83 / 94
Later story
3.迷走
しおりを挟む
「ところで桂樹、彼らはまだ私の事を、幾何学大学の責任者だと認識してはいない」
「そんなの分かるのかよ」
洗面室から桂樹が言った。
「彼らには、私が『村長』だと言う事は伝えていないからね」
「本当か!?」
十樹の言葉に桂樹が洗面室から顔を出した。
すると、まるでインディアンの様にメイクをした桂樹の顔が現れた。
「桂樹、何なんだ、その顔は」
「自衛手段だ。老人たちが十樹とオレを間違えない様に」
「私は殺されてもいいというのか」
十樹は桂樹の首を絞めながら、インディアンの顔をした桂樹の頭をかくかくと揺さぶった。
「ああ、また始まったのかよ」
ゼンが面白そうに頭の後ろで手を組んで、二人のケンカを見ている。
そこへ亜樹が現れ、十樹と桂樹を諭すようにして言った。
「兄さんたち、お茶が入ったわよ。冷めない内に飲んでちょうだい」
ポットとお茶菓子をトレイの上に乗せ、研究所の机に置いた。
焼きたてのクッキーの香りと、コーヒーの香ばしい香りが周囲にたちこめる。
「はい。カリム君たちはココアね」
亜樹は暖かいココアを子供たちに渡した。
この緊迫した状況の中でも、亜樹はいつもと変わらず穏やかだ。
十樹と桂樹は、亜樹の一言で、すぐに子供じみたケンカをやめ、椅子に座ってコーヒーを飲んだ。
☆
「村長!村長はどこだ!」
学長と言う名の代表者がいる事等知らない男たちは、斧を肩にかついで生体医学部にも現れた。
「なんだ、あの老人たちは」
大学警察に囲まれながら、神隠しの森から現れた老人たちは、数あるパスゲートを斧で壊して、神崎亨のいる生体医学部へ入って来たのである。
ゲートを壊した為、生体医学部ではサイレンがいつまでも止むことなく鳴り響いていた。
「村長はどこにいる?」
初老の男が入り口にいる受付の女性に聞くと、女性は怖々とした声で言った。
「村長はいませんが……」
「いない!?どういう事だ」
斧を振り上げて、今にも女性に襲いかかりそうな様子に、見ていた神崎は慌てて駆けつけた。
「責任者は僕だ。何の用でここまで入って来たんだ」
神崎は、女性を庇うようにして、初老の男たちのまえに立った。
「お前か!わし等にこんな事をしたのは!」
勢いよく振り下ろした斧を神崎に向ける。
神崎は突然の事態に、気が動転し、斧をよける事が出来ずにいた。
――――殺られる!?
「そんなの分かるのかよ」
洗面室から桂樹が言った。
「彼らには、私が『村長』だと言う事は伝えていないからね」
「本当か!?」
十樹の言葉に桂樹が洗面室から顔を出した。
すると、まるでインディアンの様にメイクをした桂樹の顔が現れた。
「桂樹、何なんだ、その顔は」
「自衛手段だ。老人たちが十樹とオレを間違えない様に」
「私は殺されてもいいというのか」
十樹は桂樹の首を絞めながら、インディアンの顔をした桂樹の頭をかくかくと揺さぶった。
「ああ、また始まったのかよ」
ゼンが面白そうに頭の後ろで手を組んで、二人のケンカを見ている。
そこへ亜樹が現れ、十樹と桂樹を諭すようにして言った。
「兄さんたち、お茶が入ったわよ。冷めない内に飲んでちょうだい」
ポットとお茶菓子をトレイの上に乗せ、研究所の机に置いた。
焼きたてのクッキーの香りと、コーヒーの香ばしい香りが周囲にたちこめる。
「はい。カリム君たちはココアね」
亜樹は暖かいココアを子供たちに渡した。
この緊迫した状況の中でも、亜樹はいつもと変わらず穏やかだ。
十樹と桂樹は、亜樹の一言で、すぐに子供じみたケンカをやめ、椅子に座ってコーヒーを飲んだ。
☆
「村長!村長はどこだ!」
学長と言う名の代表者がいる事等知らない男たちは、斧を肩にかついで生体医学部にも現れた。
「なんだ、あの老人たちは」
大学警察に囲まれながら、神隠しの森から現れた老人たちは、数あるパスゲートを斧で壊して、神崎亨のいる生体医学部へ入って来たのである。
ゲートを壊した為、生体医学部ではサイレンがいつまでも止むことなく鳴り響いていた。
「村長はどこにいる?」
初老の男が入り口にいる受付の女性に聞くと、女性は怖々とした声で言った。
「村長はいませんが……」
「いない!?どういう事だ」
斧を振り上げて、今にも女性に襲いかかりそうな様子に、見ていた神崎は慌てて駆けつけた。
「責任者は僕だ。何の用でここまで入って来たんだ」
神崎は、女性を庇うようにして、初老の男たちのまえに立った。
「お前か!わし等にこんな事をしたのは!」
勢いよく振り下ろした斧を神崎に向ける。
神崎は突然の事態に、気が動転し、斧をよける事が出来ずにいた。
――――殺られる!?
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる