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2章 魔法使いとストッカー

14 親友

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「ねぇ?エル。ちょっと聞いてもいいかしら?」
早速私はエルメダ様、もといエルに引っかかっていた事を聞いてみる。

「ええ」
『エル』と呼ぶとほんのり顔が赤くなる。一生懸命お澄ましして、平常心を装ってるのがちょっとかわいい。

「さっき『王族側』って言っていたけど何の事かしら?」

「あぁ。。。今、王様は独身でしょう?それに第一王子様も婚約者がいないじゃない?それで、現王と第一王子との間に勝手に派閥が出来てしまって。外野がうるさくなっている感じなの。。。宰相様は王様側だから。。。それで、私は第二王子の婚約者候補だし、色んな思惑でしょっちゅう探りを入れられると言うか何と言うか。。。純粋に裏がなく友達になれるかどうか心配だったの。。。いきなり事件の事とか持ち出して配慮に欠けてたと思う。。。試した感じになってごめんね」

あぁ~そう言う事。話の脈略がつかめなかったんだよね。な~んだ。

「そう。いいのよ。私はエルが公爵令嬢だからとか、王族と繋がっているからとかあんまり気にした事がないから。そこは安心して。逆に第二王子との婚約破棄を望んでる」

「えっ!破棄?。。。それは。。。出来ないんじゃない?。。。私はあの方で納得しているわ。条件的に」
エルは割り切っていると言うか、なんか雰囲気がはっきりしない。

「そうなの。。。てっきり。。。『興味ない』って言っているのを聞いたし、好きじゃないなら候補から外れたいのかと思っていたわ。ごめんなさい。私の方こそ先走ったわね」

「いいの。現に母はあまりこの話には乗り気ではなくて。。。」

って事は、父親、ロスト領主様は乗り気なのかな?
「そうなんだ。。。色々あるよね」

エルはまたもやバッと立ち上がり私の手を両手で包む。びっびっくりした~。
「ジェシー。深く聞いてこないのね。それでこそ!私も覚悟を決めるわ!今まで話す相手がいなかったから自分の事を話した事がないんだけど。。。」

エルは目がキラキラ?ギラギラしている。てか、いつの間にか親友にレベルアップしていた。ははは。

「あのジョージ様の学校での日々は父の耳にも入っているの。でも父が何もしないのは、王族の血をロスト家に入れたいらしいのよ。。。今まで、21領主って王族とあまり婚姻で繋がった事がないじゃない?王族が治める王領が存在していたから、王族が婚姻などで他家へ入る必要がなかったのよ。あぁ、『神の家』のプリストン家は別よ」

ん???いきなり難問が。。。イーグルに其々のお家事情を聞いていない。。。しまった、ついていけないよ。。。

「エ、エル。ごめんなさい。話についていけないわ。。。両親は成人前に亡くなってしまったし、ウチって超ド田舎で今まで貴族間のお付き合いがびっくりするほど薄かったから。。。よくわからないわ。その辺の事情」

「そうなの?」

コクリと私は頷く。

「そう。。。まず、公爵家は今4家よね。今までは3家だったけど。。。他国とかの常識では、公爵家って王族に次ぐ貴族、王族との親戚関係が多いのだけれど、我が国の公爵は王族とは遠い遠い親戚って感じで、あまり王族の威光がないわよね?」

「そうね。ウチは国の始まり辺りに王女様が降下されたとか聞いた事はあるわ。。。遠い遠い親戚もわかるけど。。。でもそんな事言っていたら、貴族って誰でも遠い親戚枠なんじゃない?」

「ふふふ。そうね。ただ、現王の3代前と2代前は『神の家』と繋がりたくて、2代続けて王女様が嫁いでいるのよ。だから、血縁関係で言うとプリストン家が一つ頭を抜けて公爵でも王族寄りって事でちょっと権力と言うか、ちょっと特別扱い?があったのよ。現王になってからはあまり聞かないけどね。そこで、父は第二王子に目をつけたって事。幸い私は女ばかりの姉妹の長女でジョージ様と年が近い。それに今回、元王族のスワニー家が新たに公爵に加わったでしょう?だから父は王族に抗議もしないし、ジョージ様の学校での行動には目を瞑っているの」

