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婚約破棄のため、同盟結びます!
波乱の婚約披露舞踏会③
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「シオン!??何なんだ、急にどうした・・。
エメリアをザッハルトへ勧誘するな!!彼女が困っているだろう・・。」
カイルが眉間に皺を寄せ、感情をむき出してシオンを睨みつけていた。
シオンからの視線や言葉が自分を試されているようで、私は何だか居心地が悪かった。
本音と口から出される言葉に大きく隔たりを感じた。
希少種・・。
胸にチクリと痛みが走った。・・皇子様も、血で区別するのね。
シオンは少し苦手なタイプかもしれない・・。
底知れぬ違和感がある男性だわ。
「お心遣いありがとうございます・・!!
祖母がこのアレキサンドライトの瞳の保持者でした。ザッハルト帝国では、この瞳をクリソベイルの瞳と呼ぶのですね・・。
この目の色は、災いを呼ぶ瞳と忌み嫌う方もいると聞いておりますが、ザッハルトではそうではないと聞き安心しました。あの、弟に用があるので・・。私はこれで失礼します。どうぞ会話を続けてくださいませ。
シオン皇子、お話しが出来て光栄でした!!」
「そうか、残念だな。エメリア嬢は今夜はお忙しそうだしな・・。また話をしよう」
シオンは翠色の瞳の視線を緩めて微笑んだ。
マウントを取るタイプかと思ったけど、引き際はアッサリでラッキーだわ・・!!
私はカイルに目配せをした後、深々とシオンに頭を下げた。
そそくさと窓際で話し込んでいるクロエとオーブリーの元へと長いドレスを引きずりながら歩き出した。
シオンとカイルが並び立っている姿を令嬢達が「眼福ですわ~!!」だの、「月と太陽のW王子の顔面最強!!今夜はいい夢見れそう!!」とはしゃいでいた。
・・こっちは、どっと疲れただけだったし。
私はあのツーショットでの絡み、二度と御免だわ!!
さぁ、ここからは同盟の任務のためにエネルギーを向けよう!
エリオスも頑張っているもの・・!!
今夜の舞踏会でクロエや、リリアと少しでも話しをして情報収集よ!!
せっかくの機会ですもの、婚約破棄のために同盟に勧誘しなくちゃね!!
ミルクティブラウンの後ろ髪がシャンデリアの光で淡い銀色に光り輝いていた。
タフタのドレスの裾を掴んで背筋を伸ばして歩いていくエメリアの大きく開いた白磁のような美しい背中を見つめていた。
シオンとカイルの間に少しだけ沈黙が訪れていた。
「お前は、とんだフェイク情報を流してくれたな・・。いつもは爽やかな笑顔で卒なく対応する癖に。心底恐ろしいとも感じるよ」
「・・ん?何のことかな?」
「噂の相手・・。グラディアス辺境伯令嬢の姉の方には全く執着をしていないのだろう?」
「どうかな?アデレイドは僕の婚約者だけどね・・」
カイルは表情を変えずに笑った。
「今夜エメリア嬢を初めてみたが・・、確かにアデレイド嬢は真珠に喩えられている通りその容姿は美しいが・・。
一目見て分かった。・・・彼女とは比較対象にもならない。」
シオンの言葉に、ピクッとカイルの眉が動いた。
「・・まるでその輝きが違う。カイル、お前もそう思っているんだろう?
こちらを欺く情報をわざと寄越したんだな?私までお前の駒にされたようで癪だな・・。
巧みに操作されていたんだと気づいた。お前にはどんな思惑があるんだ??」
シオンがため息を交えて呟いた。
向き合うカイルの表情にはいつの間にかさっきまでの作り笑顔が消えていた。
完璧王子と名高いカイルのロンドンブルートパーズ色の瞳は暗い影を落としていた。
「さぁ・・、思惑なんてないよ。
友人である君と、その話はこれ以上したくないんだけどね?」
「しかし、我が第二王妃がお前の言葉に振り回されていると思うと。どうも不安になるのだが・・。」
「シオン・・。この国と戦う気がないのなら、エメリアには近づかないでくれないかな??
