前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila

文字の大きさ
上 下
76 / 135
2章 魔法使いとストッカー

12 マーサの研究

しおりを挟む
「実は、この1年の休暇の間に大変な事が起きまして。。。私の事ではないのですが」
私はロンテーヌの問題を宰相様に相談する事にした。今、『檻』の中にいるのは私とアダム様だけだ。私の『檻』の範囲が小さいので、ロダンやケイトは円の外にいる。

「ん?私、アダムにか?それとも。。。宰相に相談か?」
アダム様の勘は鋭いな。。。

「宰相様にです。そこで今日は事のを話しますので、一度持って帰って国の上層部と話をして下さい。それ程なので、何度か会議が必要です」

アダム様はムッツリ顔になった。
「それ程か。。。『魅了』の問題で少し先になるやもしれんぞ?」

「タイミングはお任せします」

『よし、話せ』とアダム様が身構える。私は思い切ってマーサの話を始めた。

「実は、ウチにいるマーサなのですが、生涯研究が先ほど完成しまして。その内容が国、他国も巻き込む程の世界の案件だと確信しています」

「マーサ女史?確か、付与魔法陣研究だったか?」
さっすが~、宰相様。

「ええ。その付与魔法陣は長年行き詰まっていたそうです。しかし、このロンテーヌ領で次の段階へ展開できました。本当に偶然が重なった結果ですが。しかし、その内容が。。。『特定の石に人の魔力が込められ、その石と魔法陣を使って魔力なしでも魔法が使える』です。。魔力量は基礎魔法の中の下ぐらいですが。。。本来は『魔力なしの者でも魔法が使えるように』が前提で開発された物です。しかし。。。ウチの上層部が『武器』に転化されたら大変だと。。。少し様子を見ていました」

「。。。」
アダム様は目を瞑って、私に手で合図する。話を続けろと。

「そこで、お願いなのですが、マーサの研究を開示するなら国で保護して欲しいのです。マーサは研究さえ出来ればいいと言う職人気質です。。。残念ですが、この研究結果はそうも言ってられないかと。。。ロンテーヌ領で秘匿し埋没させる事も考えましたが。。。この研究で貴族云々に関係なく国民が、そして領民の暮らしが豊かになると私は思うのです」

「。。。そうだな。石に込められる魔法量が少ないのが救いか。。。検証は済んでいるのか?」

「はい。。。マーサが1人で出した結論ですが。。。特別に部屋を用意し、研究資料等は領主の部屋で管理しています。他には漏れていません。ウチでも領の上層部だけの数人です。あと、肝心の石ですが西のロゼ領とカデナ領の境、大岩の近くの洞窟で見つけました。ウチの影からの情報です。我が国ではここだけだそうです」

「そこまで。。。そこにしかないとなると数も限られるのか。。。どうしたものか。。。研究レポートはあるのか?」

私は一旦『檻』から出て、ロダンからレポートを持け取る。
「こちらです。くれぐれもよろしくお願いしますね」

ふ~と一息吐いて、ちょっと休憩する。マーサの今後を考える。。。せっかく大喜びで研究が完成したのに。。。

「マーサ女史はこの事を?」

「いえ。。。本人は知りません。変な心労をかけたくなくて」

「そうか」

アダム様と私はテラスから見える庭を眺めている。穏やかな静かな時間が2人の間に流れる。

「話は理解した。一旦、研究レポートは私1人で精査してみるよ。この事でジェシカの希望はあるか?または今後の展望などは?」

「はい。恐れ多い事ですが。。。一つ提案はあります」
私は誰にも言っていないがマーサの事で考えていた事がある。ロダンをチラッとみる。相変わらず執事然と前を向いて無表情。

「言ってみろ」

「はい。これは誰にも言っていません。アダム様だからこそ言いますね。お願いしますよ。もし将来、我が国がこの研究を便利な道具を作る『魔道具』の方へ押し進めるのなら、マーサは発案者として有名になる一方で大変な事にもなると思うんです。それこそ歴史に名を残すでしょう?マーサ自身は子爵令嬢です。しかも、過去伯爵家に嫁いで離縁もしています。我が領の領民として今は過ごしていますが。。。現在の兄、ロンテーヌでは後ろ盾としては心許ココロモトないのが現状です。そこで、私の考えなのですが、王と再婚させてはいかがでしょうか?」

「はっ?」
私の提案にアダム様の目が点になった。ぷぷぷ。

「現在、王は離縁して独身です。いつまでも王妃の席が空いているのも良くないでしょう?多分、色々と話が来ているのではないでしょうか?そこで私は閃いたのです。歴史的な発明をした聡明なマーサなら王妃の位に相応しいのでは?と。マーサの事情をご存知かどうか知りませんが、前の旦那様とはマーサは死別した上に子がおりません。恐らくですが子が出来にくいのでしょうね。はっきりとはわかりませんが。。。ですので、今マーサと再婚しても後継ぎ争いにはなりません。しかも子爵位。派閥もクソもありませんしね。万一、王族に嫁ぐに当たって子爵位が低いのであれば、誰かの養子になった上で嫁いでもいいでしょう。その辺はどうにでもなるでしょう?」

