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異世界。

国境の町「レインディア」。①

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ダンダンダン・・・!!!

「お願い・・。誰か、ここを開けて!!!誰か・・っ。気づいて・・。お願い・・。」

涙を流しながら暗がりの中、少しだけ天窓から差し込む光を頼りにドアを叩く。

ダンダン!!! ・・ダンダンダン・・・!!!!

何も反応が返されない部屋に1人ぼっちで居続ける恐怖は、底知れぬ不安と、人に絶望を与える
のには滑降の状況だった。

気づいたら知らない場所で、独りぼっちで寝そべっていた。

セーラー服姿の帰り道に突然、背後から口を覆われて連れ去られた先のこの場所で
何時間が経ったのだろう・・。

腕時計の針の音は、今も時を刻むけれど・・。

その秒針の音ですら、私の不安は膨らみ続けていた。

「・・・どうして?何で私がこんな目に・・。お父さん・・。お母さん・・・。」

涙がポタッと床に落ちた。

足から冷える、ドアの隙間から入り込む冷たい風にぶるりと心身が震えた。

にゃあぁん・・。

ドアの外で猫の鳴き声がした。

私は咄嗟に、その猫に呼び掛けた・・。

「お願い、猫ちゃん!!!私を助けて・・。お願い・・!!!誰か呼んで来て!!!」

猫が私を助けられる筈もないのに。

寒さと恐怖に時間と感覚が麻痺していく・・。


病院の倉庫群の一角にある、古い部屋・・。

誰も使わない鍵がかかる物置部屋で犯人と共に倒れていたのを大勢に発見された。

覚えているのは、油の匂いと私を連れ去った男性のつけていた香水。
不思議と覚えのある香りに、意識を失う前の私は働かない頭を動かそうとしたが・・。

答えにたどり着く前に、意識を手放してしまった。




「・・・づき!!おい、またか・・。
全然起きないし・・。おい、美月、国境だぞ・・。
国境の町「レインディア」に着いたぞ・・。
・・・そうだ!!
ここレインディアは、アイスクリームが美味いらしいぞ!?」


  
    ガバッ!!!


「・・ハッ。」

髪がメデューサのように、ボサボサになったまま飛び起きた私はすぐにアイスを探す。

「何処?・・・美味しいアイスは何処なのよ!?」

目の前には、いつもの呆れ顔のアルベルトが青い目を細めて私を見ていた。

「もう、アルベルディアの国境まで来ましたよ。
予定よりも半日も早く着けましたね・・・。
これも、刺客がしつこく、数多く、攻撃をしかけてくるので逃げている内に倍速で駆け抜けた
お陰ですね。迷惑でしたが、多少の役には立ちましたね・・・。」

「誰かさんは氷のままだし、もう1人は戦力になると分かった途端昼寝・・。
お陰でこっちは昼寝の一つも出来なかったな。」

クレイドルの微笑みとアルベルトの言葉は、ただの愚痴と嫌味にしか聞こえなーい。

私、あの状況の中で爆睡しちゃったんだ・・。

そりゃあ、申し訳ないな・・!!!

瞬間冷凍から目覚めたばかりのフレッシュなアレクシスも笑顔で、ノアやルードリフと談笑していた。

「美月様。そろそろ、術が切れてしまいそうですが・・。一応、掛け直しておきましょうか?」
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