ザッハルトになんかには渡さないよ。
もしも、彼女を傷つけたり利用なんかしたら・・。
例え君でも、僕が絶対に許さないから」
シオンはゾクリと背中に走った悪寒に、苦い笑みを微かに頬に含んだ。
「・・面白いな。お前が誰かに執着するなんて有り得ないと思っていた。
嘘だと思って信じていなかったが、グラディアス辺境伯のご令嬢に執心している情報は
あながち間違いでも無かったと言うことか・・。
エメリア嬢に興味を引かれたんだが・・・。お前の婚約祝いの場だ。
今夜の所は黙って引く事にするよ。姉上に挨拶をしてから今夜はさっさと寝るとする。」
赤いマントを翻して、ザッハルト帝国の皇子シオンは王座の一段下の位置にある椅子に座って貴族と
話をしていた第二王妃の元へと向かって去った。
パートナーであるアデレイドが横から消えてしまっていたが、今夜の主役であるカイルを見つけた人々は次々に挨拶と婚約祝いの言葉を伝えていた。
心底穏やかではなかったカイルは、張り付いたような笑顔を向けて対応していた。
ふと、顔を上げた時・・。
大勢に囲まれている自分が世界で独りぼっちに感じて表情が翳った。
一緒に対応をするはずのアデレイドがノアと同時に姿を消していると言う事は何処かで逢引でもしているのだろう・・。
窓際の端に見えるオーブリーとクロエ。
その横で話し込んでいるエミリアの姿を捉えると心が少し柔らかくなる。
美しいアレキサンドライトの瞳は、光の加減で深いグリーンにも真っ赤なルビーにも見える。
希少種・・。
シオンの放った言葉に一瞬傷ついた表情を浮かべたエメリアの表情を見逃さなかった。
あの場所に彼女を留めたくなかった・・。
エメリアが心配そうにシャンパングラスを傾けながらクロエとオーブリーに話しかけていた。
ハッと彼女を同じように見つめている視線に気が付いて表情が曇る。
エメリアの姿を第二王妃と談笑中のシオンが遠くから目で追っていた。
「君が笑ってさえいてくれれば僕は大丈夫なんだ。だけど、隠そうとしても・・。
どうしてみんな見つけるんだろうな。」
カイルはシャンパングラスの中身を一気に飲み干すと、窓の外に輝く月をゆっくりと見上げていた。
「エメリア。僕には君が眩しくて・・。僕には近づけない」
その言葉は、大勢の人の喧騒の中で誰にも聞かれずに・・消えた。
その頃、私は大変な状況に巻き込まれていたのだった。
「クロエ、ちょっと飲み過ぎじゃない?!」
「だからぁ・・。エメリア様っ、・・聞いてくだぁさいよぉ!!
オーブリーってば、いっつもエメリア様の話ばかりなんです!!
ううっ、ひいっく・・。
父のことがあったから・・。私っ・・だけを!!・・見てくれて、直向きに愛してくれる方との婚姻を結びたいのにぃっ・・!!」
シャンパングラスの中身を再度空にしたクロエは、薄桃色に小薔薇が散りばめられた可愛らしい
ドレスを着ていた。
クロエの頬は上気していて茶色い瞳はトロンと焦点があまり合っていない・・・。
「ああ、だいぶ酔っているわね・・・。
クロエはお父様の事があって大変だったもの同情するわ。ちょっとオーブリー、どういうことなの??クロエを大切にしてないって自覚はある訳!?
前に行ったわよね??クロエを泣かす奴は誰だろうと、ぶっ飛ばすって!!」
クロエは浮気性のお父様の元で育って、母親が精神的な病に伏せてしまっていた。
私達は王都での家もご近所で幼馴染でもあったから、よく相談に乗っていたのだけど・・。
「僕が至らなくてごめんね、姉さん・・。最近のクロエは平常時でもこんな状態で・・。
僕との結婚が憂鬱で、国外に留学したいと言ってるんだ・・。」
「留学!?・・それもいい案ね。じゃなかった!!
情けない事を言ってないで、責任もって僕が幸せにするとか・・。
クロエの不安を聞いてあげて、安心させてあげなければ駄目じゃない!!」
「だって僕じゃ駄目なんだよね・・。クロエには好きな方がいるんだよ??」
「えええっ・・!?好きな人がいるの!??
ちょっとクロエ何時の間に??一体、誰が好きなの??」
「そんなの!!言えない・・れすよぉっ・・!!
だって、言ったって・・この恋は叶わないものっ!!
