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第三章
8.絆
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幾何学大学内では、神崎のクローン製造疑惑により騒然としていた。
研究員はバタバタと走り回り、教授と呼び名がついた者さえ、一連の騒ぎの首謀者を一目見ようと、講義や授業を放って廊下に出て来ていた。
十樹は、別に願ったわけでもないのに、ゼンの元へ行く際、大学警察の集団と神崎亨、そしてチームのメンバーが、それぞれの表情を持って拘置所に連れて行かれる様を見た。
その途中、偶然にも十樹と神崎の目が合ったが、十樹はすぐに目線を外した。
「白石――っ! あのディスクを送りつけたのはお前だろ! 大学警察、本当はこの男が全ての元凶なんだ!」
「静かにしろ!」
大学警察は、レーザー銃を神崎亨に向ける。神崎は、ぐっと唸って口を閉ざした。十樹達は神崎を無視してゼンのいる特別病棟へ向かった。
――神崎は、十樹のしかけたトラップに気付かなかった時点で敗北している。
桂樹は、そう思いながら十樹の後に続いた。
☆
生体医学部と共に、神崎チームが捕まった為、その管理下にあった特別病棟への入り口には誰もいなかった。
神崎がトラップに引っ掛かったお陰で、誰の目にも触れずにゼンに会いに行ける。
瑞穂の無事を確認していないが、彼女の事だから、多分上手く立ち回っているだろう。
十樹は医局にある鍵をとり、先へ進んだ。
☆
特別病棟に入り、ジム・カインの家へ向かった。
「ゼン」
十樹が、ジム・カインの家の庭にいる、ゼンの後ろ姿を見かけて声をかけた。
「遅いよ。迎えにくるのが!」
ゼンが、桂樹の下っ腹にパンチしながら抱きついたと同時に、ゼンの瞳から涙がこぼれる。
「おいおい」
普段、こんな風に泣く事はないのだろう、明るいゼンの変化に桂樹は戸惑った。
ゼンは桂樹の白衣を、ぎゅっと掴んだ。
「記憶……戻らないんだ。どれだけ頑張っても無駄なんだっ」
「ゼン……」
ゼンは、ひとしきり泣くと、桂樹の白衣で鼻をかんだ。
桂樹の白衣が一部、鼻水で濡れる。
「ゼン、あーもう、こいつ何するんだよ」
桂樹が自分の白衣の裾を持って「あーあ」と、がっくりうな垂れた。
「十樹、白衣を交換しようぜ」
「絶対に嫌だ」
十樹がきっぱりそう言うと、桂樹がぶつぶつと独り言を呟いている。
「ゼン、ジム・カインは今、どこにいる?話がしたいんだが……」
「あっちの方で、オレの家造ってんだ。一緒に住むのはおかしいって」
涙を腕で拭いながら話す。
十樹はゼンの背中を軽く叩いて言った。
「まだ、泣くのは早いよ、ゼン」
ゼンは、ジム・カインの元へ行く十樹達の姿を見送って、ぐっと泣くのを堪えた。
「十樹、ゼンに希望を持たせていいのか?」
ジム・カインは、もう何年も前に記憶をなくしている。
神崎の研究室にあるだろうメモリーをもってしても、正常な状態に戻るかどうか分からない。
十樹は、十分その事を分かっているはずなのに。
せめて、この手にメイン・コンピューターがあれば、また別の話だが……。
「やってみないと分からないだろう?」
十樹は桂樹にそう言って、柔らかに笑った。
☆
トントンカンカン、森の奥から木槌の音が聞こえる。
その音を目指して歩いていると、ゼンの言う通り、ジム・カインの姿があった。
「ジム・カインさん」
大工仕事に熱中しているジムに声をかけると、「ありゃあ」と驚いた様子で手を止めて、十樹と桂樹に駆け寄った。
「兄ちゃん達、また来たんか」
