館のスタッフに注意されそうな大声を出した。
「美咲、声がでかいよ。そういえば高校生の時に市立図書館で調べたけど、そこにも何も資料がなかったんだよ。後ろに並んでたお爺さんが『あーぁ、そんなの調べて…』って言ってたような」
そうこうしている間に、2人の空きコマは終わってしまった。
「触れてはいけない何かがあるのかな…」
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