ヒック・・。「イムディーナの誓い」は、絶対れすもの・・。あの方にも婚約者がいらっしゃいます。私なんかよりも、可愛らしくて・・。
可憐で・・うっ、うわぁぁぁぁん・・!!」
大分盲目的な恋だな・・。
こりゃ、重症ね。
最近クロエと喧嘩ばかりしていると弟から聞いていたけど。・・これ程とは。
でも、待って!?
「イムディーナの誓い」の誓約によって自分の意思ではない婚姻に反発を持っている点はもしかして、私と利害が一致するんじゃない!?
「ねぇ、クロエ・・。このまま弟と結婚してもいいの!?貴方の人生はこのまま誓約に縛られて諦めるしかないのかしら・・。
好きな人の気持ちも知らぬまま・・。
この先の人生も何もしないで諦めてしまっていいの!??」
その言葉に、小柄なクロエは俯いてポロポロと涙を流しながら首を横に振った。
「どうしよう姉さん・・。
このままクロエの気持ちを無視したまま「イムディーナの誓い」を守って、何も知らない振りをして結婚なんて僕には出来ないよ・・」
そりゃそうだ・・。
こんなに不安定な状況のクロエと結婚しても、オーブリーにはどうしてやる事も出来ないよね・・。
お酒を飲んで自暴自棄になっている彼女を止めようとして喧嘩ばかりしていたら、不幸な生い立ちのクロエの家庭の再現が起きて、彼女も弟も心が病んでしまうかもしれないし。
こうなったら、弟達の婚約もどうにかしないといけないわ・・!!
「エリオスのリストアップ済みのメンバーに、オーブリーの名前は入ってなかったけど・・。ま、いっか!!」
エリオスに後で確認してOKだったら一緒に同盟に勧誘すればいいわね!!
どうせ姉の連座で一蓮托生なんだから、この際しっかり働いてもらいましょう!!
「クロエ、オーブリー・・・。
貴方たちにこの夜会が終わった後話があるの・・。
「イムディーナの誓い」の法の誓約を守る為に、望まない不幸な結婚をすることは昔から私には理解出来なかったの。貴方たちも、このままでは良くないでしょう??
私と一緒に、執務室に来てもらっても良いかしら??」
驚いた表情のクロエとオーブリーは不安そうに視線を合わせて見つめ合った後、深く頷いた。
エメリアをザッハルトへ勧誘するな!!彼女が困っているだろう・・。」
カイルが眉間に皺を寄せ、感情をむき出してシオンを睨みつけていた。
シオンからの視線や言葉が自分を試されているようで、私は何だか居心地が悪かった。
本音と口から出される言葉に大きく隔たりを感じた。
希少種・・。
胸にチクリと痛みが走った。・・皇子様も、血で区別するのね。
シオンは少し苦手なタイプかもしれない・・。
底知れぬ違和感がある男性だわ。
「お心遣いありがとうございます・・!!
祖母がこのアレキサンドライトの瞳の保持者でした。ザッハルト帝国では、この瞳をクリソベイルの瞳と呼ぶのですね・・。
この目の色は、災いを呼ぶ瞳と忌み嫌う方もいると聞いておりますが、ザッハルトではそうではないと聞き安心しました。あの、弟に用があるので・・。私はこれで失礼します。どうぞ会話を続けてくださいませ。
シオン皇子、お話しが出来て光栄でした!!」
「そうか、残念だな。エメリア嬢は今夜はお忙しそうだしな・・。また話をしよう」
シオンは翠色の瞳の視線を緩めて微笑んだ。
マウントを取るタイプかと思ったけど、引き際はアッサリでラッキーだわ・・!!
私はカイルに目配せをした後、深々とシオンに頭を下げた。
そそくさと窓際で話し込んでいるクロエとオーブリーの元へと長いドレスを引きずりながら歩き出した。
シオンとカイルが並び立っている姿を令嬢達が「眼福ですわ~!!」だの、「月と太陽のW王子の顔面最強!!今夜はいい夢見れそう!!」とはしゃいでいた。
・・こっちは、どっと疲れただけだったし。
私はあのツーショットでの絡み、二度と御免だわ!!
さぁ、ここからは同盟の任務のためにエネルギーを向けよう!
エリオスも頑張っているもの・・!!
今夜の舞踏会でクロエや、リリアと少しでも話しをして情報収集よ!!
せっかくの機会ですもの、婚約破棄のために同盟に勧誘しなくちゃね!!
