上 下
93 / 135
2章 魔法使いとストッカー

29 噂の人

しおりを挟む
休み明けの月の日は何だか学校中が朝からザワザワしていた。

「???何だろうね?ロッシーニは何か知っている?」
私達は登校して教室へ向かっている。

「何でしょうね。。。浮き足立っているような。コソコソ話が目につきますね」
ロッシーニも知らないみたい。

何だろうと思いながら教室に着くと、噂好きのマックス君が理由を教えてくれた。

「ジェシカ君!おはよう!今日はみんな何か変な感じじゃなかった?」

「ええ。何かあったの?」
マックス君が大声で話すので、クラスのみんなが私の席に集まって来てしまった。朝から騒がしい。マックス君はニヤッと笑いながら話し出す。

「それがね、さっき仕入れた情報だから本当かどうかは分からないけど、オーロラ・ボード嬢が退学になったんだって。それで、第二王子様も休学なんだ。どう言う事かジェシカ君なら知ってるかな?」

『ザッ』と、クラスのみんなが一斉に私を見る。え~、怖いな。

「。。。分からないわ」

「えっ!そうなの?21領主でも知らないのか。。。あっ、メリッサ君は?知らない?」
今度は一斉にクラスのみんながメリッサ君を見る。机からノートを出していたメリッサ君は『えっ?』と、大混乱だ。

「ねぇねぇ、あのねマックス君。メリッサ君も多分知らないと思うわ。その噂の出所は?信用できるの?」
と、タシナめるが、実は大正解とは言えない。。。

「あ~、朝ね、ザワザワしていたから俺も変だと思って、掲示板に何か書いてあるかもしれないと職員室前の掲示板へ向かったんだ。そしたら普通科の奴らが職員室をこっそり覗き見てたから注意したんだ。するとそいつらがさっきの情報を話しているから覗いていたって言ってさ」

お~。先生達の話を立ち聞きか。

「そうなの。。。では本当なのかしら?でもこの浮き足立ってる感じは?あのね、その事が事実だとしても私やみんなには関係なくない?」
私はこれ以上噂しない方がいいと言ってみる。

「えっ!あの噂の2人が相次いで学校に来ないんだよ!しかもエルメダ様も今日はお休みらしいし。さっき特進科へわざわざ行って、側近の人に聞いたんだ。だからね、俺はあの3人で恋のバトルがあったんじゃないかと思うんだけど。。。どうかな?」
『えっへん!』と、マックス君は胸を張っているが、お前は噂好きのご近所ババアか?と呆れてしまう。

「う~ん。私はバトルはないと思うわよ。ま~、何かあったとしても、私はあまりその手の噂は好きではないから興味はないの。マックス君、あなたもほどほどにね。何と言っても、この噂には王族も21領主も居るのだから」
と、釘をさすとクラスのみんなは黙ってさっさと解散した。

よしよし、変な噂で1日をパァにしたくない。このまま黙ってくれればいいんだけど。

ガラガラガラ。眠そうなロッド先生が登場です。

「おはよう。今日から対抗戦までの魔法の実地授業だが、週3回の内、1回は対抗戦に向けて使っていいぞ。話し合いするなり、魔法の練習するなり好きにしろ。一応、私が授業中は監督はするから。主将のオリバー、後で話があるから中休みに魔法塔へ来い。では、授業を始める。教本23ページ~」

てか、エル大丈夫かな?

結局、先に行われたエルと王子の話し合いの結果を私は知らないし、その後のピンクちゃんと王子の事情は実際見たから知ってるけど。。。後で、特進科の側近さん?に手紙でも渡そうかな。。。ロッシーニに頼もう。そうだ、そうだ。

私は授業中、エルへの手紙を書いた。恐らく、エルの執事か侍女長に見られるので簡単に『心配している』としたためた。

休み時間は教室を出るとコソコソと噂話で持ちきりだった。食堂では『エルメダ様』『オーロラ嬢』『殿下』の単語が飛び交っていた。

ふ~。やだやだ。

げっそりなお昼が終わって午後の魔法実地の授業。

副将のウィリアム君が教壇に立ち話し出す。
「今日の実地から対抗戦の時間にしてもらった。毎週月の日の実地は対抗戦用だからよろしく。今日は戦力を確認したいから、まずは魔法の系統別に分かれてくれ。主魔法でお願いする。右から火、風、水、土だ」

へ~、今日からか。張り切ってるな~。『どれどれ』と、私が土の場所へ移動しようとしたら、
「運営陣は前に来てくれ」
と、呼ばれてしまった。

しまった。。。戦法とかのアイデアがない。。。てか、ロダンに振られてしまったし、専門書も読んでないよ。どうしよう。う~んと悩みながら私は前にとぼとぼ出て行く。

「早速だが、俺達運営陣は各系統が揃っている。ツイてたな。各系統のパイプ役としてこれからお願いするよ。水は主将のオリバー君、風は俺だ。火はマイケル君、土はジェシカ君とイーサン君でお願いする。各系統の攻撃型と守備型を調べて来てくれ」
と、ウィリアム君が仕切って、一旦各系統のグループへ行く事になった。

「イーサン君。私去年の休んでたから、知らない事があったらごめんなさいね。なるべく補佐をするから」
と、休学を武器に早々に補佐役に回る。にしし。

「あぁ、そうだったな。わかった。じゃぁ、俺が仕切るね」
イーサン君は土魔法の子達を集めて輪になった。

「俺は土魔法のグループの運営陣とのパイプ役だ。ジェシカ君も。リーダーではないので勘違いしないように。まずは、攻守を分けたいんだけど、それぞれどんな土魔法が得意か教えて欲しい」

