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第六章
7.動転
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特別病棟の「カーティス村」で、ゼンは自分の父親であるジム・カインとまき割りをしていた。
「父ちゃん、今日もいい仕事したなぁ」
「そうだなぁ、ゼンが手伝ってくれたから楽だった」
今日は一軒家に住む、近所のおばあさんの家の屋根が風で飛ばされてしまい、一日中、その修理をしていた。
元々、大工職人だったジムは、記憶を消されても自身が職人であった事を忘れてはいなかった。
――いつか、父ちゃんの記憶が戻るといいな
そう思いながら、ゼンはこの偽カーティス村で父親と過ごしていたのだった。
もうすぐ人工太陽が沈み、夜になる。
そんな時だった。
いつもの夕焼けよりも濃い、赤色の光線が村全てを茜色に染めた。
「何だ?これ――何してるんだ?」
いつもにはない現象に、ゼンは戸惑った。
ゼンはこの村が幾何学大学によって造られた空間だと言う事を知っている。
その異変に思わず、この村の出口である特別病棟の入り口の方角を見た。
こんな時の為に十樹から預かった、この特別病棟から出る鍵は持っている。
だから、大丈夫だ。と自分に言い聞かせた。
「うっ……うっ」
「父ちゃん!?」
ジム・カインが頭を押さえうずくまっている姿を見て、ゼンは慌てて父親の背に手を回す。
父親はその赤色の光線が光っている間、苦しんでいた。
「大丈夫か!? 父ちゃん!」
赤い光線は、次第に消えていく。
そして、いつもの静寂が訪れると共に、父親の表情がふいに変化した。
「……誰だ? ゼン、ゼンなのか?」
ジムは、ゼンの顔を見て不思議そうな顔をする。
「何を今更言って……」
「ここは? オレは何を……」
ジムは、意識がはっきりしていない様子で、辻褄のあわない事を言いながら周囲を見回した。
「そうだ――オレは神隠しの森に……」
少しずつ、噛み締めるようにジム・カインは記憶を探っていた。
ゼンはそれを信じられない気持ちで、自身の父親を見た。
「お前はゼンだな……ゼン」
「――父ちゃん、記憶が戻ったのか?」
「ああ……ああ、ゼン、大きくなったんだな。お前が生きててくれて嬉しい――会いたかった」
ジムは、そう言うと、震える手でゼンを強く抱きしめた。
☆
「こんな事をして、上の連中が黙ってないぞっ!」
ブレイン朝日と白石十樹に脅された神崎は、記憶操作の解除スイッチから手を離す。
「やはり、上層部と神崎グループは繋がっているんですね」
十樹は神崎の言葉から推測し、口を開く。
患者への記憶操作は、完全なる違法行為だ。
それを今まで放置していた幾何学大学の法案は、この国の法案に逆らっている。
「それが何だ! 僕の記憶操作に関して言わせて貰えば、これは大学側が許可したことだ!」
「先日、私は国に確認をとりました。それは大学が勝手に許可したことであって、国の許可を得ていない。記憶操作は大学側の違法行為です」
「朝日も証人となります。どうやら倫理委員会で裁かれるのは、貴方達、上層部のようです」
ブレイン朝日は、淡々とした口調で言うと、神崎はくっと唇を噛み締めた。
「これ以上、罪状を重ねたくないのなら、私の言う事を聞いてください」
☆
橘サトルは育児研究室に呼ばれ、一度に三人の赤ん坊を抱っこしていたが、余り手のかからない十樹の赤ん坊は寝かされたままである。
そこへ、亜樹も手伝おうと、研究室を出て駆けつけた。
「十樹兄さんの子はお利口ね。小さい頃から性格があるみたい」
橘から、お腹を抱っこされた赤ん坊を受け取ると、顔つきからすぐに桂樹の子供だと気付く。