「ジェシカ。。。そこまで読んでいたのか?ははははは。私の出番がないではないか」

「私は考えているだけで、実際は権力をお持ちのアダム様がする事ですよ。いかがですか?の話ですが」

「そうだな。。。まずはこの研究をどうするかだな。その後、マーサ女史の身柄の保護だ。。。しかし、エドとマーサか。。。ま~、マーサ女史は美人だし性格も良いのだろうが。。。権力や財力を持った途端、性格が変貌する事は多々あるが?大丈夫か?」

「大丈夫ですよ。マーサなら。国の事なので慎重なのはわかります。それなら、一度お茶会に呼びましょうか?またはエド様との謁見時に付き添いをさせましょうか?いくらでも本人を見る機会は作れますよ。マーサ自身の来歴は影に調べさせればいいでしょうし。ただ、心配なのはマーサ自身の好みですね。好きになるのかどうか。。。」

「そうだな。。。エドだぞ?先のケリー様の件で、政略結婚に懲りて再婚はいらんと言っておったしな~。いやしかし、この件で割り切って夫婦をしてもいいのか。まぁ好き嫌いの年でもないしな~」

『う~ん』と、おっさんの結婚を考えるおっさんと少女。でも、やっぱり結婚って幾つになっても好きな人としたいよね?女心としては。

「まぁ、結婚云々は後だな。まず、この事案を持って帰る。今後、研究はするなよ。あと、資料は領主の部屋で保管を続けてくれ」

「はい。研究は終えています。部屋も跡形なく改装済みです」

「そうか。。。この度のロンテーヌの忠誠、この宰相アダムがしかと受け取った。後は任せてくれ」

「よろしくお願いします」
私は立ち上がり最敬礼をする。

「よい。では、近いうちに招待状を出す。まずは、エドへの手紙を忘れるなよ」

「はい。わかってますよ。今日出します。。。あと、マーサの結婚話は内密に。もしそうなったらアダム様が考えた事にして下さいね。本当に領の誰にも言っていないので。。。後でめちゃくちゃ怒られてしまいます。マーサにも」
私はロダンを見てアダム様に目配せする。

「ははは。ロダン参謀にも言ってないのか?これは良い弱みを握ったな~」
と、アダム様はニヤリ。

「。。。これで勝ったと思わないで下さいね。ふん」

「ははははは。勝ったとか。。。では、またな」

私は『檻』を解錠した。ロダンは何か言いたそうだったけど、アダム様を玄関までお見送りする。

「アダム様、長々とお話しにお付き合い下さりありがとうございました。では、またお会いしましょう。本日はありがとうございました」

「ジェシカ嬢。元気な顔を見られて安心したよ。学校の方もがんばりたまえ。では、失礼する」

私達はエントランスでお別れし、アダム様の馬車を見送った。

「お嬢様。。。お話はしませんが、一つだけ」
ロダンがスススッと私の後ろに立つ。小さな声で耳打ちした。

「私は読唇術が使えます」

バッと振り返った私を上から見下ろすロダン。

怖い。

「「。。。。。」」
2人は無言で見つめ合う。



怖い。

しおりを挟む
よろしければお気に入り&感想お願いします!
感想 404

あなたにおすすめの小説

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。 レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。 【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

簡単に聖女に魅了されるような男は、捨てて差し上げます。~植物魔法でスローライフを満喫する~

Ria★発売中『簡単に聖女に魅了〜』
ファンタジー
ifルート投稿中!作品一覧から覗きに来てね♪ 第15回ファンタジー小説大賞 奨励賞&投票4位 ありがとうございます♪ ◇ ◇ ◇  婚約者、護衛騎士・・・周りにいる男性達が聖女に惹かれて行く・・・私よりも聖女が大切ならもう要らない。 【一章】婚約者編 【二章】幼馴染の護衛騎士編 【閑話】お兄様視点 【三章】第二王子殿下編 【閑話】聖女視点(ざまぁ展開) 【四章】森でスローライフ 【閑話】彼らの今 【五章】ヒーロー考え中←決定(ご協力ありがとうございます!)  主人公が新しい生活を始めるのは四章からです。  スローライフな内容がすぐ読みたい人は四章から読むのをおすすめします。  スローライフの相棒は、もふもふ。  各男性陣の視点は、適宜飛ばしてくださいね。  ◇ ◇ ◇ 【あらすじ】  平民の娘が、聖属性魔法に目覚めた。聖女として教会に預けられることになった。  聖女は平民にしては珍しい淡い桃色の瞳と髪をしていた。  主人公のメルティアナは、聖女と友人になる。  そして、聖女の面倒を見ている第二王子殿下と聖女とメルティアナの婚約者であるルシアンと共に、昼食を取る様になる。  良好だった関係は、徐々に崩れていく。  婚約者を蔑ろにする男も、護衛対象より聖女を優先する護衛騎士も要らない。  自分の身は自分で守れるわ。  主人公の伯爵令嬢が、男達に別れを告げて、好きに生きるお話。  ※ちょっと男性陣が可哀想かも  ※設定ふんわり  ※ご都合主義  ※独自設定あり

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。