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2章 魔法使いとストッカー

15 授業開始

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「色々言いたい事はございますが。。。中々のお家事情も社交界でのお嬢様の噂も深く聞けましたね」
ロダンの目はまだ鋭いままだが、エルとの会話を頭の中で精査しているよう。

「そうね。。。あちらの家魔法はどうなるのかしら?一族から養子を取るのかしら?それなら。。。一層の事、その子が継げばいいのに。エルが継がなくても。。。」

「お嬢様、他家の事情です。。。しかし恐らくですが王族の血がどうしても欲しいのでしょう。一族繁栄を狙っているのなら、エルメダ様の子は養子または一族の男子と結婚でしょうね」

「。。。複雑ね」

「そうですね。。。しかし、お嬢様の熱弁には感動しましたよ。少々、お行儀はよくありませんでしたが」

「ふふふ。ありがとう。どうしてもあの年頃の子が壁にぶち当たっているのを見ると。。。一度経験した身としては。。。ただのお節介ね」

「いえいえ。私も心情はよくわかります」

ふ~、と2人で馬車の窓の外を見る。郷愁ノスタルジックな雰囲気に包まれた。。。って、何歳だよ!

「ロダン、帰ったらイーグルに話が聞きたいのだけれど?」

「申し訳ございません。イーグルは領に帰りました。ご主人様の代わりです。今年は婚約の件でご主人様が王都に残っていますので。お急ぎでしたら領へ転移されては?」

そっか。今いないのか。

「う~ん。来週の休みに行く事にする。それまで色々見聞きして質問をまとめておくわ。毎回聞きに帰るのも迷惑でしょうし」

「わかりました。そのように伝達しておきます」
ロダンはそう言うと今日の出来事を早速メモにとっている。

「お嬢様、エルメダ様と仲良くなれてよかったですね。正直、ウチのお嬢様は規格外だと思ってましたので、今日のお茶会を心配していたのですが、他の高位のご令嬢も普段はお嬢様のようなのですね。。。思わぬ発見です」
エリはちょっと興奮気味に話してくる。

「あはは。規格外って。まぁまぁ的は得てるけど。普段はみんなどうなんだろうね?案外普通なのかもよ。いつも貴族然としていたら肩が凝るじゃない?」

「私達下位の。。。私にとって、上位貴族達は雲の上のような存在で、学生時代は全く接触がありませんでしたし、王都での仕事の時も、皆さん優雅で所作も話し方もきれいで『ザ貴族』って感じで。。。お嬢様とは全然違っていたのです」

「ふふふ。エリが居たのは王城でしょう?そりゃ、みんな余所行きの『ザ貴族』で過ごすでしょうよ。だって、王族がいるお城よ。他の貴族の目もあるしね。ただの見栄よ」

私達の会話に珍しくランドが入ってくる。
「ごほん。私の見解だが、お嬢様の言う『ザ貴族』が好きな奴もいる。特に次期領主やその婚約者達だ。だからエリもお嬢様のような気さくな人間は、上位貴族には少ないと思っていた方がいい」

「そうですね。。。やっぱりウチのお嬢様が違うのですね」

「違うって。。。なんかショック」
およよ~と泣き真似をして茶化してみる。

「違います!お嬢様はそのままでいて下さい!ウチのお嬢様は他と違って最高!って事です」
エリは私の手を握って熱い視線を送ってきた。

「わかってるわよ。ありがとう、エリ」

私達は『そもそもお嬢様とは?』と言う話で盛り上がった。いや~しかし、帰りの馬車でロダンに怒られなかったのが奇跡だったな~。


翌日。

「おはよう。ロッシーニ?」
エントランスでぼーっと私を待っているロッシーニに挨拶する。

「あっ。おはようございます。昨日父より伺いまして。。。常にお嬢様につく事になりました。昨夜はお嬢様について話を聞かされました。至らぬ点があればその都度おっしゃって下さい」

ん?

「あぁ、学校だけではなくプライベートでもです。父の下につきます」
ロッシーニはそう言うと、玄関を開けミーナと馬車を待つ。

「そう。よろしくね」
ロッシーニもこの1年で私に対する態度がちょっと変わったしね。今日はさらに態度が変わったな~いい方にだけど。もう私に思う事がなくなったのかな?

