前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila

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2章 魔法使いとストッカー

27 失くした記憶

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「あの、アダム様、マーサの事ですがびっくりしました。しかしありがとうございます」
私はお礼と学校でマーサのドッキリに会った事を話した。

「ははははは。余程腹に据えかねたのか?マーサ女史もやるな~。今後は本人の確認なしに物事は進めない事だな。そう言えば、エドにも経緯を説明したらちょっと拗ねていたな。『次は自分で見つける』と言っていたよ。でもあの様子じゃ、もう3年程は独身を謳歌しそうだけどな」
アダム様はちょっと困り顔でエド様の事を教えてくれた。

「ご苦労様です。お妃は何れは必要ですしね。エド様の趣味がよろしければいいでしょうが」

「は~。そこなんだ。頭が痛い。。。まぁ、娶る際は審査が必要だからそうそう変な者は選ばないだろうが。。。それよりも例のレポートはもう少し待ってくれ。ゴタゴタを解消してからになるから、夏の休暇あたりに話を一度聞きたいのだが?夏は領へ帰るのか?」

え~。夏休みは遊びたいのに。。。

「ええ、予定では。その話し合いですが、休暇の始めか終わり頃にして下さるとうれしいです」

「そうだな。考慮しよう。では、先程の続きだがこれより謁見がある。王宮へ移動になるがいいか?護衛と侍女はまた入れぬぞ」

私はロダンに目配せし、アダム様に向かって頷く。

「では、参ろうか。そろそろいい時間だ」

そうして私とアダム様は謁見の為、王宮へ移動した。



「王様、ご機嫌麗しゅう存じます。ロンテーヌ領よりジェシカが参上致しました」
一応、第二王子とピンクちゃんが要るので口上を述べカーテシーをする。

部屋のソファーには王様が座っている。1人用ソファーには第二王子がなんだかビクビクしてちょこんと座っている。その後ろにジェミニー様が立ち、グレン様はピンクちゃんの檻の横。私とアダム様は王様の対面のソファーに座った。

「よい。ジェシカ嬢、座ってくれ。ではグレン檻を」

ガシャン。

ほえ~。グレン様!ピンクちゃんとは別の檻が作れるんだ。すごい。

「は~。ジェシカ、ちと状況が変わってしまった。普通にしてくれて構わん。ジェシカ、第二王子、ジョージを知っているな?」
エド様は疲れているようだ。ん?

「ええ。学校のレクリエーションの時にお食事をご一緒しましたね」

「そうだったな。。。ジョージ、このご令嬢は知っているか?」

ビクビクビていた第二王子はビク~ンと背筋を伸ばし私を見て、首を横にめちゃくちゃ振る。

んん?どうゆう事?

私はハテナになっていると、ジェミニー様がなぜか私の隣に座ってきた。

「ジェシー。久しぶりだね。また一段と美しくなって。私のジェシーは困った顔も魅力的だ」
と、満面の笑みで微笑んでいる。

私はとっさにアダム様の方へ寄ってしまう。近い、近い。止めてくれ。今は対応できない。

「ジェミニー殿。ジェシカへは後でお願いします。エド、どうゆう事か?もしや記憶が無いのか?」
アダム様は第二王子の様子をそう言いながら観察している。

ジェミニー様はまだ私の横にニコニコして座っている。ふ~。

「あぁ。ジェミニーが治癒魔法を施したらそこのピンクと出会う前に戻ってしまった。記憶が丸っと失くなっている」

!!!うそ!どうするの?仮にも王子だよね?非常事態だよ!って、出会う前って1年生の頃って事?

「それで肝心の『呪』の文字は消えたのか?」

「あぁ。言動も私が知っているジョージだ。しかし、どうしたものか。。。は~」
エド様はソファーに仰向けに仰け反ってしまった。

「あの、いつの時点に戻っているのでしょう?」

「約2年前だ。学校の入学式の前日に戻っている」

そんな前から2人は出会っていたの?え~。予想外。てか、ピンクちゃんすごいな。あるあるネタなら、入学式の日に校門で、とか?

「しかしエド、これは好機だ。エルメダ様の件もあるし記憶が無いのなら色々と修正できるぞ」

修正って。。。アダム様、言葉を選んで。本人居るよ?

「オーロラ様はやけに大人しいですが、今後はどうなるのでしょう?」
グレン様の檻の中でじっとしているピンクちゃん。目がやさぐれている。逆に怖いんですけど。

「このピンクは、この後薬で眠らせ腹に魔法陣の入れ墨を施す事になっている。しょうもない内容だが、仮にも第二王子を、王族の心を操ったのだからな。罪人だ。魔法で罪を犯した者に施す『魔法封じ』がある。それをする。その後は山奥の修道院へ放り込む」

そんな物あるの?じゃぁ、今後は魔法が使えないって事?

