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騎士団との旅立ち。

レオノールの傷。⑦

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そこは、ロージアナの街の外れの小さな小屋の中・・・。

真っ暗な暗闇の中で息を潜めた影がそこにはあった。

「良くやってくれた。
これで、エターナルアプローズの原液を我らの手中に入れることが出来た。
ザイードの皇女には災難ではあったが、お前の咄嗟の機転のお陰だ。」


「私は、任務をただ遂行しただけです。
しかし・・。今回の騒動で私の組織との関係に気づいた者がいるようです。
浅慮の致すところでございます・・。
申し訳ありませんでした。」

ロージアナの外れにある小さな狩猟小屋の中
息を潜めたミリアが緊張の面持ちで声の主を見上げた。


「いいか、「イヴ」想定内の域だ・・・。
次の任務が降りて来ている。
こんな状況の中だが、お前が直接の接触を試みることは・・。可能か?」

新たな指示の内容に一瞬耳を疑ったミリアだったが
その指示を心の中で繰り返し反芻した。


脳裏を過るのは、信頼の瞳を自分に向けて優しく微笑むアレクシアの姿だった。

薄暗い牢獄の中でで冷たい床に倒れたかつての仲間、スカーレットの姿が脳裏を過った。

愚かな行いを禁じている「青薔薇の栄光ローセングローリー」の組織の
誇り高さは良く理解しているつもりだった。

そして、誰よりも気高いダラスへの忠誠を深く胸に刻んだ。

「・・・はい。レオニダス様、その任この「イヴ」にお任せ下さい。
必ずや、我がローゼングローリーの名の下に成功させてみせます。」

ミリアはごくりと息を飲んで硬い表情のままで静かに頷いた。






星空が煌々と輝く空の下、テントが立ち並んでいた。

回復した住民たちは、食事を楽しそうに取っている者
家に帰っていく人々の姿も見られた。

「おおっ、レオっ。戻ったのか!?
見ろよ、これっ!!露天風呂だってよぉ・・。岩風呂だぞ、洒落てんなぁ!!」

抱えきれないほどのエターナルアプローズを持ち帰ったレオは、ルーカスの
浮かれポンチな言葉に唖然とした表情を浮かべていた。


「・・・は?テントの中を・・掘ったのか??
露天風呂って感じじゃないと思うが・・。」

テントの中央部分に巨大な穴が開き、そこから湯気が立ち昇っていた。

その周りには岩石の・・・山々が降り積もっていた。

どちらかと言えば風呂というよりも破壊活動の痕跡としか言い表せない状況だった。


「それがよぉ・・・。エリザベートが暴れて地下水脈まで突っ込んだんわぁ。
今、シアと追っかけっこしていてよぉ。やっぱり、神聖獣は赤ん坊でも破壊力が違うなぁ。」

「追っかけっこって・・。それでどうして温泉が湧くんだ??」

その時、ドッカーンという音がして驚いたレオは急いでテントの外へと走った。

暗がりの中、大きな水柱・・。もとい太い湯柱が天を目掛けて立ち昇っていた。


「・・・一体、何なんだ??何が起きてる??」


「あっ、こらぁっ!!
またあんたっ!!?ちょっと待ちなさいよっ!!
・・ああっ、これ以上掘るんじゃないわよ!?エリザベートっ!!・・破壊活動防止法違反で飯抜きよ!!」

アレクシアが、地面に楽しんで穴を開けているエリザベートをスカートの裾をまくり
上げて追いかけていた。

「温泉鉱脈を当てて、沢山の湯が沸き出てる・・。湯治が出来る量の温泉が湧いたぞ。」

エリアスが苦笑いを浮かべてレオを見た。

「・・レオノール様。お騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。」


エリアスに並んで、カイルとアイーネが現れた。

「あの、ミリアからも何度も謝罪を受けましたわ。
わたくしがこんな状況で、我儘を言って皆さまの手を煩わせる結果になって・・。」

「レオ、ごめんね・・。妹が散々振り回したようで。すぐに手当を受けたせいですぐに
回復することが出来たよ。救護に来た者が、患者になってしまうなんて・・。
僕の目が行き届かず、エリアスやシアにまで迷惑をかけて申し訳なかったよ。」

いつもの自信に満ちた様子とは打って変わって不安そうに金色の瞳を震わせていた。

「いや・・。姫は、ミリアを咎めなかったのか??
偶然とはいえ、毒を飲んで死ぬ思いをしたのではないのか??」

「・・・もとはと言えば、私が天帝陛下を謀ってこちらへ同行してきたのです。
全ては私の責任と、勝手な行動の結果だと身に染みて反省しましたわ。」

カイルとエリアスに相当説教を受けたのかシュンとした表情のアイーネに
レオは、怒る気も失せてしまった。

「そうか・・。アイーネ姫がご無事で良かった。ゆっくり身体を休めてくれ。」

近くのテントを見渡すと侍女のミリアの姿が見当たず、レオはエリアスを見上げた。

濃い青色の瞳と目が合ったその時
ユヴェールが、クリスと嬉しそうに地図を持って走って来た。

「レオっ、エリザベートが温泉だけじゃなくて・・。
豊富な水脈を当ててロージアナ近郊の水路を整備することが出来そうなんだ!!
神力を込めた浄化石を沈めて使えば一括管理できるような
水道の整備も出来そうだって・・クリスがっ!!」

「水が何箇所にも点在していることで、監視や浄化に割く人員が多くなる事を危惧していた。
その安全性の担保をどうしたらいいのか考えていたのだが・・。
それは驚くべき、朗報だな!!」

嬉々として語るユヴェールは、広い地図を見ながら頷いた。

「水脈とはな・・・。それでまたロージアナの住民の生活が滞りなく
営めるのなら素晴らしいな。しかし・・。エリザートは、一体何故あんなに穴を??」

「それがね・・。シアが「神聖獣なんだから、浄化ぐらいやんなさいよ!」
って怒鳴ったら・・・。
怒って地面を掘り出したようなんだ。
ある意味、水脈当てて水道通す方が井戸水を見張るなんかより安全で手っ取り早いけど・・。
エリザベートは解っててやったのか、・・・暴れてたら当たったのか。」

「・・・いっ、いい加減にしなさいよっ。エリザベート、ハウスよハウスっ!!」

ボサボサの姿で追いかけるアレクシアから、喜んで逃げている様子(追いかけっこだと思っている)
エリザートを一瞥したレオは、ため息交じりに笑った。


「・・・多分、後者だな。
井戸や、水路の浄化が出来ても、ロージアナの復旧には
時間を要すだろう。
途中の村の場合は井戸の汚染もあったし、大きな水脈が見つかったのなら
そこまで水道を引いて通してしまおう。
近隣の村にも安全な水路が確保できるに越したことはない。
一か所の大きな水源だけを監視するなら、騎士団も村から引き揚げられるしな。」

「なるほど・・。一石二鳥だね!!流石、レオ。」

ユヴェールが、笑顔で頷いた。


「みんなのお陰で一通りの怪我人の救助活動にはメドが立った。
明日から、水路と水道の整備と、ロージアナの復旧活動を始める。
怪我人や、毒の影響を受けた者の手当を行う救護テントはそのままで活動を行うぞ。」

レオノールの言葉に、そこにいたみんなは大きく頷いた。

レオは動き出した人々の中でそっとエリアスに近づくと、小さく呟いた。

「ミリアが見当たらない。・・・ミリアを探せ、エリアス。」

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