転生騎士団長の歩き方

Akila

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1章 ようこそ第7騎士団へ

02 新しい私

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女神様と話した後、ふっと目が覚めた。

まだ少し薄暗い部屋に、小さな卓上ランプの光が揺らめいている。

「朝かな? う~ん」

私はバキバキとなる身体を伸ばしながらベットの上に座りなおす。

「さぁ、これからどうしようか…」

女神様にもらったラモンの記憶。

私、本来のラモンは元々魔力が少ないので剣技を磨いて騎士になった。15歳で学校を卒業後、王都の騎士団に入団し下位騎士からがんばって中位騎士になったばかりだった。そこで隣国との小競り合いで負傷。そう、ここで私は魂が入れ替わってしまった。

「はぁ~。ラモン自体は現在19歳なんだよね。若返ったはいいけど… こっちでは婚期真っ只中か… でも、この子は婚活って言うか、結婚する気が無いみたいなんだよね。爵位も下位だし次女、お金もないし、出会いもなし… 諦めてたのかな? って、はぁ~どうするか」

あっちの世界では私もちょっとは意識していた婚期。26歳だったしね。周りの早い子は結婚し出していたし… こっちでも婚活かぁ。気が重いな。でも、このままこの世界で騎士として生きて行くにはちょっと無理がある様な… そもそも女性騎士が少ないんだよね。魔法女子は多いみたいだけど。でも、生涯職業として前線にいるのは、どの職業でも一握りの女性のみ。余程の才能がない限り難しい… か。

ぼ~っと窓の外を見ながら今後の人生の方向を考える。

「そう言えば、最初に目覚めた時にいた金髪イケメンって団長だったんだった。後で、謝らなきゃ。しかしあの驚いた顔、面白かったなぁ」

私が『知らない』と言ってしまったケイン団長は、私が所属していた第2騎士団の団長だ。主に王都の城下街警備担当。いつも笑顔で仕事が出来るみんなの憧れ。ちょっと脳筋な所はあるけど、世話好きな頼れる上司だ。

「さてっと。ラモンとしてこれからがんばりますか! 性格は鈴木ゆりだけど、まぁなんとかなるっしょ。って口調もか。ははは… お母さん達泣いたのかな…」

少し落ち着いたからか、鈴木ゆりのその後が気になって来た。家族や仕事仲間、友人、あと愛犬まる。いきなり別れてしまった前の人生の人達… 思い出…

「はぁぁぁぁぁ」

区切りをつけないと。パチンと両頬を叩いて心を奮い立たせる。だって、これからはラモンになるんだから。

コンコンコン。

「はい」

「失礼します。起きてらしたんですね」

水差しを持って入って来たのは、メイド風ナースのエリーナさん。

「前の時はすみません。意識もしっかりした様で、今は大丈夫です。エリーナさん」

「まぁまぁ! それは良かったです。とても心配していたんです。傷はいかがですか? まだ痛みますか?」

「あぁ、もう痛く無いです。薬が効いた様です」

「それは上々です。この様子でしたら午後には帰宅できますよ」

「え? そんなに早く?」

「え~? はい。4日眠られて、今日で5日ですが、回復薬ポーションを飲めば体力も回復しますしね… まだどこか悪い所でも?」

エリーナさんは混乱している。ちょっとした事だけど、こっちの常識が抜けてたな。しまった。

「そうですよね~。ポーションがあったんだ。ついうっかりでした、すみません」

と、笑ってごまかす。

「ふふふ。以前、軽傷の治療で何度かお会いした事があったのですが、ラモン様はいつもクールな感じでしたから。今回入院されて、私の印象が違っていたのがわかって良かったです。とても優しい笑顔をされるんですね」

ははは。そうなの? クール女子だったのか? そっか… う~ん。

「そうですか? 任務中だったからかな? あはははは」

「あっ、いけないわ。先生を呼んで来ますね。こちらの水、よろしければどうぞ」

と、水差しを置いてエリーナさんは先生を呼びに行った。

「ラモンはクール女子? いや、物静か系だったのかもね… 今後はどうしようか… 今回の事でちょっと性格が明るくなったって事に… 無理があるかなぁ… でもクール女子には私自身なれる気がしないんだけどな」

悶々と悩んでいると先生が入ってくる。

「おはようございます。すっかり元気になられた様で良かったです。顔色が見違えるほど良くなりましたね」

先生はニコニコと触診をしてくれる。

「おはようございます。先生、前回は失礼しました。記憶の方も大分戻って来ました。傷も痛くありません」

「その様ですね。午後には退院できるでしょうが、ケイン殿の許可が必要ですから、朝食後に面会予約を入れおきます」

「ありがとうございます」

「いえいえ。しかし、現場復帰はあと1週間は我慢して下さい。ラモン嬢は放っておくと仕事ばかりしていますし」

おいおい、ラモンって仕事人間だったの?

「あはは。こんな傷は初めてですし、今回はちゃんと休みます」

「よろしい。では、朝食後にポーションを飲んで下さい。必ず食後にお願いしますよ。早く復帰したいからと空腹で飲んでしまうと、目が回りますから注意して下さい」

「はい」

診察を終えると窓の外もすっかり日が昇って明るくなっていた。

朝食の後、ポーションを飲んでお風呂に入る。騎士服に着替えて、ベットを整えたらヒマになった。

「団長早く来ないかな。って、今後だよね。まずは寮に帰って、1週間静養って言ってたから実家にでも顔を出そうかな。家族の顔はわかるけど、どんな感じの関係かを把握しておきたいし」

あれこれ考えていると、ノックもなく部屋のドアが開く。

「ラモン! 目が覚めたそうじゃないか!」

ドシドシと入って来たのはケイン団長だった。私はその場で敬礼をして答える。

「はっ、団長。この度はお騒がせを致しました。申し訳ございません。記憶も身体も完治いたしました」

団長はオロオロと私の身体を右に左に見回っている。と、その後ろで副団長が顔を出した。

「ラモン、元気になって良かった。これから少し書類にサインをしてもらう。こちらへ」

メガネな副団長は部屋の簡易テーブルに私を誘導する。

「こことここにサインを、ちゃんと注意事項を読む様に。これで退院だ。治療費と入院費は騎士団の診療所だから無料だ。あと、3日後に国王陛下と謁見がある」

書き書きと書類と葛藤していた私は思わず顔を上げて叫んでしまった。

「はぁぁぁぁ?」

「ははははは、お前もそんな顔するんだな。あはは」

あははじゃないよ、団長。国王陛下って? 何事?

「団長、面白がっている場合じゃ無いですよ。ラモン、君はまずは書類のサインを終えなさい」

キリッと団長を睨むメガネは私をちょっとだけ哀れそうに見る。私は言われた通り、無言でさっさとサインしてステイな状態だ。

「さて、今回の負傷、とてもがんばったな。傷だけで済んで良かったと言っていいのか… ラモン、どこまで覚えている?」

「は、はい。森の中腹、戦地の端の方で敵の打ち漏れが無いかどうか、小隊を組んで探索していた私は、4名の敵と対峙しその内の1人と戦いました。その際、接近戦になり相手の魔法を回避した直後逆方向から刺されました。その後、そのまま記憶が途切れています」

「そうか… まず、その敵だが相手国の宰相一団だった。戦地を把握する為最小人数で視察し帰る途中だったそうだ。宰相と他2名は捕縛。1名は戦死だ。その戦死した敵だが、仕留めたのは君だ。君は記憶が無いと言っているが、相手の喉に切り掛かっている。相手の喉に君の剣が刺さっていた。しかも、仕留めたのは敵国の騎士団長だった」

「え?」

「騎士団長だ。正確には騎士団長の1人だが。宰相の護衛だからな、手練れなのは当たり前だろう? たまたまラモンが出くわす前に、魔獣の相手もしていたそうだ。だから君でも仕留められた。相当負傷していたのか… まぁ、戦で重要な頭脳である敵の宰相を捕縛した事により今回の戦争は一時停戦。恐らく、このまま終戦になるだろう」

「終戦ですか… ははは」

「ここまで言えばわかるな? たまたまだが終戦に導いた功績は大きい。今回の戦争でトップクラスの偉業だ」

「ははは、ラモン! お前やったな! 流石俺の部下だ!」

能天気な団長は頭をグルグリしてくれるが、私は色々と追いつかない。

「し、しかし、今回の事はだと皆さん周知しているのですよね? 偉業とは言い難いかと…」

「それはそうなんだが、やはり宰相を捕虜に出来たのは大きい。今後の交渉も有利になる」

「ははは。実感ないです」

「そうだろうな… 私もビックリだ。で、だ。3日後、今回の戦争での功労賞の授与式と慰労会がある。お前は寝ていたから急で悪いんだが、出席しなければならない。このまま目が覚めなければ、団長が代理を務めたんだが」

「団長が代理って! そんな恐れ多い! てか、それは辞退出来ないんでしょうか? あまりにも棚から牡丹餅すぎて」

「は? 棚から何だ?」

「いえ… あまりにも身に覚えがなさすぎて… しかも陛下の御前になど。私、子爵の次女ですよ? 緊張で死んでしまいます」

「ははは。大丈夫だ。会場には俺も参列するしこいつも居る」

「いやいや… 居るって…」

急に緊張して来た。ブルブルと手が震える。

「はぁぁぁ。まぁ、気持ちはわからなくはない。私でも緊張する。もう諦めろ。これは王命だ」

「…はい」

私はもう涙目だ。婚活どうこうの話じゃない。謁見って…
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