パワーゲーム?何だそれ?エド様ってそんな感じで外野は気にしないんじゃないかな?って、領主達の問題か。。。

「大変ね。。。本当の所、エルはこのままジョージ様と結婚してもいいの?」

「ええ。。。公爵家の娘だもの。。。跡取りはどうせ要るからね。それなら『元王族』の方がかっこいいでしょ?。。。諦めてるわ」
エルは何でもないように、美しい所作で紅茶を飲む。心なし少し顔が寂しげだ。

。。。

「でも、好きな人が居るなら話は別よ!いないの?家の事も大事だけどエルが幸せにならなきゃ!だってあなたは人形じゃないのよ、心があるのよ。これからずっとが横にいるのよ?何もせず、何も出来ず、ただバイオリン?を引くだけ。。。ストレスで禿げるわよ」

「でも。。。父の意向でもあるし」

「何を言ってるのよ!『特進科』まで進んだエルじゃない!頭いいんでしょう?もっと足掻きなさい!かっこ悪くてもいいの、お上品じゃなくてもいいの。自分の人生を諦めたらダメよ!まだ17歳なのよ!」

はぁはぁはぁ。私はいつの間にかテーブルに両手をついて熱く語っていた。

「あなたはまだこれからなのよ!どんなに充実した人生でも、どんなに幸せな日々を送っていても、40歳50歳になった時ふっと思うの。『あの時ああしていればどうなっていたかな?』なんて。。。やらない後悔より、やったけどダメだった後悔の方がずっとずっといいわ!『ま~、あの時私がんばったし』ってね。より今の幸せを噛み締められるのよ」

エルはちょっと引き気味に口を半開きで驚いている。

しまった。。。50歳の私おばちゃんが出てしまった。。。

『ごほん』と、私はゆっくり椅子に座りなおし紅茶を飲む。若干、ロダンの方を見づらいけど。。。

「ま~、そう言う事よ。家の事情があるから私が言う事じゃないわね。。。忘れてくれていいわ。でもね、エルはエルの幸せをちょっと考えてみてね。からのお願い」
『ね?』と笑ってごまかす。

エルはしばらくぼ~っと目の前のお菓子を見つめていた。私もつられて黙る。2人で無言の時間が過ぎていく。

15分くらい経った頃、エルが少しずつ話し出した。
「ジェシー。ありがとう。一度考えてみるわ。『私の幸せ』って初めて言われたわ。。。」

エルは下を向いている。

。。。顔を合わせてくれない?か。。。ちょっと他家の事なのに出しゃばり過ぎたかな?

ふ~。

「ええ。ごめんなさい。お家の事なのに。。。今日はお茶会に呼んでくれてありがとう。学校では普通にしてねって、クラスが違うからあまり会えないかもしれないけど。今日、話せてよかったわ。お元気で」

私は一礼しエルの前から立ち去ろうとすると、
「えっ!違うわ。ダメよ。勝手に帰らないで、ごめんないさい。涙が出て来たものだから下を向いていたの」
エルはスッと私の手首を掴む。

「ジェシー、あなたとは友達、いえよ。あんな事言ってくれたのはあなただけよ。いつも小説の中の友達に憧れていたわ。。。あなたにも押し付けるように友達になってもらったけど。。。今の言葉はジンときた。これが友情よね。相手の事を打算なしに思い合える関係。私はあなたといたい」
エルはポロポロ涙を流して私に抱きつく。

「あぁ、ごめんなさい。また早とちりしたわね。私もエルとは親友でいたいわ」

私達は抱き合いながら顔を合わせて笑い合う。

「ふふふ。1日しか経ってないのにすごく近くに感じるわ。。。ジェシー、あなたは不思議な人ね。あなたに会えてよかったわ」

「あはははは。熱烈!!!プロポーズみたいね。エル」
と、私は笑って茶化しながら席に座りなおす。

美少女に抱きつかれながらの、この距離での、あのセリフ。。。あかん。マジで惚れてしまう。顔が熱い。

「ふふふ。プロポーズだなんて」
と、クネクネするエル。

がはっ。かわいすぎる。。。

「。。。アレには勿体無い。嫁に欲しい」
と、私が横を向いてボソッとこぼした先に、ロダン。。。目が怖い。

「ん?何?」
エルは首をコテンと傾けて『ん?』ってする。

「いや~何でもないよ」

ははははは。ロダンの目からビームが出てる気がする。

若干、冷や汗かきながら私はエルと色々話をして盛り上がった。


こうして友情を確かめ合った本日のお茶会は終了した。

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