橘から亜樹に渡された途端に、泣き止んだのだ。
「亜樹さん、やっぱり女の人は凄い力を持ってますね。僕が抱いても全然泣き止まなかったのに……」
「桂樹兄さんらしいわ」
亜樹は半分呆れながら、高い高いをしていると、育児研究部の入り口が騒がしくなっている事に気付いた。
学長、その他、上層部が訪れたのである。
学長は多くの取り巻きを連れて、神崎亨と白石十樹を目線で捜した。
「神崎君や白石君は不在かね?」
「はい。先程、用があるとのことで、出て行かれました」
研究員がそう言うと、学長はふんっと鼻を鳴らした。
「幾何学大学始まって以来の危機的状況に、本人達は呑気なようだな」
室内のどこを見回しても赤ん坊だらけの状況に、学長は警笛を鳴らす。
本来なら成人した若者達が、軍事訓練を行う様子でも見れたはずなのだ。
この状況では四季を攻撃し、占領する事も出来ない。
学長は考えながら、壇上へ上がった。
「君達はここまで頑張ってくれた。しかし、個人の研究を疎かにすることがないよう、我々はここにいる赤ん坊を全てある場所で引き取ってもらうよう、これから手配するつもりでいる」
その言葉に会場はざわついた。
「君達とは、もう二度と会わない場所で子を養育し、将来的には立派な軍人となるだろう」
橘と亜樹は驚きながらそれを聞いた。
同じように、赤ん坊の世話をしていた研究員達が、学長に向かって叫んだ。
「この赤ん坊は、私達の命と同等です! 勝手に軍人にされては困ります」
周囲から「そうだそうだ!」と意見に賛同する者が騒ぎ始めた。
「君達は赤ん坊に情が移ったのか? 最初からここは「軍事用クローン製造部」だったんじゃないのかね」
学長がそう言うと、取り巻き達がそれぞれ手にしている赤ん坊を取り上げ始めた。
橘と亜樹も例外ではなく、二人の手からも力づくで奪い取られてしまう。
取り上げられた赤ん坊が一斉に泣いた。
亜樹は思った。
こんな時十樹や桂樹がいたら、この状況を上手く回避する方法を見つけてくれるのに、二人はいない。
「赤ん坊を返して下さい!」
橘が学長に詰め寄る。
「おや、君は橘君の家の息子じゃないか。君が小さい頃から、君には随分世話になっていたよ」
学長が卑しい目で橘を見た。
その一言で、橘はこの幾何学大学の学長こそが、十樹の言う敵である事が分かった。
「さしてIQの高くない君が、この幾何学大学に入学出来たのは誰のお陰か、もう一度考えてみたまえ」
「――……っ」
橘は何も言えないまま、捕らえられてしまった。
亜樹は手にまだ残る、赤ん坊のぬくもりを感じていた。
それぞれが赤ん坊を抱いて、育児研究部から出て行く取り巻き達を見ていた。
その様子に泣き出す女性研究員もいたが、学長はそれに構わず、満足げに赤ん坊を見送っていた。
――しかし
順調に見えた赤ん坊の運び出しに影がさした。
出て行ったはずの取り巻き達が赤ん坊を抱いたまま戻ってきたのだ。
その理由は、学長の取り巻きを上回る大勢の大学警察だ。
その手には小型拳銃があり、取り巻き達の頭に突きつけられ身動きが取れない。
小型拳銃は、取り巻き達を従わせるには十分な威力を持っていた。
「何だ! 君達は!」
「貴方を二一七号、児童保護条例違反及び収賄の容疑で拘束します」
大学警察は学長に向かってそう告げると、学長自身に銃口を向ける。
「赤ん坊は、元いた場所に戻してください」
そう言って現れたのは、白石十樹と桂樹だった。
二人は万が一の事を考えて、予め保育器に盗聴器を仕掛けていたのである。
十樹は数日間の学長代理殺人事件の時に約束を交わしていた。
大学警察に大学側の不正行為を調べ上げるよう依頼していたのだ。
これだけ多くの大学警察が動いたのは、大学の開校以来、初めてのことだった。
「神崎亨が全てを話しました。学長、貴方に国から逮捕状が出ていますよっと」