ミルクティブラウンの後ろ髪がシャンデリアの光で淡い銀色に光り輝いていた。
タフタのドレスの裾を掴んで背筋を伸ばして歩いていくエメリアの大きく開いた白磁のような美しい背中を見つめていた。
シオンとカイルの間に少しだけ沈黙が訪れていた。
「お前は、とんだフェイク情報を流してくれたな・・。いつもは爽やかな笑顔で卒なく対応する癖に。心底恐ろしいとも感じるよ」
「・・ん?何のことかな?」
「噂の相手・・。グラディアス辺境伯令嬢の姉の方には全く執着をしていないのだろう?」
「どうかな?アデレイドは僕の婚約者だけどね・・」
カイルは表情を変えずに笑った。
「今夜エメリア嬢を初めてみたが・・、確かにアデレイド嬢は真珠に喩えられている通りその容姿は美しいが・・。
一目見て分かった。・・・彼女とは比較対象にもならない。」
シオンの言葉に、ピクッとカイルの眉が動いた。
「・・まるでその輝きが違う。カイル、お前もそう思っているんだろう?
こちらを欺く情報をわざと寄越したんだな?私までお前の駒にされたようで癪だな・・。
巧みに操作されていたんだと気づいた。お前にはどんな思惑があるんだ??」
シオンがため息を交えて呟いた。
向き合うカイルの表情にはいつの間にかさっきまでの作り笑顔が消えていた。
完璧王子と名高いカイルのロンドンブルートパーズ色の瞳は暗い影を落としていた。
「さぁ・・、思惑なんてないよ。
友人である君と、その話はこれ以上したくないんだけどね?」
「しかし、我が第二王妃がお前の言葉に振り回されていると思うと。どうも不安になるのだが・・。」
「シオン・・。この国と戦う気がないのなら、エメリアには近づかないでくれないかな??
ザッハルトになんかには渡さないよ。
もしも、彼女を傷つけたり利用なんかしたら・・。
例え君でも、僕が絶対に許さないから」
シオンはゾクリと背中に走った悪寒に、苦い笑みを微かに頬に含んだ。
「・・面白いな。お前が誰かに執着するなんて有り得ないと思っていた。
嘘だと思って信じていなかったが、グラディアス辺境伯のご令嬢に執心している情報は
あながち間違いでも無かったと言うことか・・。
エメリア嬢に興味を引かれたんだが・・・。お前の婚約祝いの場だ。
今夜の所は黙って引く事にするよ。姉上に挨拶をしてから今夜はさっさと寝るとする。」
赤いマントを翻して、ザッハルト帝国の皇子シオンは王座の一段下の位置にある椅子に座って貴族と
話をしていた第二王妃の元へと向かって去った。
パートナーであるアデレイドが横から消えてしまっていたが、今夜の主役であるカイルを見つけた人々は次々に挨拶と婚約祝いの言葉を伝えていた。
心底穏やかではなかったカイルは、張り付いたような笑顔を向けて対応していた。
ふと、顔を上げた時・・。
大勢に囲まれている自分が世界で独りぼっちに感じて表情が翳った。
一緒に対応をするはずのアデレイドがノアと同時に姿を消していると言う事は何処かで逢引でもしているのだろう・・。
窓際の端に見えるオーブリーとクロエ。
その横で話し込んでいるエミリアの姿を捉えると心が少し柔らかくなる。
美しいアレキサンドライトの瞳は、光の加減で深いグリーンにも真っ赤なルビーにも見える。
希少種・・。
シオンの放った言葉に一瞬傷ついた表情を浮かべたエメリアの表情を見逃さなかった。
あの場所に彼女を留めたくなかった・・。
エメリアが心配そうにシャンパングラスを傾けながらクロエとオーブリーに話しかけていた。
ハッと彼女を同じように見つめている視線に気が付いて表情が曇る。
エメリアの姿を第二王妃と談笑中のシオンが遠くから目で追っていた。
「君が笑ってさえいてくれれば僕は大丈夫なんだ。だけど、隠そうとしても・・。
どうしてみんな見つけるんだろうな。」
カイルはシャンパングラスの中身を一気に飲み干すと、窓の外に輝く月をゆっくりと見上げていた。
「エメリア。僕には君が眩しくて・・。僕には近づけない」
その言葉は、大勢の人の喧騒の中で誰にも聞かれずに・・消えた。
その頃、私は大変な状況に巻き込まれていたのだった。
「クロエ、ちょっと飲み過ぎじゃない?!」
「だからぁ・・。エメリア様っ、・・聞いてくだぁさいよぉ!!
