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第一章 突如始まる非日常

第二話 〜不思議な能力〜

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(03.)

 背中に覚えのある圧迫感がある。寝そべっている時の無駄に表面だけ暖かく思えるあの感覚。なんとなく落ち着く感じとなんとなくここで寝そべっていてはいけない感じが入り混じって変な感覚だ。
 
 ??? 「る…り…るり…瑠璃!」

 ふと他の感覚を呼び覚ますと、誰かに呼ばれているような気がして目を覚ました......そんな夢を見ているようだ。今いるのが「現実世界では当たり判定がありそうでなさそうな」雲の上であることからそうであると確信した。

 脳内でビデオゲームがスタートしたような感覚で、なんとなく雲の上で立ち上がった。

 漠然とした感覚で突っ立っていると、さらに声をかけられた。

 ??? 「瑠璃ぃ!! やっと起きたあ。」

 ......聞き覚えのある独特な声が脳内に響き渡る。
 この世界中のどの女の子よりも一番女の子らしくかんじられる声(個人の感想)はもしかして…...

 瑠璃 「木葉じゃん! ひさしぶり!」
 木葉 「よかったよーっ生きててーっ!」

 この子は木葉。どれだけ外見にとらわれても男であることには変わりない。俗に言う男の娘で、我が親友だ。今まで行方不明になっていたが、無事だったようだ。すげぇ安心。
 しかし…

 瑠璃 「木葉はどうしてここにいるの?」
 木葉 「それはねぇここが今の私の家だからだよ」

 ......「ここが木葉の家」?木葉の家って陸上になかったっけ?
 僕の頭はいま一瞬?で埋め尽くされていた。

 木葉 「瑠璃も男の娘仲間になったんだねぇ」
 瑠璃 「え? 僕は普通の男だよ」

 キョトンとした表情を浮かべる木葉。何を勝手なことを?冗談か何かでも世間一般としては触れられたくない人もいそうなラインの話だな。
......あ、そういえば少女になっていたんだった。

 瑠璃 「実は、朝起きたらこの姿になっていて」
 木葉 「え?昔っから『こんなに可愛い女の子が女の子なわけがない』って言うじゃんかぁ」

 ......は?え?、おんなのこよりなに?
という感じに一ミリも信じてもらえない。が…...

 木葉 「本当かなー?」 

 木葉はそう呟き、適当なところを見つめ、目を閉じた。

 木葉「...…えっ!うそ!まさかわたしと同じく神にとりつかれていたとはねぇ」

 この会話で意味がわかることはただ一つ、神様が怪異みたいな扱いされてるってことだ。取り憑くって......もっと言い方なかったのかな。

 …というかなんでわかったんだろう。「神様」とやらとなにか関係してるのかな?

 木葉 「神に取り憑かれているということは…...なんの神に取り憑かれているかわかる?瑠璃ぃ」

正直、今知った現実かどうかも怪しいその情報に、詰まる言葉もないような感じだが、わからないと言ってしまうとそこまでなような気もした。そのため、

 瑠璃 「そもそもどうやってわかったの? まずはそれを教えてほしい」

と、適当な質問を返してしまった。質問に質問で返すとはまた失礼なことをしたものだ。

 まぁ結局、どこをどう聞いても僕にはわけがわからないだろうが…...さまざまな疑問が頭をよぎる感じに困惑を覚えていると、上からなにか幕が降りてきた。

 木葉 「今からこれに映して説明するよ。 ちょっと長くなるよぉ」

 と、唐突に現れた幕と共に木葉が言うと、幕に図が表示された。そこからわかったのは、木葉の文字は汚くて読めないということだけだったが、所々の絵と木葉の眠そうな声による適当な説明のおかげで大体はわかった......気がする。


 1神が取り憑くことによりなんかしらの能力が発現すること。

 2木葉の場合は時間を操る能力が発現した。(新情報)

 3僕は女体化?らしい。

 4女体化以外にも何かが起こる可能性がある。

 ということだ。正直、こんなこと急に言われても意味がわからない。


 ……ふと頭の処理に対する大いなる休憩を挟もうかと思ったあたりで、後ろからの視線に気づく。反射的にそっちを振り向くと、いかにも神っぽいオーラを醸し出している(ように見える)ヤバそうな人がいた。

 そのヤバそうな人と目があってしまう。すると、頭の中に色々文字が流れてきた。すると自分の体の中で何が起こっているのかを理解できた。都合の良さと語彙力の少なさに引いていた僕だったが、まとめると……


 1遺伝子の神(ヤバそうな人)が取り憑く。

 2すると自分の体の遺伝子を自由に意図的に変えられるようになる

 3だがしかし何故かその副作用でY染色体の働きがマスクされる→これは多分男性の場合

 4X染色体の働きが強まる→3に同じく

 5女体化現象が起こる→僕が男子だったからこう言っているが流石に女子に憑いたら女体化はしないよな。男性化かな?(どうでもいい)

 となることがわかった。


そんなこんなで面倒ごとに巻き込まれた気しかしないので、現実逃避でもしようかと思ったが、僕の学生生活において重要な何かを忘れている気がした。
 ……学校を思い出す。 忘れてた……。

 瑠璃 「ねぇ木葉、学校行きたいんだけど...…」
 木葉 「あ…...忘れてたぁー」

 だから学校に来なかったんだー......と、そんなこと考えている場合ではない。ただでさえ家を出るのが遅れたのに、もたもたしてる暇はない

 瑠璃 「とりあえず学校行くよ! ほら支度して!」
 木葉 「あっ待ってくださいぃ、ここらへんは危険な…」

 その時の僕は学校で頭が埋め尽くされていて、木葉の話を聞く余地はなかった。

 (04.)

 ~知らない森~

 僕は木葉の”家“を出てから、スマホで現在地を確認するためにマップを開いた。航空写真の方が開けた場所に出られるかと思ったが、何処をどう見ても全く理解できない。せっかく3Dモードにしてみたのに。
ひたすら木、木、木、木、大きな犬、木、木……うん?

 大きな犬のいるところから唸り声が聞こえる。

 大きな犬 「グルルルルル…」

 こんなの居るとか聞いてないんだけど。一瞬正気度が減少する羽目になりそうだったが、深呼吸し、とりあえず落ち着かせるために近づいていって……撫でてみた。

 大きな犬 「ウルルルルル…」

 ……逃げたほうがいい。そう生存本能が告げている気がした。なんで撫でたんだろ僕。

 そう思っていると、木葉が息を切らしながら走ってきた。

 木葉 「瑠璃! 逃げて! そいつは! シネンとか言う! 幽霊的存在! いままで! そいつに! ……ゼェゼェ……」

 うん、一旦落ち着こう。

 木葉 「みんなそいつに食われた! ここらへん一帯にはもともと生物が沢山いたんだけど全員あいつに食われたぁ!」

 なるほど、どうりで動物がいないことだ。

 木葉 「だから逃げて瑠璃!」

 うーん……もしかしたら た お せ る か な ?

 木葉 「まさか倒そうだなんてかんがえてないよね?」

 瑠璃 「うん。考えてるから安心して、木葉」

 木葉 「なぁんだ やっぱりそうだと思ったよ。 それに、決めたんならもう何言っても無駄だね。 能力使って全力で手助けするよ!」

 瑠璃 「あれー?」


 (ヘリナ視点)
 
 木葉 「……手助けするよ!」

 は? 
 今のって普通に駄目だよとか言って止めない? 

 ツッコミがいないのでヘリナはとても混乱していた。


 (元の視点)

 木葉 「武器はこのナイフを使って」

 え、何処から出したんだろう?

 という疑念を抱きつつもありがたく受け取る。

 瑠璃 「じゃあ木葉は僕の周りだけ時間を遅く進めて」

 木葉 「おっけー」
 
 瑠璃 「それじゃあ…」

 僕達は互いを向き合ってうなずく。

 瑠璃&木葉 「戦闘開始!」

 それを見ながらヘリナは困惑していた。 親友ってすげぇ。 

 木葉が何かを唱えると、自分の周りの草の動きが遅くなった。

 これが木葉の能力なのか……。

 とりあえずシネンに気づかれないほどの気配で流れるように近づき不意打ちを当てる。

 返り血が顔にかかる。生ぬるくて鉄臭い。

 シネンは不意打ちということもあってかプライドを傷つけられたせいで歪んだ顔からは怒りがみえる。

 思念の頭が上の方を向く。 そのすきに攻撃を当てようとするが、尻尾で薙ぎ払われてしまった。

 ふとシネンが大声で吠える。するとシネンの周りにオーラのようなものが現れる。

 自分のナイフにもオーラを纏わりつけることは可能なのか気になってナイフに意識を集中させる。しかし、何も出てこなかった。 残念だ。

 しかし、次の瞬間シネンの方向を見るとシネンは消えていた。

 すると地面から根っこのようなものが生えてきて殴ろうとしてくる。 面倒なのでナイフに火を纏わりつけてすべて切り裂く。 というか普通に火のオーラ(ではないが)を纏わりつけることできてるし。

 そう思った瞬間根っこにまぎれてシネンが襲いかかってくる。 しかし僕は考え事をしていたのでナイフで構わず敵意を見せずに切り裂いた。

 しかしシネンは牙で襲おうとしていたため牙しか切り裂くことのできない。 

 だがシネンは痛みで数歩下がる。僕はその隙を見逃すことなくナイフでまた切り裂く。今度は急所に当たったらしく、まだ体温の残るシネンの鮮血を頭からかぶってしまった。

 僕はそれに構わず迷わずナイフでシネンのことをまた切り裂いていく。

 木葉の能力もあってか瞬きの間に数十回斬りつけることができた。

 シネンは痛みに悶えている。痛みに苦しんでいる。でも僕はそれに構わずただひたすらナイフで切り裂いていくだけだ。

 シネンの血がどんどん飛んでくるが気にしない。

 僕はそれに集中していた。だから気づかなかったのだろう……人のようなものがくる気配に。

 そいつは僕のことを吹き飛ばした。そしてシネンのことを網で捕まえた。

 その網はエネルギーの塊のようだった。 それが縄のようになり合わせて網になっている。

 ??? 「これは私のおもちゃ。 あなたは…まぁいい。」

 と、言い残してそれは消えた。

 見えたのは一瞬だけだったが、それは少女のような姿をしており着物をきていた。(とはいってもかなり洋風でおしゃれなものだったが)

 すぐに木葉がやってくる。

 木葉 「大丈夫? 血だらけだよ瑠璃?」

 瑠璃 「うん。 大丈夫。(返り血だし)」

 木葉 「それでさっきの人は何だったんだろう?」

 瑠璃 「いや…わからない。 でも、僕のことを微妙に殺意の混ざっている瞳で見つめてきた。」

 木葉 「う~ん…とりあえず現世の家に行こう。 さっきの人がまた来たら面倒だし。」

 僕はその意見に賛同した。

 ヘリナ 「…(あいつはかなり面倒なやつだ。 でも、瑠璃なら倒せるはずだ)」

 そうヘリナは物陰から瑠璃たちを覗きながら思っていた。
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