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第一章 幼少期
知らない星に落とされた女の子
しおりを挟む多分保育園に入園する頃だから3才か4才くらい。
私の記憶はそのくらいから始まっている。
お父さんとお母さんと3つ上のお姉ちゃんとなんとなく実際感のない毎日を過ごしていた。
上手く言えないけど‥‥例えるなら人の人生を借りているような感覚。
お父さんやお母さんと手を繋いで歩いたり、抱きしめてもらったりという記憶がない。
日常的に何気ないスキンシップがあって、それらを日々繰り返すことで家族に対しての安心感だったり
ここが自分の居場所なんだって、情緒を安定させていくんだと思う。
けど、手を繋いで歩けば「モタモタするな」、抱っこされたら「モゾモゾ動かないで」
こんな感じでイライラしてるお母さんには安心感も温もりも求められなかった。
仮の両親に仮の姉、交わす言葉も外国語を聞いてるみたい。
言葉での理解じゃなくて雰囲気と直感で会話しているような感じだから、きっと私の理解は
半分以下だったと思う。
もし急に今中国に連れて行かれて知らない家族に放り込まれても、戸惑って話もわからないのに
戸惑っているのは自分だけで周りは前からずっと変わらないような様子で、当たり前に接してくる。
そんな感じ。
だからお父さんやお母さんの言うとうりに出来なくて、本当によく叱られてイライラされていたように思う。
その相手の表現する感情も物凄く鈍く伝わるだけで、なんかガミガミ言ってるみたい‥‥
どうしたらいいのかよくわからない。
結局私は動く事ができなかった。
身の置き場所がわからなくて私はいつも落ち着かなかった。
いつもここがどこなのかわからなかったし、いつもなんのやり方も理解できなかった。
ただずっとずっと水溜りの中の世界に入ってみたかった。
葉っぱがどんな規則を持って枝に付いているのかずっと見ていたかった。
その葉っぱを小川に流しては水の流れをずっと追っていたし、その葉っぱに乗ってみたかった。
人と物と自分の区別が付かないから、1人で何時間でも遊んでいられた。
一瞬で木の根っこの中に住む小人にもなれるし、童話の中に住むことも出来た。
人と物と自分の区別が付かないから、「誰に対しても分け隔てなく接することが出来て偉いね。」って
保育園の連絡帳に書いてあったのを大人になってから見たことがある。
ご飯を食べるのがとても遅くて、保育園ではいつも最後まで残されていた。
これは結局小学校を卒業するまで変わらなかった。
食べ物を口に入れた時の匂いに敏感で、今思うと調理されてから時間が経過したものが苦手みたい。
茹でたほうれん草などの野菜のぐにゃっとした食感や肉加工品の匂いもダメ。
今も惣菜や売られている弁当類が苦手。
保存料の匂いもキツく感じる。
そういった私の性質も、いつも先生はお母さんに直してもらわないと困るって言っていた。
何よりも鮮明に覚えているのは
お布団に入って電気を消され、眠りにつくまでの時間の事。
隣にはお姉ちゃんがいた。
それはいつも決まって左からやってきて右に消える。
フワンッ!って星空が天井にやって来て
数十秒間プラネタリウムのよう見せてくれた後、ヒュンて右下に消えて無くなる。
そしてまた数秒後に
フワンッ!って左下から天井に星空が現れて、またヒュンって右下に消える。
天井いっぱいに張り出されたスクリーンのように堂々とした星空。
それが週に二、三回来るから眠りにつくその時が大好きだった。
現れる星空は毎回違って、大好きな壁紙の模様のキリンさんやウサギさんが紛れ込んでいたりするの。
お布団に入ってから真っ暗になった天井を見つめ
(今日星やって来るかなぁ)ってワクワクして密かに待った。
小学生に上がる頃引っ越しをしてからその星空はやって来なくなった。
お姉ちゃんに「最近星空がやって来なくなったね。」って話をしたら
何の話?は?って感じだった。自分にしか見えていなかったなんてとても思えなくて
お姉ちゃんはなんて忘れっぽいんだろうって思った。
とにかく全てを鈍く感じ当時は何もかもが人ごとだった。
今思えばこんな思考だったのかなと想像はできるけど、わからない自分さえわかっていなかった。
私6才
お母さん30歳
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