「こんにちは」
「ん……?兄ちゃん達、見かけんと思っとたんが……よそ者だったんか?」
ジム・カインは、十樹達が身につけている白衣を見て、そう言った。
「幾何学大学の者です」
「はて……?幾何学なんとか……?」
「そんなことより、ゼンのことですが……」
「ああ、あの坊主か」
「あなたの息子さんの」
十樹が、そう言った途端、ジム・カインは笑った。
「確かにあの坊主は可愛いよ。オレの息子にしたいぐらいだ……でも、あいつにはきっと別の両親がいるんだろう……勝手にオレの息子にしちゃあいけない」
十樹の言葉を冗談として受け止めて、ジム・カインはカラカラと笑った。
「あの坊主は迷子なんだろ?帰るところがないって言うから、こうしてゼンの家を建ててやろうと思ってんだ……けどな」
「…………?」
一瞬、口を閉ざして、ジム・カインは続けた。
「こんな家を造ってやろう、あんな家を造ってやろうと、色々考えているんだが、どういう訳だか、オレの住んでいる家と同じ家になっちまうんだ。……どういう訳だかな」
ジム・カインは、この特別病棟で築いてきた記憶と、ゼンと一緒に暮らした記憶、そのどちらかを選ぶとしたら、どちらを選ぶだろうか。
メモリーで甦った記憶は、ここの生活の記憶を自然に消してしまうだろう。
すり替えられた記憶の中で、彼は幸せなのだ。
「あなたは、この村で一生暮らしていくんですか?」
「そうさなぁ」
ジム・カインは、遠い眼をした。
この特別病棟には、自ら進んで入って来た者達もいるだろう。
全てを忘れたい。もう一度、全てをやり直したいと願ったものもいるはずだ。果たしてジム・カインはどう思っているのだろうか。
この温かくも冷たい空間で、満足しているのなら――。
「十樹……十樹!」
ぼんやりと考え事をしていると、桂樹が叱るように名前を呼んだ。
「何だ?」
「お前まさか、ジム・カインの記憶を戻さないつもりじゃないだろうな」
「桂樹は、どう思うんだ?」
珍しく、十樹が迷った目をして、桂樹を見返した。
「オレは、本人の望む方で!」
「それは答えになっていない」
ジム・カインに記憶を返したところで、幾何学大学のような環境で生きていけるとは言いがたいのだ。
そして、元々いたカーティス村にも帰る事が出来ない。
妻のことも息子のことも忘れてしまった方が、幸せだったはずなのだ。
今の幾何学大学の環境を見ても、この広大な擬似空間とは違い、「四季」との紛争の影響が少しずつ出て来ている。ある意味、ここは守られたシェルターのようなものだ。
「ゼンのことを、息子として受け入れて貰えませんか?」
「それは、あの坊主に聞かないとなぁ」
「ゼンは、あなたの息子になる事を望んでいます」
「そうさなぁ……それもいいかも知れんなぁ」
ジム・カインは、再び遠くを見て、懐かしむように言った。
「十樹!桂樹!」
その時、ゼンが息を切らして走って来た。
ジム・カインは、優しい顔をしてゼンを見た。
「なぁ、坊主。オレの息子になるか?」
「とーちゃん、記憶が戻ったのかよ」
突然のジムの言葉に、ゼンは驚く。
「いいや……ただ、ゼンを見とると、何か懐かしく思えてよ。なあ、返事は?」
「そんなの……」
見開いた瞳に、涙が溢れる。
「決まってんだろ。オレはとーちゃんの息子なんだから」
ゼンは、ジム・カインの胸に飛び込んだ。
十樹と桂樹は、その様子を見て安堵の息をついた。
☆
それから十樹と桂樹は、ゼンがここに残る意思を確認して、今後、ジム・カインとどう生活していくかのレクチャーをし、帰る頃には、もう日も暮れかけた頃だった。
「それじゃ、ゼン。カリムとリルには伝えておくよ……あと、これを持っていてくれないか?」
十樹は、白衣から一本の鍵を渡した。
この特別病棟の擬似空間と、幾何学大学をつなぐ大事な鍵だ。
「くれぐれも失くさないように」
☆
宇宙科学部の研究室に帰る途中、大学内で瑞穂に出会った。
生体医学部のメンバーは、全員大学警察に捕らえられ、調書をとられているはずだ。
「大丈夫か?」
桂樹が訊く。
「もう、神崎のせいで巻き添えくらったわ」
瑞穂は、大学警察によって身辺調査を受けた後、「クローン製造」に関わっていないか、しつこく尋問を受けたらしい。
瑞穂が、この件に無関係だと分かると、すぐに解放されたとのことだった。
全ては十樹のディスクのせいなのだが、瑞穂に話すことはないだろう。
「私の他、何人かはもう解放されたわ。良かったー、一日中、レーザー銃をつきつけられるなんてご免だから」
「災難だったな(十樹のせいで)」
桂樹は瑞穂に、労いの言葉をかけた。
「本当、最近いい事ないったらないわ。そうだ、白石君達、豪華ディナーのこと忘れないでよね。じゃ」
瑞穂は片手を挙げて、二人に軽くウインクした。
「災難だな(オレ達)」
「瑞穂には、色々借りがあるからな。仕方ない」
十樹は、ふっと笑った。
その時、桂樹はある事に気付いた。
亜樹が目覚めてから、十樹の様子が変わったように思えたのだ。
――――…余裕があるというか。
亜樹だけじゃなく、カリムやリルやゼンのお陰かも知れない。以前は、十樹と何かと衝突していたのに、ピリピリとした空気が穏やかなものに変化した。
まあ、いい事なんだろう。
「♪」
「何だ? 桂樹」
「別に」
桂樹は笑みを浮かべる。
それを十樹は不気味に思いながら、研究室の視紋チェックを済ませ、中に入った。
「おかえりー」
「お帰りなさい」
皆が研究室の主を迎える。
そこは暖かい空間だった。
「ただいま」
研究員はバタバタと走り回り、教授と呼び名がついた者さえ、一連の騒ぎの首謀者を一目見ようと、講義や授業を放って廊下に出て来ていた。
十樹は、別に願ったわけでもないのに、ゼンの元へ行く際、大学警察の集団と神崎亨、そしてチームのメンバーが、それぞれの表情を持って拘置所に連れて行かれる様を見た。
その途中、偶然にも十樹と神崎の目が合ったが、十樹はすぐに目線を外した。
「白石――っ! あのディスクを送りつけたのはお前だろ! 大学警察、本当はこの男が全ての元凶なんだ!」
「静かにしろ!」
大学警察は、レーザー銃を神崎亨に向ける。神崎は、ぐっと唸って口を閉ざした。十樹達は神崎を無視してゼンのいる特別病棟へ向かった。
――神崎は、十樹のしかけたトラップに気付かなかった時点で敗北している。
桂樹は、そう思いながら十樹の後に続いた。
☆
生体医学部と共に、神崎チームが捕まった為、その管理下にあった特別病棟への入り口には誰もいなかった。
神崎がトラップに引っ掛かったお陰で、誰の目にも触れずにゼンに会いに行ける。
瑞穂の無事を確認していないが、彼女の事だから、多分上手く立ち回っているだろう。
十樹は医局にある鍵をとり、先へ進んだ。
☆
特別病棟に入り、ジム・カインの家へ向かった。
「ゼン」
十樹が、ジム・カインの家の庭にいる、ゼンの後ろ姿を見かけて声をかけた。
「遅いよ。迎えにくるのが!」
ゼンが、桂樹の下っ腹にパンチしながら抱きついたと同時に、ゼンの瞳から涙がこぼれる。
「おいおい」
普段、こんな風に泣く事はないのだろう、明るいゼンの変化に桂樹は戸惑った。
ゼンは桂樹の白衣を、ぎゅっと掴んだ。
「記憶……戻らないんだ。どれだけ頑張っても無駄なんだっ」
「ゼン……」