桂樹は学長の取り巻きから自らのクローンを取り返す。
それを見て、亜樹は安堵のため息をついた。
「父ちゃん、今日もいい仕事したなぁ」
「そうだなぁ、ゼンが手伝ってくれたから楽だった」
今日は一軒家に住む、近所のおばあさんの家の屋根が風で飛ばされてしまい、一日中、その修理をしていた。
元々、大工職人だったジムは、記憶を消されても自身が職人であった事を忘れてはいなかった。
――いつか、父ちゃんの記憶が戻るといいな
そう思いながら、ゼンはこの偽カーティス村で父親と過ごしていたのだった。
もうすぐ人工太陽が沈み、夜になる。
そんな時だった。
いつもの夕焼けよりも濃い、赤色の光線が村全てを茜色に染めた。
「何だ?これ――何してるんだ?」
いつもにはない現象に、ゼンは戸惑った。
ゼンはこの村が幾何学大学によって造られた空間だと言う事を知っている。
その異変に思わず、この村の出口である特別病棟の入り口の方角を見た。
こんな時の為に十樹から預かった、この特別病棟から出る鍵は持っている。
だから、大丈夫だ。と自分に言い聞かせた。
「うっ……うっ」
「父ちゃん!?」
ジム・カインが頭を押さえうずくまっている姿を見て、ゼンは慌てて父親の背に手を回す。
父親はその赤色の光線が光っている間、苦しんでいた。
「大丈夫か!? 父ちゃん!」
赤い光線は、次第に消えていく。
そして、いつもの静寂が訪れると共に、父親の表情がふいに変化した。
「……誰だ? ゼン、ゼンなのか?」
ジムは、ゼンの顔を見て不思議そうな顔をする。
「何を今更言って……」
「ここは? オレは何を……」
ジムは、意識がはっきりしていない様子で、辻褄のあわない事を言いながら周囲を見回した。
「そうだ――オレは神隠しの森に……」
少しずつ、噛み締めるようにジム・カインは記憶を探っていた。
ゼンはそれを信じられない気持ちで、自身の父親を見た。
「お前はゼンだな……ゼン」
「――父ちゃん、記憶が戻ったのか?」
「ああ……ああ、ゼン、大きくなったんだな。お前が生きててくれて嬉しい――会いたかった」
ジムは、そう言うと、震える手でゼンを強く抱きしめた。
☆
「こんな事をして、上の連中が黙ってないぞっ!」
ブレイン朝日と白石十樹に脅された神崎は、記憶操作の解除スイッチから手を離す。
「やはり、上層部と神崎グループは繋がっているんですね」
十樹は神崎の言葉から推測し、口を開く。
患者への記憶操作は、完全なる違法行為だ。
それを今まで放置していた幾何学大学の法案は、この国の法案に逆らっている。
「それが何だ! 僕の記憶操作に関して言わせて貰えば、これは大学側が許可したことだ!」
「先日、私は国に確認をとりました。それは大学が勝手に許可したことであって、国の許可を得ていない。記憶操作は大学側の違法行為です」
「朝日も証人となります。どうやら倫理委員会で裁かれるのは、貴方達、上層部のようです」
ブレイン朝日は、淡々とした口調で言うと、神崎はくっと唇を噛み締めた。
「これ以上、罪状を重ねたくないのなら、私の言う事を聞いてください」
☆
橘サトルは育児研究室に呼ばれ、一度に三人の赤ん坊を抱っこしていたが、余り手のかからない十樹の赤ん坊は寝かされたままである。
そこへ、亜樹も手伝おうと、研究室を出て駆けつけた。
「十樹兄さんの子はお利口ね。小さい頃から性格があるみたい」
橘から、お腹を抱っこされた赤ん坊を受け取ると、顔つきからすぐに桂樹の子供だと気付く。
橘から亜樹に渡された途端に、泣き止んだのだ。
「亜樹さん、やっぱり女の人は凄い力を持ってますね。僕が抱いても全然泣き止まなかったのに……」
「桂樹兄さんらしいわ」
