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2章 魔法使いとストッカー

22 対抗戦に向けて1時間目

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「今日の魔法学の2時間を使って、2期に行われる対抗戦の話し合いをするぞ。机を後ろにやって、椅子だけ前に持ってこい。班毎で固まっとけよ」
ロッド先生はそれだけ言って、教壇横の椅子に座る。

みんなはガヤガヤと机を後ろに集め、言われた通りにして椅子に座る。

「対抗戦は班は関係ないが、連携を取る為にも班に分けている。まずは対抗戦用の主将と副将を決める。司会は。。。そうだな、メリッサ、お前やれ」

ロッド先生はメリッサ君に丸投げした。当のメリッサ君はキョトンとしたが、あっさり了承して教壇へ上がった。さすが度胸があるな。

「ごほん。急遽司会を担当しますメリッサです。まずは対抗戦で不明点などありますか?去年、運営陣としてみんなは体験しただろうから何となくはわかるかな?」
と、メリッサ君はクラスのみんなを周り見る。私と目が合って『あっ!』と言う顔になった。

。。。そうなの、ごめんね。私は苦笑いをしてメリッサ君にはにかんでみる。

「申し訳ない。ジェシカ君は去年はいなかったんだった。。。皆さん、これから対抗戦について説明するので、知っている事でも黙って聞いてくれるとうれしい。いいかな?」
クラスのみんなは拍手をして賛同する。

「では。毎年9月下旬に、2年と3年のクラス毎、計10クラスで対抗戦試合がある。騎士科が使用している屋外の格技場が試合会場です。試合内容はシンプルに宝取り合戦、トーナメント戦で、クラス全員が参加する事が条件です。宝は担任の先生。魔法使用が許されています。ここまでで質問か付け加える事はありますか?」

「はい。確か、私達魔法科と騎士科にはハンデがあったはずです」
手を挙げたのはテオ君だ。ふふふ。我らがテオ君、頼りになる。

「ええ。戦力的に他の科が不利になるので、魔法科と騎士科だけは普通科、文芸科、特進科と当たる場合のみ5名だけに、人数を減らされるんだ。他はあるかな?」

え~。5人しかいないのか。。。

「はい。宝の先生は魔法は使ってはダメなの?」
数少ないクラスの女子が質問している。

「ああ。先生は戦力に加えられない。手出し無用です」

メリッサ君はクラスを見渡し、他に質問がない事を確認して、
「では、続きを話します。1年は会場準備と当日の試合運営を任されている。入学していきなりだったが、去年体験したからこそ、対抗戦のルールや危険度がわかると思うんだ。魔法が許可されている以上気をつけて楽しんで欲しいと願う。では、主将と副将を決めたい。立候補ではなく推薦を取りたいんだけど、誰か推薦者は居るかな?」
メリッサ君は黒板に文字を書く為、かちゃかちゃとペンを探している。

「ん?誰もいないのか?あぁ。。。我々、21領主は考えなくていい。本当の適格者がなるべきだと思う。ジェシカ君もそれでいいよね?」

いきなり話を振られた私はびっくりしたが手をヒラヒラさせて笑顔で了承する。

「そう言う事だ。このクラスでは私達はクラスメイト。難しいかもしれないが、畏まらないで欲しい。仲良くしたいんだ。と言う事で、誰かいないかな?」

「はい。先生に質問です。主将や副将に必要な要素とかありますか?」

ぼ~っとしていたロッド先生はビクッして目をパチクリさせる。さては、あれは寝てたな。おいおい。

「あ?素質か?そうだな、戦略を練るのが上手いやつとか、魔法の種類や魔法陣を知り尽くしているやつとか、魔法自体が上手いやつな。あとはリーダーシップだな。公平な判断と冷静な決断ができるやつだ。。。17やそこらでは難しいだろうから、何人かでその要素をまかなえばいいんじゃないか?」

「あっ!そうね。先生ありがとうございます!皆さんに提案です。今、各班の中でさっき先生が言ったような能力がある人がいれば推薦して下さい。では、話し合いをスタート」
メリッサ君はそう言って、自分の班へ戻って行く。

