上 下
126 / 135
2章 魔法使いとストッカー

61 古の闇子

しおりを挟む
「皆、もう大丈夫か? まだ気分が優れない者は下がってもいいぞ」

 お兄様が私たちの心配をしてくれる。マーサはまだ回復しないのか、今だベッドの住人である。なので今日は欠席。

「では、昨日の件の報告を」

 部屋に集まっているのは謁見に行ったメンバーと、お兄様、イーグル、ケイト、ロッシーニだ。

「~と言うわけで謁見はそのように。お嬢様が古代語が扱えると知っている外部の者は、国が誓約を締結してくれるので問題ないでしょう。いずれは発表すると言っていましたが、ずっと先なのでその際はご主人様にお声がかかると思われます」

 お兄様はパラパラと報告書に目を通しているが、納得していない様子。って、ロダン! あんな状態で報告書とか書いたの? うわー。

「あとは? まだあるんだろう? 昨日の様子は尋常じゃなかった。襲撃でないのなら何なんだ?」

 思い出したメンバーはちょっとだけ顔色が悪くなる。別に嫌なことじゃないけど、ねぇ。人智を超えた体験にまだ頭が追いついていない。

「それも私から」

 ロダンは一部始終を全て話した。と、当然のように沈黙になる。ケイトはちょっと蒼白な顔で震えている。

「古の闇子… か」

 お兄様はとイーグルが渋い顔で悩み出す。

「いえ、お兄様。『古の闇子を助けて』です」

「… 助けるのか。闇の子を?」

「そこなんですよね~」

 全員が満場一致でう~んと唸る。

「言葉からして闇子はいいモノとは思えないんだが?」

「でも、その得体の知れないモノを助けないといけないんですよね」

 全員が頭を抱えてお手上げ状態だ。

「まっ。考えてもしょうがない。そのうちわかるかもしれんし、今は情報が少なすぎる。いくら女神様のお願いとは言え… 様子を見よう」

「そうですね。お嬢様もあまり根を詰めてあれやこれやと考えないように」

 お兄様とロダンはあっさり一旦保留と結論づけた。

「あ~、あとな、イーグルからジェシーに伝言があるそうだ」

 会議が終わり、みんな持ち場に戻っていく中、いそいそとイーグルが私に近づいてきた。

「何? いいニュース?」

「はは、いいニュースかどうかは。領地の城にローラという娘が訪ねてきまして、ぜひお嬢様に見てもらいたい物があるそうです」

「ローラ… あ~、ピンクちゃんね」

 ピンクと呟いた私にロダンがサッとかけ寄ってくる。

「お嬢様。ローラが何か?」

「私に用事があるんだって。何だろう? 直接聞いた方がいい?」

「イーグル、他に何か言っていたか?」

「『執事さんも来て欲しい』と申しておりました」

 何だ?

「ロダンは面識あるんだったね… 確か領民登録の手続きをしたんだよね」

「はい。しかしあの娘とそれ以上の接点はないはずですが… 何でしょう」

 ロダンもピンと来ていない様子。これは警戒した方がいいのかな?

「会わない方がいい?」

「しかし… 明後日から領地へ戻る予定ではあるんです。少し警備面も踏まえ考えてみましょう。あの娘からの呼び出しですからね。大した用事でなければいいが」

 え~、そんなこと聞いてない! うそ! やった~!

「学校始まるまでちょっとしかないけど、私も領地に帰れるの?」

「はい。ご主人様も婚約式を終え、雑務もあらかた片付きましたので、アンジェリカ様をお連れしようかと。あと、お嬢様も帰る予定ですが… 理由は後でお話しします」

「? 了解」  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。 レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。 【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。