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イエリングとヴァイレン

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「ちょっと待って!?今、海上都市と言った??「アクエリア」は、海中深く沈む「海中都市」でしょ?」

私は、驚き過ぎて声が大きくなっていた。


場所をクラウスの部屋に代え、紅茶の用意をしてくれたメイドも下がらせ3人で話を続けていた。

「いいや、10数年前までは海上都市「アクエリア」だった。
神の力で、海中深くに沈められた。と聞いている。」

フィヨルドも、静かに説明をしてくれた。

「なぜ・・・。」

「3国に起こった悲劇から、「アクエリア」の王であるフェルディナン王が怒り、
海を大きく荒らして自然が破壊されてしまい、壊滅状態になったと聞いた。

そこで、アルプレクトの神殿へ向かったこの国、ヴァイレンと、
隣国、イエリングの使者達が祈りを捧げた。
「アクエリア」との和平を望み、神がフェルディナン王を宥めた、と。

しかし、フェルディナン王は、陸の人間たちに失望し、足をヒレに変えて
海の底に「アクエリア」を神の力で沈めてもらった。
そして、不可侵の条約を締結することで怒りを収めたのだと聞いた。」

「十数年前の出来事で、関係性が決裂してしまったのね・・。」

人間とは関わるな!!

人間の側に行くと殺される・・・。

父や青い髪の人魚が言っていた言葉を思い出し、体がぶるりと震えた。

呆然と手元のティーカップを見つめる。
冷めた紅茶をじーっと見ながらゆっくりと今聞いた出来事を処理していく・・。

・・・すごい話だ。

まさか、フェルディナン王(父)が話の中心にいて、昔のアクエリアは
足を持った人間が住んでいた。

神の力によって王国の者たちが人魚へと変わってしまった。

そんな事実は、想像を遥かに超えたところにあった事実だった。

「でも、イエリングの王が殺された事件に、何故フェルディナン王は怒るの?
全然関係ない出来事なんじゃ・・・。」


「そうじゃないんだ。その出来事は海で、アクエリアで起きた事件だったんだ。」

・・・クラウスは予想外の事実を伝えた。

私は更に驚きに目を見開き、茫然とする。

「・・イエリングの王がアクエリアで・・・殺された・・?
ヴァイレンの王妃まで・・・?「アクエリア」で、・・・何が起きたの?」

「ここからは、僕たちもよく知らないんだ。
・・・でも、殺されたのは事は知っている。」

クラウスが、苦しそうに、声を絞り出していた。

フィヨルドも、顔を上げ、驚いた顔でクラウスを見つめた。

ここからは、フィヨルドも知らない事のようだった。

「何故、フェルディナン王が怒ったのか・・・。
それは殺されたもう一人がフェルディナン王の妻
であるドルテ王妃・・・。
彼女がこの事件で、最悪な殺され方をされてしまったから。

我が国、イエリングの宰相「カルムベルト」は、魔術を使い、
兵を操り王族を次々に殺した・・・。
ドルテ王妃は、剣では倒れず、盛られた毒に侵された末に
数年間の間・・苦しみ抜いて亡くなったそうだ。
・・・・最も残虐的な死を迎えたんだ。」

フェルディナン王の妻である「アクエリア」の王妃様?!

それって・・・。

・・・人魚姫の母?!

フィヨルドが衝撃の表情でこちらを見やる。

私は、そのことには全く気がつかなかった・・・・。

「そ・・・そんな!!なんで・・そんな事実・・。酷すぎるわ!!」

私の目からは涙がポロポロ零れていた。

今聞いた事実が・・・理解出来なかった。

フェルディナン王である父が、人間を憎み、人間であることを拒んでしまったこと。
地上から、深海へと姿を消してしまった理由が私には、理解出来た気がした・・・。
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