さっと輪になったみんなを見渡す。数は意外にも系統別では一番少ない。私とイーサン君、メリッサ君、ドニー君の4人だ。

「攻守って。。。土ってさぁ、攻撃ってあんまり聞かないよね~」
と、のんびりした感じのドニー君が口を出す。

「そうね。私は壁や堤防を作るのが得意よ。まだ背丈ぐらいだけど」
と、メリッサ君。

「俺は、土壌操作が得意なんだ。主に魔法陣を掛け合わせるから。。。魔法単体なら穴掘るぐらいか?」
イーサン君も渋い顔になってきた。

「そうね。。。私はまだ穴が掘れるようになったばかりの初心者なの。魔法自体、授業で数回使用しただけ」
しょぼんと、私は力になれそうにないので申し訳なく思う。

「それは仕方がないわよ、ジェシカ君。それよりどうする?宝取り合戦よね?去年、先輩達は土の壁を作っていたのを見たけど。。。どっちかって言ったら守備の方じゃない?後方支援的な?」
メリッサ君は攻撃魔法が想像つかないようだ。

「「「「う~ん」」」」
と、4人は黙り込んでしまった。

「ねぇ、本当に何も知らないから的外れならごめんなさいね。土を小さく丸めて魔法で放つのはどうかしら?この前、省エネ魔法でマイケル君が『小さな火を連射する』って言っていたのを思い出したのだけど。連射は出来たらでいいと思うけど、これって攻撃にならないかしら?」

「ジェシカ君!」
メリッサ君はガタッと立ち上がって『いいアイデア!』と喜んでくれる。

「でもさぁ~、実際出来るかわからないじゃん。まず土を魔法で丸める?だろ、それを放出魔法で相手に当てる。魔力が掘るよりいっぱいいるし、そんな器用な事本当に出来るのか?」
ダルい感じでイーサン君は否定的だ。例の面倒くさい病が出たのかな?

「まぁ、出来るかどうかは今度やってみるわ。とりあえず土魔法は守備って事で提案しましょう。それより『壁』以外の魔法はあるの?」
私は言い合いになるのを避けたいので、さっと話を変える。

「落し穴は定番だよね。あとはどうだろう?テーマもあるしね」
ドニー君はニコニコしながら答えてくれた。のほほんな雰囲気がいい!いいね~。

「あっ!テーマを忘れていたわ!確か『砂漠』よね。。。穴掘れないんじゃない?掘っても直ぐに塞がりそうなんだけど」
私がそう言うとみんな『あちゃ~』って顔になった。みんなも忘れてたんだ。ふふふ。

「そうか、土壌操作の俺が役立つかもな。砂漠な~。砂だろ?水魔法の奴と連携して足場を固めるか?」
イーサン君はアイデアを出すがパッとしない顔だ。まだ悩んでいる。

「でも、それって相手にとっても有利にならない?」

「そうだよね~。どうしよっか~」
と、のんびりなドニー君。

う~んとその日は、他の系統も色々悩んだみたいで、各系統の話し合いで授業は終わった。イーサン君は話し合った事をまとめて主将に提出する。

「運営陣のみんなにお願いがあるんだ。忙しいとは思うんだけど今日の放課後って集まれないかな?」
主将のオリバー君に予定を聞かれた。

「俺たちは寮住まいだからいいけど。。。」
と、全員私を見てくる。

「多分大丈夫じゃないかな?放課後直ぐに確認するから、少しだけ待ってくれる?ダメだったら他の日でもいいかしら?」

「あぁ」
と、放課後に運営陣会議をする事になった。

ロッシーニ、大丈夫かな?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)
ファンタジー
サラは幼い頃から学ばなくても魔法が使えた。最近では思っただけで、魔法が使えるまでに。。。 精霊に好かれる者は、強力な魔法が使える世界。その中でも精霊の加護持ちは特別だ。当然サラも精霊の加護持ちだろうと周りから期待される中、能力鑑定を受けたことで、とんでもない称号がついていることが分かって⁉️ 私が精霊王様の母親っ?まだ、ピチピチの10歳で初恋もまだですけど⁉️

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。 レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。 【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

異世界で捨て子を育てたら王女だった話

せいめ
ファンタジー
 数年前に没落してしまった元貴族令嬢のエリーゼは、市井で逞しく生きていた。  元貴族令嬢なのに、どうして市井で逞しく生きれるのか…?それは、私には前世の記憶があるからだ。  毒親に殴られたショックで、日本人の庶民の記憶を思い出した私は、毒親を捨てて一人で生きていくことに決めたのだ。  そんな私は15歳の時、仕事終わりに赤ちゃんを見つける。 「えぇー!この赤ちゃんかわいい。天使だわ!」  こんな場所に置いておけないから、とりあえず町の孤児院に連れて行くが… 「拾ったって言っておきながら、本当はアンタが産んで育てられないからって連れてきたんだろう?  若いから育てられないなんて言うな!責任を持ちな!」  孤児院の職員からは引き取りを拒否される私…  はあ?ムカつくー!  だったら私が育ててやるわ!  しかし私は知らなかった。この赤ちゃんが、この後の私の人生に波乱を呼ぶことに…。  誤字脱字、いつも申し訳ありません。  ご都合主義です。    第15回ファンタジー小説大賞で成り上がり令嬢賞を頂きました。  ありがとうございました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。