上 下
86 / 135
2章 魔法使いとストッカー

22 対抗戦に向けて1時間目

しおりを挟む
「今日の魔法学の2時間を使って、2期に行われる対抗戦の話し合いをするぞ。机を後ろにやって、椅子だけ前に持ってこい。班毎で固まっとけよ」
ロッド先生はそれだけ言って、教壇横の椅子に座る。

みんなはガヤガヤと机を後ろに集め、言われた通りにして椅子に座る。

「対抗戦は班は関係ないが、連携を取る為にも班に分けている。まずは対抗戦用の主将と副将を決める。司会は。。。そうだな、メリッサ、お前やれ」

ロッド先生はメリッサ君に丸投げした。当のメリッサ君はキョトンとしたが、あっさり了承して教壇へ上がった。さすが度胸があるな。

「ごほん。急遽司会を担当しますメリッサです。まずは対抗戦で不明点などありますか?去年、運営陣としてみんなは体験しただろうから何となくはわかるかな?」
と、メリッサ君はクラスのみんなを周り見る。私と目が合って『あっ!』と言う顔になった。

。。。そうなの、ごめんね。私は苦笑いをしてメリッサ君にはにかんでみる。

「申し訳ない。ジェシカ君は去年はいなかったんだった。。。皆さん、これから対抗戦について説明するので、知っている事でも黙って聞いてくれるとうれしい。いいかな?」
クラスのみんなは拍手をして賛同する。

「では。毎年9月下旬に、2年と3年のクラス毎、計10クラスで対抗戦試合がある。騎士科が使用している屋外の格技場が試合会場です。試合内容はシンプルに宝取り合戦、トーナメント戦で、クラス全員が参加する事が条件です。宝は担任の先生。魔法使用が許されています。ここまでで質問か付け加える事はありますか?」

「はい。確か、私達魔法科と騎士科にはハンデがあったはずです」
手を挙げたのはテオ君だ。ふふふ。我らがテオ君、頼りになる。

「ええ。戦力的に他の科が不利になるので、魔法科と騎士科だけは普通科、文芸科、特進科と当たる場合のみ5名だけに、人数を減らされるんだ。他はあるかな?」

え~。5人しかいないのか。。。

「はい。宝の先生は魔法は使ってはダメなの?」
数少ないクラスの女子が質問している。

「ああ。先生は戦力に加えられない。手出し無用です」

メリッサ君はクラスを見渡し、他に質問がない事を確認して、
「では、続きを話します。1年は会場準備と当日の試合運営を任されている。入学していきなりだったが、去年体験したからこそ、対抗戦のルールや危険度がわかると思うんだ。魔法が許可されている以上気をつけて楽しんで欲しいと願う。では、主将と副将を決めたい。立候補ではなく推薦を取りたいんだけど、誰か推薦者は居るかな?」
メリッサ君は黒板に文字を書く為、かちゃかちゃとペンを探している。

「ん?誰もいないのか?あぁ。。。我々、21領主は考えなくていい。本当の適格者がなるべきだと思う。ジェシカ君もそれでいいよね?」

いきなり話を振られた私はびっくりしたが手をヒラヒラさせて笑顔で了承する。

「そう言う事だ。このクラスでは私達はクラスメイト。難しいかもしれないが、畏まらないで欲しい。仲良くしたいんだ。と言う事で、誰かいないかな?」

「はい。先生に質問です。主将や副将に必要な要素とかありますか?」

ぼ~っとしていたロッド先生はビクッして目をパチクリさせる。さては、あれは寝てたな。おいおい。

「あ?素質か?そうだな、戦略を練るのが上手いやつとか、魔法の種類や魔法陣を知り尽くしているやつとか、魔法自体が上手いやつな。あとはリーダーシップだな。公平な判断と冷静な決断ができるやつだ。。。17やそこらでは難しいだろうから、何人かでその要素をまかなえばいいんじゃないか?」

「あっ!そうね。先生ありがとうございます!皆さんに提案です。今、各班の中でさっき先生が言ったような能力がある人がいれば推薦して下さい。では、話し合いをスタート」
メリッサ君はそう言って、自分の班へ戻って行く。

ふ~ん。考えたね~。どんな能力があるか、まずは仲がいい子達で話せばいいと。その方が話やすいっちゃ~話しやすいか。

「じゃぁ、テオ班も話し合いをしようか?」
テオ君は椅子を円状にして向かい合うように私達を動かす。

「でも、能力って。。。戦略がすごいのって成績のいい人?」
マックス君はう~んと悩んでいる。

やばいよ。私成績いいじゃん。。。このままではやばい。

「でも、頭いいイコール戦略家ではないと思うわ。こう言うのはいわば特徴よ。趣味にのめり込んだり集中力がある人が、特殊な能力を極めたりするものよ」

「そう?じゃぁ、各自得意な事とか自慢できる趣味とか言って行く?」
フィン君はそう言って自分の趣味の話を始めた。

「俺は魔法陣を見るのが趣味です。特に古代文字が入った魔法陣。新しい魔法陣を作るよりは昔の魔法陣を研究する事に興味がある。放課後は図書室に入り浸ってるんだ」

ほうほう。古代魔法陣。そんなのあるんだ~。あっ!ロック爺にもらった古代文字の魔法集の本!フィン君なら読めるかも!ラッキー。

「私は本全般が大好きです。ジャンルは問いません。恋愛小説から歴史資料、図鑑とかも好きです」
ミーナは本が好きな事をアピールしている。てか、本当に色々な物を読んでいるんだな~。

