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2章 魔法使いとストッカー
56 グランド様の恋しい時代
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「ところでグランド様。いつまでご滞在されるんですか?」
『エドワードの話だと、あと十日ほどか。どうかしたか?』
「いえ。私はこの洞窟へ来るには色々とややこしくて。グランド様とこうしてお話しできるのが、本日が最後かと思うと… 寂しくなります」
グランド様は少しだけ頭を私の方へ動かし、目を合わせ話し出した。
『ジェシカ。これから話すことは心のどこかに留めていて欲しい。少し昔話をするぞ』
??? いきなりの昔話に私はとりあえず『うん』と頷く。
『よし。我はこの国が創立される前からこの土地の守り神を命ぜられ、ホセミナ様が愛する人間を、日々笑い泣き憂う姿を遠くから見守ってきた。と同時に、魔獣や動物、草木に至るまでも愛おしく思っておる』
「魔獣もですか?」
『あぁ、魔獣もだ。やつらもこの世界においては命ある尊い存在だ。人間にとっては相反するものだがな』
「… はい」
『我も昔はこの国の大山の麓で普通に暮らしておった。時折、人間が作物を持ってきたり話し相手になりに来ていた』
「そんなほのぼの時代があったなんて… なぜ今はお姿を隠すのですか? 次の住処も内緒だそうですね?」
『まぁ焦るな。まずは話を聞け』
「す、すみません。考えるより先に口に出るタイプでして… おほほ」
しゅんとなったが、お行儀よくグランド様の話を待つ。後ろでロダンが『先に口に出るタイプ』のフレーズに苦笑いしている。リットなんて『ぷっ』って笑ってるし。むむむ。
『そんな感じで世界を四等分した大地に各竜が住まい人間と共存していた。静寂を好む竜は我とは反対に海の底に閉じこもったりしていたが… まぁ、のんびりとした時間が流れていたのは確かだ』
うんうん、蝶々なんか飛んだりしてね。情景が目に浮かぶ。
『しかしな、二、三百年すると人間は少しづつ変化していった。人間には知恵がある。魔法を理解し上手く使用できる生物だ。いつしか、己の魔法を誇示し始め、まずは抵抗ができない生物を搾取し始めた。そう言えば、あの頃から魔獣とも相性が悪かったな。人間の世を作ろうと森を開拓し、集団組織を作り始めた』
「国の創始直前ですか?」
『時代的にはそうなる。個が集団になると急に色々な出来事が起こり、遂には人間同士の縄張り争いに発展していった。何となく我ら竜を中心に四つに分かれ、各土地には境界ができ、そしてそれらが国になり、人間が中心の暴力がはびこる世界に、あっという間に変わってしまった。我ら使いには制約があったからな… 我は傍観しかできなかった』
「…」
坂井君の手記でちょっと知ってたけど… そんな感じだったんだ。
『でな、そこでホセミナ様がカズキ・サカイを召喚したんだ』
「はい。彼の日記に書いてありました」
『ん? そうか… では、後の話はわかるな。カズキは四つの国を平定し平和な世に戻した。が、我としては人間以外の生き物にも目を配って欲しいと願い出たんだが…』
「坂井君に? でも… 彼は元々人間が中心の世界から来たから…」
『ジェシカの言う通り、全くその通りだった。我とは感覚が違っていた。いや、しかし人間が争わないだけで、この世界が平和になるのはいいと結論付けた。そのおかげで動物も草木も健やかになっていったから。
ジェシカよ、人間も動物も草木も、魔獣は嫌われておったが、皆がほのぼのと、ゆったりとした時間を共有していた時代があった事を覚えておいてくれ。あの時が我にとって大切な思い出なのだ』
「わかりました。私は想像しかできませんが、そんな時が確かにあったと人を代表して心に刻みます」
『あぁ、うれしいよ。真の平和とはあの時代のことを言うと我は思う』
「そうですね… それでグランド様? すばらしい話の後で恐縮なのですが、一つ質問いいですか? 他の竜と交流はあるんでしょうか?」
『他の竜か? しようと思えば出来るが… 何かあるのか?』
「いえ、ただの好奇心です。坂井君の残した本に他国の竜のことが書いてありまして。いつかはお目にかかりたいとは思います」
『そうか。その際は我を尋ねるといい』
「で、でも、お姿を隠されるのですよね?」
『うむ… まぁ。しかし、ジェシカには分かると思うぞ。我と魔力を共有しているからな』
え? 共有してる? 魔力は吸収されただけだよね?
「そうなんですか? じゃぁグランド様ともこれっきりじゃないんですね?」
『あぁ、あの時我の魔力も一滴だけ送り込んでおいた。何となくだが我の位置はわかるだろう。それよりジェシカ、お主、カズキの元いた世界を知っているであろう?』
急に突っ込まれて『ギクッ』となって、後退りしてしまった。
「なぜ、そんな事をお思いに?」
『初めて会った時、我を見て『恐竜』と言ったからな。この世界の者は『神竜』『神の身使い』と言う。カズキも言っていた。『恐竜って図鑑と違ってカラフルなんだぁ!』と』
「な、なるほどです… はい、私は召喚とかじゃなく前世の記憶があります。ジェシカとして生まれる前に、坂井君と同じ世界で生きた人間の記憶が丸々あります。あっ、だからアダム様にあの魔法陣を私に見せろって言ったんですね?」
『そうだ。にしても召喚ではなく前世の記憶か… 何百年に一度その様な者が生まれるらしいと、ホセミナ様が言っておったのを忘れておったな。カズキを召喚した際に、その世界と糸ほどの繋がりができてしまったとボヤいておいでであった』
「そんな理由があったとは… あっ!! この国にも昔、私以外にいたらしいですよ。料理が得意な前世持ちが」
『料理か。人間の世にはいいのであろうなぁ。ところで、ジェシカはどんな記憶を持っておる?』
…
ただの主婦。で、ちょっと魔力多めの日本語ができます? 的な? どうなんだ? 日本語がチート扱いなのは、たまたま坂井君と言う高明な賢者様が日本語を使ってただけで… う~ん。
「グランド様もご存じの通り、この世界で言う『古代語』がわかります。後は、魔力が多いです。以上」
『は? 魔力だけか。確かに魔力量で言うとエドワードと並ぶか。将来的にはこの国一番になるだろうが。して属性は?』
「土だけです」
『土か… この国にその魔力量で土か… お主、養女とか言うやつか?』
「はぁぁぁ? 養女っていきなり何なんですか!」
『違うのか… そうか。他国は行った事はあるか?』
「さっきからどうしたんです? 他国? ないですよ。領地が国の端っこだったし、貧乏でしたから旅行なんて…」
『そうか…』
と、グランド様は考え事を始めたのか歯切れが悪い。
「グ、グランド様?」
『…』
まぁまぁ話し込んでいたので、アダム様が遠方から心配そうにこちらをうかがっていた。私は後ろを振り返り、ロダンに目配し、切り上げることを伝える。だって、グランド様、固まっちゃってるし。それから五分ほど待ったが反応がない。
「グランド様? 私はこれで失礼しますね。またお話ししましょう。この度はありがとうございました」
黙りのグランド様に一応礼をしエド様の元へ戻る。最後、なぁなぁになってしまったな。
「王様、グランド様と古代語のお話しをさせていただきました」
「ご苦労であった。私も遠方だが其方達の会話は聞こえていた。グランド様と私も会話ができるからな。後の詳細の報告は不要である。ジェシカ嬢は古代語に精通していると確証を得た」
『お~!!!』とエド様の後ろの官僚達がわいている。特にお髭の魔法使いのおじいちゃんが両手をあげて喜んでいた。護衛騎士達も顔を見合わせて驚いている。
ちっ。
そんな速攻で発表する? 不意にバラすなんて… 絶対ロダンが怒っているはず。どう切り抜ける。困った。
「ジェシカ嬢、病弱な身の上で得たその知識。古代語の勉学に励み国に貢献しようとする姿勢、大変感服した。いずれ、その高尚な知識は国の宝になり国に、いや世界に恵みをもたらすだろう。この先、国の為、国民の為にその力を発揮することを望む」
私は了承の代わりにその場で礼をする。まだ、どよどよと皆が困惑と興奮で湧いている中、おじいちゃん魔法使いが王様に問いかけた。
「恐れながら発言してもよろしいでしょうか?」
「ん? どうかしたか?」
「はい、陛下。この令嬢をぜひ明日からでも魔法庁へいただきたい。引いては国の役に大いに役立ちましょう」
エド様は少しだけニヤッとして
「ならぬ。ジェシカ嬢は未だ学生だ。しかも脆弱な公爵令嬢。年も身分もそうだが、魔法庁への出向は本人の意思と公爵の了承がいる。これは王命で下せるものではない」
「し、しかし!」
「ならぬ。お前の言う通り『古代語』が解読できる能力は大変好ましいが… 無理に就かせると問題が出るやも知れぬ。『知識』は無理やり引き出すものではない。その者が進んでせねば本来の能力を発揮せぬ」
グググっと握り拳をプルプルさせながら私を睨むおじいちゃん魔法使い。と反対に、予想通りニヤつくエド様。
ふ~。
「王様。私のような者にご配慮ありがとうございます。いずれ無事学校を卒業した後、家の者と相談した上で返答させていただいてもよろしいでしょうか? ご存知の通り言う事を聞かぬ体ですので」
「よい返事を待っている」
「ありがとうございます」
まだおじいちゃんは納得がいかないようで、もう一言と意見を言おうとした所を、同僚に取り押さえられていた。
「今ここにいる皆の者! 『ジェシカ嬢が古代語を解読できる』は後で誓約をしてもらう。以後他言無用だ」
『はっ』とみんなが膝をつき了承した。おじいちゃん魔法使いはちょっとだけ不服そうだけど。
アダム様がエド様に耳打ちし最後を締めた。
「では以上で今回の謁見を終了する。また、ジェシカ嬢にはもうしばし時間をいただきます。撤収!」
『エドワードの話だと、あと十日ほどか。どうかしたか?』
「いえ。私はこの洞窟へ来るには色々とややこしくて。グランド様とこうしてお話しできるのが、本日が最後かと思うと… 寂しくなります」
グランド様は少しだけ頭を私の方へ動かし、目を合わせ話し出した。
『ジェシカ。これから話すことは心のどこかに留めていて欲しい。少し昔話をするぞ』
??? いきなりの昔話に私はとりあえず『うん』と頷く。
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「魔獣もですか?」
『あぁ、魔獣もだ。やつらもこの世界においては命ある尊い存在だ。人間にとっては相反するものだがな』
「… はい」
『我も昔はこの国の大山の麓で普通に暮らしておった。時折、人間が作物を持ってきたり話し相手になりに来ていた』
「そんなほのぼの時代があったなんて… なぜ今はお姿を隠すのですか? 次の住処も内緒だそうですね?」
『まぁ焦るな。まずは話を聞け』
「す、すみません。考えるより先に口に出るタイプでして… おほほ」
しゅんとなったが、お行儀よくグランド様の話を待つ。後ろでロダンが『先に口に出るタイプ』のフレーズに苦笑いしている。リットなんて『ぷっ』って笑ってるし。むむむ。
『そんな感じで世界を四等分した大地に各竜が住まい人間と共存していた。静寂を好む竜は我とは反対に海の底に閉じこもったりしていたが… まぁ、のんびりとした時間が流れていたのは確かだ』
うんうん、蝶々なんか飛んだりしてね。情景が目に浮かぶ。
『しかしな、二、三百年すると人間は少しづつ変化していった。人間には知恵がある。魔法を理解し上手く使用できる生物だ。いつしか、己の魔法を誇示し始め、まずは抵抗ができない生物を搾取し始めた。そう言えば、あの頃から魔獣とも相性が悪かったな。人間の世を作ろうと森を開拓し、集団組織を作り始めた』
「国の創始直前ですか?」
『時代的にはそうなる。個が集団になると急に色々な出来事が起こり、遂には人間同士の縄張り争いに発展していった。何となく我ら竜を中心に四つに分かれ、各土地には境界ができ、そしてそれらが国になり、人間が中心の暴力がはびこる世界に、あっという間に変わってしまった。我ら使いには制約があったからな… 我は傍観しかできなかった』
「…」
坂井君の手記でちょっと知ってたけど… そんな感じだったんだ。
『でな、そこでホセミナ様がカズキ・サカイを召喚したんだ』
「はい。彼の日記に書いてありました」
『ん? そうか… では、後の話はわかるな。カズキは四つの国を平定し平和な世に戻した。が、我としては人間以外の生き物にも目を配って欲しいと願い出たんだが…』
「坂井君に? でも… 彼は元々人間が中心の世界から来たから…」
『ジェシカの言う通り、全くその通りだった。我とは感覚が違っていた。いや、しかし人間が争わないだけで、この世界が平和になるのはいいと結論付けた。そのおかげで動物も草木も健やかになっていったから。
ジェシカよ、人間も動物も草木も、魔獣は嫌われておったが、皆がほのぼのと、ゆったりとした時間を共有していた時代があった事を覚えておいてくれ。あの時が我にとって大切な思い出なのだ』
「わかりました。私は想像しかできませんが、そんな時が確かにあったと人を代表して心に刻みます」
『あぁ、うれしいよ。真の平和とはあの時代のことを言うと我は思う』
「そうですね… それでグランド様? すばらしい話の後で恐縮なのですが、一つ質問いいですか? 他の竜と交流はあるんでしょうか?」
『他の竜か? しようと思えば出来るが… 何かあるのか?』
「いえ、ただの好奇心です。坂井君の残した本に他国の竜のことが書いてありまして。いつかはお目にかかりたいとは思います」
『そうか。その際は我を尋ねるといい』
「で、でも、お姿を隠されるのですよね?」
『うむ… まぁ。しかし、ジェシカには分かると思うぞ。我と魔力を共有しているからな』
え? 共有してる? 魔力は吸収されただけだよね?
「そうなんですか? じゃぁグランド様ともこれっきりじゃないんですね?」
『あぁ、あの時我の魔力も一滴だけ送り込んでおいた。何となくだが我の位置はわかるだろう。それよりジェシカ、お主、カズキの元いた世界を知っているであろう?』
急に突っ込まれて『ギクッ』となって、後退りしてしまった。
「なぜ、そんな事をお思いに?」
『初めて会った時、我を見て『恐竜』と言ったからな。この世界の者は『神竜』『神の身使い』と言う。カズキも言っていた。『恐竜って図鑑と違ってカラフルなんだぁ!』と』
「な、なるほどです… はい、私は召喚とかじゃなく前世の記憶があります。ジェシカとして生まれる前に、坂井君と同じ世界で生きた人間の記憶が丸々あります。あっ、だからアダム様にあの魔法陣を私に見せろって言ったんですね?」
『そうだ。にしても召喚ではなく前世の記憶か… 何百年に一度その様な者が生まれるらしいと、ホセミナ様が言っておったのを忘れておったな。カズキを召喚した際に、その世界と糸ほどの繋がりができてしまったとボヤいておいでであった』
「そんな理由があったとは… あっ!! この国にも昔、私以外にいたらしいですよ。料理が得意な前世持ちが」
『料理か。人間の世にはいいのであろうなぁ。ところで、ジェシカはどんな記憶を持っておる?』
…
ただの主婦。で、ちょっと魔力多めの日本語ができます? 的な? どうなんだ? 日本語がチート扱いなのは、たまたま坂井君と言う高明な賢者様が日本語を使ってただけで… う~ん。
「グランド様もご存じの通り、この世界で言う『古代語』がわかります。後は、魔力が多いです。以上」
『は? 魔力だけか。確かに魔力量で言うとエドワードと並ぶか。将来的にはこの国一番になるだろうが。して属性は?』
「土だけです」
『土か… この国にその魔力量で土か… お主、養女とか言うやつか?』
「はぁぁぁ? 養女っていきなり何なんですか!」
『違うのか… そうか。他国は行った事はあるか?』
「さっきからどうしたんです? 他国? ないですよ。領地が国の端っこだったし、貧乏でしたから旅行なんて…」
『そうか…』
と、グランド様は考え事を始めたのか歯切れが悪い。
「グ、グランド様?」
『…』
まぁまぁ話し込んでいたので、アダム様が遠方から心配そうにこちらをうかがっていた。私は後ろを振り返り、ロダンに目配し、切り上げることを伝える。だって、グランド様、固まっちゃってるし。それから五分ほど待ったが反応がない。
「グランド様? 私はこれで失礼しますね。またお話ししましょう。この度はありがとうございました」
黙りのグランド様に一応礼をしエド様の元へ戻る。最後、なぁなぁになってしまったな。
「王様、グランド様と古代語のお話しをさせていただきました」
「ご苦労であった。私も遠方だが其方達の会話は聞こえていた。グランド様と私も会話ができるからな。後の詳細の報告は不要である。ジェシカ嬢は古代語に精通していると確証を得た」
『お~!!!』とエド様の後ろの官僚達がわいている。特にお髭の魔法使いのおじいちゃんが両手をあげて喜んでいた。護衛騎士達も顔を見合わせて驚いている。
ちっ。
そんな速攻で発表する? 不意にバラすなんて… 絶対ロダンが怒っているはず。どう切り抜ける。困った。
「ジェシカ嬢、病弱な身の上で得たその知識。古代語の勉学に励み国に貢献しようとする姿勢、大変感服した。いずれ、その高尚な知識は国の宝になり国に、いや世界に恵みをもたらすだろう。この先、国の為、国民の為にその力を発揮することを望む」
私は了承の代わりにその場で礼をする。まだ、どよどよと皆が困惑と興奮で湧いている中、おじいちゃん魔法使いが王様に問いかけた。
「恐れながら発言してもよろしいでしょうか?」
「ん? どうかしたか?」
「はい、陛下。この令嬢をぜひ明日からでも魔法庁へいただきたい。引いては国の役に大いに役立ちましょう」
エド様は少しだけニヤッとして
「ならぬ。ジェシカ嬢は未だ学生だ。しかも脆弱な公爵令嬢。年も身分もそうだが、魔法庁への出向は本人の意思と公爵の了承がいる。これは王命で下せるものではない」
「し、しかし!」
「ならぬ。お前の言う通り『古代語』が解読できる能力は大変好ましいが… 無理に就かせると問題が出るやも知れぬ。『知識』は無理やり引き出すものではない。その者が進んでせねば本来の能力を発揮せぬ」
グググっと握り拳をプルプルさせながら私を睨むおじいちゃん魔法使い。と反対に、予想通りニヤつくエド様。
ふ~。
「王様。私のような者にご配慮ありがとうございます。いずれ無事学校を卒業した後、家の者と相談した上で返答させていただいてもよろしいでしょうか? ご存知の通り言う事を聞かぬ体ですので」
「よい返事を待っている」
「ありがとうございます」
まだおじいちゃんは納得がいかないようで、もう一言と意見を言おうとした所を、同僚に取り押さえられていた。
「今ここにいる皆の者! 『ジェシカ嬢が古代語を解読できる』は後で誓約をしてもらう。以後他言無用だ」
『はっ』とみんなが膝をつき了承した。おじいちゃん魔法使いはちょっとだけ不服そうだけど。
アダム様がエド様に耳打ちし最後を締めた。
「では以上で今回の謁見を終了する。また、ジェシカ嬢にはもうしばし時間をいただきます。撤収!」
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