ふ~ん。考えたね~。どんな能力があるか、まずは仲がいい子達で話せばいいと。その方が話やすいっちゃ~話しやすいか。

「じゃぁ、テオ班も話し合いをしようか?」
テオ君は椅子を円状にして向かい合うように私達を動かす。

「でも、能力って。。。戦略がすごいのって成績のいい人?」
マックス君はう~んと悩んでいる。

やばいよ。私成績いいじゃん。。。このままではやばい。

「でも、頭いいイコール戦略家ではないと思うわ。こう言うのはいわば特徴よ。趣味にのめり込んだり集中力がある人が、特殊な能力を極めたりするものよ」

「そう?じゃぁ、各自得意な事とか自慢できる趣味とか言って行く?」
フィン君はそう言って自分の趣味の話を始めた。

「俺は魔法陣を見るのが趣味です。特に古代文字が入った魔法陣。新しい魔法陣を作るよりは昔の魔法陣を研究する事に興味がある。放課後は図書室に入り浸ってるんだ」

ほうほう。古代魔法陣。そんなのあるんだ~。あっ!ロック爺にもらった古代文字の魔法集の本!フィン君なら読めるかも!ラッキー。

「私は本全般が大好きです。ジャンルは問いません。恋愛小説から歴史資料、図鑑とかも好きです」
ミーナは本が好きな事をアピールしている。てか、本当に色々な物を読んでいるんだな~。

「俺は、魔法陣の組み合わせを研究したいから、よく魔法塔の資料室で放課後は過ごしている」
テオ君は魔法陣好きって言ってたよね~。ふ~ん。

「俺は魔法使いになりたいけど、特化の勉強をしているんだ。特化の記述が書かれた本が少ないから、色々探して、将来は本にしたいと思っている。そうすれば便利だよね?特化を持ってないからこその憧れかもしれないけど」
と、ちょっと照れているマックス君。

しまった。私、無趣味じゃん。発明は好きだけど、あれは前世のただの思いつきだし、言えないじゃんね~。どうしよう。

「わ、私は。。。実は何も趣味はないの。。。強いて言うなら、今あるものをあれこれアレンジするのが好きです。アイデア?と言うか、あ~だったらいいのにな~っていつも妄想しています」

「へぇ~。妄想。面白そうだね、ジェシカ君の頭の中」
テオ君の優しいフォロー入りの笑顔。。。ま、まぶしい。

「あはは。。。ありがとう」
妄想。。。『現実逃避趣味』っていいのか?言った後から後悔だな。。。自分で言っておきながらつらい。

「そうなると、知識量で言ったらミーナ君だね。でも、ジェシカ君の優秀な頭脳も捨てがたい。何たって学年一位だし」

「え~。でも、たまたまかもよ。その成績は」
私は焦ってテオ君に訂正するが、

「でも、いつも特進科がテスト結果とか上位を占めるんだよ?魔法科がトップなんて。すごい事だよ!」
フィン君もテオ君を後押しし出す。。。

「はい。私はジェシカ君を推薦したいです」
お~!ミーナ君まで。。。

とほほ。

「じゃぁ、決まりだね。テオ班からはジェシカ君。決して21領主とか関係なく、ジェシカ君のその頭脳を推薦でいいかな?」

「「「異議なし」」」
みんなは笑顔で私を見る。

「ええ。。。わかったわよ。そんな目で私を見ないで。やりますよ!」
私はみんなのニコニコ笑顔に観念して推薦枠に入る事を了承した。

「でも、選ばれるかわからないから。って何役があるかはわからないけど」

「いいよ。別に何でも。結局はクラスの為になるんだから、どうなったとしてもジェシカ君のサポートがんばるよ」
マックス君はフォローしてくれる。

そう言われては、やるしかないよね。ふ~、まっ、がんばりますか。対抗戦って運動会のような感じだよね?多分。

パンパンパン。メリッサ君は教壇で手を叩きみんなの話し合いを一旦やめさせた。

「各班決まったかな?では、各班の班長は推薦者と理由を言って下さい。では私のメリッサ班から始めますね~」
と、順に各班から推薦者が前に出る。

全部で5人。私以外は男子ばっかり。

「では、主将と副将を決めるんだけど、この5人が対抗戦のトップ陣営って事でいいんじゃないかな?各自戦力になりそうだしね。どうだろうみんな?」
クラスのみんなは拍手で私達を了承する。

私はふと黒板の文字を見る。名前と推薦理由。結構、すごい人材が揃ったな。

「では、この5名で主将と副将を決めてくれるかな?私はこれで退出するよ。司会のメリッサでした~」
と、メリッサ君は一礼して自分の班にさっさと戻って行った。

。。。5人は顔を見合わせて教壇の机を囲み話し合いを始めた。

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