オーブリーってば、いっつもエメリア様の話ばかりなんです!!
ううっ、ひいっく・・。
父のことがあったから・・。私っ・・だけを!!・・見てくれて、直向きに愛してくれる方との婚姻を結びたいのにぃっ・・!!」
シャンパングラスの中身を再度空にしたクロエは、薄桃色に小薔薇が散りばめられた可愛らしい
ドレスを着ていた。
クロエの頬は上気していて茶色い瞳はトロンと焦点があまり合っていない・・・。
「ああ、だいぶ酔っているわね・・・。
クロエはお父様の事があって大変だったもの同情するわ。ちょっとオーブリー、どういうことなの??クロエを大切にしてないって自覚はある訳!?
前に行ったわよね??クロエを泣かす奴は誰だろうと、ぶっ飛ばすって!!」
クロエは浮気性のお父様の元で育って、母親が精神的な病に伏せてしまっていた。
私達は王都での家もご近所で幼馴染でもあったから、よく相談に乗っていたのだけど・・。
「僕が至らなくてごめんね、姉さん・・。最近のクロエは平常時でもこんな状態で・・。
僕との結婚が憂鬱で、国外に留学したいと言ってるんだ・・。」
「留学!?・・それもいい案ね。じゃなかった!!
情けない事を言ってないで、責任もって僕が幸せにするとか・・。
クロエの不安を聞いてあげて、安心させてあげなければ駄目じゃない!!」
「だって僕じゃ駄目なんだよね・・。クロエには好きな方がいるんだよ??」
「えええっ・・!?好きな人がいるの!??
ちょっとクロエ何時の間に??一体、誰が好きなの??」
「そんなの!!言えない・・れすよぉっ・・!!
だって、言ったって・・この恋は叶わないものっ!!
ヒック・・。「イムディーナの誓い」は、絶対れすもの・・。あの方にも婚約者がいらっしゃいます。私なんかよりも、可愛らしくて・・。
可憐で・・うっ、うわぁぁぁぁん・・!!」
大分盲目的な恋だな・・。
こりゃ、重症ね。
最近クロエと喧嘩ばかりしていると弟から聞いていたけど。・・これ程とは。
でも、待って!?
「イムディーナの誓い」の誓約によって自分の意思ではない婚姻に反発を持っている点はもしかして、私と利害が一致するんじゃない!?
「ねぇ、クロエ・・。このまま弟と結婚してもいいの!?貴方の人生はこのまま誓約に縛られて諦めるしかないのかしら・・。
好きな人の気持ちも知らぬまま・・。
この先の人生も何もしないで諦めてしまっていいの!??」
その言葉に、小柄なクロエは俯いてポロポロと涙を流しながら首を横に振った。
「どうしよう姉さん・・。
このままクロエの気持ちを無視したまま「イムディーナの誓い」を守って、何も知らない振りをして結婚なんて僕には出来ないよ・・」
そりゃそうだ・・。
こんなに不安定な状況のクロエと結婚しても、オーブリーにはどうしてやる事も出来ないよね・・。
お酒を飲んで自暴自棄になっている彼女を止めようとして喧嘩ばかりしていたら、不幸な生い立ちのクロエの家庭の再現が起きて、彼女も弟も心が病んでしまうかもしれないし。
こうなったら、弟達の婚約もどうにかしないといけないわ・・!!
「エリオスのリストアップ済みのメンバーに、オーブリーの名前は入ってなかったけど・・。ま、いっか!!」
エリオスに後で確認してOKだったら一緒に同盟に勧誘すればいいわね!!
どうせ姉の連座で一蓮托生なんだから、この際しっかり働いてもらいましょう!!
「クロエ、オーブリー・・・。
貴方たちにこの夜会が終わった後話があるの・・。
「イムディーナの誓い」の法の誓約を守る為に、望まない不幸な結婚をすることは昔から私には理解出来なかったの。貴方たちも、このままでは良くないでしょう??
私と一緒に、執務室に来てもらっても良いかしら??」
驚いた表情のクロエとオーブリーは不安そうに視線を合わせて見つめ合った後、深く頷いた。
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