「そうですか。。。話は出来ます?」

「あぁ。しかし、あまりお勧めはせん。何を言っているのか言葉がわからない。『リセット?』だと何度も言って。。。言い飽きたのか今はほれ、そんな感じでだんまりだ」

あ~。リセットですか。本当にかわいそうに。。。リセットボタンはないんだよ。

「ええ。同じ異なる世界の者同士、話せるなんてそうそうありませんからね。話してみたいです」

『そうか。。。』と怪訝な顔をしつつ、エド様はグレン様に合図を送った。グレン様がボソッと呪文を唱える。

「見た目は変わっていないが、会話が出来るようにした。話してもいいぞ」

すると、話が聞こえたピンクちゃんはいきなり立ち上がって話し出す。

「ねぇ、どうなってるの?もういいでしょう?全部話したわ。第二王子もあきらめるから早く家に返して!」

おぉっと。。。色々突っ込みたいけど、マナーはとりあえず置いておいて。

「ねぇ。私はジェシカ。あなたと同じで『日本』の記憶があるの」

ピンクちゃんは泣きながら喚いていたがピタッと止まり、私を上から下まで見た。

「あんた!あの時のモブ!『日本』って言ったわよね?じゃぁ、ここは乙女ゲームだって知ってる?てか、あんたは何役?きっちりシナリオ通りに進まないのよ。どうなってるの?」

「え~っと。まず、私はあなたが言っている乙女ゲーム自体を知らない。だから何役でもないの。あとね、リセットボタンはないわ。みんな生きてるの。現実世界なのよ。現にあなたもオーロラとして男爵家で生を受け、ご飯を食べ、家族がいて、毎日毎年歳を重ねてきたでしょう?ここは似た世界だけどゲームの様な『チート』も『フラグ回収』も『御都合主義』も存在しないの。それって現実では無理があるでしょう?」

「うそよ。。。もう一回やり直せば。大丈夫。今度は第二王子に近づかないから。お願いよ」
ピンクちゃんはわ~んと泣き出した。

「だから無理だって。時間は進むもの。『リターン』も『ループ』もないの。諦めなさい。それより、あなた15で死んだそうね。私は54よ」

「おばさんじゃん!!!おばはん、モブのくせにいい気になるなよ。説教なんて聞きたくないんだよ!早く出して!」
ピンクちゃんは泣き顔が一転、鬼の様な形相に変わって私を罵倒し始めた。

は~。

聞くに耐えないので、グレン様に目配せする。私は無言でソファーに戻った。

静かになった部屋で檻の中のピンクちゃんだけがじたばたと暴れている。

「ジェシカ。少しだけ補足してくれ。何が何だか。。。」
エド様はピンクちゃんについて訳がわからないそうだ。

「あっ!そうでした。先ほどアダム様に説明したのでエド様達も知っていると勘違いしてしまいました」
と、私はアダム様に話した事を再度復唱する。

「それで『乙女ゲーム』とは何だ?」
エド様は呆れながらピンクちゃんを見ている。

「異なる世界に、恋愛小説の様な物語を主人公になって体験できるカラクリ式の器械がありました。物語の中のイベント、わかりやすく言うと学校のレクリエーションや対抗戦などの行事を通じて、主人公は好きな相手と協力して乗り越え、愛を育んでいくんです。ただ、小説と違うのはイベント毎に話の進め方を決められる『選択肢』と言うものがあります。選択する内容次第で2人の未来が変わるんです。結末が違うので、色々な結末を体験したい人ややり直したい人は『リセット』と言って、最初に戻って、再度物語をやり直せる事が出来たのです。オーロラ様が言う結末は『下位貴族の男爵令嬢が王子様と劇的な大恋愛の末、溺愛されて結婚する』って所でしょうか。私はそのゲームを知らないので、一般的な結末はこんな感じです」

「やり直す小説。。。面白いな。それも商品で買う側か?」
エド様はやってみたいのかな?ちょっとワクワクしている。

「はい。残念な事に」

「ジェシー。では、この娘はその『乙女ゲーム』だと思い込んでジョージに近づき仲良くなったと?」
流石にジェミニー様も思う所があるのか、真剣な顔になっている。

「恐らくは。。。現実的に考えれば無理なのは理解できたでしょうが、オーロラ様は『魅了』が使えましたしね、現に王子を操れましたし。ゲームのような展開や結末を望んでいたのでしょう」

「「「。。。」」」
大人達は悲壮な顔になって黙ってしまった。

「ごほん。話は通じると思うので、罪状や諸々を教えてあげて下さいね。15歳で亡くなったそうなので、異なる世界でも学生です。技術者や職人ではないでしょうし、法律や世の中の仕組みもあまり知らないかと。しかし、幾ら何でも話は理解できるでしょうから」

「そうか。利用価値がないのか。。。修道院ではなく罪人らしく牢に入れるか。。。」
エド様はジョージ様を見ながらボソッと呟いた。

怖ぇ~。

「では、終わりのようですし。私は今日役に立ちましたでしょうか?」

「あぁ。ご苦労だった」
と、アダム様の一声で第二王子とピンクちゃんの会は終了した。


。。。予想通りと言えばそうかな。エルから王子との事後報告を聞いていないしな。。。色々ありそうだな。あちらから言って来るまでは傍観しよう。うん。そうしよう。首突っ込むとロクな事にならない予感。


てか、ロダン達が待っている入口までずっと着いて来たキラキラのジェミニー様がちょっとうざい。
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