「俺は、魔法陣の組み合わせを研究したいから、よく魔法塔の資料室で放課後は過ごしている」
テオ君は魔法陣好きって言ってたよね~。ふ~ん。

「俺は魔法使いになりたいけど、特化の勉強をしているんだ。特化の記述が書かれた本が少ないから、色々探して、将来は本にしたいと思っている。そうすれば便利だよね?特化を持ってないからこその憧れかもしれないけど」
と、ちょっと照れているマックス君。

しまった。私、無趣味じゃん。発明は好きだけど、あれは前世のただの思いつきだし、言えないじゃんね~。どうしよう。

「わ、私は。。。実は何も趣味はないの。。。強いて言うなら、今あるものをあれこれアレンジするのが好きです。アイデア?と言うか、あ~だったらいいのにな~っていつも妄想しています」

「へぇ~。妄想。面白そうだね、ジェシカ君の頭の中」
テオ君の優しいフォロー入りの笑顔。。。ま、まぶしい。

「あはは。。。ありがとう」
妄想。。。『現実逃避趣味』っていいのか?言った後から後悔だな。。。自分で言っておきながらつらい。

「そうなると、知識量で言ったらミーナ君だね。でも、ジェシカ君の優秀な頭脳も捨てがたい。何たって学年一位だし」

「え~。でも、たまたまかもよ。その成績は」
私は焦ってテオ君に訂正するが、

「でも、いつも特進科がテスト結果とか上位を占めるんだよ?魔法科がトップなんて。すごい事だよ!」
フィン君もテオ君を後押しし出す。。。

「はい。私はジェシカ君を推薦したいです」
お~!ミーナ君まで。。。

とほほ。

「じゃぁ、決まりだね。テオ班からはジェシカ君。決して21領主とか関係なく、ジェシカ君のその頭脳を推薦でいいかな?」

「「「異議なし」」」
みんなは笑顔で私を見る。

「ええ。。。わかったわよ。そんな目で私を見ないで。やりますよ!」
私はみんなのニコニコ笑顔に観念して推薦枠に入る事を了承した。

「でも、選ばれるかわからないから。って何役があるかはわからないけど」

「いいよ。別に何でも。結局はクラスの為になるんだから、どうなったとしてもジェシカ君のサポートがんばるよ」
マックス君はフォローしてくれる。

そう言われては、やるしかないよね。ふ~、まっ、がんばりますか。対抗戦って運動会のような感じだよね?多分。

パンパンパン。メリッサ君は教壇で手を叩きみんなの話し合いを一旦やめさせた。

「各班決まったかな?では、各班の班長は推薦者と理由を言って下さい。では私のメリッサ班から始めますね~」
と、順に各班から推薦者が前に出る。

全部で5人。私以外は男子ばっかり。

「では、主将と副将を決めるんだけど、この5人が対抗戦のトップ陣営って事でいいんじゃないかな?各自戦力になりそうだしね。どうだろうみんな?」
クラスのみんなは拍手で私達を了承する。

私はふと黒板の文字を見る。名前と推薦理由。結構、すごい人材が揃ったな。

「では、この5名で主将と副将を決めてくれるかな?私はこれで退出するよ。司会のメリッサでした~」
と、メリッサ君は一礼して自分の班にさっさと戻って行った。

。。。5人は顔を見合わせて教壇の机を囲み話し合いを始めた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)
ファンタジー
サラは幼い頃から学ばなくても魔法が使えた。最近では思っただけで、魔法が使えるまでに。。。 精霊に好かれる者は、強力な魔法が使える世界。その中でも精霊の加護持ちは特別だ。当然サラも精霊の加護持ちだろうと周りから期待される中、能力鑑定を受けたことで、とんでもない称号がついていることが分かって⁉️ 私が精霊王様の母親っ?まだ、ピチピチの10歳で初恋もまだですけど⁉️

逆ハーレムエンドは凡人には無理なので、主人公の座は喜んで、お渡しします

猿喰 森繁
ファンタジー
青柳千智は、神様が趣味で作った乙女ゲームの主人公として、無理やり転生させられてしまう。 元の生活に戻るには、逆ハーレムエンドを迎えなくてはいけないと言われる。 そして、何度もループを繰り返すうちに、ついに千智の心は完全に折れてしまい、廃人一歩手前までいってしまった。 そこで、神様は今までループのたびにリセットしていたレベルの経験値を渡し、最強状態にするが、もうすでに心が折れている千智は、やる気がなかった。

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。 レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。 【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。