「では、参りましょう。本日から通常授業が始まります。忘れ物はございませんか?」

「ええ。では、行ってきますみんな」
エントランスで使用人達に見送られ私達は学校へ向かう。


「おはよう!ジェシカ君」
今日も元気いっぱいのメリッサ君が私の席に寄って来る。

「おはよう。今日から授業ね。楽しみだわ~」

「おはようございます、ジェシカ君。今日の魔法陣の授業、新しい先生らしいよ。去年までのあの『変人ジェリー爺さん』じゃないらしい。正直助かった~」
と、マックス君も集まって来る。

「おい、マックス君。その情報本当だろうな?」
フィン君も話に入って来る。

「ああ。確かな情報だよ。兄さんだけど。。。何でも女の人らしいんだ」

「ええ!女性?『変人婆さん』だったりして~あはははは」
と、クラスのあちこちでこの話が広がって行った。今や教室中は魔法陣の先生の話になっている。

「ジェシカ君。誰でしょうね?楽しみですね」
ミーナ君はふわ~んと笑いながら私を見る。相変わらずかわいいな~。私の癒しだわ。

ガラガラガラ。

「おはよ~っと。何だ?騒がしいな。静かにしろ。1時間目は魔法学だ。教本4ページ」
と、ロッド先生は雑談もなく授業を開始する。

本当にマイペースな先生。みんなは急いで教本やノートを開く。

「…魔法とは体内の魔法因子エネルギーが関係する。また、魔法量は個々で異なり、国の始まり、始祖に近いほど魔法量は甚大だ。稀に幼少期、10歳までに魔力暴走が起きる事がある。身体の成長が著しく大きくなるこの時期に、魔法を使用すると魔力を完全にコントロールする事は難しく、幼少期は魔法を使用しない方が良いだろう。この年代が魔力暴走を起こすと9割の確率で死亡する」

そっか。。。まだまだ子供だしね。ついついふざけたり無茶しちゃうのかな?15歳以下は魔法禁止なのは納得。

「魔法学は魔法の基礎理論だ。薄い教本だが丸暗記しろ。当たり前の事だから飛ばされがちだが、一言一句全てが大切だ。先に言っておく、テストは教本をそのまま出す。虫食い問題にするからな。今から覚えろよ」

。。。鬼だ。

案の定、クラスからはブーイングが飛び交う。

「うるさい。お前達は魔法のスペシャリストになりたいんだろ?俺は誰1人として差をつけない。いや、クラスで差が出ない一流の魔法使いにみんなをするつもりだ。折角、予告してやてるんだから死ぬ気でやれ。テストだからじゃないんだ!将来、必ずお前達の役に立つ!」

。。。

クラスは静まり返り、思わぬ先生の熱い言葉にみんな感動している。

。。。

いやいや。違うよみんな。鬼だよこの人。みんなそう言われると、自動的に本読んでいつも以上に勉強するようになるよね。これって上手く転がされてない?

「ジェシカ。何だ?」
『ん?』と眉間にしわを寄せていた私にロッド先生はニヤッと悪い顔。

「ひゃいっ!。。。先生の御心に感動していました」
と、びっくりして私はついつい棒読みになってしまう。

「なら、今思っている事は口に出すべきじゃない。クラスの為にな」
いつの間にか私の席の後ろに立ったロッド先生にこそっと耳打ちされる。見透かされてドキッとしたが、コクコクと首を縦に振って従おう。だって目をつけられたくないよね、ああゆうタイプは。

「よし、では、ケント。次を読め」

『はい』と指名された生徒は立って読み出した。

魔法学はこんな感じで今後も音読が中心のようだ。ちょいちょいロッド先生が捕捉する感じで授業は進んだ。

あんな熱く語って。。。あんな純真な子供達を。。。は~詐欺師じゃん。やっぱり中身はダルイ感じだったな。



それより、は~。暗記モノ苦手なんだよね~。あぁぁぁぁ。

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