亜樹は半分呆れながら、高い高いをしていると、育児研究部の入り口が騒がしくなっている事に気付いた。
学長、その他、上層部が訪れたのである。
学長は多くの取り巻きを連れて、神崎亨と白石十樹を目線で捜した。
「神崎君や白石君は不在かね?」
「はい。先程、用があるとのことで、出て行かれました」
研究員がそう言うと、学長はふんっと鼻を鳴らした。
「幾何学大学始まって以来の危機的状況に、本人達は呑気なようだな」
室内のどこを見回しても赤ん坊だらけの状況に、学長は警笛を鳴らす。
本来なら成人した若者達が、軍事訓練を行う様子でも見れたはずなのだ。
この状況では四季を攻撃し、占領する事も出来ない。
学長は考えながら、壇上へ上がった。
「君達はここまで頑張ってくれた。しかし、個人の研究を疎かにすることがないよう、我々はここにいる赤ん坊を全てある場所で引き取ってもらうよう、これから手配するつもりでいる」
その言葉に会場はざわついた。
「君達とは、もう二度と会わない場所で子を養育し、将来的には立派な軍人となるだろう」
橘と亜樹は驚きながらそれを聞いた。
同じように、赤ん坊の世話をしていた研究員達が、学長に向かって叫んだ。
「この赤ん坊は、私達の命と同等です! 勝手に軍人にされては困ります」
周囲から「そうだそうだ!」と意見に賛同する者が騒ぎ始めた。
「君達は赤ん坊に情が移ったのか? 最初からここは「軍事用クローン製造部」だったんじゃないのかね」
学長がそう言うと、取り巻き達がそれぞれ手にしている赤ん坊を取り上げ始めた。
橘と亜樹も例外ではなく、二人の手からも力づくで奪い取られてしまう。
取り上げられた赤ん坊が一斉に泣いた。
亜樹は思った。
こんな時十樹や桂樹がいたら、この状況を上手く回避する方法を見つけてくれるのに、二人はいない。
「赤ん坊を返して下さい!」
橘が学長に詰め寄る。
「おや、君は橘君の家の息子じゃないか。君が小さい頃から、君には随分世話になっていたよ」
学長が卑しい目で橘を見た。
その一言で、橘はこの幾何学大学の学長こそが、十樹の言う敵である事が分かった。
「さしてIQの高くない君が、この幾何学大学に入学出来たのは誰のお陰か、もう一度考えてみたまえ」
「――……っ」
橘は何も言えないまま、捕らえられてしまった。
亜樹は手にまだ残る、赤ん坊のぬくもりを感じていた。
それぞれが赤ん坊を抱いて、育児研究部から出て行く取り巻き達を見ていた。
その様子に泣き出す女性研究員もいたが、学長はそれに構わず、満足げに赤ん坊を見送っていた。
――しかし
順調に見えた赤ん坊の運び出しに影がさした。
出て行ったはずの取り巻き達が赤ん坊を抱いたまま戻ってきたのだ。
その理由は、学長の取り巻きを上回る大勢の大学警察だ。
その手には小型拳銃があり、取り巻き達の頭に突きつけられ身動きが取れない。
小型拳銃は、取り巻き達を従わせるには十分な威力を持っていた。
「何だ! 君達は!」
「貴方を二一七号、児童保護条例違反及び収賄の容疑で拘束します」
大学警察は学長に向かってそう告げると、学長自身に銃口を向ける。
「赤ん坊は、元いた場所に戻してください」
そう言って現れたのは、白石十樹と桂樹だった。
二人は万が一の事を考えて、予め保育器に盗聴器を仕掛けていたのである。
十樹は数日間の学長代理殺人事件の時に約束を交わしていた。
大学警察に大学側の不正行為を調べ上げるよう依頼していたのだ。
これだけ多くの大学警察が動いたのは、大学の開校以来、初めてのことだった。
「神崎亨が全てを話しました。学長、貴方に国から逮捕状が出ていますよっと」
桂樹は学長の取り巻きから自らのクローンを取り返す。
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