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マルダリア王国の異変。

さよならの言葉は青い薔薇に託して。③

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シルヴィアに跨ったエーテルと、アヴァンの背に乗ったクリスが動かなくなった馬車の前に降り立った。

「あら・・。物騒な事するのね?危ないじゃないの。」

ミリアが嘲るような声でシルヴィアに跨るエーテルを見上げた。

「物騒なのはどちらかしら?・・アレクシア様を返しなさいよ!!戦闘のどさくさに紛れて攫うなんて非常識なやり方気に食わないわね?
青薔薇の栄光ローゼングローリーって組織は何処まで汚いのかしら??」


「組織を愚弄するなっ!!なるほど・・。
神獣に匂いを辿らせた訳ね?あと少しでマルダリアに入る所だったのに。・・残念だったわ。」

ニヤリと笑ったミリアがサッと手を上げると、青い騎士服を身につけた刺客達がエーテルと、クリスを一瞬で囲んだ。

「・・・何だ!?何処に隠れていたんだよ?さっきまで影も形も無かったのに!!」

「ふふっ・・。人数だけいてもねぇ??・・シルヴィア、お行きなさい!!」

不敵に微笑んだ天族の2人が命ずると2匹の神獣達は向かってきた刺客達に次々に襲い掛かった。

「同じ侍女として、あんただけは許せないわ?
覚悟しなさいミリアっ!!」

氷の長剣を右手に持ったエーテルの紅い瞳は鋭い視線でミリアを捉えていた。

一拍の後、物凄いスピードで彼女に向かって走り出した。

「・・エーテル。ふん・・。こちらこそ、返り討ちにして差し上げるわね!??」


遅れて麒麟のエルンストとやって来たユヴェールと、ルカが戦闘に加わると

レオとエリアスが空中から現れた。

「レオっ!?エリアス・・。良かった!!
間に合ったようだね?」

ユヴェールが麒麟に跨ったままで少しホッとした表情を浮かべた。

「遅くなってすまない!!クリス達の位置を確認してから転移してきたんだ。
・・ここに、アレクシアがいるのか??」


レオは、始まった戦闘の様子を確認しながら
傾いて転倒している馬車を見付けて走り出した。

「ギィィッ・・・。」

馬車のドアノブが動き、傾いた馬車からカイルが地面へと降り立つと金色の瞳を細めてレオを見た。

「・・カイル。お前・・。
何故、あの組織の一員であるミリアと行動を共にしているんだ??」

広い荒野にその声は響いた。

レオの蒼い瞳は苦し気に揺れていた。

「レオは、もう解ってるんじゃないかな・・。
決まってるじゃない??
僕も青薔薇の栄光ローゼングローリーの一員だからね。それ以外に理由はないだろ?」

その言葉にレオは眉を顰めたままカイルの顔を見つめた。

「カイル正気か・・!?
自分で何を言ってるのか解ってるのか!?
お前達の組織のせいで・・。ロージアナの民があんなに苦しんだんだぞ!?
レオだって・・。自国の民が苦しんでいる姿がどれだけ辛かったと思うんだ!?」

麒麟に股がり剣を交えたままで悲痛にくれたユヴェールが声を荒げた。

カイルは凍えるような瞳でユヴェールを見た。

「正気さ・・。アルトハルトだけじゃない!!
お前の国も同じような状況だろう??
何を安直な事を言ってるんだよっ。
今、この世界は組織ローゼングローリーによって各国の民が人質に捕られてるも同様なのに!!」

「・・どういう意味だ、カイル。
お前は一体、何を知っているんだ??」

「アルトハルトは・・。お前の国はいいよな?
ファーマシストも、神力も神獣もいて・・。
女神が守る神殿と、神力を司るグロリアがある聖地だ。その力と高い薬学知識があれば民を守ることが出来る。だけど、他の国はどうだ!?
解毒薬の存在なんて、僕は知らずに・・。
ずっと、・・苦しんで来たんだよ!!」

カイルの悲痛な叫び声にみんなが振り向いていた。

驚いた表情のレオとユヴェールは戸惑いの表情を見せていた。



その頃の私は・・・。

馬車の中にまだいた訳で。

「よっこいしょ・・。あ、これ玉葱じゃない。こっちには、レモンもあった!!」

傾いた馬車の中で割れたビーカーの残骸が散在している中。

・・・拾い物作業をしていた。

「よしっ!!これでいいわね。
あとは、彼女エリザベートを呼ぶだけね?」

私は変わらず美しく咲き続ける奇跡の青薔薇エターナルアプローズをそっと手に取った。

「あっ、エリザベート。火はちょっとでいいからね!?ちょっとよ、ほんの少し・・。
・・・いい?解ったわね!?」

「ブキュウ???・・シュボッ・・!!」

「・・あっ、馬鹿なのっ!!?いやぁっ、熱っつぃっ!!!これっ火事!!火事よっ!!?
・・・ええっ!?どうしょう!?」

その数分後・・。

エリザベートが放った炎によって馬車の中に火の手が上がった。

私は目の前でメラメラと燃え上がる炎の熱に非常に焦りを感じていたのだった。



「カイル・・・。
マルダリアも、同じような危険に晒されているのか?そして・・。ザイードもまた同じなのか?
だとしたら、ファーマシストの力も解毒薬もいくらでも支援する。人的支援も、医療的な支援もこの世界の民は、みな平等に受ける権利があるんだ!」

レオノールの言葉に、カイルの金色の瞳が大きく見開かれた。

「ちょっと、待ってよ。マルダリアもって・・。どういう事!?父上や、兄上からは何の話も聞いていないんだけど!?あの毒薬がマルダリアにもまた流通しているってこと??」

張り詰めた空気の中カイルが口を開こうとした瞬間だった。

「ボゥオォォォッ・・・・!!!」

急に馬車に火の手が上がり、一斉に視線が馬車へと向けられた。


「エリザベートォォッ・・!?
もう。これ、絶対やっちゃ駄目な奴よ?!
こんな場所で焼死とか嫌だからね??
・・こらっ、聞けよーー!!」

馬車の中は、明らかに火災が発生していた。

「あ?・・ア、アレクシア様ぁ??!」

バンバンと馬車の窓を叩くアレクシアの姿を確認したエーテルが一目散に走り出し馬車に大量の水をぶっかけた。

シーーーンとした静寂が数秒流れた。

エリザベートの尻尾を掴んだまま、煤だらけになったドアをバンと蹴り飛ばして外に出るとみんなが唖然とした様子でこちらを見ていた。

「ブブキュウィ・・・・。(やり過ぎた?)」

「・・・はっ。焼死体になるとこだったわ。」

私は、地面に降りると煤がついたドレスを撒くってパンパンと叩いた。



「アレクシア・・・。良かった!!」

レオノールは、アレクシアの無事を確認してほっと表情が綻んだ。

手を伸ばして愛しい彼女目掛けて走り出した。

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