ゼンは、ひとしきり泣くと、桂樹の白衣で鼻をかんだ。
桂樹の白衣が一部、鼻水で濡れる。
「ゼン、あーもう、こいつ何するんだよ」
桂樹が自分の白衣の裾を持って「あーあ」と、がっくりうな垂れた。
「十樹、白衣を交換しようぜ」
「絶対に嫌だ」
十樹がきっぱりそう言うと、桂樹がぶつぶつと独り言を呟いている。
「ゼン、ジム・カインは今、どこにいる?話がしたいんだが……」
「あっちの方で、オレの家造ってんだ。一緒に住むのはおかしいって」
涙を腕で拭いながら話す。
十樹はゼンの背中を軽く叩いて言った。
「まだ、泣くのは早いよ、ゼン」
ゼンは、ジム・カインの元へ行く十樹達の姿を見送って、ぐっと泣くのを堪えた。
「十樹、ゼンに希望を持たせていいのか?」
ジム・カインは、もう何年も前に記憶をなくしている。
神崎の研究室にあるだろうメモリーをもってしても、正常な状態に戻るかどうか分からない。
十樹は、十分その事を分かっているはずなのに。
せめて、この手にメイン・コンピューターがあれば、また別の話だが……。
「やってみないと分からないだろう?」
十樹は桂樹にそう言って、柔らかに笑った。
☆
トントンカンカン、森の奥から木槌の音が聞こえる。
その音を目指して歩いていると、ゼンの言う通り、ジム・カインの姿があった。
「ジム・カインさん」
大工仕事に熱中しているジムに声をかけると、「ありゃあ」と驚いた様子で手を止めて、十樹と桂樹に駆け寄った。
「兄ちゃん達、また来たんか」
「こんにちは」
「ん……?兄ちゃん達、見かけんと思っとたんが……よそ者だったんか?」
ジム・カインは、十樹達が身につけている白衣を見て、そう言った。
「幾何学大学の者です」
「はて……?幾何学なんとか……?」
「そんなことより、ゼンのことですが……」
「ああ、あの坊主か」
「あなたの息子さんの」
十樹が、そう言った途端、ジム・カインは笑った。
「確かにあの坊主は可愛いよ。オレの息子にしたいぐらいだ……でも、あいつにはきっと別の両親がいるんだろう……勝手にオレの息子にしちゃあいけない」
十樹の言葉を冗談として受け止めて、ジム・カインはカラカラと笑った。
「あの坊主は迷子なんだろ?帰るところがないって言うから、こうしてゼンの家を建ててやろうと思ってんだ……けどな」
「…………?」
一瞬、口を閉ざして、ジム・カインは続けた。
「こんな家を造ってやろう、あんな家を造ってやろうと、色々考えているんだが、どういう訳だか、オレの住んでいる家と同じ家になっちまうんだ。……どういう訳だかな」
ジム・カインは、この特別病棟で築いてきた記憶と、ゼンと一緒に暮らした記憶、そのどちらかを選ぶとしたら、どちらを選ぶだろうか。
メモリーで甦った記憶は、ここの生活の記憶を自然に消してしまうだろう。
すり替えられた記憶の中で、彼は幸せなのだ。
「あなたは、この村で一生暮らしていくんですか?」
「そうさなぁ」
ジム・カインは、遠い眼をした。
この特別病棟には、自ら進んで入って来た者達もいるだろう。
全てを忘れたい。もう一度、全てをやり直したいと願ったものもいるはずだ。果たしてジム・カインはどう思っているのだろうか。
この温かくも冷たい空間で、満足しているのなら――。
「十樹……十樹!」
ぼんやりと考え事をしていると、桂樹が叱るように名前を呼んだ。
「何だ?」
「お前まさか、ジム・カインの記憶を戻さないつもりじゃないだろうな」
「桂樹は、どう思うんだ?」
珍しく、十樹が迷った目をして、桂樹を見返した。
「オレは、本人の望む方で!」
「それは答えになっていない」
ジム・カインに記憶を返したところで、幾何学大学のような環境で生きていけるとは言いがたいのだ。
そして、元々いたカーティス村にも帰る事が出来ない。
妻のことも息子のことも忘れてしまった方が、幸せだったはずなのだ。
今の幾何学大学の環境を見ても、この広大な擬似空間とは違い、「四季」との紛争の影響が少しずつ出て来ている。ある意味、ここは守られたシェルターのようなものだ。
「ゼンのことを、息子として受け入れて貰えませんか?」
「それは、あの坊主に聞かないとなぁ」
「ゼンは、あなたの息子になる事を望んでいます」
「そうさなぁ……それもいいかも知れんなぁ」
ジム・カインは、再び遠くを見て、懐かしむように言った。
「十樹!桂樹!」
その時、ゼンが息を切らして走って来た。
ジム・カインは、優しい顔をしてゼンを見た。
「なぁ、坊主。オレの息子になるか?」
「とーちゃん、記憶が戻ったのかよ」
突然のジムの言葉に、ゼンは驚く。
「いいや……ただ、ゼンを見とると、何か懐かしく思えてよ。なあ、返事は?」
「そんなの……」
見開いた瞳に、涙が溢れる。
「決まってんだろ。オレはとーちゃんの息子なんだから」
ゼンは、ジム・カインの胸に飛び込んだ。
十樹と桂樹は、その様子を見て安堵の息をついた。
☆
それから十樹と桂樹は、ゼンがここに残る意思を確認して、今後、ジム・カインとどう生活していくかのレクチャーをし、帰る頃には、もう日も暮れかけた頃だった。
「それじゃ、ゼン。カリムとリルには伝えておくよ……あと、これを持っていてくれないか?」
十樹は、白衣から一本の鍵を渡した。
この特別病棟の擬似空間と、幾何学大学をつなぐ大事な鍵だ。
「くれぐれも失くさないように」
☆
宇宙科学部の研究室に帰る途中、大学内で瑞穂に出会った。
生体医学部のメンバーは、全員大学警察に捕らえられ、調書をとられているはずだ。
「大丈夫か?」
桂樹が訊く。
「もう、神崎のせいで巻き添えくらったわ」
瑞穂は、大学警察によって身辺調査を受けた後、「クローン製造」に関わっていないか、しつこく尋問を受けたらしい。
瑞穂が、この件に無関係だと分かると、すぐに解放されたとのことだった。
全ては十樹のディスクのせいなのだが、瑞穂に話すことはないだろう。
「私の他、何人かはもう解放されたわ。良かったー、一日中、レーザー銃をつきつけられるなんてご免だから」
「災難だったな(十樹のせいで)」
桂樹は瑞穂に、労いの言葉をかけた。
「本当、最近いい事ないったらないわ。そうだ、白石君達、豪華ディナーのこと忘れないでよね。じゃ」
瑞穂は片手を挙げて、二人に軽くウインクした。
「災難だな(オレ達)」
「瑞穂には、色々借りがあるからな。仕方ない」
十樹は、ふっと笑った。
その時、桂樹はある事に気付いた。
亜樹が目覚めてから、十樹の様子が変わったように思えたのだ。
――――…余裕があるというか。
亜樹だけじゃなく、カリムやリルやゼンのお陰かも知れない。以前は、十樹と何かと衝突していたのに、ピリピリとした空気が穏やかなものに変化した。
まあ、いい事なんだろう。
「♪」
「何だ? 桂樹」
「別に」
桂樹は笑みを浮かべる。
それを十樹は不気味に思いながら、研究室の視紋チェックを済ませ、中に入った。
「おかえりー」
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皆が研究室の主を迎える。
そこは暖かい空間だった。
「ただいま」
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